「全てのキミの魂の詩」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

全てのキミの魂の詩 - (2015/08/24 (月) 20:38:48) のソース

**全てのキミの魂の詩 ◆iDqvc5TpTI

さあ、今こそ答えよう。
“英雄”とは何か、“勇者”とは何か、その答えを。
自分が一体何なのかを。

“救われない”のはもう嫌だ。
“救えない”のは御免だ。
絶対に駄目なのだ。
“救い”を求める者が、“救われて”と願われるものが、“救われない”なんてことがあってはならない。
“救われない”のは許せない。

それは、ユーリルの根底にある想いだった。
ユーリルのありとあらゆる感情を超えた激情だった。
喜怒哀楽を置き去りにして、絶望すらも寄せ付けない。

ユーリルは“救い”を求められたなら、“救われて”と願う者がいたならば。
何を優先してでも、その相手を“救わずには”いられなかった。
それがたとえ、かつてのユーリルから全てを奪った“魔王”とその恋人であっても。
それがたとえ、“勇者”ユーリルから全てを奪った“英雄”とその親友であっても。

ユーリルは、“救わず”にはいられなかった。

自身もサルベイションで黄泉帰りを果たしたばかりの身。
体力は回復していても、疲労の方は消しきれない。
それでも剣を振るう。
強く、速く、剣を振るう。
“[[救われぬ者]]”を救うために。
“救われぬ者”の剣と打ち合う。

「うおおおおおおおお―――――― ッ!!」 
「ゲェァァァァアアアアアアアアッ!!」

ユーリルの敵は“英雄”だった。
紛れもなく“英雄”だった。
見返りも理解も求めず、ただ護りたい者を護り通さんとした“英雄”だった。
かの者に比べれば、なるほど、“救われたい”と泣き喚くアナスタシアやユーリルはちっぽけな“生贄”に見えるだろう。
剣を打ち合うにも値せず、差し出された首を切り落とせばいいだけの“生贄”に見えるだろう。
そのことを今更に否定はしない。
ユーリルは“生贄”だ。
アナスタシアも“生贄”だ。
だけど。

「僕は“生贄”で、それでも“勇者”だ!」

“英雄”は“生贄”なんかじゃないと、アキラは言った。
そうかもしれない。
そこまでは認めてやる。
“英雄”は、必ずしも“生贄”ではないのかもしれない。
けど、その後は間違いだ。
僕は単なる“生贄”で、“英雄”じゃない?
違う、違うんだよ。

「理由なんて関係ない。
 僕もアナスタシアも世界を“救った”。
 救ったんだ!」

僕達の決断によって。
僕の意思を、お前の欲望を満たすためだけに。
それこそが“勇者”の、“英雄”の所業なんだよ。

「望もうが望むまいが、進んでだろうが嫌々だろうが関係ない。
 人を“救う”者は、即ち“英雄”だ」

僕達がどれだけ自分のことを“生贄”だと思っていても、僕達は“英雄”だ。

「“生贄”とされた者もまた“英雄”だ
 人を“救う”者は皆、“英雄”なんだっ」

“英雄”たるか、“英雄”たらぬか。
両者を区別する条件はただ一項。

――誰かを、何かを、“救える”か否か

ただそれだけだ。
それだけなんだ!
それだけで、十分だった!

「その強さがあれば、すべてを“救える”と思った……。
 “救いたい”人達がいた。
 “救えなかった”人達がいた。
 “救われた”自分がいた。
 救い手たる自分になったッ!」

救い手の名は“勇者”。
“救われぬ者”を“救う者”!

オディオは言った。
[[クロノ]]は“救った”人間に殺されるのだと。
じゃあ、僕はどうするべきか。
クロノを殺した人間を護る価値のない人間を殺せばいいのか。
違う、そうじゃない。
“救いたい”奴を、救えばいい。
もしもオディオが言うような未来が来ていたとしたら。
僕はクロノを“救い”に行けばよかったんだ。

「―――モラル、崩壊」

“英雄”が業を煮やし、終焉の弾鉄を引く。
蒼空が罅割れ砕け、次元の狭間より闇の炎が覗く。
あれが再度、降り注げば、ユーリル達に防ぐ手立てはない。
サルベイションの発動には、膨大な精神力がいるのだ。
先刻使ったばかりのユーリルでは、どう足掻いても精神力の回復が間に合わない。

故に、ユーリルが選んだのは予防ではなく、迎撃。
天より降りそそぐものを、更なる力で押し返す!

刮目せよ。その力とは、アークインパルスにあらず。

聖剣を扱えているとはいえ、ユーリルは“剣の英雄”ではない。
“勇者”だ。
“勇者”なのだ。
“勇者”である以上、あの呪文以外にありえない!

ユーリルは残る全ての魔力をアガートラームに流し込み、天へとかざす。
彼の動きを追うように、懐に入れていた大切な友達からの贈り物が、ふわりと浮かび上がり、空へと消えていく。
ユーリルはその意味を理解して、ほんの僅かに笑みを浮かべ、力ある言葉を唱えた。















「来たれ生命《イノチ》の雷」















思い起こせば、サンダーサタンや[[デスピサロ]]も、稲妻や地獄の雷を操っていた。
雷を呼び起こせるのは、ユーリルの世界においても、“勇者”以外でもできたのだ。
どころか、それは、“勇者”とは敵対するはずの魔族の技だった。
であるなら。どうして雷魔法は、“勇者”の象徴だと、伝えられて来たのだろうか。

想像にしか過ぎないけれど、それはきっと、数え切れないほどの人の命を、この呪文が救ってきたからじゃないだろうか。
ベホマでも、ザオリクでもなく、闇を切り裂き光をもたらすこの呪文こそが。
世界に光をもたらしてきたのではないだろうか。

マスタードラゴンが産まれるより昔の時代には沢山の“勇者”がいたのかもしれない。
天空人の血を引いているかなんて関係なく、クロノやマッシュみたいに、救いたい人が“勇者”を名乗り、雷を操り、世界を“救っていた”のかもしれない。

ならば、“勇者”とは“いのり”だ。
世界の全てよ、“救われろ”。
そんなイノリだ。

だったら。
だったら!
込められた意味を果たせ。
祈りよ通じ、奇跡を呼べ。

「アナスタシアにマリアベルだけじゃない! オディオも、[[ストレイボウ]]も、ゴゴも、[[ちょこ]]も!」

全ての“救い”を求める者は。
全ての“救われろ”と願われた者は。

「この一撃で、“救われろ”……ッ!!」












「ミナ、デイン!」










▽




その光景を。誰もが強く、心に焼き付けた。




  「ちょこ、分かるの。おにーさん、一人じゃないの。ひとりじゃないから、あのおっきな剣を振るえるの
   あのおっきな剣が、イノチのチカラを束ねてくれるから、あの魔法を撃てるの……」



アガートラームから光が天へと登っていく。
それは一条の光ではない。
ユーリルの手から放たれた光を支えるように、空で解けた何かから三条の光が共に天へと登っていく。



  「なんだよ、お前、やっぱヒーローじゃねえか。
   ちゃんといるじゃねえか、守りたかった奴らが。一つになれる奴らが、いるじゃねえか」



眩しいものでも見るように、一つとなった光を見上げ目を細める。
知っている誰かの姿が、知らない誰かの姿が、心のなかをよぎった気がした。



  「アルマーズが震えてやがる……。そんなにも、そんなにも、あれは、すげえ魔法なのか……?」



天雷の名を関する斧が震えるのも無理はなかった。
天を駆け上った光は、そのまま罅割れた空をも貫いて、今にも顕現しようとしていた闇の炎を打ち消したのだから。



  「魔法だよ……。あんなの、魔法でもないと、かないっこのない願いだ。
   それでも、その気持は、痛いほど、分かる。キミの魔法は、僕の魔法でもあるから……」



魔法はそこで終わらない。
空を貫き、闇を斬り裂いた光は、天で渦巻き、再び地へと降りそそぐ。



  「全部、“救う”だって? はは、あはは、あはは! なんだよ、それ、いかにもあの先生が、言いそうなことじゃないか!
   なんで、なんで、気付けなかったんだよ……。僕に、似てるってことは、あいつは、アティ先生にも似てたって、ことなのに」



“救う”為に。
全てを“救う”為に。



  「……のう、アナスタシア、聞いたか? “救う”とな。わらわも、おぬしも、ゴゴも、オディオでさえも。
   “救う”とな。問答無用で“救う”とな……。無茶苦茶じゃのう。無茶苦茶過ぎて、わらわは永久に、忘れられそうにないわ」



故に降り注いだ雷竜はその牙を、その爪を、“英雄”に振るうことはなかった。
ミナディンの光は、術者たる“勇者”の剣へと、降臨する。



  「ほんと、無茶苦茶だと、わたしも思うわ。“生贄”なのに“勇者”で、護るでもなく、裁くでもなく、わたしを“救う”なんて。
   こんなことなら、もっと速くに、助けてって、言っておけばよかったなぁ」



生じたトラペゾヘドロンすら形成できるであろうエネルギー。
それを宿した剣を手に“勇者”が駆ける。



  「ああ、そうか、それが、“勇者”だ……。俺がずっと妬みながらも、憧れていた“光”。
   こいつなら、世界も“救える”と思えてしまうような“光”。俺はオルステッドにとってのあれになれるだろうか……」



ブライオンを手に迎え撃つ“英雄”。
“英雄”と“勇者”が交差し、“英雄”の剣が今度こそ、“勇者”の心臓を貫く。



  「なれるだろうか、じゃだめだよ。ならなくちゃいけないんだ。あたしも、あなたも」



そして、全てが終わる。
“勇者”もまた、物真似師の内的宇宙へと、アガートラームを突き立てていた。






▽


 
 これからずっと充たされることなく生きるのだと思ってた。 
 でも、今からは。 



       ◆       ◇       ◆ 


暗い暗い闇の中に、モンスターの意識が落ちて行く。
内的宇宙に突き立てられたアガートラームが、物真似師が物真似をしたオディオという概念を封じようとしているのだ。
その目論見は達成されるだろう。
この世全ての憎悪たるオディオ本体なら、アガートラームであろうともそう簡単には抑えられはしまい。
されど、ここにいるのはあくまでも、オディオの物真似をした物真似師だ。
物真似師自身が不完全だと断じた物真似によるイミテーションオディオだ。
絶対的な力を誇る聖剣の敵ではない。

だが、聖剣にできるのは、聖剣がなしてくれるのはそこまでだ。

意思のようなを持っているといえどアガートラームは感応武器。
使用者の心が強大であればあるほど強い力を発揮するが、使用者の心が砕けていたなら意味を成さない。
“救われぬ者”に“救い”よあれ。
理屈も条理も超越した“勇者”の膨大な精神力によってイミテーションオディオを封じるまでは力を発揮していた。
しかし、聖剣は既に“勇者”の手を離れている。
物真似師の内的宇宙に投じられた以上、今の聖剣の主は物真似師だ。

記憶を奪われ、絆を奪われ、名前を奪われ、憎悪以外の感情を奪われ、自我さえも奪われた物真似師だ。
ただの憎悪の念の塊と化した物真似師だ。
そしてその憎悪すらも聖剣に奪われつつある。

ならば、いったい物真似師に、何が残るというのだろうか。

残るまい、何も残るまい。
しばらくすれば、物真似師は憎悪の呪縛より解き放たれるだろう。
けれど、そこには誰もいない。
ちょこが“救いたい”と願い、その意を受けて“勇者”が“救おう”とした物真似師はそこにはいない。
心臓も動いているし、呼吸もしている。
瞳は開いたまま、ぼんやりと天上を見上げている。
あるものは、ただそれだけ。
死んでないだけの、“生きていない”ただの抜け殻だ。

そんな抜け殻に、アガートラームが扱えはすまい。
聖剣がどれだけの力を持っていようとも、その柄を握ろうとしない限り、剣は応えてくれない。

物真似師は“救われない”。
“救われ――
















『待ちな! 今考えていることの逆が正解だ』














――内的宇宙に、光が満ち溢れた



物真似師の心を表す内的宇宙。
それは、かつてロードブレイザーに喰らい尽くされたアシュレーの心を表していた月面同様、荒れ果てたものだった。
断裂した大地。失われた蒼き空。奪われた緑。広がり続ける悠久の荒野。

崩壊した世界。
今の物真似師の心そのものの心象風景。



         ああ、だけど。
         死に行く世界でお前は何を見つけた?
         お前は知っているはずではないか、誰よりも。

         世界が崩壊しようとも、夜明けの光は変らないということを。
         人の心も、けっして変らないということを。

         前を見るがいい。
         前へと進むがいい。
         光は前からやってくる。



「――――――」

鳥が、羽ばたいた。
白い、白い、鳥が、崩壊した世界の空を飛翔する。

モンスターは釣られるようにしてそれを見た。
無感動な瞳で鳥を追い、いつしかその白の軌跡を追い始めていた。


「――――――」

鳥が飛ぶ。
世界を飛ぶ。

崩壊した世界。
枯れ果てたはずの世界に、色が満ちていく。


          モンスターの心は既に憎悪に呑まれ、世界に色を感じなくなっているはずだった。
          けれどもし、その憎悪に呑まれたはずの心の中に、直接新たな色が生じたのなら。
          それはかの者の心にさえ響くのではないだろうか。


「――――――」

鳥を追う。
モンスターの歩みに合わせて、世界は、少しずつ、少しずつ、再興されていく。

人間の手によって。
老若男女を問わぬ人間たちの手によって。


          モンスターは記憶を奪われた。
          絆を奪われた。
          名前を奪われた。
          憎悪以外の感情を奪われた。
          自我さえも奪われた。


「――――――」

鳥は彼らの間を駆け抜けていく。
追うモンスターも人々の輪を駆け抜けていく。

あれだけ憎いと思っていたはずなのに。
どうしてだろう、モンスターは人間達の輪を壊そうとは思えなかった。

  
          ああ、けれど、だけど。
          全てを奪われたなんて、それは大きなミステイク。
          残されていたものが一つだけあるではないか。


「――――――」

鳥はいつしか一匹ではなくなっていた。
二匹、三匹、四匹と、どこからともなく飛んできて、モンスターの前へ前へと集まっていく。

モンスターもいつしか一人でなくなっていた。
絶える事無き人の輪が、どれだけ進もうとも、モンスターを一人にはしなかった。
どんな時でも一人にしなかった。


          物真似だ。

          物真似師の存在意義であり、物真似師の魂に刻まれた数多の物真似だけは、物真似師から失われてはいなかった。
          他ならぬ、モンスターこそが、オディオの物真似であるモンスター自身こそが、その残されたものの証明だ。
          本当に全てが奪われていたのなら、物真似さえも奪われていたならば。
          物真似師がオディオとしてその力を行使できたはずがない。


「――――――」

鳥を見る。
その鳥たちを物真似師は知っていた。

人々を見る。
その顔の一つ一つを物真似師は覚えていた。

彼らは全て、これまで物真似師が物真似をしてきた命達だった。
鳥や人々だけではない。
この崩壊した世界すらも、物真似師が物真似をしてきた世界だった。
物真似師が生まれ育った、一度は崩壊させられながらも、人々の手によりやり直され始めた世界だった。

「――――――ぁ」

物真似師は失っていなかった。
他の全てを奪われても、物真似だけはその手に残り続けていた。
その残り続けていたものがここにある。

物真似師の内的宇宙。
それは物真似師が、これまで物真似をしてきた全てのモノから成り立つ世界だった。
そしてその全てとは文字通り全てなのだ。
崩壊した世界の物真似をした。
崩壊した世界でも芽生え続ける強き自然を物真似した。
崩壊した世界で希望を失わずに生き続ける強き人々の物真似をした。
物真似師は世界中の全てのものを真似し尽くした。

花が、蝶が、闇が、光が、空が、大地が、ここには全てがあった。
ゴゴという存在がその全てを賭けて物真似しつくしたありとあらゆる存在があった。
それはもはや、一つの星丸ごとといっていい世界だった。

ならば、今この時。






















ゴゴが世界で、世界がゴゴだった。



















「――――――ぁぁ」

“生きているなら、やり直せるさ。何度でも……”

その言葉は決して根拠のない希望的なものではなかった。
根拠ならあった。
崩壊した世界で、それでも助けあって強く生き抜いている人々を。
物真似師は何人も、何十人も、何百人も、何千人も見てきたのだから。
彼ら彼女達全ての物真似をしてきたのだから。
だから、誇りをもって言えたのだ。

生きている限りやり直せると。何度でもやり直せるのだと。

「――――ぁぁぁ」

集められていく。
砕け散ったはずの心が。
失ったはずの思い出が。
消えたはずの絆が。
捨てたはずの名前が。

これまでゴゴがなしてきた全ての人達の物真似によって。
崩壊後の世界を強く生き抜いていた人々の“やり直す”という物真似によって。
彼らがなしていた両手いっぱいの小さな“世界を救う”という物真似によって。
ゴゴという世界が、“救われていく”。

「――――ぁぁあ」

生きている。
ゴゴは生きている。
記憶を奪われ、絆を奪われ、名前を奪われ、憎悪以外の感情を奪われ、自我さえも奪われて。
それでも、ゴゴは、生きている。

「――――ぁああ」

だったら、やり直せないはずがないではないか。
奪われた? 違う、奪われてなんかいない。
ここには全てがある。
物真似師を物真似師たらしめる全て《物真似》がある。

「――――ぁあああ」

身体は物真似でできている。
今までずっと物真似をして生きてきたというのなら、この身も、この心も、物真似が築いてくれたものだ。
その物真似が残っているというのなら、モンスターは。
物真似師は。
ゴゴは。
俺は。


何も奪われてなどいない。
俺は、満たされている!


「ああああああああああああああああああああああああああああ!!」

モンスターの姿で走る。
白い鳥を追って、追って、追って。
満たされた世界を俺は走る。

          ティナがいた。
          カタリーナがいた。
          ディーンがいた。
          赤ん坊がいた。
          子どもたちがいた。

見知った者達とすれ違った。
見知った者達が手を振ってくれていた。

          エドガーがいた。
          マッシュがいた。
          ダンカンがいた。

そこにはもう会えない人もいた。
けれど寂しくはなかった。

          [[シャドウ]]がいた。
          リルムがいた。
          ストラゴスがいた。
          アウザーがいた。
          ガンホーがいた。

もう、逢えないことよりも、みんなと出逢えたことが嬉しい。

          カイエンがいた。
          ミナがいた。
          シュンがいた。
          ローラがいた。

お前達は俺の心の中に生き続けている。
もう、過去をふり返りはしない。ただ、己の信ずる道を行くのみ。

          セッツァーがいた。
          セリスがいた。
          ロックがいた。
          レイチェルがいた。

お前達が俺の心に光をくれた。
もう……大丈夫だ。

          ガウがいた。
          モグがいた。
          ウーマロがいた。

セッツァー、お前が生きている。
それだけで俺は幸せだ。

          [[ビッキー]]がいた。
          [[ナナミ]]がいた。
          [[ルッカ]]がいた。
          リオウがいた。
          トカがいた。
          [[トッシュ]]がいた。
          ちょこがいた。
          アシュレーがいた。


白い鳥が聖剣の柄に降り立つ。
いつしか鳥は一枚の小さな花の栞に変わっていた。
どんなときでもひとりじゃない。
そうだったな、みんな!
俺は栞を手に聖剣を引きぬく。
全ての物真似が俺の中へと帰っていく。
その中にはオディオの物真似も含まれていた。
封印はあくまでも封印だ。
消滅ではない。
一度禁忌の鍵を開けてしまった代償は、いつまでも俺について回る。
俺は一生、あの憎悪の感覚を忘れられはしないだろう。

それでいい。
どれだけ下手でも、どれだけ不完全でも、あれもまた俺が成した物真似だ。
なら、このモンスターすら、今や俺で、この世界をなす一部なのだから。

「さあ、行くぞ、みんな! アークインパルスだ!」

俺は“生きる”。
今からはこの憎悪を背負ってでも強く“生きて”みせる!
それが俺がずっと見てきた世界の物真似だ!



▽


“救われない”のはもう嫌だ。
“救えない”のは御免だ。
絶対に駄目なのだ。
“救い”を求める者が、“救われて”と願われるものが、“救われない”なんてことがあってはならない。
“救われない”のは許せない。

ずっと、ずっと、ずっと。
その飢えを抱いて生きてきた。
自分が“救われぬ”存在だと気付いてしまった以上、その渇きを、ずっと抱いたまま死ぬものだとばかり思ってた。

けれど。

今、ユーリルの前には“救われた”世界が広がっていた。
“救われ続ける”世界が広がっていた。
ゴゴに突き立てたアガートラームを通して、ユーリルの精神がゴゴの内的宇宙に感応したのだ。

そっか。
これが、“救われた”か。
クロノが“救い”、マッシュが“救い”、僕が“救った”世界か……。

ずっと、ずっと、ずっと。
世界を“救う”ことだけを考えていた。
“救われた”後の世界なんて、考えようともしなかった。
“救えなかった”人達のせめてもの“救い”となるよう、世界を“救った”ことを墓前に報告し、故郷の村で一生を終える気だったのだ。
“救われた”世界を見てみたいなんて、思いもしなかった。

その思いもしていなかった光景が、ここにある。
荒れ果てた世界。
傷ついた世界。
崩壊した世界。
でも、“救い”に満ち溢れた世界。

人々は懸命に生きていた。
彼らはみんな、“魔王”を倒そうとはしなかったけど。
辛い事や苦しい事を人に押し付けたりはしていなかった。
辛い事も苦しい事も自分で受け止め、日々を強く生きていた。
時に誰かに手を伸ばし、時に誰かに手を伸ばされ。
“救い”“救われ”生きていた。

ここにはユーリルがあれほど呪った“救われない”という理不尽はなかった。
誰かが誰かの“ヒーロー”になって、誰かの日常を“救って”いた。
みんながみんな、自分の日常を、必死に護って生きていた。

だったら。

価値は、あった。
この光景を見れただけでも、世界を“救った”価値は、あった。

「俺はゴゴ、物真似師だ。恩人よ、お前の名前を聞かせて欲しい」

ユーリルが最後に“救った”命が、問いかけてくる。

「“勇者”、“勇者”ユーリル」

ユーリルは敢えてそう名乗った。

「“勇者”とは、何をする者だ?」

投げかけられたのはいつかアナスタシアに問われた内容と同じだったけれど。

「……“救われぬ”者を“救う”者だよ」

かつて黙っているしかなかったその問にも、答えることができた。

「そうか。“救われぬ”者を“救う”者か。
 では、俺も“救われぬ”者を“救う”というものまねをしてみるとしよう」

なら、それでもう十分だ。
僕は十分“救われた”。
















ああ、だけど。
一つだけ。
一つだけ、未練があった。

「日勝が、教えてくれた、野球……。クロノ達と、したかったなあ……」














&color(red){【ユーリル@ドラゴンクエストⅣ 死亡】}
&color(red){【残り15人】} 

【C-7南 二日目 早朝】 
【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】 
[状態]:ダメージ(大)←死なずにサルベイションの恩恵に預かれなかったため、疲労(大)、全身に打撲 
[装備]:キラーピアス@DQ4 
[道具]:確認済み支給品×0~1、基本支給品 
[思考] 
基本:垣間見たオディオの力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先) 
1:生き残るために利用できそうな者を見定めつつ立ち回る。可能ならば今のうちに[[ピサロ]]、魔王を潰しておきたい。  
2:利用できそうな者がいれば共に行動。どんな相手からでも情報は得たい。
3:座礁船のことをどうごまかすか。首輪解除もまずいな
[参戦時期]:獣の紋章戦後、始まりの場所で[[2主人公]]を待っているとき 
[備考]:ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。 
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています。 
※ピサロ、魔王を特に警戒。 
※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。 
 それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。 
 紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾 
 

【[[ヘクトル]]@[[ファイアーエムブレム 烈火の剣]]】 
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)
[装備]:アルマーズ@FE烈火の剣  
[道具]:ビー玉@[[サモンナイト3]]、 基本支給品一式×4 
[思考] 
基本:オディオを絶対ぶっ倒して、オスティアに戻り弱さや脆さを抱えた人間も安心して過ごせる国にする 
1:[[ジャファル]]は絶対止めてニノと幸せにさせる 
2:ゴゴとちょこから話を聞きたい。 
3:つるっぱげを倒す。 
4:アナスタシアとセッツァーを警戒。
[備考]: 
※[[フロリーナ]]とは恋仲です。 
※セッツァーを黒と断定しました。 


【[[イスラ・レヴィノス]]@サモンナイト3】 
[状態]:ダメージ(小)、疲労(極) 
[装備]:天空の剣(開放)@DQ4、魔界の剣@DQ4、ミラクルシューズ@FF6 
[道具]:確認済み支給品×0~1、基本支給品×2、ドーリーショット@[[アークザラッドⅡ]]
[思考] 
基本:誰かの為に“生きられる”ようになりたい。自分と大きく異なる存在であるヘクトルと行動し、自分の感情の正体を探る。 
1:ユーリル……。
2:[[カエル]]達を追い南下する。 
3:次にセッツァーに出会ったときは警戒。ジョウイも怪しい 
4:首輪解除の力になる
[参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている) 
[備考]:高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。  


【マリアベル・アーミティッジ@[[WILD ARMS 2nd IGNITION]]】 
[状態]:疲労(極)、ダメージ(小) 
[装備]:44マグナム&弾薬(残段数不明)@[[LIVE A LIVE]]、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、ソウルセイバー@FFIV 
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、いかりのリング@FFⅥ、ルッカのカバン@クロノトリガー、感応石×3@WA2
    基本支給品一式 、にじ@クロノトリガー、昭和ヒヨコッコ砲@LIVE A LIVE、マタンゴ@LIVE A LIVE
[思考] 
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。 
1:しかとおぬしのことは刻んだぞ、ユーリル
2:カエル達を追い南下する。 
3:首輪の解除の準備、ゲートホルダーを調べたり、アカ&アオも探したい。 
4:ジョウイのことは信じたいが……

[備考]: 
※参戦時期はクリア後。 レッドパワーはすべて習得しています。 
※ゲートの行き先の法則は不明です。 完全ランダムか、ループ型なのかも不明。 
 原作の通り、四人以上の人間がゲートを通ろうとすると、歪みが発生します。 
 時の最果ての変わりに、[[ロザリー]]の感じた何処かへ飛ばされるかもしれません。 
 また、ゲートは何度か使いましたが、現状では問題はありません。 
※『何処か』は心のダンジョンを想定しています。 現在までの死者の思念がその場所の存在しています。 
(ルクレチアの民がどうなっているかは後続の書き手氏にお任せします) 
※ルッカのカバンには工具以外にルッカの技用の道具がいくらか入っています


【ストレイボウ@LIVE A LIVE】 
[状態]:ダメージ(小)、疲労(極)、心労(中)、自己嫌悪?、罪悪感?
[装備]:
[道具]:勇者バッジ@クロノトリガー、記憶石@アークザラッドⅡ、基本支給品一式×2 
[思考] 
基本:魔王オディオを倒し、友としてカエルとオルステッドを救う
1:俺も、救われろ、か 
2:カエル達を追い南下する。 
3:あいもかわらず勇者バッジとブライオンは“重い”が……。 
参戦時期:最終編 
※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません) 
※記憶石にルッカの知識と技術が刻まれました。目を閉じて願えば願った人に知識と技術が転写されます 
※記憶石の説明書の裏側にはまだ何か書かれているかもしれません 
※偵察に出たジョウイについてどう思っているかは不明です 


【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 
[状態]:ダメージ(小)、疲労(極)
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WA2、導きの指輪@FE烈火の剣 
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式 
[思考] 
基本:全員で生き残る。ジャファルと一緒にいたい
1:あたしは負けない、強くなる
2:カエル達を追い南下する。 
3:フォルブレイズの理を読み進めたい。 
[備考]: 
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、[[エルク]]C 
※終章後より参戦 
※メラを習得しています。 
※クレストグラフの魔法はヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイヴォルテックは確定しています。他は不明ですが、ヒール、ハイヒールはありません。 
 現在所持しているのはゼーバーとハイヴォルテックが確定しています。 
※偵察に出たジョウイについてどう思っているかは不明です 



【[[アナスタシア・ルン・ヴァレリア]]@WILD ARMS 2nd IGNITION】 
[状態]:ダメージ(大)←死なずにサルベイションの恩恵に預かれなかったため、疲労(大)、
    胸部に重度刺傷(傷口は塞がっている)、中度失血、自己嫌悪?
[装備]:絶望の鎌@[[クロノ・トリガー]] 
[道具]:基本支給品、賢者の石@DQ4 
[思考] 
基本:???
1:??? 
[参戦時期]:ED後 
[備考]:名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。 


【アキラ@LIVE A LIVE】 
[状態]:精神力消費(極)、疲労(極)、ダメージ(小) 
[装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4 
[道具]:清酒・龍殺しの空き瓶@サモンナイト3、[[ドッペル]]君@クロノ・トリガー、基本支給品×3 
[思考] 
基本:オディオを倒して元の世界に帰る。 
1:ヒーローを胸にヒーローになる
2:[[レイ・クウゴ]]、アイシャ・ベルナデット(カノン)、[[ミネア]]の仇を取る。 
3:首輪解除の力になる。 
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し) 
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。 
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。  
※松のメッセージ未受信です。


【ちょこ@アークザラッドⅡ】 
[状態]:ダメージ(小)、疲労(大)
[装備]:なし 
[道具]:海水浴セット、基本支給品一式、ランダム支給品0~1個(確認済み)、焼け焦げたリルカの首輪 
[思考] 
基本:みんなみんなおうちに帰れるのが一番なの 
1:おにーさん、友達のところに帰ってったの
2:おねーさんと話をする
3:おとーさんになるおにーさんのこと、ゴゴおじさんから聞きたい
[備考] 
※参戦時期は本編終了後 
※殺し合いのルールを理解しました。トカから名簿、死者、禁止エリアを把握しました。 
※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。 
 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。 
※アシュレーのデイパックを回収しました。 


【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】 
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)、首輪解除、アガートラーム
[装備]:ブライオン@ LIVE A LIVE 、ジャンプシューズ@WA2
[道具]:なし 
[思考] 
基本:物真似師として“救われぬ”者を“救う”というものまねをなす
1:アシュレーのことをちょこ達に話す
2:セッツァーに会いたい
[参戦時期]:本編クリア後 
[備考] 
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。 
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。 
※セッツァーが自分と同じ時間軸から参戦していると思っています。 
※内的宇宙に突き刺さったアガートラームで物真似によるオディオの憎悪を抑えています
 尚、ゴゴ単体でアガートラームが抜けるかは不明です



※ゼブラアックス@アークザラッドⅡ、閃光の戦槍@サモンナイト3は破壊されました。
 湿った鯛焼き@LALはミナディンの光となりました
 最強バンテージ@LAL、天使の羽@FF6、基本支給品×2(ランタンはひとつ)がユーリルの死体の近くに落ちています
 
※C-7エリアは荒野となりました

※首輪に使われている封印の魔剣@サモナイ3の中に 源罪の種子@サモサイ3 により集められた 闇黒の支配者@アーク2 の力の残滓が封じられています
 闇黒の支配者本体が封じられているわけではないので、精神干渉してきたり、実体化したりはしません
 基本、首輪の火力を上げるギミックと思っていただければ大丈夫です

*時系列順で読む
BACK△131-6:[[Salvere000]]Next▼132:[[王国暦1998年の紅蛙]]

*投下順で読む
BACK△131-6:[[Salvere000]]Next▼132:[[王国暦1998年の紅蛙]]


|131-6:[[Salvere000]]|ゴゴ|133-1:[[<ハジマリ>のクロニクル]]|
|~|ちょこ|~|
|~|ジョウイ|~|
|~|イスラ|~|
|~|アキラ|~|
|~|マリアベル|~|
|~|ニノ|~|
|~|ヘクトル|~|
|~|ストレイボウ|~|
|~|アナスタシア|~|
|~|ユーリル|COLOR(red):GAME OVER|