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本気の嘘(前編) - (2010/06/27 (日) 23:58:16) のソース

**本気の嘘(前編) ◆E8Sf5PBLn6


「何とか逃げ切れたわね」 

トカゲが追ってくる気配は無く、[[ナナミ]]はようやく止まってくれた。 
……助かったぜ。窒息死するかと思った。 

「じゃあ[[トッシュ]]さん、残りの支給品の確認を手早く終わらせましょう」 

……ちょっと待て、その前に俺に言う事があるだろ。 

「ナナミ!お前俺を殺す気か!思いっきり喉締めやがって」 
「ゴメンゴメン、つい『必死で』」 

……わざとなのかそうじゃないかは知らないがコイツ、痛いところ突いてきやがった。 

「お詫びに、ここから脱出したら私が作ったケーキ食べさせてあげるから」 
「いらねえ」 

即答。それにカチンときたのか。 

「食べて」 
「いらねえ」 
「食え」 
「いらねえ」 

そんなやりとりが続いた。 

「食べなかったらセクハラのことを世界中に広め……」 
「だぁー!!食えばいいんだろ食えば!!!」 

……こいつには勝てる気がしねえ。 

「はぁ、残りの支給品は……ッッ!!」 

支給品の確認作業に入ろうとした瞬間閃光が走った。 
見てみれば遠くにかなりの大きさの火柱が上がっていた。 

「オイオイ……まさかあれは」 

いやあいつがここにいるわけねえだろ。ククルの警護のためにトウヴィルにいるはずだ。 

「何だろうこれ、[[参加者名簿]]……?」 

ナナミは火柱に気づかなかったのか、デイパックの中を調べていた。……って名簿? 

「ナナミ!ちょっとそれ貸せ!」 

ナナミから名簿をふんだくって中を確認する。そこには[[エルク]]、[[リーザ]]、[[シュウ]]、[[ちょこ]]、俺の仲間たちの名前が記されていた。 

「そんな……リオウやジョウイ、それにルカまで!」 

名簿を覗いてきたナナミにも知り合いが参加していたようだ、全く悪趣味な催しだ。 

「助けにいかなきゃ!」 
「そうだなシュウもきっと動いてるだろうし、じっとしてられねえか」 
「あれ?トッシュさんってシュウさんの知り合いですか?」 
「そうだが…ナナミ、お前シュウを知ってんのか!」 
「ええ、まあ」 
「そうか、俺の仲間はシュウの他にはエルク、リーザ、ちょこってのがいるお前は?」 
「リオウ、ジョウイ、[[ビッキー]]さん、[[ビクトール]]さん達がそうです、それとこのルカって人は危険です」 

結構仲間も多そうだ、それにシュウの奴ならこの首輪もはずせるだろう。俺は何をすべきか…。 

「じゃあ今度こそ支給品の確認を…………」 
「どうした?」 

俺がナナミの支給品を覗こうとしたが…。 

「だめです!こんなもの見るなんてお姉ちゃん許しません!」 

隠されてしまった。 

「だからいつ俺が弟になったんだよ!」 
「じゃあ今からトッシュさんは私の弟です!はい決定!」 

何ムキになってんだこいつ、まあいいか。 
そんなこんなしているうちに第三の人物が現れた。 

「俺は[[無法松]]。すまんがお前達、魔王を倒すために協力してくれ!」 

無法松という男が。こいつ…いい面構えをしてやがるな。 

「魔王を倒す…か。いいぜ!俺はトッシュだ」 
「私はナナミっていいます」 
「ナナミ…!ビクトールの言っていた仲間か」 
「会ったんですか!」 
「ああ、実は向こうの森にルカっていうヤバイ奴がいて、ティナって女がその森に残されてしまって、それでティナを迎えに行くって言って別れてしまったが」 
「……!!」 
「その間、俺は魔王を倒すための仲間を集めることになってな、ビクトールとは第三放送の時に向こうの座礁船で落ち合うことになってる」 

地図を確認するとここはB-7ってことか。ようやく位置をつかめたぜ。 
お互いに情報交換を進めていく。 
……それにしても、さっきからナナミの様子がおかしいな。 

「分かったぜ、仲間を集めて第三放送の時に集合だな。なあ松、ちょっと頼まれてくれないか」 
「何だ?」 
「さっきあっちの方で火柱が上がったんだ。あれはおそらくエルクの炎だ。奴は頭が悪いけどやるときはやる奴だ。あいつは頼りになる。俺はやることが出来ちまってな、あいつへの呼びかけに行ってほしい」 
「……分かった。任せておけ」 
「俺から紹介されたって言えば協力してくれるだろ。頼んだぜ」 

そして――俺たちは別れた。 

「ナナミ」 
「え?」 
「心配なんだろ?ビクトールって奴が」 
「……うん」 
「止めても無駄だしな、俺も一緒に行くぜ」 
「……でも」 
「姉ちゃんなんだろ?たまには弟のわがままを聞きやがれ」 
「……分かりました。ただ一つ約束して」 
「?」 
「無茶な真似はしないで。あなたにまだケーキを食べさせてないんだから」 
「分かったよ。出来るだけ、な」 

俺達は南の森に駆けた。 

◆     ◆     ◆ 

「ふははははははははははははははははははははははは!!!!消えろ豚があッ!!!」 

ものすごい勢いで槍に炎が集まっていく。まともに受けなくても死ねる。そう思えるほどの炎が。 

(オイオイまじかよ、コイツやばすぎるぜ。……全力でッ!!フリーズ!!) 

それで完全にでは無いものの炎の勢いが急激に弱まっていく。 

――『思い込み』 
それを甘く見てはいけない。本当は熱いものでないのに触る者がそう思い込めば、触ったところに水脹れが出来るなど、それによって体にでる影響は小さくない。 
アキラが全力でルカに叩き付けた氷の思念――――フリーズイメージがルカの出す炎を弱めたのだ。だがそれでは槍そのものの炎は消せない。それに―――。 

「貴様ッ!!小賢しい真似オオオオオ!!」 

アキラの全力の思念を受けてなお――狂皇子[[ルカ・ブライト]]は止まってくれない。 

(コイツはここで倒さなきゃだめだ!!危険すぎる!!だけどまともにやったら死ぬ!!思念で攪乱しながらチャンスを伺うしかない!!) 

無論、それをするのも難しい相手とは分かっている。だがそれでもアキラは後退しない。 

(フレームイメージ、マザーイメージは効きそうにないな。ここは方向を狂わせるスリートイメージか。隙を見せたらホーリーブロウを叩き込む!!) 

アキラは善戦したと言ってよかった。ひたすら方向感覚を狂わせ、炎を弱めながら隙を伺う。しかしルカ・ブライトは隙を見せてくれなかった。正確に言えば『アキラ』が付け入る隙がなかったのだ。 
アキラの身体能力そのものはこの島においてかなり低い位置づけになっている。隙は見える。しかし体がついて行かないのだ。 
アキラも一撃ももらっていなかった。それはルクレチアでの経験のおかげだった。もしおぼろ丸に会ってなかったら、もしレイの旋牙連山拳を見ていなかったら、瞬く間にルカの餌食になっていただろう。 
現状ではほぼ互角のやりとりだが、アキラは思念を使うことにより大きく疲労し、ルカはスリートイメージに慣れてくる。このままではアキラの負けは確実だった。 

「いつまで、受けきれる!!! 貴様のような、虫けらがぁ!!」 
「アブネッ」 

とっさに身をよじって槍を回避する。 
どうればいい。考えろ……アキラ!! 

(コイツに組み付いてテレポートするか?だが神殿には人がいるかもしれない。巻き込むわけには・・・・) 

ひたすら考える。この状況を打開するために。 

(男 アキラ……!無理を通してみせるッ!!) 

◆     ◆     ◆ 

(逃げに徹していても事態は好転しないわよね) 

そう結論づけた[[ルッカ]]は[[ミネア]]と[[アリーゼ]]に接触することにした。 

「ちょっといい?お二人さん。聞きたいことがあるんだけど。あ、私は殺し合いなんてする気無いから」 
「あなたは……」 
「ルッカよ。ルッカ・アシュティア」 
「わたしはミネアって言います。わたしも殺し合いなんてする気ありません」 
「まあ、その可能性のほうが高いと思ったから話しかけたんだけどね。聞きたいことっていうのはそっちの縛られている女の子のことなんだけど・・・・」 

聞きたかったことを聞く。橋を壊したはずなのになぜここにいるのか、彼女との関係はどういうものなのかを。 

「呪い?非科学的ね」 
「ほんとなんですよー」 

ルッカは呪われている剣のことを聞くとそんなことを言った。魔法を使う者の台詞ではないのだが。 
でも、ルッカは信じてないわけではなかった。実際に幽霊を見たことがあるのだから、呪いだって無いとは言えない。 

(うーん、あそこでフレアを使わなくて正解だったようね) 

「・・・・で、[[クロノ]]、カエル、[[エイラ]]の3人が私の仲間ね、魔王は・・・・どう動くか分からないわね」 

お互いに情報を交換していく、そして工具のことを聞こうとしたとき。アリーゼがつけていた首飾りが目に入った。 

「ねえ、その首飾り私にくれない?」 
「……別にいいですけど。なんでですか?」 
「ちょっとね……」 

魔王―――ルッカにとってかつて敵だった相手。しかし一時的に協力して共にラヴォスを倒した仲間でもあった者。 
ここにいる仲間達―――同じ時を生きているのはクロノだけだ。エイラやカエルが参加していることはオディオには時を越える力があるということ。 
オディオはそれだけ強大な相手であることになる。使える者が全て無くなっていることを考えれば魔王の首飾りも奪われているだろう。 
彼がどう動くか分からないが、仲間だった時期もある。大切なものなんだから返してあげたい――ルッカはそう思った。  

「無論、恩の売り逃げはさせないわよ、代価は首――」 

首飾りを受け取ったルッカは、首輪を外すことで代価としてもらう、そう言おうとした。 
その瞬間轟音が起こった。 

ガゴオオオオオオオオオオ!!!! 

3人はすぐに音の発信源を見る。そこにはブラを引きちぎり柱を倒壊させた緑髪の少女が虚ろな瞳で立っていた。 

「そんな……ここまでの力なんて」 

ミネアは知る由もないが、これはリンの力では無い。この異常な空間は皆殺しの剣を少しずつ活性化させている。本来の力を遙かに凌駕するほどに。 

「まずいわね……殺すわけにもいかないし、手加減できるほどの余裕も無しとはね」 

3人とはいえ前衛で戦える者がいない。そういうわけで――。 

「「「逃げないとッ!!!」」」 

◆     ◆     ◆ 

(『魔』はあたしが滅ぼすッ) 

[[カノン]]は燃える森を突き進む。己の宿命のために。 

「あれは!!」 

そして辿り着いた。アキラとルカが戦っている場所へ。カノンは素早く状況を把握する。 

(この気配、あの大男が火を放ったようだな。『魔』の気配こそしないが、それに匹敵するほどの禍々しさと殺気、おまけに大きな『力』まで持っているか。『魔』でないとはいえ、いくらなんでもここまでの奴を放って置けないッ!) 

「死ねええええええええッ」 

(避けられ……) 

槍がアキラを貫く一瞬前――一瞬でカノンはルカに接近し――全力でガトリングを放った!! 

だだだだだだだだだだだだだだだだ!!!!!!!! 

カノンのガトリングはルカに全部当たっていたしかし―― 

(打点をずらされてる!!こいつ・・・・このまま押し切るッ!!) 

「とどめだッ!!」 

カノンはガトリングのフィニッシュを放とうとした。しかし――カノンはそれを放つ体勢のまま硬直した。 
『義体』――カノンの体であり武器でもあるもの。長年使っていたそれは限界が近づいていた。カノンのメンテナンスだけではどうにもならないほどに酷使されていたのだ。そしてその限界がまさに今来てしまった。 
そしてルカに薙ぎ払われ、木に叩き付けられた。 

「うう……」 
「その体、貴様からくりか。貴様は俺の楽しみの邪魔をした。――死ね」 
「やめろおおおおおッ!!!!」 

アキラは駆ける。カノンを救うために。 
ルカは槍を振りかざす。カノンを殺すために。 

「間に……合えッッ!!!」 

アキラがカノンの手を掴む。しかし槍はもう目前。どう考えても避けられない一撃だ。 

ガッッ!!! 

しかし槍はカノンを貫けず、後ろにあった木に刺さった。ルカの前からアキラもカノンも忽然と姿を消していた――。 

◆     ◆     ◆ 

「あっちいな、全く森に火を放つなんて非常識な」 

よそ様の家に火を放ったことのある男ビクトールはそんな言葉をこぼした。 

「松は川で別れたって言ってたな。そっちから当たるか」 

川へ進路をとろうとしたビクトールだったが、そこで最悪の男に会ってしまった。その男は紛れもなく狂皇子ルカ・ブライト本人だった。 

「……マジかよ」 

ルカはビクトールにとって倒すべき敵だ。だが自分一人の力ではどうひっくり返ってもルカに勝てないことはビクトール自身、十分自覚している。戦っても犬死にするだけ、ならばここで選ぶ選択肢は撤退することだ。 
しかし、自身は松の代わりにティナという少女を迎えに行くという役目がある。故にルカとの会話を選択した。 

「……よお、死後の世界ってのはどんな所だったか?」 
「貴様か……悪くはなかったぞ」 
「ちょっと聞きてえんだけどよ、お前……緑の髪の女をどうした?」 

(こいつは約束を守らない奴だ、だがここで嘘をつく必要はない。殺したなら殺した。逃げられたなら逃げられたと言うだろう) 

ビクトールはどっちにしても答えを聞いたらすぐさま撤退するつもりだ。殺されているなら全力で森から離脱。逃げられたのなら付近を探索しつつ森から出るという違いがあるだけだ。 

「殺したがそれがどうした」 

撤退!! 

ビクトールはすぐさま退路に向かったがその時――燃えさかる木が倒壊した。 

「おわッ」 
「ふははははははは!!!貴様はここで俺に殺される運命にあるようだな」 

(まじいぞ……このままじゃ松とのもう一つの約束まで果たせなくなっちまう。何とかしねえと) 

「そんな運命俺が叩き斬ってやるよ」 

声がした。そこには見知らぬ男と――ナナミがいた。 

「ナナミ!」 
「おめえがビクトールか、後は俺に任せな」 
「やめろ!!あいつは強い!!」 
「俺を信じろ」 

駆けつけた男――トッシュは、精霊剣『マーニ・カティ』を構えルカと対峙する。 
数秒後――戦闘が始まった。 

◆     ◆     ◆ 

一閃―――――『真』 

「!!!!!!」 

トッシュが剣を一振りする。その瞬間ルカの脳から危険信号が送られた。 

――――――避けろッッ!! 

常軌を逸した速度で回避する。次の瞬間、ルカの背後にあった木がまとめてなぎ倒された。トッシュの剣技の一つ――『真空斬』だ。 

(こいつ……剣圧だけでここまで!) 

体勢を立て直そうとしたが、気がつくと男はすでに俺に肉薄していた――。 

「ちッ!」 

槍を構え応戦する。一瞬で数十発の剣と槍の応酬が起こった。 
トッシュの力、速さ、技量、全てにおいてルカを超えていた。さらに精霊剣『マーニ・カティ』。紅蓮ほどではないが、精霊の力を持っているトッシュにとって、刀でないとはいえ抜群に相性のいい武器だった。戦況はどうみてもトッシュが有利に見える。 
だがそれでもまともに攻撃が当たらない。それはルカの得物が『剣』との相性が悪い『槍』だったことが一つ。もう一つはトッシュがナナミ達に気を配りながら戦っていたからだ。 

「……てめえ、ロマリアのキメラ軍団より厄介だな」 

――強い。素直にそう思った。ロマリア列車爆破の時に時間稼ぎで戦ったキメラの群れ――。瞬く間に数十匹を斬ることができたが、こいつはそれをさせてくれない。精霊の力も無しにここまでやれることに驚いた。 

「……マジかよ。あのルカを押してやがる」 
「トッシュさん……すごい」 

ナナミやビクトールは驚いていた。ここまでの強さを持った男に。 
下手に加勢するのは邪魔になる。そう思った二人は見ていることしかできなかった。 

(ふはははははははははははははははははは!!!!!おもしろい!!!おもしろいぞ!!!太った豚ばかりかと思ったが狼が混ざっていたとはな!!!) 

ルカは喜ぶ強敵との出会いを。 

「一気にケリをつけてやる!『討』――――――桜花雷爆斬!!!!!」 

ひのきの棒ではとても放てない、精霊の力を込めた強大な雷が解き放たれた。 

バッシャーーーーーーーーン!!!バリバリバリバリ!! 

訪れたのは白の世界。 
視界が晴れるとそこにはバチバチと音を立てている抉れた地面だけが残された。 

「やった……のか?あのルカを」 
「いや……手応えがなかった。すまねえ、逃げられちまったみてえだ」 

ルカ・ブライトは自分の強さに自信を持っているが決して相手との戦力差を違えるような愚かな男では無い。 
これは一時的な撤退に過ぎない。彼はまた現れる。邪悪を貫くために―――。 

◆     ◆     ◆ 

[[ピサロ]]は魔力の消耗を回復するために洞窟で休んでいた。入り口が壊れ、洞窟から出られなくなるのを防ぐために入り口付近に陣取っていた。そのため見てしまう。 

バッシャーーーーーーーーン!!! 

トッシュが起こした雷を。 

「あれはギガデイン?いや……ギガソードか!!」 

ピサロがいた世界では人間の世界、魔界ともに人為的に雷を起こせるのはほんの一握りだ。だから、ピサロは今の雷を―――勇者ユーリルが起こしたものだと。自分を一度滅ぼした技――『ギガソード』だと判断してしまった。 
湧き上がってくる『感情』――それは『オディオ』。 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い 
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い 
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い 
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い 
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い 


完全に頭に血が上ってしまったピサロは、先ほど『慎重にならざるをえない』と考えたことも忘れ、雷の起こった方へ駆ける。 
勇者ユーリルを殺すために。 

◆     ◆     ◆ 

「レイさん……ごめんなさい」 

ピサロが放ったイオナズンで出来た大きなくぼみ、そこにレイを横たえ土を被せることで簡素な墓とした。 
墓を作った女性――アティは黙祷を捧げその場を後にした。 
罪悪感はある。後悔もしている。だけどじっとしていても仕方がない。 
それに――アリーゼが心配なのだ。アリーゼがさきほどの男――ピサロに会う前に助けなければいけない。 
そして気付く、遠くの森が燃えていることに。 

「いったいなにが!!」 

最も彼女にとっては原因なんて二の次だ。取り残されている人がいるかもしれない――。だから、アティは駆けた。 

「誰かーーーーー。いませんかー」 

燃える森の中で彼女は人を探す。これ以上命を失わせないために。 

◆     ◆     ◆ 

「なんとかッ!!逃げれたわね」 
「よりによって逃げ場所がこんなところなんて・・・・とは思いますけどね」 
「なによー、橋を壊したことは不可抗力でしょー」 
「いえ、そんなつもりは・・・・」 
「とにかくこんな所に長くいるのは危険だわ!早くこの森からでないと」 

ルッカ、アリーゼ、ミネアの3人はリンを撒いて燃える森の中にいた。片側の橋が壊れている以上、逃げ場所がここしかなかったのだ。 

「誰かーーーーー。いませんかー」 

微かに声が届いた。この状況では普通認識できない声だ。だけどその声を聞き慣れた者―――アリーゼには聞き取れた。そしてそれがアティの―――大切な先生の声というのも理解できた。 

「先生ッ!!」 
「ちょっと!どこにいくのアリーゼちゃん!」 

駆け出したアリーゼをミネアが制するが止まらない。どうも声が届いてないようだ。 

「しょうがないわねー、追うわよ!」 
「はい!!」 

先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生 

言いたいことはいっぱいある。先生に会いたい。 
笑わせてあげなきゃ―――もう一度あの笑顔を見るために。 
程なくして先生をみつけられた。 

「先生ッ!!」 
「あ!アリーゼさ――」 
「!!!」 

気付いてしまった――。近くにきている銀髪の男に。その男の持っている刃が先生に向けられていることに。 

「先生ッ!!危ないッ!!!」 
「え」 

男の持っている刃は――私の心臓を貫いた。 


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|036:[[剣と炎と召喚師]]|リン|~|
|~|カノン|~|
|~|アリーゼ|~|
|~|ミネア|~|
|~|ルッカ|~|
|~|ルカ|~|
|~|アキラ|~|
|030:[[言葉と拳に想いを乗せて]]|アティ|~|
|~|ピサロ|~|
|034:[[男の契約]]|無法松|~|
|~|ビクトール|~|      

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