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幼い頃から習熟していた槍術か弓術。
そのどちらを復讐の旅にに役立てていこうかと
両親から受け継いだ槍弓術書を眺めながら、古都西口で思索していた。

そこに「PTを組みませんか?」と声をかけてくれた一人のウィザードリー。
女性の私から見ても美麗と思える面持ちと
そしてどこか壊れてしまいそうな雰囲気がとても印象深かった。

そして誘われるがままに二人で地下墓地へ。
初めて見る「魔法」で敵を攻撃する彼。
まだ冒険者として未熟な私は、敵の攻撃を極力受けないように弓で攻撃していた。

その様を見て驚くような顔を見せ、彼がこう言った。
「君には魔法のセンスがあるみたいだ。矢に強い魔力を感じる。」
「矢を使わないで矢を撃ってみるといい。なに、難しいことはない。」

彼の言葉は魔法というものを知らない私にとって半信半疑なものであったが
言われるままに精神を集中し、心の中でイメージを抱きながら敵に向かって矢を放った。
すると突き抜けるような光の矢が敵を射り、骸骨は崩れ去ってしまった。

「ほらね。言ったとおりだ。」

この技がマジカルアローと呼ばれる物だと知ったのは、その後程なくしてであった。

そのことがきっかけとなり、彼とはよく連絡を取り合い、一緒に狩りをする仲になった。
「仲間」の輪は日を追う毎に広まり、協力して「ギルド」と呼ばれるものも作った。

ウィザードリーがギルドマスター、私が副ギルドマスター。

仲間達との屈託のない歓談、他ギルドとの戦い、そして仲間達との切磋琢磨。
私にとって、それらは掛け替えのないものになっていた。
父とかつての恋人を殺された復讐心を
ずっと抱き続けていた私にとって、やっと手にした安息の地だった。

しかし、夢はいつか覚める日が来る。残酷なほど突然に。

「他の世界でやらなきゃならないことがある」
ある日ウィザードリーはそう言い残し、私達の元を去ると告げた。
仲間達の激励や励ましとともにブリッジヘッド港から旅立つ彼。
私は不思議と哀しみを覚えず、涙を見せることも無かった。

ただ、大きな穴がぽっかりと心の臓に撃ち込まれたような。

空虚さを抱いたまま、所在なく古都を西口から出る。
しばしば眼に入る若々しい冒険者達。
知らぬ間に私は、その存在さえ忘却の彼方であった地下墓地に足を運んでいた。

今の私にとって最早敵ではない骸骨が、私を目がけて歩みを早める。
敵に向かってマジカルアローを一挙動毎に確認しながらゆっくり放つ私。
消滅する骸骨。

弓を下げ、ぼんやりと思う。

(私は、彼を愛していたんだ・・・。)

復讐に囚われていた私が再び恋をするなどと、自分でも想像だにしなかった。
また大事なものを失ってしまったという喪失感が、私を襲った。
その瞬間、頬を涙が伝った。堰を切ったように。
若々しい冒険者が白い眼で私をみたが、そんなことは気にならなかった。
哀しみが涙で洗い流されるのを祈るように、私は泣き続けた。

今日もどこかで私はマジカルアローを放つ。
彼が教えてくれたマジカルアローを。
ギルドマスターとなった私のギルドのさらなる発展のため、
そして掛け替えの無い仲間達との切磋琢磨とのために。

彼がどこで何をしているのか、最早知る術は遺されていないけど
遺されたギルドや仲間達のために頑張っていくことこそが
恩人であり愛していた彼に対するケジメであると思っている。

私は永劫忘れない。
あのとき、地下墓地で初めて放ったマジカルアローのことを。
そしてあの美しきウィザードのことを。


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最終更新:2009年06月03日 20:45