12月も暮れ、新しい年が明けようとしていたある日の事。
私は名前も売れてない下級ウィザード、生まれ故郷を出て早半年が過ぎようとしていたある日の事。
私が居るこの町、古都で一人の女性に声をかけられた。彼女の名前はミア・ステンバック、経験豊富で知識も豊かなランサーだった。
彼女は、誰か人を探しているようだった、その人はギルドのマスターで蒼い髪の毛をしていて、腰には手入れされた大きな大剣、青い甲冑を身にまとっているとの事。
「彼を探しているのだけれど、見たこと無いかしら?」
「いえ、私はこの町にきてそれほど時間が経っていないので…お役に立てずすいません。」
「そう…わかりました、もし彼を見かけたらあそこに居る女性に話をしてあげて。」
「女性?」
ミアさんが町の地図を広げ、ある場所を指差した。そこはこの場所からとても近く、人気の無い場所だった。
「それと、私これからちょっと仕事があるの。何かあったら私に連絡を下さい、連絡先は…」
住所が書かれた紙を一枚受け取り、私はソレをかばんの中にしまいこんだ。そして彼女はまた何事も無かったかのようにその場を立ち去ってしまった。
ある日の事、私は彼女の言葉が気になり”彼”を探し始めた。些細な情報でも何でもよかった、情報屋、掲示板、風の噂など全てを出来るだけ集めだした。
そして、気になる情報を一つ。それはある日のパーティーでの事だった。
「青髪の戦士?」
「そう、その人を探しているのだけれど…。」
彼の名はアシュ・ミレッター、数少ない
追放天使の一人で色々な情報を持ち合わせている。教会を糧に様々な情報が彼の元に流れ込んでくるという、それはお尋ね者や賞金首の最新レートまでなんでも揃っていると、その道では有名な人だった。
「…今から三週間前の事だ。」
少し考えた末に彼は口を開いた。
「私自身もどんな情報なのかは詳しくはしらん、だが…三週間前ほどにその若者が私を訪ねてきたことだけは覚えている。」
「え、彼はなんて言ったんですか?」
「君と同じ人探しだよ、なんて人かは忘れたけど…その人の情報を探してみたところ”炭鉱の町ハノブ”で目撃証言があることを教えたらすぐさま飛び出していったよ。…もしかして君も急用かい?」
「え…いや、大丈夫です。」
「無理をしなさんな、顔に急ぎたいと書いてあるよ。パーティーはまた今度にして今はその目の前にあるやる事をしておいでなさい。」
アシュさんはそういうと大きな翼を広げて力いっぱい羽ばたき始めた、そして彼の体が光ると同時にその姿を消した。
「……炭鉱の町、ハノブ…。」
その日の夜、私は古都の中を走り回った。ミアさんに情報を仕入れたと報告するためだ。だが彼女はその日家には戻っていなかった。
その日はもう見つからないと思い、自分の宿舎へと帰ろうとしたその時だった。私が行く方向とは逆の方向へ人が大勢走り去っていくのを私は見た。
「なんだ…?」
人々が大声で叫び、我先にとある方向へと向かっていく。その先にあるものは地下水同へと続く入り口だった。私はその人たちを追って地下水道のほうへと足を運んだ。
到着する頃には町中の人たちでゴッタ返していた。
「何があったんですか?」
近くに居た一人のアーチャーに声をかけて何があったのかを聞いてみた、その人はなにやら血相を変えて早口で喋り始める。
「地下水道への入り口が崩れたそうよ、その崩れた入り口で一人巻き込まれたって話しよ。」
「地下水道が?また珍しいこともあるんですね…。」
大勢の人が大声で喋っている中、私は聞き覚えのある人の名前を聞いた。その人の名前は数日前に人探しをしている人の名前とよく似ている。そして背中に冷たく嫌なモノが筋をなして通っていくような感覚を覚えた。
「…まさか。」
信じたくないことだけが頭の中に広がる、群がる人々を押しのけて私は前方のほうへと分け入って行く。
「ど、退いて下さい!」
ようやく一番前の列までたどり着いた、そして私のその直感は的中してしまった。
「ミ…ミアさん。」
そこに倒れていたのは数日前に声を掛けてくれたミア・ステンバックだった。ミアさんは既に意識はなくぐったりとしている状態だった。周りには数名のビショップ達がしゃがみこみなにやら作業をしている。
その中の一人が私の声に反応して振り向いた、とても深刻そうな顔をしながらこっちへと歩き始め私の目の前で止まった。
「…彼女のお知り合いですか?」
その日の翌日、私は雪降るなかある場所へと向かっていた。一人の女性に会うために私は足を運ぶ、右手には一つの封筒。
とても寒い日だったことを良く覚えている。そしてその日の前日、つまり昨夜。一人の有望なランサーが亡くなった事も。
そして私は目的の場所に着いた、そこには一人の女性がこの寒空の下、雪降るこの町でただ一人座っていた。
「ミルリスさん、ですね?」
私がそういうと彼女は顔を上げてうつろな目で私を見た、どこか悲しそうなその目、今すぐにでも崩れてしまいそうなその華奢な腕。そして、とても綺麗な金髪の髪をしていた。
「…あなたは?」
ひっそりとした声で質問に質問で返され、私は真剣なまなざしで彼女を見て自分の着ていたコートを彼女にかけた。
「…ベルスタッドさんの事でお話しがあります。」
その日、古都に降り始めた雪は止むことなく…三日三晩降り続けた。
FIN
最終更新:2009年06月03日 20:48