カン



No.001
Kwan Isuet (カン・イズー)
ステータス
身長 168㎝(+3㎝)
性別 男性
年齢 19歳
派閥 狼少年 所属 狼少年
武器 魔法  
 
装備 E:赤いピアス
   E:ハンカチ
(未所持)
装備不可
説明
狼少年陣営の狼少年です。
個人で敵対している相手はシンデレラ陣営のシンデレラです。
協力関係にあるのは白雪姫陣営の継母。武器は魔法。


▼童話闘争において

役目に就けなかった者
17歳の夏に童話闘争の世界に落ち、オオカミ少年という役割を与えられた。様々な世界の生き物が集うという異質な世界に迷い込んでから二年が経過している。いまだに帰ることをあきらめておらず、どこかに所属することもなく帰る方法を探している。
迷い込んだ時から肉体の成長は一時的に止まっており、彼の精神が成熟するとともにわずかながら肉体もそれに伴って成長する。しかしながら二年前とほとんど変わっておらず、カンが第四世界への帰還を望むかぎり彼が成長することは無いと思われる。
未練と痕跡、後悔を残さぬように努めているものの、あるひとりの迷い人と逢ってからは変わり始めている。

童話闘争の世界に魔素は存在しない。大気中はおろか、水や土、動植物の何にも宿らない。自然には無いものである。カンが体内で生産する以外に魔素を得る手段はない。


▼過去

第四世界から童話闘争の世界に来る数か月前、彼の養父であった神室木が遺体となって発見された。遺体はひどく損傷しており全身に凌辱の跡があった。遺体の第一発見者は当時17歳だったがすでに就職し寮住まいであった神室木伊澄


▼序章

+ ...
 すでに日も落ち始め、影が周囲と同化しつつある森の中。何かから必死で逃げるようにして走る少年の姿があった。灯りを持っている様子もなく、着の身着のままで鬱蒼と生い茂る樹海に逃げ込んだのであろう。それが自殺行為であることなど幼子でもこの世界の住人であればわかることだ。そう、この世界の者であれば、の話だ。
 目深にかぶった帽子の下にある表情はうかがえないものの、少年のその必死さからおそらくは恐怖に彩られているのだろうことは想像に難くない。宛てもなくただがむしゃらに進む少年には、まるで耳鳴りのようにこだまする激しい心臓の鼓動と自らの上がる呼吸音以外が聞こえることは無い。湿った土を荒く踏み固めるのには相応しくない街歩きのブーツを泥で汚し、時折露出した木の根に足をもつれさせながらもまるで落ちる日から逃げるように。額から流れ出た顎を汗が伝う。

 どれだけ歩いただろうか。すっかり木々は影と混じりあい、光源のない少年に境界などわかるはずもなく、途方に暮れたように大きなため息をついて歩みを止めた。まだ心臓は早鐘を打っている。落ち着けるはずもない。まだ、逃げている最中なのだ。
 そしてようやく気付く。森に入った時から鳥の声も、獣の気配も、虫のさざめきも何一つ聞こえやしないということに。違和感を覚えるにはあまりにも遅すぎた。走っていた時よりも心臓が痛い。汗で湿った衣服が肌にまとわりつく。脂汗が背中を流れた。
「見いつけた」
 鈴を転がしたような少女の甘やかな声が少年の張りつめた神経を切り裂くようにして響いた。お気に入りの玩具を見つけたときのような、そんな少し弾んだ調子の声。少年は固まって動けない。振り返ることも、瞬きすらも許されない。彼女に支配された空間。真っ暗闇の中で湿り気を多く含んだ土をゆっくりと踏みしめる音が微かに聞こえ、妙に耳にまとわりつく。
「突然走り出すからとてもびっくりしたのよ」
 少女の言葉は少年の体をゆっくりとからめとる。
「こんなところに来なくても、すぐ近くに二人っきりになれるところなんてあったのに」
 まったくせっかちなのね。
 そう言って軽やかな笑い声が少年の耳元でした。全身の震えが止まらない。
「そんなに喜びに打ち震えてくれるだなんて。私もとっても嬉しいわ」
「でも安心して。私たち、これからはずっと一緒よ」
 少女の柔らかな腕が少年を抱きしめる。
「ねえ、私のかわいい狼さん」

 まだ温かさの残る腹をぐちゃりと探る。薄っすらと腹筋のついていた腹は無残に切り裂かれている。ついぞ、今際の声すら発することもできなかった喉もぱっくりと横に刃を立てられ、明るければ肉と血に混じって白いものが混じっているのがよくわかっただろう。ずさんに地面に放り投げらているハンドアックスは血と脂にまみれており、土がわずかに抉れた痕があることから乱暴に投げ捨てられたのだろう。少女のまるで紅を塗り付けたように真っ赤な唇が弧を描く。
 厚く覆われた雲の切れ間から黄金の月が現れる。そこから降り注ぐ光は木々の隙間から彼女と彼女のそばで血だまりに横たわる少年を照らした。真っ赤なフードからのぞく、淡い胡桃色の長く柔らかな髪が夜風に揺れていた。
最終更新:2020年11月22日 19:53