『電脳適応アイドレス』
チョコ爆撃作戦(前編)レンジャーサイド
空を裂く轟音。
それは、戦闘機にしては大きすぎた。
翼もなく、不恰好なフォルム。
音を超える速度で飛ぶそれは、遠めでも分かる圧倒的な威圧感を持っていた。。
レンジャー連邦の戦闘機ではない。
それを一瞬で看破した冴木悠は、バッジシステムはどうなっていると嫌な予感に顔をしかめた。
市街地では、戦闘機に気がついた市民が騒ぎ始めている。
冴木悠が避難の声を上げる間もなく、戦闘機は市街地手前まで来て高度を上げる。
一瞬にして通り過ぎる、轟音と干渉波。
その後に、太陽の光を遮ってどさどさと大量の何かが降ってくる。
「・・・これは、チョコレート!?」
自分の頭に落ちてきたチョコレートを見て、これはやられたと冴木悠はこらえきれずふきだした。
バッジシステムを突破してのチョコ爆撃。
こんなことをやらかすのはどこの馬鹿だ。
慌てて飛び出してきたラスターチカが編隊を組みスモークで文字を書く。
Happy St. Valentine's Day!!
法を力で押し破り、領空侵犯にチョコ爆撃。
あまりにも馬鹿らしい行為。
冴木悠は不謹慎ながらも実行犯に感謝をする。
この事件の、もたらした結果。
その得るものは大きい。
まず、バッジシステムの穴が見えたこと。
そして、レンジャー連邦に一瞬ではあるが笑顔が戻ったこと。
マンイーター事件以来、レンジャー連邦が忘れてしまったものを思い出させてくれたように感じる。
この日市街地は干渉波でひどい有様ではあったが、久々に活気が戻っていた。
最終更新:2009年03月11日 17:03