小説アイドレス090214

『電脳適応アイドレス』

チョコ爆撃作戦(前編)レンジャーサイド



空を裂く轟音。
それは、戦闘機にしては大きすぎた。
翼もなく、不恰好なフォルム。
音を超える速度で飛ぶそれは、遠めでも分かる圧倒的な威圧感を持っていた。。

レンジャー連邦の戦闘機ではない。
それを一瞬で看破した冴木悠は、バッジシステムはどうなっていると嫌な予感に顔をしかめた。
市街地では、戦闘機に気がついた市民が騒ぎ始めている。

冴木悠が避難の声を上げる間もなく、戦闘機は市街地手前まで来て高度を上げる。
一瞬にして通り過ぎる、轟音と干渉波。
その後に、太陽の光を遮ってどさどさと大量の何かが降ってくる。

「・・・これは、チョコレート!?」

自分の頭に落ちてきたチョコレートを見て、これはやられたと冴木悠はこらえきれずふきだした。
バッジシステムを突破してのチョコ爆撃。
こんなことをやらかすのはどこの馬鹿だ。
慌てて飛び出してきたラスターチカが編隊を組みスモークで文字を書く。

Happy St. Valentine's Day!!

法を力で押し破り、領空侵犯にチョコ爆撃。
あまりにも馬鹿らしい行為。
冴木悠は不謹慎ながらも実行犯に感謝をする。

この事件の、もたらした結果。
その得るものは大きい。
まず、バッジシステムの穴が見えたこと。

そして、レンジャー連邦に一瞬ではあるが笑顔が戻ったこと。
マンイーター事件以来、レンジャー連邦が忘れてしまったものを思い出させてくれたように感じる。

この日市街地は干渉波でひどい有様ではあったが、久々に活気が戻っていた。
最終更新:2009年03月11日 17:03