満月の夜に

白魔術を使う悪魔。
赤魔術を使う悪魔。
黒魔術を使う悪魔。

悪魔と契約をすることで、人とは違う能力を得る。
ある人は無から物を作りだす。
ある人は人と人を繋ぐ絆を作りだした。

しかしある人は、理性を失い、自分を滅ぼした。
そしてある人は、人を滅ぼし、悪魔と契約する上での最低限のルールさえも守らなかった。

希望を作る人もいて、希望を壊す人も居る。
絆を作る人がいて、絆を壊す人が居る。

悪魔と契約して、僕は何を作れるようになっただろう。
何を、壊してしまうだろう。
誰を救えるだろう、誰を殺してしますだろう。

それでも、僕は、悪魔との契約に、後悔はしていない。
きっと、誰かの助けになるから。

誰かの命を、守れるから。

     ◇     

時使「うぃーっす」
   僕は悪魔と契約した少年、時使。
   どこにでもいる、普通の中学生。
   正確には、普通の中学生だった。
紅月「よう」
   こいつは、俺の悪友(?)の紅月。
   何処にでも居るような馬鹿だ。
時使「はー、いい天気だなー」
紅月「どこが」
   今の天気は曇り。
   俺としては、この方がいい天気だ。
板橋「うーっす、時使と紅月!」
   やたらとハイテンションなこいつは、俺の悪友(?)二人目、板橋。
   三人組、ではないが、いつもの面子がそろった。
時使「よう」
紅月「よっ」
板橋「んだよ、ノリ悪いなー」
   朝からそんなテンションでいられるお前がおかしんだよ。
時使「んで、例の物は持ってきたのか?」
   例の物、ある計画で使う道具だ。
紅月「当然だ。俺の計画に抜かりは無い」
時使「で、何時に何処に集合だ?」
板橋「そうだな、作戦開始の10分前に公園で集合でいいんじゃないか?」
紅月「ふむ、そうだな。それでいいだろう」
時使「了解。んじゃ、また後で」
板橋「おまえ、何か用事あんの?」
   いえないな。
   悪魔と契約してから、いろいろと忙しいから。
   そんなこと、いえるか?
紅月「まあ、人に言えないような後ろめかしいことは、誰にだってあるだろう」
時使「ま、そうゆうことで。またな」
板橋「っておい、まだ授業あるだろう」
時使「大丈夫だ。許可は取ってあるから」
   一応は・・・。
   これからあるのは、悪魔と契約したら必ずやらなければいけない、大切なこと。
   簡単に言えば、仕事だ。
紅月「待ち合わせに遅れるなよ」
時使「おう。またな」
   はあ、今日は金曜日か。
   一番面倒な仕事があるんだよなー。
   楽しめって、言われてるけど、疲れるんだよ。
板橋「なんでもいいけど、無理するなよー」

     ◇     

時使「しつれいします」
   今日は満月か。
   こんな日は、存分に力を発揮できる。
霊李「遅い」
時使「まだ始まってないだろ」
   こいつは僕と契約した悪魔、霊奈。
   使う魔術は「青」。
   水の加護を受けることができる。
霊奈「開始の10分前には来て」
時使「はいはい、気をつけます」
   まだ開始まで5分もあるってのに。
   厳しいお方だな。
雷途「よっ、新人」
時使「その呼び方やめてください」
   この人(?)は先輩の雷途さん。
   いつも僕のことを新人と呼んでくる「黄」魔術使い。
雷途「どうだ、慣れてきたか?」
時使「ええ、だいぶ」
雷途「そうか、まあ、がんばれよ」
時使「はいはい」
雷途「そうだ、今日の任務だが、どうもペアでやるらしいぞ」
時使「そうなんですか?」
   ペアでやるなんて珍しい。
   いつもは一人ずつ(契約者と悪魔で一人と数えられる)でやってるから。
雷途「ああ、どうも最近、天候がよくないからな」
時使「そう言えば、そうですね」
   天候といっても、実際に何かが変わるわけではない。
   ただ、不穏な空気を感じることがあるのだ。
緋利「はーい、注目」
   突然、声が響いた。
   この人は、部隊長の緋利さん。
   「赤」魔術を使う天才だ。
緋利「今回の任務は、連絡どおり、二人組みでやってもらいます」
雷途「一人余るが、どうする?」
緋利「心配しないでも、私が一人でやるわ」
雷途「了解。気をつけろよ」
緋利「大丈夫よ。さて、それじゃ各自、ペアを組んで、任務に行ってください」
   今日の任務は「メルディス退治」。敵対勢力となる悪魔、それが「メルディス」だ。
   正確には、道を違えた悪魔である。
時使「さてと、どうしようかな」
雷途「新人、俺と組まないか」
時使「その呼び方やめて」
最終更新:2011年10月05日 17:55