そして朝が来た

ザクッ、ザクッ──
そんな砂を踏みしめる心地いい音が響く。
これから、メルディスを二体、駆逐することになる。
誰かを傷つけるのは、本当は嫌だ。
でも、僕の今の居場所を、僕の大切な人を守りたいから。

守るのは、僕の役目だから──

     ◇     

時使「コール」
CYARLD『呼び出しを確認。<CYACKR>を呼び出します』
雷途「レストーク」
CRSAYU『認証確認。第三式雷魔法の使用を許可します』
葉塁「キャチション」
CRISWB『認証かーくにーん。鋭い針は、全てを射抜きまーす」
全員「『勝負!』」
   これは勝負開始の掛け声。
   これを言わない限り、攻撃を仕掛けることは絶対にしてはいけない。
   もしも、相手が攻撃を仕掛けてきたら、特例として攻撃を認められる。
   正当防衛として。
時使「僕は時使です。お手合わせ、よろしくお願いします」
ルリ「僕はルリよろしくね」
   駆逐といっても、殺傷以外にも、確保や拘束などがある。
   できるなら、確保をしたいところだが、抵抗する場合、殺害することになる。
ルリ「・・・はぁ」
   突然、対戦相手のルリがため息をついた。
ルリ「ねぇ、少し話を聞いてくれる?」
時使「え?何を──」
ルリ「僕にはね、弟がいたんだ」
   ルリは、もの寂しげな口調で話し始めた。
ルリ「弟は、変な事件に巻き込まれて、死んじゃって・・・」
時使「変な・・・事件・・・?」
   僕の脳裏には、ある一つの事件が思い浮かんだ。
   その事件とは──
ルリ「少し前にあった、誘拐事件だよ」
   思っていたその事件の名前が、ルリの口から出てきた。
   少し前に、誘拐事件があった。
   10人もの子供が誘拐されて、監禁された。
   そして、犯人は、こういったのだ。
ルリ「『すぐに500万を用意しろ。明日から10日、それだけ待ってやる。ただし、一日たつごとに、一人殺すからな。覚悟しておけ』って、   そう犯人が言ったでしょ」
時使「つまり、君の弟は──」
ルリ「殺された。事件が終わったのは、あれから4日たったあとだったけど、2日目に、僕の弟が殺されたんだ」
   つまり、ルリの弟は、その犯人に、殺された、と。
時使「・・・」
ルリ「笑っちゃうよね。弟のために、なにもできなかったんだ、僕は・・・」
時使「なあ、少しいいか?」
ルリ「なんだい?」
時使「俺にも、妹がいてな・・・とても明るくて、いい子だったよ。名前は屡李。君と同じ名前なんだ」
ルリ「・・・」
時使「僕の妹、通り魔に殺されたんだ。ふふ、なんだか、似てるよね、僕たちって。・・・僕の妹・・・屡李は、まだ8歳のときに死んで    ね。それから、その通り魔は捕まったけど、結局、僕はそれからしばらく、何もやる気が出ないで、学校にもいかないで、家で泣いて   たんだ。ほんと、なにやってんだろうね、僕って・・・」
ルリ「そう・・・なんだ・・・。なんだか、ごめんね」
時使「いや、いいよ。なんだか、久しぶりに、屡李のことも、思い出せたから」
   とても懐かしい思い出だった。
ルリ「ねぇ、少し頼みがあるんだ」
時使「頼み?」
ルリ「僕を、仲間にしてほしい」
時使「・・・え?」
   突然の展開に、つい間抜けな声を出してしまった。
   気づけばもう、朝日が昇っていた。

     ◇     

紅月「・・・またくる」
??「何度来ても返事は同じだよー」
板橋「だからって、あきらめるつもりはないぞ」
   朝日が昇りはじめたころ、二人はある場所から出てきた。
   見渡す限りに白色が広がる何も無い世界から、もうすぐ出て行く。
紅月「そろそろ覚醒するぞ」
板橋「おーけー」
   天使とは、いるのだろうか?
   悪魔がいるぐらいだし、いるかもな。
   そんなことを、今、時使は考えていた。
最終更新:2011年10月22日 19:52