2-33 「さきのど。 #6~#10」





#6
数時間後
和「結局一度も勝てませんでした……」
咲「ご、ごめんね原村さん」
和「いいえ、手加減されるより何倍もマシですから。――すみません、それじゃ今日はこれで」
優「帰っちゃうのか?」
和「はい。ちょっと用事があって。できればもっと打って行きたかったんですが……」
咲「そっか、用事か……なら仕方ないよね」
京「気をつけて帰れよ」
和「ええ、では」
パタン
優「それじゃあ私は学食でタコスを買ってくるじぇ! おい犬、お前もついてこい!」
京「んええ!? なんで俺が!」
優「文句言う奴には手加減なしのショルダータックルだじぇ!」
京「ぐはあっ!!」
咲(なんだか寂しくなっちゃったなあ……って、あれ? あれって)


#7
優「咲ちゃん、留守番頼んだじぇー!」
京「なんで俺が買い出しなんぞについていかなきゃならないんだ……ブツブツブツブツ」
咲「う、うん。行ってらっしゃい」
パタン
咲「……やっぱりこれって、エトペン、だよね」
エ「……」
咲「原村さん忘れていったんだ。前に枕にもなるって言ってたし、そういえば、さっき寝てたときも頭に敷いてた気がするよ」
ひょい
咲「……」
ぎゅっ
咲(原村さんの匂いがする……毎日抱いてるんだもんね。当たり前か)
こつん
咲「お前はずるいね。とってもずるい。こんなことなら私だって、」
バタンッ――
和「エトペンを忘れてしまいました……! え?」
咲「は、原村さんっ……!?」


#8
咲「あ、あの、えっと」
和「?」
咲「ちがうの、これはその、実は私、前からエトペンを抱いてみたくて、それでっ」
和「そ、そうだったんですか(すごい焦りようですね……)」
咲「は、はい、エトペン」
和「ありがとうございます。ごめんなさいエトペン、忘れていったりなんかして」
咲(撫でられてる……頭撫でられてるよ。原村さん、すごく嬉しそう……)
和「どうでした?」
咲「え?」
和「抱き心地ですよ。ふかふかだったでしょう?」
咲「……」
じー
咲「……私はちょっと苦手かも」
和「ふふっ、柔らかすぎると駄目な人もいますからね」
咲(気持ちよかったよ? よかったけど……認めたら負けな気がするよ)


#9
和「では、そろそろ時間も危ないので……」
咲「あ、ごめん。用事あるんだよね。また明日ね、原村さん」
和「ええ。宮永さん、また明日」
パタン
咲(相手は……ぬいぐるみ。エトペンは、ただのぬいぐるみなんだから)
優「ただいま咲ちゃん! タコス大増量だじぇー!」
京「和とすれ違ったけど、何かあったのか?」
咲「ううん。ちょっと忘れ物しただけだって」
優「咲ちゃん元気ないなー? タコス食うかー?」
咲「ううん、いらないよ」
優「また断られたじぇ……」
咲(相手はぬいぐるみ……相手はぬいぐるみ……相手はぬいぐるみ……)モンモン


#10
和(引き返したら予想以上に時間がかかってしまった……急がないと)
パタパタ
和(そういえば宮永さん、エトペンを抱きたいと言っていたけど……そんなに抱き心地がよさそうだったのかしら?)
ぎゅっ
和(宮永さんの肌に触れたエトペン……置き忘れるというのも、たまにはいいのかもしれませんね)
一方その頃
優「ローン! 咲ちゃんからハネ満だじぇー!」
ま「珍しいのう、咲がそんなのに振り込むなんて」
久「リアルの情報に惑わされているのかもね」
咲(相手はぬいぐるみ……相手はぬいぐるみ……相手はぬいぐるみ……)
優「のどちゃんがいない今、私を止められる者はいなーい! だじぇ!」





最終更新:2010年04月23日 15:17
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