213 加治木先輩の心象風景 [sage] 2009/09/18(金) 23:59:54 ID:Dls7NEUf Be:
私は
鶴賀学園3年、加治木ゆみだ。周りからクールな女で通っている。
だが最近になって、そんな私のイメージを脅かす存在が現れた。それは…
「せんぱいっ!!」
くっ、いきなり後ろから抱き付いてくるとは…下がろうとする目尻を無理矢理引き上げた。
彼女は東横桃子。可憐で、清らかで、儚げで、咲き始めの月見草のようなその白い…中略…私の恋人だ。
「先輩、今日の服どうっすか?」
モモは一回りして私の顔を覗き込んだ。ああ…かわいいな…。出来ることならば、
この場で抱き締めて頬擦りしたい、膝枕してもらいたい、それで耳掻きして欲しい、
膝の上に乗せて電車に…中略…要するにイチャイチャしたい。
だが私は加治木ゆみ。クールな女だ。そんなことしたらモモの中の私のイメージを壊してしまう。
そしたらきっと嫌われる…。それだけは避けなければならない。
「よく似合ってるぞ、モモ」
百八を大きく超えた煩悩を必死に押し隠して、いつものように答えた。
付き合いだして初めてのデート。胸の鼓動は高鳴ったまま静まる気はなさそうだ。
午前中は無事に乗り切り昼の時間になった。
ここまで津波の如く押寄せる欲望を無理矢理抑えたせいで頭がクラクラする。
「あの、お昼…お弁当作ってきたんっすけど…」
あぁ…世界はこの時の為に存在したんだな。神様ありがとう。
私達は公園で昼食を取ることにした。芝生に座ると清々しい若草の匂いが私の心を落ち着けてくれた。
「先輩、あ~んっ」
ぐふっ、不意打ちあ~んとは…差し出されたタコさんウィンナーに危うく鼻血をかけるところだった。
血まみれのタコさんウィンナーなんて何のジョークだ。
「あ~ん」
「はい。…おいしいっすか?」
「ああ、おいぢっ!」
噛んだ、見事に噛んだ。まずい、このままでは私のクールなイメージが…。なんとかして誤魔化さねば。
この窮地を脱するには…あれしかないか。危険だがモモに嫌われるぐらいなら…私は意を決して目を閉じた。
チュッ!
「せ、せせせんぱいいいっ!?い、い、いきなりなにをっ!」
耐えた。自分が気絶しかねない自爆技。一瞬心臓が止まったが、なんとか誤魔化した。だが今ので私も限界だ。
破裂寸前の心臓に気付かれないないように、キスぐらいでは動じない大人の女をアピールすることにした。
「あんまりモモがかわいかったから、つい…な。嫌だったか?」
「い、嫌じゃないっす、私は世界で一番先輩が好きっすから!」
ぐはっ、まさかここでカウンターを合わせてくるとは。もう耐えられない…。暗くなってく視界。
意識が途切れる寸前、真っ赤になっているモモが見えた。ああ…かわいいな…本当にもう…。
目を醒ますと心配そうなモモの顔が見えた。…そうだ、私はあの時気を失って。
自分の状況を確認する。気を失ってたのは…1時間ぐらいか?さっきと同じ場所でモモに膝枕されている。
…膝枕?
おいしい。これはおいしすぎる。のぼせ上がる私にすぐに冷水がかけられた。
「先輩…よかったっす、心配したんっすよ?…ぐす…ぐす」
…モモが泣いてる。誰だっ、私のモモを泣かせたのはっ!…って、私かっ!
私なのか、私ですね、私でした、すみません。おっ、落ち着け、私。
どうにかしてこの場の雰囲気を和ませなければ。だが、どうすれば…あれをやるしかないのか?
しかし、あれをやってしまったら私のイメージが…いやモモの為ならば。信じているぞ、池田華菜っ!
「に、にゃー…………」
「……………………」
「に……………………」
「……………………」
だ、騙された、池田に騙されたっ!くそっ、なにが猫萌えだっ!
私のイメージが、クールな加治木ゆみのイメージがっ!絶対失望されたっ!今度こそもうダメだ…
モモに嫌われた、絶対嫌われたっ!い、嫌だ、捨てないでくれモモ。私はモモに捨てられたら…私は…私はっ!
「あはははは、先輩かわいいっす」
「…?」
モモが笑っている?成功したのか?
「猫さん、ゴロゴロゴロ~」
信じてた…ブルータスに裏切られてもお前だけは信じていたぞ、華菜。今度猫缶でも買ってやろう。
モモは楽しそうに私の髪を撫でている。ちょっと頬擦りしてみた。
「にゃ~」
「もう、甘えん坊な猫さんっすね。」
…いい。これすごくいい。いまなら普段出来ないあんな事やこんな事も出来るかもしれない。
しかし、しかしだ。そんなことをしたら私の理性が…。悶える私に悪魔が囁いた。
(猫にもともと理性は無いニャー)
それもそうだな。天使が何か言おうとしたので叩き落とした。
「ね、猫さん、そこはダメっす!」
「にゃ~~」
「あっ、そ、そんなとこ潜っちゃだめ…っす」
すまないモモ。なんていうか…猫まっしぐら。
しばらくジャレあっていたが、さすがに疲れて一息ついた。
「猫さんになった先輩もかわいいっすけど、そろそろいつもの先輩に会いたいっす」
未練はあったがモモが言うなら仕方がない。
「わかったにゃ、あれ、おかしいにゃ」
「先輩?」
「も、戻らなくなったにゃ!!!」
結局、元に戻ったのは3日後のことだった。その間、学校で口を開くことが出来なかった私は、
池田に報復を決意した…もちろん八つ当たりだ。池田の周辺は事前に調査をした。
いまごろ風越には私からの荷物が届いている頃だろう。
「華菜宛てに荷物届いてるわよ。」
「私にですか?差出人は…加治木ゆみ…何だろう?…………………これはっ!」
猫にマタタビは堪えられまい。愛する福路の前で痴態を晒すがいい。
「華菜?」
「……ニャニャニャニャ~~!!!!キャプテン、キャプテンっ!!」
「きゃっ!どうしたの、いきなり飛びついてくるなんて…」
「好き、キャプテン、好きニャ~っ!」
「か、か、華菜………!」
「好き、好き、大好きニャ~っ!!!」
「………………私も……華菜のこと………大好きよ……」
後日、なぜか池田から猫缶が届いた。
おわり
最終更新:2009年09月22日 12:24