319 :最後のわがまま:2009/10/09(金) 21:25:06 ID:1hi7Nsez
「先輩、私は…私は先輩のことが好きっす」
先輩の卒業式の日、誰もいない屋上に先輩を連れ出した。
「すまない、モモ。私には…」
本当に辛そうな顔をして話す先輩の顔を見ているのが苦しくて
先輩の唇に人指し指を押し当てた。これじゃ、どっちが振られたかわかんないですよ、先輩。
「そこからは言わなくてもいいっす。全部わかってるっすよ」
先輩は優しいから私には悟られないようにしてたけど
でも、ちゃんと気付いてたんですよ。
無意識に送る視線の先は全部、私にじゃなくて蒲原先輩に向けられてたの。
優しさも時には残酷です。一思いに止め刺された方がいいときもあるんですよ。
もしも、また先輩のこと私みたいに好きになる子がいたら、同じ思いをさせちゃダメですよ?
「先輩、本当は他に伝えたい事があったっす」
私があなたに伝えたかった本当のこと。日陰に隠れるように生きてきた私を
陽の当たるところに連れ出してくれたあなたに伝えたい事。
「先輩、私は…東横桃子は…」
泣くなっ!先輩に伝えるんだ、最後の言葉を。
「先輩に会えて…本当に、本当に幸せでした…ありがとう先輩…さようなら…」
ごめんなさい、先輩。もう無理です。私は校舎の外まで走り出した。
人を避け裏庭に出ると雪が舞っているのに気付いた。
「…なごり…雪?」
昔聞いた歌が不思議なほど自然に流れた。
「なごり雪も…降る時を知り…ふざけ…すぎた季節の後で…」
みんなで海に行ったこと、県予選のこと、合同合宿のこと、
たくさんわがまま言って先輩を困らせたこと…先輩が教室まで探しにきてくれたこと。
たくさんの思い出が通り過ぎ、ふざけすぎた季節が終わった事を知った。
「うぅ‥ぁ…先輩…先輩…」
ここは先輩と二人で団体戦のことを語った場所…
「う…ぅ…先輩…うわあああぁぁぁっ!先輩、先輩…私は私は…
好き…、好きっす…、先輩のことが…うあぁぁぁぁ…」
雪だけが優しく私を包んでくれた。
季節は流れ、私も上級生になった。
「はい、新入生注目っ!…注目っ!注目注目注目っ!!…ふぅー、やっと気付いたっすね」
先輩、いまあなたはどこでなにをしてますか?私はいろいろ大変だけど、なんとかやってます。
いまでも、あなたのことを思うと胸が痛むけど。でも、私はあなたのことは絶対に忘れません。
だって私はあなたに会えて幸せだったから。
いつか他の人を好きになっても、きっとあなたのことは忘れません。
だから先輩。一つだけわがまま言ってもいいですか?
この先、いくつの季節が流れても、私のこと忘れないでください。
年に1回でも、3年に1回でもいいから思い出してください。
あなたのことを心から愛した私がいたことを…どうか忘れないでください。
それが、それだけが私の最後のわがままです。
最終更新:2009年10月10日 02:44