905 華菜・一 1 [sage] 2009/10/22(木) 21:55:48 ID:znTOmos9 Be:
あたし、池田華菜。高校二年生。
今日は部活が休みなので、両親の代わりに保育園に妹達を迎えに行くことに。
家に帰る途中には小さな公園がある。
その公園の横を通過しようとしたその時…
「公園だし!」
「ブランコ空いてるし!」
「おねーちゃん、遊びたいし!」
「ええー?ちょっとだけだぞ?」
「うわーい!」
「やったし!」
「ブランコ乗るし!」
ああ…やれやれ…。
遊び盛りの妹達は公園の遊具が大好きみたいで、私が了承の返事をした途端に、タタタッと走って行ってそれぞれ遊び始めた。
「はぁ…ちょっとだけとは言ったものの、あの様子じゃ一時間はかかりそうだなあ…」
制服を着たままだから、あたしは早く帰りたいのに…
「ついてないし…」
ガックリと、ため息をつきベンチに腰をかけ、ぼーっとする。
そしてふと、先日行われた県予選のことを思い出す
2年連続で名門風越の伝統に泥を塗ってしまったあのことを。
「みんなの全国への夢があたしのせいで…」
「はぁ…」
あれこれ思い出せば思い出すほど、どんどん辛くなってくる…
あ、やばい。また涙が出てきそうだし…
「うう…」
そんな時、突然誰かに声をかけられた
「おいっ!お前は風越の大将ではないか」
「にゃ…?」
顔を上げると、つい先日戦ったばかりの人物が…
「あっ、龍門渕の天江衣!」
それともう一人。
ええ、とこの人は…
「やぁ、久しぶり。僕は中堅の国広一だよ。よろしくね池田さん」
「あ、そうそう国広さんだ!よろしくっ」
「おおっ!あそこで遊んでるのはお前の妹かっ?衣も遊ぶぞーっ」
「ちょっとだけだよー、衣」「うむっ」
にゃ…?
天江が妹達に交ざって、キャッキャと遊び始めたしっ
驚いてそのまま天江の様子を観察する。
あいつ、お子様だし…
「あははっ。衣は僕たちと同じ高校二年生だけど、中身はあの子たちと同じくらい幼いからね。」
と、国広が言う。
「隣、良いかな?」
「あっどうぞ…」
あたしは、少し体をずらして隣にスペースをつくってあげた。
「君は今日何してたの?」
国広が尋ねる。
「今日は部活が休みだったから保育園に妹を迎えに行って、今はその帰り」
「そっか、妹さんの面倒を見てあげてるんだね。偉いなぁ」
「いやいやぁ。そんなことないし…国広さんは?」
「僕は、衣が急に外に遊びに行きたいって言いだしたから、その付き添いだよ」
「んっ?天江とは一緒に住んでるのかっ?」
「ああ、実はそうなんだ。僕は透華の専属メイドとして、龍門渕家に住み込みで働いてるんだ。衣も一緒に住んでいるから、それで今日は一緒についてきたわけ」
にゃ、にゃんだって?
住み込み?メイドっ?!
あまりにも未知な世界過ぎて、あたしの脳内はハテナマークでいっぱいに…
「あははっ」
という国広の声にハッとして我に返る。
「まぁ、急にこんな話をしても驚くよねっ」
「う、うん…何がなんだかさっぱり…」
「僕はね…」
そこから色々な話を聞いた。中学生の時に龍門渕家に引き取られ、天江と麻雀で戦わされて、負けてそのままメイドになったことや、普段はお屋敷でそのメイドの仕事をしていること。
天江のお世話も仕事の一つだということ…
「な、なんだか凄いな…」
「そんなことないよ」
いやいや…
まだ中学生なのに、家族と離れて住み込みで働くとか、あたしには絶対に考えられないし…
とても同い年とは思えない、芯の強い子だなと思った
「そういえば君…」
「んっ?」
「僕にはさっき、君が落ち込んでいたように見えたけど気のせいかな…?」
「あ…それは」
私にとってこの子は敵だけど、何だかこの子には話を聞いてもらいたくなり、落ち込んでいた理由を全て話してしまった。
「そっかぁ」
「うん…」
「まぁ、敵だった僕が言うのもなんだけど、衣は不思議な力を持っているからね」
「確かに…」
あのハイテイの出現数は異常だった。
「でも、衣も麻雀の時は少し性格が悪くなることもあるけれど普段はあんな感じに無邪気に遊ぶ、普通の女の子なんだ」
「子供みたいだし…」
「あははっ、そうだね」
あたし達は笑い合った。
その時、すっと手に温かい何かが触れる。
「にゃっ?!」
見ると、国広が私の手の上に手を重ねていた。
そして、少し上目遣いになりこう言う。
「だから、元気だしてっ。ね?」
「ひゃっはいっっ!!」
見事に声が裏返った。
にゅあああっ!こいつ、可愛いしっ…
そして心臓がばくばくうるさいし…!
止まってくれえ…
にゃはははは…
今の華菜ちゃんは放心状態だにゃあ…
「おい、風越!」
にゃっ?
呼ばれて我に返る。
「衣は、この妹達と友達になった。また遊ばせてもらえるか?」
「お姉ちゃん!」
「この人とお友達になったしっ」
「また遊ぶしっ」
「あははっ。いつの間にかすっかり仲良くなったみたいだね。迷惑じゃなかったら、また遊ばせてもらえるかな?」
「お、お安いごようだし!」
「そっか、ありがとう。じゃあ君の連絡先、教えてもらっても良い?」
「よっ喜んで!」
「またなー!風越ーっ」
「またね、池田さん」
あたし達はあの二人と別れの挨拶をし、再び家に向かって歩きだした。
そして、国広とお喋りをしていたら、一時間はあっという間に過ぎていた。
楽しかったなぁー
自然と顔がほころぶ
「お姉ちゃん何笑ってるの」
「変だし」
「気持ち悪いしっ」
いつもなら、言われたらカチンとくる言葉だけど、今の華菜ちゃんは何を言われても平気だしっ
「家に着いたら国広にメール送ってみようかな」
きゃうう。楽しみになってきたし!
「おい、おまえらっ家まで競争するぞ!」
よーい、どん!
「ええぇー?」
「待ってよお姉ちゃん!」
「早いし!」
にゃはははっ
あたしは夢中で走りまくった。
最終更新:2009年10月23日 15:53