菫→照咲の続編をやっと書き上げたので投下させていただきます。
今回のは前作「後悔」
>>226
の、照視点で、照の心理描写が中心になっています。
エロ無しですが、中盤に少しだけ似たような描写が入っていますので苦手な方はご注意下さい。
360 :「後悔」 照視点1:2009/11/02(月) 00:44:45 ID:G3xQ8O3E
「うるさい…早く止まってよ」
夜6時頃。
私はベッドに座り、テーブルの上でブルブル震えているケータイをぼうっと眺めていた。
背中は汗でびっしょり濡れていて、なんだか気持ち悪い。
数十回くらい、振動し続けてから、ようやくピタリとケータイの動きが止まり、安堵の溜め息を吐く。
ついさっき…
私は無理矢理、菫に襲われた。
「痛っ…」
そのシーンを思い出そうすると、ズキッと頭に衝撃が走る。
どうして…
どうして、こんなことになってしまったの?
私はゆっくりと、今日一日のことを振り返ってみる
―― まず、朝
学校について、教科書を机に入れようとした。
そしたら、なぜか教科書が奥まで入らなくて、どうしたのかと、手を入れて中を確認してみた。
そしたら、黒くて小さな箱が出てきたのだ。
「え、なにこれ…」
全面が真っ黒で文字も何も書かれていないそれは、私にとって、なんだかとても気味が悪いものだった。
間違いなく、誰かのいたずらだろうな。
もし、開けてみてとんでもないものが入っていたら…
そんなことを想像してしまい、鳥肌が立つ。
だから、私はそれを持ってトイレにあるごみ箱にそのまま捨てたのだ。
そう。
何もためらわずに捨ててしまった。
その後は、久しぶりに菫とお茶でもしようかと思い、放課後に家に誘い、いたずらの事なんてすっかり忘れて、お喋りを楽しんでいた。
でも、お喋りの途中で、何故か菫の顔が険しくなり、どうしたのかなと思っていたら、その後に衝撃的な事実を告げられた。
なんと、あの黒い箱は、私への誕生日プレゼントだったと言うのだ。
まさかあれがプレゼントだったなんて、思いもしなかった…
私は正直に、捨ててしまったことを伝えて謝った。
けれど、もちろん許してもらえるわけもなく、更に菫の怒りを爆発させてしまうことに。
挙げ句の果てには、肩に手を置いたら「触るな」とまで言われてしまった。
菫は私にとって、とても大切な親友だ。
もし、これが原因で縁が切れるなんてことになったらどうしよう…
それだけは絶対に嫌だ。
「何でお前、あの時私と体を重ねたんだ?」
菫にそう言われて私はハッとして、去年の記憶を蘇らせる。
そうだ
私はあの時、菫にその気があった訳でもないのに、セックスをしてしまった。
いや、菫のことは好き。
でも、あれは恋愛感情ではなかった。
自分でも、どうして好きでもない相手と体を重ねられたのかが分からない。
たぶん、私はあの時…
まだ咲と仲直りをしていなかった。
だから、心の中にぽっかりと穴があいていたんだと思う。
もし菫と体を重ねたら心が満たされるのかな。
そんなちょっとした好奇心で私は、菫を受け入れてしまったのだ。
でも、結局私の心が満たされることは無かった。
やっぱり、咲じゃないと無理だったんだ。
自分の中で、そう答えが出ていたにも関わらず、その後も断ってゴタゴタになってしまったら面倒だな、という理由だけで、菫と体を重ね続けてしまった。
あの時の自分の浅はかな思考に、今はとても後悔している。
菫は本気で私のことを好きでいてくれたというのに。
そして、今も。
「本当にごめんなさい…どうしたら許してくれる?」
私は、もどかしい気持ちでいっぱいになり、泣きそうになるのをぐっと堪えて、菫に尋ねた。
許す、許さないの問題ではない事くらい分かっている。
けれど、去年の告白といい、今日の誕生日プレゼントの事といい、せっかくの菫の好意を私は二度も踏みにじってしまったのだ。
悪気があった訳ではないけれど、全ての原因は私にある。
だから、もし何かをして許してもらえるのなら、どんなことでもしようとこの時は覚悟を決めていた。
だけど…
菫の口から出た答えは私にとって、とても過酷なものだった。
「じゃあ、お前を抱かせろ」
その答えを聞いて、私の頭の中は大きく揺れ動く。
菫とはもう関係を持たない。
そう決めていたはずなのに…
でも、今これを断ったら、これから先、もう菫と笑って話をすることも無くなってしまうかもしれない。
結局、私は最低な人間なんだ。
嫌われるのが怖くて、菫を失うのが怖くて、もう一度体を重ねることで許してもらえるなら、と了承をしてしまった。
去年のあの時、しっかりと告白を断らなかったのが今となって仇になってしまった。
ふわっと、頭の中に咲の顔が一瞬浮かんだような気がした。
咲…お姉ちゃん、情けない人間で本当にごめんね。
心がズキズキと痛む。
私が菫に返事をした途端に、腕をグイッと凄い力で引っ張られベッドに押し倒されてしまった。
それから徐々に、制服を脱がされていき、唇、首筋、胸へと…私の体のありとあらゆる箇所に菫がキスをしていく。
「んんっ…」
思わず、声が出そうになるのを私は目を瞑り、必死に耐えた。
どうしよう…
下腹部がだんだん熱くなる。
こんな状況でも、濡れてしまうなんて…
どうして菫にその気が無いのに勝手に反応してしまうんだろう。
これを菫に見られたら、私が感じているんだと、勘違いさせてしまうかもしれない。
「あ…っ」
菫の手が、だんだんと秘部に近づいてくるのが分かった。
やだ…やだよ
見ないで…お願いっ…
ちょうど、太ももの付け根あたりに菫の指が到達した頃
目の前がフッと真っ暗になり、私は気を失ってしまった。
―― そして、今に至る
目が覚めたら、菫はもう居なくなっていてた。そして私はちゃんと服を着ていた。
菫が着せてくれたんだね…
汗を拭いてくれたのか、枕元にはタオルが置いてある。
気を失っていたのは、多分一時間くらいかな…
結局、私は菫に最後までされてしまったんだろうか。
意識が無かったから、分からないけど。
でも、抱かせろなんて言うくらいだから、きっとされたんだと思う
さっきの電話の着信は菫からなんだろうな。
まだ確認はしていなかったけど、今は頭がぼーっとして何もする気になれない。
「あ…痛っ…」
また頭に衝撃が走る。
咲、本当にごめんね…
このことを咲が知ってしまったら、どんな顔をするんだろう。
今度こそ、嫌われちゃうかな…。
そう考えると、とても悲しくて辛い。全て、私が悪いというのに。
汗で体がぎとぎとしていて、気持ち悪い。
早く綺麗にしないと…
そう思って私はシャワーを浴びた。
だけど、体を洗っていても気が付くと、さっきのことを思い出していて手の動きが止まってしまう。
明日から、菫とどんな顔をして会えば良いの?
普通に接することなんてできるのかな。いや、出来るわけないよね。
いっそのこと、さっきのことを全て記憶から消せれば何事も無かったかのように話が出来るんだけど…
「あっ…そっか」
記憶が無くなった事にしちゃえば良いんだ
あまりにも幼稚で、馬鹿げた考えだとは自分でも分かっている。
でも、本当にさっきの事は一切覚えてないっていう態度をとって、いつものように接すれば…
さすがに菫も信じてくれるかもしれない。
だって、何事も無かったかのような態度を私がとっているのを見たら、記憶を無くしてしまったと思ってもおかしくないはずだから。
あんなこと、一晩寝て忘れる訳ないし…
「うん…そうしよう」
菫とはこれからも友達で居たいから。
私が記憶を無くしたことにすれば菫もきっと、内心ホッとするはず。
ちょっと、無理がある話だけどお互いの為にもそれが一番良い選択肢だと、私は結論をだした。
あとは明日、私が上手く演技をするだけ。
いつものように、菫と会話をしてれば良いんだ。
うん
そうだよね…?
―― そして翌日
昨日は結局、全然眠れなかった
かろうじて、二時間ってところだろうか。
何回も何回も頭の中で、今日のイメージトレーニングをしていたから。
上手くいけば良いんだけど…
靴箱を確認すると、菫はもう学校に来ているみたいだった。
教室のドアの前で、一度大きく深呼吸をする
そして、意を決して中に入った。
あっ、居た…
菫が席に座っている。
「菫、おはよう」
「あ…ああ、おはよう。
なあ…昨日のことなんだが…」
「ああ、昨日ね。電話くれてたのにごめん。あの時まだ寝てたんだ」
「いや、それは良いんだが…お前、怒ってないのか?」
「え…何が?」
「何がって…お前、まさか昨日のこと覚えてない訳じゃないだろうな?」
「え…菫がうちに遊びにきて、私が途中で寝ちゃったんじゃないの?あのタオル、菫が置いてくれたんでしょ」
「タオルを置いたのはそうだが…
なぁ、昨日私がしたこと怒ってないのか?」
「……菫、なにか私にしたっけ?」
「えっ…?」
やっぱりね
完全に菫が動揺している。無理もないか…
でも、ごめん。私はこのまま嘘を突き通すよ
「なあ、照。先週の金曜にお前の妹がこっちに来たの、覚えてるよな?あの日は本当に良かったな」
突然、こないだの話を振られた。
きっと、他に私が忘れていることが無いか確認のためだと思う。
予想外の質問に、少し戸惑ったけど、忘れたのは昨日の事だけにしておかないと、更に話がややこしくなっちゃうよね…
私は頭をフル回転させて、菫の質問に答えた。
「うん、咲が来たね。でも急にそれがどうかしたの?」
「ああ…いや、あの時のお前が凄く楽しそうだったのをふと思い出してな」
「そっか。」
「ああ…」
その時、チャイムの音が響いてきた。
「あっチャイムだ。それじゃあね、菫」
「ああ…」
私は菫に挨拶をして、自分の席へとついた。
あのタイミングでチャイムが鳴ったのはちょうど良かったかもしれない
これ以上質問をされずに済んだのだから。
それにしても…
菫、相当驚いてたな。
普段はあまり感情を顔に出さない彼女だけど、明らかに動揺していたのが分かった。
まあ、当然の反応だと思うけど…
昨日の怒った顔といい、この二日間で私は様々な彼女の表情を見た気がする。
それは、どれも初めて見るものだった。
三年近くも一緒に過ごしてきたと言うのに、まだまだ知らない事ってたくさんあるんだな…。
そして、この後はお互いに昨日の話には一切触れず、学校が終わった後も、いつものように菫と駅まで一緒に帰り、私は家路へと着いた。
自分の部屋に入ると、今まで張り詰めていた緊張がとけ、疲れが押し寄せてきた。
どさっとベッド倒れこむ。
うまく、いったんだよね…?
菫に、嘘をついた罪悪感と、それと同時に安心感もあり、その二つの気持ちが複雑に絡み合うようで、なんともいえない気分になる。
結局、菫との今までの関係を壊してしまうのが嫌で、私は正面から向き合うことに逃げてしまったんだ。
自分の事がとても臆病で、ずるいと思った。
ほんと、最低だ…
しばらくの間、私は制服を着替えもしないで、ただただボーっとして、ベッドに横になっていた。
ブーーーッ
ブーーーッ
ブーーーッ
気が付くと、かばんの中で携帯が震えていた。
振動パターンが電話の着信だったので、菫からかもしれないと思い、慌ててかばんから携帯を取り出す。
だけど…
「…………………」
画面に表示されている名前を見て、私は体が硬直してしまった。
電話は、咲からだったのだ。
「咲…」
どうしよう…
声が聞きたい。
でも、話すのが怖い。
親指で通話ボタンの上をなぞる。
でも、押せない…
「あっ…」
そうこうしている間に、電話が切れてしまった。
「咲、会いたいよ……」
ブーーーッ
ブーーーッ
再び、私の手の中で携帯が震え始めた。
反射的に体がビクッと震える。
「…………………」
変に緊張して、おそるおそる通話ボタンを押し、耳に携帯をあてた。
「もしもしっ!お姉ちゃん?」
明るくて元気な声が聞こえてきた。
でも、自分の声が上手く出せない。
「あれっ…もしもしっ?」
「…………………た……いよ」
「えっ、なあに?」
「……………あ…いたい」
「お姉ちゃん…?どうかしたのっ…?」
「咲………会いたい…よっ」
無理だとは分かっていても、無性に咲に会いたかった。
会って、咲を抱き締めて温もりを感じたい。
「お姉ちゃん…泣いてるの?」
咲にそう言われて、頬に涙が伝っていることに気付いた。
私、泣いてたんだ…。
泣いている事に気付いたら、余計に悲しくなり涙が溢れてきた。
うっ…うっ、と喉がつっかえて息苦しくなる。
電話越しとはいえ、こんな声を妹に聞かせてしまう自分がみっともない。
「おっお姉ちゃん!?大丈夫っ?何かあったのっ?」
「ぅっ…うっく……ほん…とにっ…ご…めん…」
「……お姉ちゃん、今日お母さんは?」
「ぅっく………や、夜勤っ…」
「分かった。じゃあ今からそっちに行くね」
「…………えっ?」
突然の言葉に驚いた。
こっちに来るだって…?
「でも、ちょ、ちょっと…まって…っ…明日学校あるでしょっ?」
「あるけど、学校なんかよりお姉ちゃんのほうが大切だからっ!それに、朝一の電車に乗れば午後の授業には間に合うよ」
「……ほんとにいいの?」
「当たり前だよっ!今から出かける用意するから待っててね!後でまた連絡するからっ」
「う、うんっ分かった…」
「じゃあ、またあとでねっ」
ピッ― 電話を切り、放心状態になる。
今、何が起こったの…?
咲が私に会いに来てくれる、だって…?
「どうしよう…」
すごく嬉しい。
いつの間にか、涙が止まっていた。
でも…
菫とのことを話したらどうなるんだろう。
やっぱり嫌われる、よね…
そう考えたらまた頭がズキッと痛くなってくる。
鏡を見ると、ひどい顔になっていた。
目が赤くなっていて、ぼってりと腫れている。
とりあえず、今はしっかりと咲と向き合わなくちゃ。
菫とのことも正直に話そう。
それで、もし咲に嫌われてしまっても全ては私が悪いんだから仕方がない。自業自得だ。
私は腫れをひかせる為に、タオルを冷たい水で濡らして目にあてた。
あ…ちょっと気持ち良いかも。
そのままベッドに仰向けになって寝転がった。
咲が東京に着くまでは、まだまだ時間がかかる
私は、少しの間このまま横になって時間をつぶすことにした。
咲、ありがとうね…
そして、こんな情けない姉でごめん ――
最終更新:2009年11月03日 14:22