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382 :「変化」 1:2009/11/02(月) 11:29:26 ID:G3xQ8O3E
「おーい!むっちゃんせんぱーいっ?」
「…あっ、ごめんごめんっ」

東横さんに声をかけられて、はっと我に返り牌を切る。

「あっ!それ、ロンです」
「あ…」
「あーあ。むっちゃん先輩、やっちゃいましたね…」

しまった…。ぼーっとしていたら、妹尾さんに振込んでしまった。

なんで、ぼーっとしていたのかと言うと…。
私の可愛い彼女のことを、考えていたからだ。
先輩達が引退して、私が新部長を任されたというのに、全く情けない話だ。

「睦月ちゃん、ぼーっとしちゃって、どうかしたの?」
「いや…なんでもないっ。」
「そう…?」
「うん…」
「むっちゃん先輩。今日はもう、このへんでお開きにしませんか?時間も時間ですし」
「ああ…そうだね」

東横さんに言われて、私達は部室の片付けを始める。

「では、お先に失礼しますう」
「お疲れ様です、かおりん先輩!」
「また明日ね、妹尾さん」

片付けが終わって、妹尾さんが先に帰っていった。
でも、もうやることは何もないのに何故か東横さんは一向に帰ろうとしない。

「東横さんも、もう帰って良いんだよ?」
「むっちゃん先輩…」
「はい?」
「さっきボーッとしてたのは、ずばり、恋っすか!?」
「うわあっ…!」

急に東横さんが、ぐいっと私に迫ってきて驚く。

「え…ええと、その…」
「恋なんですねっ!?」
「んんー…。まあ、そうなるかな…?」

やっぱりーっ!と、彼女が言う。なんだかテンションが上がっているようだ。
ニコニコと嬉しそうに、笑顔を私に向けてくる。
そう言えば、東横さんは加治木先輩とそうゆう関係だったんだけ…。


「でっ!相手は誰なんすかっ?この学校の人ですか?あっ!もしかして、かおりん先輩だったりして…!」

 へっ…?

「いやいや、ちょっと待って!全然違うから…っ」

全く関係の無い人の名前を出されて、少し焦る。
何故彼女はこんなにも興奮しているのだろう…

「ええーっじゃあ誰なんですかっ?教えて下さいよっ」

むむ…。困ったな。このまま黙ってたら、明日も明後日も永遠に追及されそうだ。
私は彼女に聞こえないように、小さくため息をつく。
あんまり、自分の恋人の話をペラペラと口に出すのは気が乗らないけど…。
しょうがない、少しだけなら良いかな。

「夏の大会で個人戦に出てきた南浦さんって覚えてる?」
「なんぽさん…?ええっと…。あっ!あの、途中までは三位だった南場から異常に強くなるって噂の人っすか?」
「うん、そう…東横さんと同じ一年生だよ。」
「へーっ…そうなんですか。他校の人だったんですね。意外っす。もう告白はしたんですか?」
「うん。一応、今は恋人ってゆうか、お付き合いしてることになるかな…」
「きゃーっ!素敵っす!写真とか無いんですかっ?」
「ええー?無いよ…」
「そうですか…残念。」
「東横さん、なんだか今日はいつもよりテンション高いよね…」
「そりゃあ、恋バナともなると熱くなりますよーっ」
「そ、そうなんだ」

ランランと目を輝かせている彼女を見て、本当にそうなんだなと思った。

「ところで、むっちゃん先輩はもう、その彼女さんとエッチなことはしたんですかっ?」
「……え?…ええっ!?」

ずいぶんストレートに質問をしてくるな…。普通、そういった話は他人にはしないものなんじゃないのかな…。
よく分からないけど。

でも、さすがにこれ以上、私の可愛い彼女の話を一方的にする気にはなれない。
ましてや、夜のことなんて…。

「東横さん…時間も遅いし、とりあえず学校を出ない?」
「あっ、それもそうっすね…」

しかし、なんとか学校を出たのは良いけれど、東横さんとは途中まで帰り道が一緒のため、早速さっきの会話の続きが再開されてしまった。

「でっ………えっちな事はしたんですか?」


道にはポツリ、ポツリと、まだ学校の生徒が数人歩いていて、少しは気を使ったのか、こんどは小声で質問してきた。
だけど…参ったな。

「その前に…。東横さんは、どうなの?」

加治木先輩は同じ学校の人だ。さすがに、私と面識のある人の話はしないだろう。
私は、それは言えないっす…と返事を返されるのを予想して、なら私も言えないよ。と、答えるつもりだった。

「先輩のことっすか…?」
「うむ。」
「……………」

急に、静かになる。ほら、やっぱり言えないよね。

「先輩は…すごく、上手っすよ…?」
「えっ……?」

まさか、話すんですかっ?

「でも、私も攻めるのが好きなんで…最近は先輩に受けに回ってもらってるっす…」
「へえ、そうなんだ…」
「先輩の声、可愛いんですよっ。いつもはあんなに凛々しくて格好良いのに…あの甘い声とのギャップがまた、最高っす!」

はあ…加治木先輩…。
東横さんが私にこんなことを話しただなんて知ったら、もう私と喋れなくなるんじゃ…
そう思うと、少し先輩に同情してしまう。
でも、この二人は性格が全然違うのに、誰が見ても分かるくらい仲が良い。
先輩は、そう簡単なことでは怒ったりしないんだろうな。

「で…っ!」
「はい…」
「むっちゃん先輩はどうなんですか?」

また、ニコニコと可愛らしい笑顔をこちらに向けてくる。
聞きたかった訳じゃないけど、加治木先輩の話も教えてもらったことだし、これで私が話さなかったら、やっぱり不公平になるよなぁ…。
はぁ…しょうがない。


「私は、こないだ二人で温泉旅行に行ってきたんだ。その時にちょっとだけ…ね。」

あの時の数絵の姿を思い出して、顔が熱くなる。
数絵…本当に可愛かったな…。

「へえー…。宿泊先でしちゃうなんて、むっちゃん先輩もなかなかやりますね…っ」

ニヤニヤと、東横さんが私の顔を見つめてきた。

ああ、恥ずかしい。もう嫌だ…。

その頃、ちょうどタイミング良く私達は分かれ道へと着いた。

「はい!この話はここまでです。私はこっちだから、また明日ね」
「ああーっ。もう着いちゃったっすか…残念っ」
「うむ。もう暗いから、気を付けて帰ってね」
「はーいっ。それではまた明日っす!」
「うん、またね」


 ふう… ――

やっと、解放された…

しかし、驚いたな。普段は静かで存在感も薄いのに、恋愛の話となると、あんなに変わるものなのかな…。

東横さんと数絵は、同じ一年生だけれど数絵は東横さんに比べたら、やはり少し大人びて見える。


東横さんと別れてから、何分か歩いて駅に到着し、私は電車に乗った。

そして電車に揺られながら、個人戦が終わった後のことを思い出す。

そう言えば、数絵とこの電車の中で再会したんだっけ。
なんだか懐かしいな。

椅子に座って本を読んでいた彼女。
その姿は、私より年下とは思えないくらい大人っぽくて、そして、美人だなと思った。


彼女と会ったのは、あれが二度目だったけれど、正直に言うと一目惚れに近いものだった。
もっと、彼女のことを知りたい。そう思って、気が付いたら連絡先を聞いていた。

その後は、もう無我夢中だった。
なんとか二人で会う約束をとりつけたり、メールや電話もたくさんした。
彼女のことを、知れば知るほど、可愛いと思った。そしてどんどんと惹かれていったのだ。

ほんと、思い切って告白して良かったな…

その時のことを思い出して、私は少し感傷的になる。
数絵、今なにしてるかな…。

何だか無性に数絵の声が聞きたくなり、電車が駅に到着してからは、少し早歩きで家へと帰った。

家に着き、すぐに自室にこもって私は早速、数絵に電話をかけてみる。

プルルルルッ――
プルルルルッ――

コール音を聞いている時の、ちょっとした緊張感も、電話をする際の楽しみの一つだ。

「はい…もしもし」
「あっもしもしっ…こんばんは」
「ふふっ…こんばんは。どうかしたんですか?」

電話越しに聞こえる彼女の声が、とても愛しくてたまらない。

「数絵…大好きだよ」
「……………………………」
あっ、黙っちゃった。
今頃、顔を真っ赤にして恥ずかしがっているんだろうな。
安易にその姿を想像することが出来て、なんだかちょっと可笑しくなる。

「もしもーし、数絵さーん?聞こえてますか?」
「き、聞こえてますよ!電話をかけてきたと思ったら、いきなりそんな事を言うなんて…。びっくりするじゃないですかっ!」
「あははっ。怒らないでよ。」
「怒ってません…」


はあ…
ほんと、可愛いな。

「大好き…」
「……わたしも…です」
「うん、ありがとう。」
「あの、睦月さん」
「ん?なに?」
「次の土曜日、私の家に遊びにきませんか?夕方までなら両親が出かけていて居ないんです…」
「あっ本当に?じゃあ行こうかな」
「はい、是非。」

その後は他愛もない話を少しして、これから夕食だからと、言われて電話を切った。

数絵から私を誘ってくれるなんて…。嬉しいな。
以前までは、私ばかりが彼女を誘っていたけれけど、今は違う。
ちゃんと、彼女の方からもデートなどに誘ってくれるようになった。
そういった、些細な変化に気付き、嬉しくなるのも恋愛を楽しいと思う内の一つなんだろう。

でも、数絵は自分が積極的になれるようになったのは私のおかげだと、前に言っていたけれど、今考えればそれは少し違うかもしれない、と思う。
だって、それは数絵自身が努力をして克服したものなのだから。
こないだの温泉旅行の時。勇気を出して私と…したいと言ってくれたのは本当に嬉しかったな。
あの日、私達はお互いを感じて、再び愛を確かめあったんだ。

まぁ、まだまだ恥ずかしがり屋さんに変わりはないのだけれど。
でも、そこがまた愛しい。
可愛いくて仕方がないのだ。

はぁ…まただ。
気が付いたらこうやって、数絵のことばかり考えている。
部活では対局に集中するように、もっと部長らしく、頑張らないと…。


でも…土曜日、楽しみだな ―――

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最終更新:2009年11月03日 14:29