421 名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/11/04(水) 13:40:38 ID:fZlF5ikc Be:
『 ツイン=カプセル :*』
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暗闇。目の前の四角が唯一の、。こんな生活を続けてどれ位になるだろう。
暗闇の中、辺り一面の、黒。その中で私は独りぼっち。
不自由ではない。寂しさなど感じない。私はミズカラススンデココニイルノダカラ
毎日毎日妬み、暴力。騒いで喚いて。五月蝿い。よく飽きない。
周りはそんな真っ黒で下らぬ人間ばかり。コミュニケーションを取る義理も無い。
あぁ五月蝿い・・・五月蝿い。
必要最低限のお金は自分で稼ぐ事が出来ていた私に他人は必要としなかった。
ドス黒い外敵から身を守る為私は漆黒を纏う・・・。黒で黒の侵入を制し、
シャットアウトせよ他の全てを。ココは私の憩いの場。
何人たりとも踏み入る事の出来ない。何人たりとも侵入する事を許さなかった
私の絶対のテリトリー。
でも、それはある日唐突に破られた―――。
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突然の白に私は何が起きたのか、理解するのに若干の時間を要した。
何者かが私のテリトリーを破ったのだと悟ると、私はトビラを見た。
その人は、ノックもせずに扉を勢い良く開け放った後、
中堂々と仁王立ちしていて、吹き荒れる風にシルエットが靡いていた。
眩いばかりの光に私の黒は抵抗する間も与えられずに塗り替えられる。
人と関わる事が嫌いな私は急に現れた嵐を不快に思うはずだった。
しかし逆光の中で、姿を明白に確認出来ないその人の、両目の力強い眼差しが
ハッキリと私の心に届いた。この私―――沢村智紀に。
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「私について来なさい。」命令形でそれだけ言うと、
その人は手を差し出した。
その時の私は、思考回路が停止していた様に思う。
躊躇いも無く差し伸べられた手に、自らのそれを重ねた。
そして私は真っ白な光の世界に連れ出された。今まで均衡を保ってきた、
保たせてきた私の世界は、光の世界と比べるとほんの小さなものに過ぎなかった。
凍える様な灰色の空は、いつしか温かい桃色が舞う青へと変わっていた。
両親に家を出ると告げると、こちらを見もせず興味なさそうに了承した。
そしてまた罵りの言葉を交し合う。私は早急に荷物を纏めて家を去った。
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外へ出ると家の前に白いリムジンが1台止まっていた。
運転手らしい男性がこちらに気付き、「お待ちしておりました。沢村様。」
と私を中へ案内する。普通の人では無いだろうと思ってはいたが
まさかお嬢様だったとは。物好きなお嬢様もいたものだと私は思った。
車の中へ入ると先程のお嬢様とは向かい合うかたちで座る。
「早かったですわね。」「ええ。」別れを惜しむほどの場所でも無かった。
「ハギヨシ。帰りますわ。」「畏まりました。透華様。」
運転手の名前ははぎよしと言うらしい。お嬢様はとうか、か。
「それで、突然私に何の用?」「申し遅れましたわ。私龍門渕透華と申します。」
龍門渕。地元で幾つか施設を経営している、海外への顔も広いと聞く龍門渕グループの。
「ますます分からない。私に何をさせようと?」「麻雀。」
「麻雀?」「ええ今大流行中の麻雀ですわ。」
何の事は無い。ただの流行に流される軽率なお嬢様だったか。
「お断りします。送り返して下さい。」「貴女はあそこに戻りたいんですの?」
「!」・・・この人・・・。「まぁ、お待ち下さいな。」
「麻雀はあくまで只の手段。貴女にはお友達になって頂きたいんですの。」
「貴女の?」ますますとんだお嬢様。付き合いきれない。私は失望の念を抱いた。
・・・失望?失望するということは希望が有ったという事。私はこの人に、
何を期待していたというのだろう。でももうそんな事はどうでも良い。独りに帰りたい。
「いいえ。違いますわ。」「?」
「私の従姉妹の。ですわ。」「貴女の従姉妹?」
「智紀さん麻雀は出来ます?」「ルールは一通り。」
「なら問題有りませんわ。ルールを知っていようがいまいが変わりはしませんけれど。」
「どういう?」「私の従姉妹に会ってみれば分かりますわ。」
龍門渕のお嬢様はまるで人を試す様な微笑をもらした。なるほど、これは挑戦。
物好きなお嬢様の挑発に乗ってみるのも悪くない。
一体何が起きるのか、私は興味を注がずにはいられなかった。
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龍門渕の屋敷へ着くと私は離れた別館へと連れられた。
錠で閉められた扉が幾つも行く手を阻んだ。まるで中と外の交流を絶つみたいに・・・。
「ここに?」「ええ。お父様も酷いでしょう?私の目標はあの子をここから出す事ですわ。」
透華に、私の世界を打ち破った時の眼差しが戻る。
・・・こんな所に閉じ込められている子は一体どの様な人なのだろう。
やっと最後の扉を抜けると、雀卓と縫い包みの置かれた広間に出た。
「よぉ。遅かったな。衣寝ちまったぜ。」そこには男?と子供がいた。
「衣は寝過ぎですわ。困りましたわね。」「あの子が?」
「従姉妹の天江衣ですわ。」「オレは井上純。よろしくえ~、と?」
「沢村智紀。」「ともきか。ちょっと待ってくれ、衣起こすから。」
「お~い衣!起きろ!」「む~。何だうるさい。」「お友達を連れてきましたわ。」
「友達?」天江衣が私を上から下まで眺め回す。「衣の友達?否。お前が次の贄か?」
その瞬間、激しい閃光が走った様に思えた。・・・今のは?
「では、さっそく始めますわ。」「おう。」「フフ。」「・・・・・・。」
そうして私は、一生で忘れることの出来ない、
永く永く、抜け出す事の出来ない悪夢の様な麻雀を体験した―――。
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「如何でした?」「・・・・・・。」対局を終えて私と透華は、外の風通しの良い場所へと出た。
「信じ、られない。」「でしょうね。」
「運が良いというレベルじゃない。有りえる事?」「有り得ませんわ。」やはり。
「分かったでしょう?何故衣があそこに居るのか。」コクリと頷く。
あの子の友達。難しいだろう。人は自分の理解を超えた存在に本能的に恐怖してしまうものだ。
そして存在を否定して閉じ込めて知らぬ顔で過ごしていく。
「あの子の友達になれるのは、同じ力を持つ人・・・」「ええ。違いありませんわ。」
「衣と同じ種類の人間がこの世界に何人居るのか、或いは衣一人しか居ないのか。」
「それでも必ず見つけ出してみせますわ。」また、あの目だ。
「分かっているのに何故?」自分をここへ呼んだのか。
私は麻雀で活躍した実歴は持ち合わせていないのに。
「貴女なら衣の良い理解相手になると思いましたの。」「理解?」「ええ。」
私が衣の理解相手になれる?「何故?」そう思うのかが分からない。「だって貴女―――」
透華は私を見据える。「ずっと衣とオナジトコロに居たじゃありませんの。」
「!!?」・・・暗闇。独り、きり・・・。でも、
「私は自分から。」衣の様に閉じ込められたのではない。
「いえ、違いますわ。貴女も環境によって閉じ込められた。」「?!」
「環境によって閉じ込められると人は自分で更に閉じ篭る。
そしてあたかもこれが最善なのだと他者を締め出す―――同じですわ、貴女も衣も。」
月光を浴び、輝かしい光を放つ金の髪が、風に靡いていた。その視線はしっかりと私を捉えたまま。
「私達には貴女が必要ですわ。」「・・・・・・。」
「私達の仲間になるのか、あそこに戻るのか、二つに一つ。今ここで決めて頂きますわ。」
・・・この人達の力になれるかは分からない。でも、私を必要としているのなら、悩むまでも無い事。
「よろしく。」私は手を差し出した。透華はそれに微笑むと「良いご返事、ありがとうございますわ。」
私の手をとった。二人の間に風が吹き抜ける。
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「ところで。」「何ですの?」本館へと戻る道の途中で私は透華に声を掛けた。
「どうしてそれ程までに衣の事を?」明らかな執着、あの眼差し・・・
気にせずにはいられなかった。何故気になるのかは自分でも分からなかった。
従姉妹を気遣っている、というだけの思いとは思えなかった。
私が質問を口にすると。透華はその場に立ち止まった。私は透華を顧みる。
「私はただ、衣の本当の笑顔がもう一度見たい。・・・それだけですわ。」
「!」今まで以上の、こちらの心をも貫きそうな眼差しで、
それだけ言うと透華は、前を見通したまま私を通り過ぎて行く―――。
私はただその背中を見つめる事しか出来なかった。
その背中は、悲しみの色が滲んでいて・・・そして綺麗だった。
「・・・・・・。」
他人の為に本気になれる。この人はそんな人なのだと直感した。私が今までに知らなかった人・・・。
ずっと知りたかった人・・・。その時、
その人の消える様を見つめながら私は確かな鼓動の高鳴りを感じた―――
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「沢村智紀様ですね。お待ちしていました。」
本館の入り口に着くとメイド服を着た女の子が出迎えてくれた。
「私、こちらでメイドをしています、杉乃歩といいます。これから宜しくお願いします。」
「よろしく。」お喋り好きなメイドの様だった。
「荷物は部屋に運ばせていただきました。それではお部屋にご案内しますね。」
「ありがとう。」
部屋へ案内するとメイドは他の仕事に戻って行った。私はこれから自分の部屋となるそれを見渡した。
ベッド、机、椅子、タンス。それから壁に洋画が飾ってあった。トイレ、バスルームは無かった。
部屋にこだわりを持つタイプでは無いので、特に悩まずそのまま荷物をタンスへ詰め込む。
元々荷物といっても数枚の衣類とノートパソコン。洗面用具位しか持っていない。
だから部屋の風景が変わったのは机の上に置かれた愛用のパソコンだけだった。
さて、これから私はここで生活をする。あの息苦しい空間から抜け出した。
透華が、連れ出してくれた・・・。
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それから私の新生活が始まった。龍門渕家の中校へ通い、授業が終わった後は専ら衣の所に集った。
私達の麻雀の力は、衣と打っているお陰か、日に日に上達していった。
それでも衣が私達に心を開く事は無く、衣の新しい友達を連れてきても皆逃げ帰るだけだった。
そんな事態に、透華は悩んだ。
友達をみつけるまでには至らなくても、私達の仲間になれる人が後一人欲しかった。
しかし衣の打ち筋はますます凶悪なものになるばかりで誰も残ろうとはしなかった。
衣は、明らかにこれ以上の他者を排除しようとしていた。
そんな中、透華は仲間になりうる存在を毎日寝る間も惜しんででデータと睨めっこしていた。
授業の最中も、食事の時も・・・。衣が大切なのは分かる。でも私は透華にも身体を労わって欲しかった。
透華を手伝ってやる事も多々あるけれど、透華は少しも休もうとはしなかった。
休むように声を掛けても生返事を返すだけだった―――。
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そしてある日、透華は急に叫んだ。
「この方ですわ!」私は今まで透華が叫んだのを聞いた事が無かった。どんな人なのかと画面を覘く。
「ブラックリスト?」それは、麻雀で違反をした者達のデータだった。
「ええこの方ですわ。」透華が指差す。「国広・・・一?」
「早速もっと詳しく調べますわ。ハギヨシ!」「は!」
「国広一さんのデータを洗い浚い調べてくださいまし。」「畏まりました。」
さっと来てさっと去っていく・・・萩原さんは人間なのだろうか。
隣の透華を見る。最後の一人になれそうな人を見付けられたからか、
今までの疲れなど顔から消えていて、楽しそうに微笑んでいた・・・。
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それから1ヶ月、夏休みに入りその人はやって来た。満月の衣も厭わずに、私達の所に残った。
最も、かなり応えているみたいだけれども。
それを哀れんだのか透華はその人を専属メイドにした。
その人が来てから、・・・透華は変わっていった。
最初は衣の友達を探せる条件が揃ったからだと思った。一にやたら話し掛けるのも、
急に連れて来られた寂しさを紛らわしてやる為だと思っていた。
いや、確かにそうだったのだろう。
一も私と同じ様な人間らしく、無闇に話しかけられるのを迷惑そうにしていた。
けれどそれも段々薄れていき、二人の間にはよく会話が飛び交うようになり、
そして透華は型が外れたみたいに喜怒哀楽を表すようになった。
明らかな変化に、しかし、透華自身は気付いていないみたいだった。
この事に他のメンバーは、
「まぁ、良い事なんじゃねーの?あいつ随分気負っていたしな。」純。
「透華さま透華さま透華さま透華さま(以下略」歩。
「私は透華様が健やかにお過ごしならば何も問題はありません。」ハギヨシ。
衣は、何も言わなかった。
一によって透華は確かに変わった。私では何も変わらなかった。
・・・・・・。『私達には貴女が必要ですわ。』私がここに来た時、透華が私に言った言葉だ。
そう、私“達”。“私に”ではない。なら、透華に必要な人は・・・・・・。
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一が来てから約一年経った、麻雀大会数日前の日だった。
私と一が共に洗濯物を乾かしていた時。一は私に打ち明けた。
「どうしよう、ボクとーかの事、好きになったかもしれない。」
「好きに?」「あ、いや、よく分からないけど。」
「とーかといると嫌な事が忘れられるんだ。ずっと一緒に居たいと思う。」
「でもボクほらただの使用人だし、とーかお嬢様だし、困ったなぁ。」
好き―――。私はその感情を知っている。透華に教えられた。
愛という意味での好きだけでなく、私は仲間達が大好きだった。勿論一も。
臆病な私は伝える事が出来なかった。一も臆病になろうとしているのなら
背中を押してあげないと。私には無理だけど一は透華にとって必要だから。
「一。」私は一の肩に手をそっと乗せた。私は、笑顔だったと思う。
「応援している。」そう。大好きな人達には、一番の笑顔でいて欲しいから―――
つ づ く
最終更新:2009年11月23日 16:43