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292 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2009/12/10(木) 14:48:57 ID:xnFPNG0N

 「ぅ、ん・・・・・・・?」微かに頭痛を感じて私は目が覚めた。
『ここは…?』ぼんやりしていた視界がだんだん晴れていき、見慣れた天井が目に映る。
自分の部屋らしい。窓から差し込む光は薄く橙を帯びて、間も無く夕暮れ時だと告げている。
今の今まで寝ていた??今日は確か休日だけれど、なんともだらしがないですわね・・・
 私はだるい体を起こし、まだ朦朧としている意識の回復を待って―――ッ!!?

 「な、なんですのコレは?!!」起きたら私は素っ裸だった・・・

∧∧∧
     【 ツイン=カプセル :B 】
∧∧∧

 とりあえず服を着て一先ず落ち着く。
・・・何故か起きたら丸裸だったり(ベッドの脇に視線を落とす)
これは・・・『私の子供の頃の服?』丁寧に畳んで置いてありますけど何故こんな物が?
 「さっぱり訳が分かりませんわね・・・。」
子供服を元の場所にしまって身を返した時、床に落ちている物を見つけた。
 「・・・リボン付きのカチューシャ?はじめのですわね。」
こんな物がここに落ちているという事は・・・はじめがここに来ていたという事??

 「帰ってもよろしいと申し上げたのに・・・
  いえ、そもそも“私の部屋で私が寝ている時”に、何をしてたんですの??!」
リボンを握り締め、少し顔を引きつかせながら“笑顔”で私は落し物をとどけに行くことにした。

∧∧∧

 夕日に廊下が真っ赤に染まる中、私は淡々と歩いていく。
シャンデリアに光が反射して眩しい・・・。
『・・・流石に人っ子一人居ませんわね・・・。』私は誰もいない廊下で足を止めて夕日に向き直る。
巨大な窓から光が一直線に差し込み、外では日に染まる庭で光を帯び輝く花々と
山の谷間に沈もうとする太陽が映った。
変わらない光景、変わらない状況。いつでもこの時は寂しさが滲んでいた。
 誰も居なかったわけじゃない、家に使ってくれていた使用人や家庭教師、
むしろ周りは常に人でいっぱいだった。私は人に囲まれるのが何より好き
だからいつも楽しかった。楽しいと思っていた。でも、夕日は嫌でも思い出させられる。
本当に傍に居てほしい人はいつも傍に居ないという事に―――。

 夕暮れ時の美しさなどほんの一瞬のまやかしで、直ぐの黄昏に周りの誰も彼も
只の黒い影でしかない事を思い知らされて、瞬く間に冷たい独りの静寂が訪れる。
夕日に対する印象はそんなものだった。
だからこの絶景も全く興もそそらないもので・・・っと。いけませんわ
こんなところで感慨に耽っていては・・・リボンを届けに行きましょう。
遠くの太陽が誰もいなくなった空間を照らしていた。

∧∧∧

 さて、着きましたわ。ドーンと扉の正面に立ってドアノブに手をかける。
 「はじめ?」呼びかけても(・・・・)返事はない。
 「・・・はじめ?いらして?」(・・・・)「・・・?」
中でガサゴソと音がした気がして<ガチャリ>とドアを開ける。

 「はじめ。居るのなら返事を―――。」
扉の向こうにはベッドの上で毛布に繰るまって、こちらをキョトンと見つめる二人の目があった。

 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」
 住人達としばらく見つめ合って、そのまま<パタン>とドアを閉める。
部屋を間違えた?踵を返そうとして、
『いえ、ここは間違いなくはじめの部屋ですわ!』それに、さっきの、
どこから見ても子供でしたわ、今この家に子供なんて居る筈が・・・!
 「ちょっと?!あなた達誰ですの??!」再びドアを<バン!>と開けて。
そこにはさっきの子供達が変わらずこちらを見つめていた。
一人が口を開く。
 「・・・おばさんこそだれ??」
 「な、お、おば・・・??!わ、私のどこがおばさんに見えるって言うんですの?!!」
 「ボクたちからしたらおばさんだもん。ね?」「えっ!う、ぅん・・・?」
突然話題をふられてよく分からないまま賛同するもう一人の子。


 「ボク??あなた達はじめの親戚か何かですの?」部屋に入って二人をまじまじと見る。
 「あら、ホントそっくりですわね。おまけに髪型もいっしょ・・・。」
見れば見るほどそっくりだった、そのままはじめを小さくしたような・・・。
こ、これはまさか・・・!はじめのお子様??!
 『そ、そ、そんな馬鹿な筈無いですわ!』
わ、私達まだ17歳ですのよ?!こ、子供だな、んんんて!!?
で、でも・・・確か14で母になるという話も聞きますし・・・
この子達・・・ちょうどさ、さ3才くらいですわ!!?は、はじめぇ~・・・?う、う、うぅぅ。
 どこからくるとも知らぬ大量の涙を流しながら私は床に手をついた。ショック・・・!
何ですの?この気持ち???『・・・ガーン。』という音が頭の中で鳴り響いていた。
手に握っているリボンを見る。そ、そうですわ、私はただ之を届けに来ただけなんですわ・・・。
さっさとお返しして、砂糖とミルクたっぷりのコーヒーが飲みたいですわ・・・。

 私はフラフラでベッドの下まで這って行き、カチューシャを差し出す。
 「あ、あなた達のお母さんの物をお届けに参りましたわ。そ、それでは私はこれで・・・。」
 「はぁ?おばさんなにいってるの?」「ふぇ?」
 「ぼくたちはしんせきだよ。」
 「へ?そ、そうなんですの??!」<ピキーン。>そんな効果音がした気がした。
 今恐らく周りの者は私の髪がピンと伸びているように見えているのだろう。
はじめが教えてくれた。
 「と。メガネのおねーさんがいってたよ。」「え?」
 「ぼくたちは“はじめのしんせき”だって。」
 「メガネのおねーさん??」
 「メガネかけててかみがながくて、すらりとしてておっぱいのおおきい。」
ともきの事?にしても最後の項目は必要なんですの??!こっちを向いてニヤついてますし!
 「一つ、よろしいかしら?」「なにおばさん。」
 「ど・う・し・てともきがお姉さんで私がおばさんなんですの?!!!」
とってかかろうとする私をもう一人の子が必死に制する。
その子はフッと笑って「うるさいから。」と言った。
 『な、な、生意気な子ですわーーーーー!!!!』
ハァハァ。まぁ良いですわ。ここは大人として冷静にいかなくては。

  私はしがみ付いている子を引き離し、再び尋ねる。
 「ともきに聞いたって、じゃああなた達は分からないんですの?」
 「う、ん。きがついたらここにいたんだ、ぼくたち。」「自分のお名前は?」
 「おねーさんがおしえてくれなかったからわからないよ。」
 「そんな、分からないって・・・記憶喪失ですの?」
 「さぁね。」
 「やけに落ち着いてますのね。」「ボクはおとなだからね。どこのだれかとちがって。」エッヘン。
 「どういう意味ですの!?」「ストーップ!ちょっとまって!」
取っ組み合おうとする二人をまたもや大人しい子が懸命に体をはって制した。

あぁこの子は良い子ですわ・・・。
 「あのね、おねえちゃん。ふくをとってきてくれないかな、うごけなくて・・・。」
あら?良く見ると二人は裸だった。
 「あなた達も起きたらそうなっていたんですの??」まだ手にあるカチューシャを見る。これは、
 「きっとはじめが何か知っているんですわ!」
 「なんで?」
 「私も起きたら何故か裸でしたのよ!そして部屋にはじめのリボンが落ちていましたの。
  これは何かありますわ!はじめに事情を聞き質してハッキリさせましてよ!」

∧∧∧
∧∧∧

 それから私は自分の部屋に行って、子供の頃の服を引っ手繰ってはじめの部屋に戻った。
何故はじめの服を取らないのかって?
そ、そ、そんな本人の居ない間に部屋を漁るなんて・・・恥ずかしいですわ!
子供二人が着替え終わって(私の服なのですから当然といえば当然なんですけれど
よく似合っていて可愛かったですわ)私の言い出しで手分けしてはじめを探す事にした。

 そういうわけで屋敷の中を隈なく駆け回っているんですけれど、一向に見つかる気配は無いですわ。
既に日は落ちて、屋敷の中は自動式のシャンデリアの白い光に照らされていた。
困りましたわね・・・。その時、前方の十字路にあの子達を見つけて呼び止める。
 「どう?見つかりました?」
 「みつからなかったよ。」
 「ボクたちそとにつまみだされそうになったんだよ、おばさんがさがすとかいうから。」
 「・・・はいはい。ごめんなさいですわ。」
全く親戚だというのにどうしたらはじめの血筋からこんな憎たらしい子が出来上がるのか・・・。
 「そういえば、ともきは?」「おねえさんもどこにもいなかったよ。」
あと探していない場所は・・・別館ですわね。
 もしかしたらはじめもともきもころもの世話に行っているのかも知れませんわね。
そこで別館に行こうとしたところ、大人しい子にスカートの裾を掴まれた。

 「?」
 「おねえちゃん、あの・・・。」上目遣いで上を見上げて何か恥ずかしそうに頬を染めていた。
 「どうしたんですの??」私は膝を曲げて目線を合わせる。大きな瞳が可愛らしい。
 「えと、その・・・おなかすいた・・・。」「あ。」言われてみれば、今にも腹の虫がなき出しそうだった。
 『はじめを探すのに必死で気が付かなかったんですわ。』
そばに掛けてあった黒い時計を見ると、もう夕食の時間はとっくに過ぎていた・・・。

∧∧∧

 「た・し・か・に!腹が減っては戦は出来ぬと先人達の言う通り
  食事は元気の源ですけれどあなた達・・・元気が良すぎでしてよーーー!!!?」
目の前には、それはもう酷いという具合に元気なお子様達の食べ跡が散らかっていた。
 ここは厨房イン・ザ・龍門渕屋敷。その広さはおよそ畳み50枚分である。
 「全く、何故休みの日に私が子供の後片付けをしなくてはならないんですの。」
雑巾を片手に不満をもらす。フキフキ。当の本人達はというと、
 「「おなかいっぱい~。もうたべられない~。」」ご満足の様子。
 「ちょっとあなた達!自分で汚したものぐらい自分で片付けなさい!」
 「かたづけって?」
 「この汚いのを綺麗にするんですのよ。」
 「もとにもどせばいいの?」「ええそうですわ。」
 「ならかんたんだよ。」
そう言って子供達は手を繋いで回りはじめた。

 「?・・・何を遊んでいるんですの?」呆れて私が尋ねると<パッ>と手を離して
 「「おわったよ。」」と言った。

 「ハ?」振り返ってみると「!」なんと最初来た時と同じ光景がそこに広がっていた。
 「一体これは???」「てじなだよ。」生意気な方が相変わらず偉そうに胸を張って言った。
 「流石はじめの親戚ですわね・・・こんなに小さくても立派ですのね。ふんふん。」
感心の念を抱き、
 「さて、ここが片付いたのは良しとして。」二人に目線を落とす。
 「今度はお二人を綺麗にしないといけませんわね!」袖を巻き上げて二人を摘み出す。
向かう先は・・・マイシャワールーム!

∧∧∧

 「いやだ!いやだ!おふろいやだー!」
暴れる子を二人で何とか押さえ付け、服を脱がす事に成功。
 「お風呂が嫌とかどこの犬ですのあなたは!」もう一人の子は既に湯船で気持ち良さそうに泳いでいる。
 「ボクはいぬじゃない!!それに、ボクはおふろがいやなんじゃないよ??」
人を挑発する調子で言う。
 「?」
 「おばさんといっしょにはいるのが、い・や。・・・わ!(ぶくぶく)」
頭を湯船の中へ突っ込んでやった。
 『危ないので良い子はマネしないようお願い申し上げますわ!』
 「なにするんだ!この!!」その辺に転がっている盥を掴んでお湯の中に沈める。
 「!ちょ、ちょっとまってくださいまし!」
 「え~い!!!」力の限り振りかざす!

<バシャーン!>

 「・・・う~びしょびしょですわ・・・。」私も頭から湯を被せられてしまった。

 「はぁ。本当に一緒に入ることになってしまいましたわ・・・。」
濡れた服をかごに入れて中に入る。(ここは常にバスタオルと浴衣が幾つか備え付けてある。)
中に入るとしばらく悪戯っ子が放心したように私をじっと見つめていた。
 「・・・何ですの??」
 「べ、べ、べつに!」そのままそっぽを向いて顔まで湯に浸かってしまった。
 「?」

 この時悪戯っ子はこう思っていた。
 『な、なんだ以外と綺麗じゃん・・・////』
つまり見とれて惚けていたのである。
 「わ!」また摘み出される。
 「さーて・・・しっかり洗って差し上げますわぁ!!」
もう一人の子は自分からとっくにスタンバイしていた。
髪をとかれてシャンプーをぶっかけられて力の限りゴシゴシ洗われる。
 「いたいよおばさん!」
 「おだまり。」
 あの子はきゃははと喜んでいた。向こうはすっかり気に入られているみたいだ。
そんな・・・これは、「さべつだ!」「どっちがですの!?」
うっ・・・呼び方の事?確かに調子に乗って言い過ぎたのかもしれない。
 『でもボク達がお姉さんの歳になったらおばさんはやっぱりはおばさんじゃん。』
と言おうと思ったけど止めた。あぁ痛い。いだいいだい。
このまま一方的にやられるのは腑に落ちない・・・。え~い。お返しだ!!!

<ぷにゅ>

 「ぁん!・・・ちょっと!どこ触っているんですの??!」
 「あ!ずるいぼくもー!」
 「来なくて良いですわ・・・!はんッ(涙)」いい子の方が私の胸に頬ゆすりしてきた。
 『な、何なんですの?!その天使の様な微笑みは??!』
気が付くとあの子は私の後ろにまわっていた。
 「こ、これ以上何をする、(ぁん)、つ、つもりッ、(はぁん)、ですの・・・?!!」

頬ゆすりしていた子がさらにどさくさに紛れて胸に吸い付いてくる。あぁんもう!
おまけに捕まれて上手く身動きがとれない。
 「ず~っときになってたんだけどこれなに??」
その子が私の頭の上でピリピリしているものを指差す。まままま、さ、か!!?
 「そ、それは駄目ぇー!!!!ですわ!!!」
私の必死の叫びも虚しいままにその子は勢いよく、それはもう憎たらしいほどに潔く、

<はむっ>

 「ひゃぁぁああああぁぁんんッッ?!!!・・・あ、あ、ぁぁぁ・・・」
力が、抜けていく・・・そのまま<ふしゅ~~~~ぅ>へなへなと湯気がたち篭る中気を失った。
 「あぁ!おねえちゃんがたおれちゃった!」
 「な、なに??これ?」
 自分の唾液がべっちょりついた“それ”から口を離すと、しおしおになっていた。
まったく不気味である。
 「おーい、お・・・おねえさん?」突っついてみてもピクリとも反応が無い。
これしきのことで倒れるなんて情けないお姉ちゃんだ。
これはしっかり者のボクがついててあげなくちゃ。『うんうん。』
腕を組んで自分で頷いていると、あの子はお姉ちゃんにしがみついて
「わ~ん」と泣いていた。・・・そんな大袈裟な。

 ・・・。・・・え?嘘、本当に??そ、そんな・・・もしかしてボクのせい??!
 「ご、ごめんよおねえちゃん!わるぎは・・・あったけど、こんなつもりじゃないんだ!」
揺さぶってもへなへなしてて動かない。
 「お、おきてよおねえちゃん。おねえちゃん!うわぁあああん!」
二人で一緒に泣いてしまった。
 「えっぐ、えっぐ・・・お、おねえちゃんうるさくておこりっぽくて、なんかへんだけど
  きれいでおもしろくて、ちょっとおかあさんみたいでけっこうすきだったよ!
  うぇっぐ、おっぱいもちいさいけどきもちよかったよ!!!(叫)・・・ぃでッ!」
ゴン!とげんこつで殴られた。
 「な・にを言ってるんですの?!こ・のエロガキは!」
・・・どうやらおっぱいという単語に反応して起きたらしい。
 『何なんだこのおばさん!』
 「さぁて・・・あなた達?」ボク達は二人ともガッと頭を捕まれた・・・。
 「悪い子にはしっかり“しつけ”をしなくてはいけませんわ・・・覚悟は、よろしいですわね?」
その目は、まるで悪魔の様に輝いていた・・・。

∧∧∧

 「全くえらい目に会いましたわ、お陰で時間も大分ロストしてしまいましたし。」
私がそう言うのをベッドの上の小さな二人が何か言いたそうにキッと睨みつけてきたが、気にしない。
 「私はこれからもう一度はじめを探しに行きますわ、
  お子様はもう寝る時間ですのでさっさと寝るように、いいですわね?」
コクコクと二人が頷く。“しつけ”の成果あってか二人は犬のように忠実になった。よしよしですわ。
 「それではお休みなさいまし。」私は自分の部屋を後にした。

∧∧∧

 廊下に出ると冷たい空気に体が少々冷える。消灯時間になったので月の明かりしか頼れるものがいない。
 『先ずは別館ですわね。』コートを羽織って中庭を突っ切る。外は青色の世界だった。
するとちょうど庭を抜けた所でともきがこちらに向かって来るのが見えた。
 「ともき!探しましたのよ!」
 「透華・・・。」
 「今までどこにいらしてたんですの?ころもの所?」
ともきは頷いてから「衣の相手。」と答える。
 「私の役目なのに申し訳ありませんわね・・・。厄介な子供達の世話をしていたんですの。」

 「子供達?」「ええ、はじめの親戚だとかいう。そうですわともき。はじめは一緒じゃありませんの?」
フルフルと首を横に振る。
 「そうですの・・・はじめったら子供達を置いてどこに行ってしまったのかしら?」
 「・・・どこにも行っていない。」「え?」

 智紀は考えあぐねていた。もう打ち明けるべきだろうか。
正直とりだてて隠し通さなければいけない事ではない。
むしろ自覚してもらう為に話さなければ意味が無いかもしれない。
しかしタイミングというものが非常に大切だ。
 この二人も幾万というチャンスをタイミングが掴めずに
(主にこっちのせいで)逃してきて今日に至るわけである。
だから私が無理矢理でもタイミングを掴ませようと今回の出来事を起こした訳だけれど・・・。
しかしここまで攻めて今更引いても仕方がないか・・・と智紀は考えをまとめ、攻めに出た。

 「一はどこにも行っていない。」
 「私達屋敷中を探し回ったんですのよ?はじめはどこにも見当たりませんでしたわ。」
 「・・・あの子達が一。」
 「ハ?」頭の上のアレもぴょこんとなった。「何をおっしゃるんですの?」
 「“あの子供達が国広一”。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・?」
これは・・・どう説明したものか・・・。ありのまま言うしかない・・・。
ガサゴソとポケットを弄ってからになった青いカプセルを取り出す。

 「これを一に飲ませたら、“縮んで分かれた”。」
・・・しばらくしてから、透華はともきの言いたい事を理解した。
 「ハ、はァいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃィィィーーーーーーー???!!???
  な、なんですってぇぇえ??!!」
そ・ん・な・馬・鹿・な!!?ですわ!あ、ありえない。
しかしともきの真剣な眼差しから笑い飛ばせずにいた。
 「ま、まさか・・・本当なんですの???」コクリとともきが頷く。あわ、あわわわわ。
 「こ、こんな事って・・・!は、はじめは、はじめは大丈夫なんですの??!」
 「直に戻るはず、後遺症は・・・無い。」『多分。』
 「そう、ですの。よかったですわ。」透華は安心してホッと胸を撫で下ろす。
『それにしても人を縮ませるなんてそんな薬・・・。』!
 「ともき!!!」
 「?!」突然名前を呼ばれて反応する。
 「その薬・・・どこで手に入れたんですの?!!」
 私はともきに詰め寄る。
こんな効能のもの、聞いた事が無い!普通では絶対手に入れられないはず、
どうやってともきがこのような物を手に入れたのか。場合によっては・・・!

 「・・・答えられない。」
 「ともき!?」
 「・・・答えられない約束・・・。」ともきは頑なに口を閉じた。
そこで私は情けない事に最後の手段に出る。
 「ともき・・・。私の“命令”でも答えられないんですの?!!」
しかし
 「今日は一切の休日。私と貴女はただの同級生。よって命令に従う理由は無い。」
 「なッ!!?」
思いもしなかった反撃に思わずたじろぐ。

 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」
そして二人の間に重たい沈黙が続く。先に折れたのは透華の方だった。
 「・・・分かりましたわ。この際それは置いておくとして・・・
  何故このような物を使ったんですの?悪戯にしてはやり過ぎでしてよ??」
 「じれったいから。」
 「え?」
 「あなた達はこうでもしないと一向に進まない。」
 「何の話ですの???」

 「透華と一の話。」
 「私とはじめがどうかしたんですの?」
 「お互い好きなのにもたもたし過ぎ。」
 「は、ははは、す、す、す、!私がはじめを好きですってぇぇえ??!??」
コクッとともきが頷く。
 「な、何を根拠にそ、そんな事を?!?」
 透華は自分でも分からないけれど何故かともきの言葉に酷く狼狽した。
それを見てともきが一歩前に進む。
その気迫に押され、透華は一歩後ずさる。『お、おかしいですわ・・・攻めていたのは私の筈でしたのに・・・』
ともきに鋭く目を捉えられ、冷汗が浮かんでくるのを透華は感じた。

 「透華・・・一が来てから明るくなった。人前で騒いで目立とうとするようになった・・・。」
 いつの間にかともきは透華のすぐ間直まで来ていた。
 「な、何を言っているんですの、、わ、わたくしは元からそういう性分でして、よ?、、、。」
 月光に照らされた眼鏡の奥からの透き通るような目にじっと見られて
自分の中の一切のものが見透かされたような思いになって
身動き出来ないまま透華は震える声でそれだけ搾り出す。
 「確かに、そうかもしれない。」
先程と変わらない調子で言ってともきは少し肩を竦める。
 「でも、一が来てから露骨になった。
  それは安心感から来る気の緩み??目立とうとするのは一の気を引くため??」
こちらの面を喰らわんばかりに近付いて智紀が質問を投げかける。
私はついに耐え切れなくなってともきから身を反らす。
 「な、なんでそうなるんですの??
  そ、そ、それは別にはじめじゃなくてそ、そう!は、原村!原村和ですわ!
  人生最大のライバルを見つけて、その喜びが思わず溢れ出してしまっただけなんですわ!!」
 必要以上に明るい声で叫んで私はともきの言ったことを否定した。
ここまで頑なに拒否する程のことでも無いかもしれないのに何故か私は躍起になっていた。

 「そう・・・。」ともきが身を引いた。
 私はやっと解放された気分になってホッと安堵の音を漏らした。
 「透華は一より原村をとるのね・・・。」
 「は、は?と、とるとかとらないとか、そういう話をしているんじゃありませんわよ?」
ともきが一体何をしたいのか理解できない・・・。

 一方智紀はこうまで言っても臆病なままの透華に半分諦めかけていた。
透華が原村の事を気にしているのは知っている。そんなの誰でも知っている。
もしかしたら本当に自分の思い違いかもしれない。
 「なら、それでもいい。ただ・・・」
それでも言える事は言っておきたいと、透華に向かって歩み出す。
・・・その時になって遅いこともある、好きな人の後悔の顔なんて見たくない。
だから告げる。
 「(このまま進めば一は貴女の前から“いなくなってしまう”。)」
一も中に溜め込んでしまうから見えないけれど
もう限界に近い・・・。
 その瞬間透華が弾かれたように私を見た気がしたけれど
これ以上話す事は何も無いから私はそのまま庭に足を踏み入れた。

∧∧∧

 『な、今、ともきは何て・・・???』
擦れ違いざまに耳元で囁かれた言葉。その真意を確かめようと
振り向いた時にはもう、ともきは行ってしまった。
・・・はじめが・・・いなくなる?ですって??
そう言った。確かにそう言った。
 「はじめ、が・・・?」

 その瞬間頭の中の一切合切のものが忽然消されたかの様な

虚無感を覚えて透華はその場に立ち尽くした。
 雲一つ無い空には白い丸が辺りを冷たく照らしいた。
 『はじめが・・・いなくなる?』
  はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。
  はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。
  はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。
 はじめが・・・いなくなる。
(ただそれだけが空白を行き交い、意識無く歩き出していた足が力無く草を踏んでいた・・・。)

 はじめが・・・いない。・・・そんな事考えたことも無かった。まったく認識の外だった。
・・・。・・・。でも、言われてみれば当たり前の事で・・・。
はじめは何も家に正式に雇われたのではない・・・衣の遊び相手にする為に
自分が無理矢理連れて来ただけで、ずっと一緒にいられる訳じゃない・・・。
むしろそんな保障はどこにも無い。
 安心しきっていた。はじめが自分の傍を離れる筈が無いとどこか有頂天になっていた。
だから終わりがあるという事に、思い当たることが出来なかった・・・。
このままただダラダラと時間を食いつぶしていったら間違いなくその時が来る。
その時、はじめがいなくなった時・・・私はどうするのか・・・。

 『やっぱり想像つきませんわね・・・。隣にはじめがいないというのは・・・。』
(いつの間にか壁にもたれ掛かり、どこかへ進んでいた。屋敷の廊下のようだった。
 窓からは相変わらず光が差し込み、暗闇の中、自身を曝しだしていた。)
・・・もしはじめがいなくなってしまったら、
きっと心の中にとてつもなく大きな黒い穴がポカンと空いて、
それは他のどんなものでも埋める事が出来なくて・・・自分は絶望にふさぎ込むか、
自分自身を騙して無理に明るく振る舞わって空回りしている姿が・・・心の中に浮かんだ。
 はじめの存在は既に透華の中で変えられない大きなものとなっていた。

 『隣からはじめがいなくなったら・・・嫌ですわね。』
不意にポケットに入れた手にある物が当たる。
・・・?『これは・・・?』それははじめのリボンだった。
 どうせなら本人に直接渡してあげた方が良いだろうと思ってずっと持っていた。
リボンのふわふわがたまらなく心地好い。
 そう、結局今日もずっとはじめと一緒だった。
気が付くと目の前に白い扉が映る。顔を上げると自分の部屋だった。
自然にここへ戻って来てしまった。
 『私はやっぱり・・・無意識に安心を求めるタイプですのね。』
ふふっと自嘲して扉を押す。(ここの家は全て内側開きである。)
―――運に任せた駆け引きは本来性に合わないのかもしれない―――。

∧∧∧

 『色々あって疲れましたわ。早いとこ寝ましょ。』
ベッドに入りもぞもぞと身を沈める。ふぁ~あ・・・明日も天気になぁれーですわ~。
その勢いでまぶたも閉じる。お休みなさい~いざ夢の国へ出発・・・とはならなかった・・・。

<ふにゅ>

 「ひゃん!!?!(涙)・・・だ、誰ですの??!」
布団をめくるとちっちゃいはじめが胸にしがみついている。
 「こ、こらやめなさいと言いましたでしょ??!この、」
 「ボクじゃないよ。」
 「ふぇ?!」
いきなり右で声がして驚く。
見るともう一人のちっちゃいはじめが体操座りの上にジト目でこちらを見ていた。
 「お、起きていたんですの?」『二人がいることを危うく忘れるところでしたわ・・・。』
というか笑顔で抱き着いてきているこの子は・・・。
 「ん~・・・おかあさん・・・。」むにゃむにゃ。

私を母と勘違いしている?!!?
 「おねえさんをまっていたんだよ。さがしていたひとはみつかったの?」
 「!・・・え、ええ。」
 「そっか。よかった。」
 『探していたのはあなた達でしたわ・・・。』

 「ん。」その子が手を差し出してきた。
 「??」
 「て、にぎっててあげる。」
 「何でですの?」
 「おねえちゃんがさみしくないように。」その子は少し照れた様子で目線をそらす。
 「あなた・・・自分が淋しいんでしょ?」
 「ち、ちがう!!おねえちゃんはおっかないからボクがついててあげなきゃだめなんだ!!!」
 「え・・・?はじめ?」何故だが顔が火照ってきた。
 差し出された手を見る。小さいけれどしっかりとした手。私を引っ張ってあげようとしている手。
それに自分の手を合わせて、握る。
 「ふにゃ・・・おねえちゃん?」もう一人の子も目を覚ましてしまった。
 私達が手を繋いでいるのを見て、私の左手をとり、小さな両手で包んで、笑った。
そのまま私達は手を繋いだまま仲良く眠りの底についた―――。

∧∧∧

 『ところであなた・・・本音は??』
 『・・・おっぱいが駄目ならせめて手はと。』

・・・はじめ・・・あなたって・・・



つづく・・orz

解説というより屁理屈は最後に書こうと思っているのですが最後までが長い・・・
それではこれで・・・

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最終更新:2009年12月10日 21:27