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63 名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/12/04(金) 01:41:09  ID:HPgcV+U+ Be:

私は負けた…
清澄のリンシャンさんに。
先輩の仇をとろうと思ったけれど
ステルスを簡単に破られ負けてしまった
一瞬だけ見えたなんてありえない。
そんなことで負けたなんて納得できない…
そんな気持ちが心を支配する。
そんな時に限ってに私に声をかける人がいた。
「あの~すいません。
お水…対局室に置きっぱなしでしたよ?」
「清澄のリンシャンさん!?」
そこに立っていたのは寄りによって清澄のリンシャンさん。
わざわざ私のところに忘れ物を届けにきたみたいっす。
でも、今の私にとってはその親切心すらも腹立たしさを更に増長させるもの以外の何物でもなかった。
「…どうもありがとうっす。」
私は自分らしくもなく無愛想に抑揚低く返すと、私は歩き出す
「はい。
さっきの対局凄かったですね!!
私びっくりしました!」
リンシャンさんは私の横について、話しかけてくる。
もう私には何も言わないで欲しい。
今の私にはあなたの言葉はただの嫌みにしか聞こえないから
「運良く勝つことができましたけど、本当に危なかったです。
みんな強い…
鶴賀の他のみなさんとも打ってみたいなぁ…って思いました」
無邪気な顔で、リンシャンさんは目を輝かせながら言う。
「……………」
私は黙りを決め込んでステルスモードに入ろうとする
が、リンシャンさんは私の前にひょいっと躍り出ると続けて言う
「加治木さんもとっても強くて…この大会でいっぱいの強い人と打てて私とても嬉しいです!」
その瞬間、私の脳裏には団体戦決勝終了後の先輩の悲しそうな顔がリフレインし、何かが切れる音がした
「嬉しい?
私は嬉しくないっす!
だって先輩と一緒に全国に行けないんすから!!
私にとって先輩は私の全てだった…
だから、絶対に一緒に全国に行きたかったっす!!
でもあなたは見事に団体戦で先輩に、個人戦では私の前に立ちふさがって私たちの夢を妨害してくれたっすよね。
何故っすか!?
なんでそんなに今年に拘るっすか!?
あなたには来年も、再来年だってあるっす!!
私と先輩には今年しかないのになんで…なんで…私たちは負けなければならなかったんすか!」
私ははっとして口をふさぐ。
私は最低だ。
負けたのは他ならぬ自分の実力不足のせいなのに
私は勝ったリンシャンさんに当たり散らしてる…
自己嫌悪に陥る
わたしこんな嫌なやつだったっすか?…
「ごめんなさい…」
謝らないで欲しい
私がますます惨めになるだけだから
リンシャンさんは最初こそ辛そうな表情をしていたけれど、
「でも、私は今年絶対勝たなければいけない理由があったから。
お姉ちゃんに会って仲直りしないといけないんです!」
「お姉さん?
初めて聞いたっす」
私はいつの間にかリンシャンさんに尋ねていた。
私に先輩がいるように
あの人にも大事な人がいるのだろうか
それが気になった
「うん。照って言うんだ」
宮永照…!
先輩から聞いたことがある
全国大会二連覇中の全国区の化け物…
「知ってるっす…
全国区の人っすよね」
「うん。
両親が別居することになってから、私とお姉ちゃんは別々に暮らすようになる前に私、お姉ちゃんを怒らせちゃって…
それから一度も口を利いてもらえなくなっちゃったんだ」
「そうなんすか…」
リンシャンさんは少し悲しそうにしながら言う
しかし、思い立ったように顔を上げると
「でも、麻雀通してならお姉ちゃんと話せるような気がする!
だから、私も今年絶対全国に行きたいんです!
だから、許して欲しいとは思いません
けど、これだけは知っていてほしくて!
やる気がないように見えたかもしれません
でも、絶対に私も全国に行きたいんです!
だから…わかってもらえたら嬉しいです」
リンシャンさんは一所懸命に私に向かって訴えかけるように言う
私の中にあった怒りとも悲しみとも違う嫌な感情はいつの間にか雲散霧消して、心の中は晴れ晴れとしていた。
納得できた
リンシャンさんにもどうしても勝ちたい理由があったことに。
それを知ることができて良かった…
知らなかったらきっと私はずっと勘違いして、この人を逆恨みし続けていたかもしれない…
そう考えるとゾッとする
「私…リンシャンさんのこと勘違いしてたっす
ごめんなさい!
八つ当たりするとか子供みたいなことをしてしまって…」
私はリンシャンさんに謝った。
深く頭を下げて、感謝の気持ちを込めながら
「わかってもらえて良かった…
あ、あの!良かったら…良かったらなんですけどお友達になってくれませんか!?」
「はい。もちろんっす!今日から私たちはお友達っす」
嬉しかった
影の薄い私でも友達になって欲しいと言ってくれたことが
実を言うとリンシャンさんとは気が合うような気がしていて、もっと話したいとも思っていた
「わたし…リンシャンさんともっとお話ししたいっす!
麻雀のこととか…いっぱいいーっぱい!」
我ながらバカみたいだ
先輩に見つけてもらえたときみたいにテンションが上がっている
「せっかく友達になれたし、まずはリンシャンさんって呼ぶのやめて欲しいな…
私にはちゃんと咲って名前があるから」
リンシャンさんは少し照れくさそうにしながら言う
おっぱいさんが惚れるのも無理ないっすね!
リンシャンさん凄くかわいいっすから
「いいっすよ!それじゃあ私もモモって呼んで欲しいっす…」
少し照れくさくなる
リアルで友達ができることが少ない私にとってはなかなか恥ずかしく思える
「じゃあ…私、東横さんのことモモちゃんって呼ぶことにするね!」
「私はリンシャンさんのこと…咲さんって呼ぶっす!」
互いに笑いあう
さっきまでの険悪だった雰囲気はどこへやら
私も咲さんも笑っている
「そろそろ最終戦がはじまるっすね。お互いに頑張るっすよ!」
そろそろ互いに移動しなければ厳しいだろう
私はトーナメント表に駆け寄って対戦相手をチェックする
清澄の人が2人もいるっすね
これは楽しみっす
「染谷先輩と優希ちゃんか…2人とも強い人だから頑張って!」
咲さんは胸の前で手をぎゅっと握りながら言う
「はいっ!咲さんも3位の南浦さんと直接対決頑張って下さいっす!」
私もそれに応えて励まし返す
「ありがとうモモちゃん!また、一緒に麻雀打てるかな?」
「もちろんっす!
加治木先輩がいなくなっても鶴賀で頑張るっすよ~!
そのうち清澄にも遊びに行くっす!」
加治木先輩がいなくなったら余計に私ががんばんなきゃっすからね!
良いライバルができるのはむしろ好都合っす
「また、麻雀打とうね!
約束だよ?」
今の咲さんの笑顔は今日一番に輝いていたから
ちょっとドキッとしてしまう
「約束っす!また、一緒に麻雀打つっす!」
私たちはお互いの対局室に走る
気合いは満点!!
さあ!頑張るっすよ~!
ステルスモモは今日も絶好調っす!
end

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最終更新:2009年12月10日 22:00