752 :名無しさん@秘密の花園:2010/01/10(日) 02:29:47 ID:LbVhF0Hy
「智紀―――」
小さな身体が、するりとドアの隙間をすり抜け、智紀の部屋に入ってくる。
うさぎの耳のように長いカチューシャが目立つので、すぐに衣だとわかった。
「今日は、パソコンで何をしているんだ?」
一人の部屋に置くには少し大きいソファに、智紀がノートパソコンを使っていた。
衣が智紀の横に座り、パソコンの画面を覗く。
ネットゲーム・・・ではなく、牌譜だった。
「・・・次は、負けたくないから」
なんだかんだで、智紀も麻雀には本気だ。
そんなことを思いながら、衣は智紀と一緒に牌譜を見る。
「でも、智紀。昨夜もずっと牌譜を復習していただろう。睡眠は取ったのか?」
「大丈夫、十分」
・・・と言ってはいるものの、明らかに寝不足っぽい智紀の顔。
いつも細いが、明らかに眠たそうな目。
昼食中も何回も欠伸をしていた。
「智紀、無理は良くないぞ。それに、女子にとって寝不足は敵らしい」
「女・・・にとって??」
「透香や一が言ってた。寝不足はお肌に悪いんだと」
「・・・あまり私には関係―――」
「関係大有りだ。だって」
衣の顔が智紀のすぐ前に迫る。
「智紀、綺麗だからこそ尚更、注意しないと駄目なんだ」
衣の言葉を受け、智紀が黙り込み、顔を背けてしまった。
「・・・」
「??・・衣、何か悪い事言った??」
「ううん・・・」
ちょっと嬉しかった。
あまりそんなこと言われたことないし。
ここに来る前は、ほぼ外との関わりを絶っていたけど、それでも自分の事は気になってた。
正確には、周りから見た自分。
外から見た自分。
自分は、皆からどう見えるんだろう??って。
「智紀、こっち向いて」
智紀が衣の方をゆっくり向いた。
その瞬間、軽く唇が触れ合った。
あまりドラマや漫画で見るキスとは違う。
赤ちゃんにしてあげるような―――
一瞬だけど、その一瞬の後、智紀の顔は見る見るうちに火照り、恥ずかしさと焦りを浮かべていた。
「衣・・・何を・・・」
「気にする必要は無い、女同士でもちょっとだけだったら大丈夫だ。一と透華なんか―――」
「あの二人は・・・」
智紀らしからぬ慌てっぷりだ――と、衣は感じた。
「ほら、今の智紀、可愛いぞ」
「・・・」
「どうした??」
「ううん・・・」
智紀もようやく悟った。自分がとても慌ててると。
「にしても、こんな事、衣どこで覚えた?」
「衣がって何だ、衣は子供じゃないぞ!智紀と同い年だ」
「・・ふふっ、そうね。ふぁ・・」
智紀が小さな欠伸をする。
「智紀、眠いのか?」
「ちょっと・・・」
「それじゃぁ、衣の膝枕で寝ればいい。いつも智紀がしてくれてるみたいに」
衣がそう言うと、智紀はこくりと頷き、小さな膝枕に頭を置いた。
「智紀の髪、綺麗」
「衣も、ね」
衣をいつも子供扱いしてた智紀だが、そのときは立場が逆転したのだった。
「ともきー、衣知らないー??」
コンコン
「あれ、ともきーいないの?入るよ?」
一が、智紀の部屋のドアを開ける。
「ともきー寝てたのか・・・って、衣もここにいたんだ」
そこには、衣の膝枕で眠る智紀と、そのままソファにもたれて眠っている衣がいた。
「・・・てか、何でともきーが衣の膝枕で寝てるんだろ」
一瞬起こそうと思ったけど、ちょっと珍しい光景だったので、一はしばらく二人を見ていた。
最終更新:2010年01月11日 17:43