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165 その1 [sage] 2010/01/25(月) 00:24:22  ID:SAgI2FO7 Be:

あの事件が起こってから一週間がたった。

あれから佳織とはあいさつも出来ないくらいに話さなくなっていた。
…こんなこと、小さいときのケンカ以来だ。
あの頃は2,3日たてばすぐ仲直り出来てたけど、今回だけは多分そうはいかない。
ケンカなんかよりもっと大変で複雑だしなー。

そもそも、あの写真は佳織が父さんに酔わされて、うっかり私にその…キスをしてしまった訳で、
佳織だってあんなことしたくなかったはずなんだ。


はずなんだけど…


佳織がキスをしたくなかったと考えるとなぜだか嫌な気持ちになる。
これってもしかして…本当に

……恋、なのk「くぉぉぉおらぁぁあああ!!!!蒲原ぁ!!」
 
「はっ、はいっ?!!」

驚いて思わず立ち上がってしまった。

「まーたお前は授業中口開けたまんまボーッとして!!!
 こんままじゃあ本気で大学うかんねーぞ!!」

ハハハ、とみんなの笑い声が聞こえる。
私はすいませんと言ってそのまま座った。

…あぁ、いま授業中だったのかー。
マンガとかじゃベタな展開だけど、いざ自分がなると結構恥ずかしいもんだなー。

授業が終わっても、私はずっと悩んでいた。

…はぁ、このままじゃまずいなぁ。
佳織だってきっと今の状況は嫌だろうし…
でも、話したくてもなんだかドキドキしてうまく話せないんだよなー。
ってかまず何話せばいいんだよー!?

・・・ワハハ、こりゃ本当にやばいなー。

一人で考えてもいい考えが浮かばないので、私はある人物に相談することにした。

「…蒲原先輩、こんな所に呼び出して何かあったんですか?」
「んー、ちょっとむっきーに相談があってなー」

私はむっきーを誰も居ない空き教室に呼び出し、佳織とあった事を話すことにした。

クラスの友達には普段からこんなキャラだから、相談なんかしたらからかわれそうだし、
ゆみちんは受験とモモで忙しいから同級生には頼めない。
でもむっきーなら佳織のこともよく知ってるし、
何より一番真面目に相談に乗ってくれそうだと私は考えたのだった。

「相談、ですか?………一体何でしょう?私なりに精一杯お答えします」

むっきーが真剣な目で私を見つめている。
…ワハハ、私の考えた通りだ。

「実は…佳織のことなんだがなー」

「・・・!!!!」

ん?なんでむっきーそんなに驚いてんだ?
もしかして…

「…なあむっきー、佳織、最近変じゃなかったかー?」

「・・・・・えっ、ええ、そうなんですよ!!
 佳織、なんだか最近落ち込んでて…何かあったのかなって、思っていたところなんです」

「ワハハ、やっぱりそうかー」

佳織、部活のときでも引きずってるんだな…
こりゃあ本気で何とかしないと佳織にも悪いなぁ…

「そっ、それで、佳織と何かあったのですか?」

…いざ人に話すとなると緊張するなー。

「えー、実はな…」

私は佳織と起きたことをすべてむっきーに話した。
むっきーは顔を赤くしながらも、しっかりと聞いてくれた。

「………と、いう訳なんだが…これはその…こっ、恋…なんだろうか?」

ああ、ついに言ってしまった。
もう後には引き返せないなーと考えていると、むっきーが口を開いた。

「…うむ、そうですね……正直に申しますと、私にはわかりません。先輩の気持ちですからね」
 
…ワハハ、そりゃそうだよなー。
人の気持ちなんて、そう簡単にわかる訳ないよなー。

自分にだって、わからないのに。

「…ただ、一つだけ言える事があります」

「一つだけ言えること…?」

私はその言葉にすがるようにたずねた。

「私には、先輩が以前より女の子らしくなったというか…なんというか、乙女に見えます」

「なっ…なんだって!?」

なんてことを言うんだ、むっきー。

想像もしなかった答えだからなのか、熱かった顔がさらに熱くなるのを感じる。

「…うむ、その反応とかまさに乙女ですよ、先輩。
 以前の先輩はどんな事があっても笑ってごまかしていましたから」

「そ、そうだったかー?」

私が混乱していると、むっきーが答えた。

「はい。…そして、なぜそのようになってしまったのか…
 それは先輩が一番わかってるのではないでしょうか?」

その言葉を聞いて、私の中に何かが走った。

「…ワハハ、頭の整理がしたいから、少し待ってくれないかー?」

そう言って私は静かに目を閉じた。

…そうだ。むっきーが言うような“乙女”ってのはよくわかんないが、今の私は確実におかしい。
普段は慌てたり、ドキドキしたことはほとんどなかった。
ましてや、人に分かるほど顔に出るなんてことはたぶん今までの高校生活で一度もなかったと思う。
おおらかなのがウリってほどだったからなー。

そして、その原因は…やっぱり佳織なんだ。
授業中でも、家にいるときでも、麻雀打ってるときだって、私は佳織のことしか考えられない。
恋とか、そんなことは昔から全く縁が無かったからこの佳織へのモヤモヤした感情が
何なのかよくわかんないけど、なんかもうどうでもいいや。
それに、写真なんかのせいで佳織との関係が壊れてたまるかってんだ。

今、私がするべき事は…

「…なぁむっきー、佳織は今どこにいるんだー?」

「む、佳織は恐らく教室に
「よし!!行ってくる!」

私はカッと目を開き、佳織のいる教室へと走った。

全力で走ったおかげで、佳織のいる教室にはすぐに着いた。
佳織は友達と話していたみたいだけど、それでも構わず私は叫んだ。

「佳織!」
「ふぇっ!?」
「ちょっと来てくれ!!」

私は佳織の手をとるとまたすぐに走った。
どこに、なんて考えていなかったがとりあえず人の居ないところだ。

廊下にいる人たちをびゅんびゅん通り抜けていく。
一瞬、過ぎていく人たちが私と佳織を不思議そうな顔で見ていくのが見えたけど、
そんなこと今は関係ない。

そうして本能のままに走り、たどり着いたのは麻雀部の部室だった。
扉を開けると、中には誰もいない。
ワハハ、そりゃそうか、今は昼休みだもんなー。
…っと、そんなことを考えてる場合じゃないか。

「はぁっ、はぁ……」

佳織が息を切らしている。
ちょっと走りすぎたかなぁ…

「あ、あぁごめんなー佳織。少し落ち着こうか」

そうして佳織と話せるまで少し待つことにした。

「・・・・・」

ああ、ダメだ。
落ち着こう、なんて言ったのに私のほうが落ちつかなくなってきた。

ふと自分の手の先を見ると、佳織が顔を真っ赤にしていた。
その顔を見て私まで赤くなりそうになったけど、何とか我慢して一度その手を離す。
そしてその手を佳織の肩に乗せた。

「だっ、大丈夫かー?」

「はぁっ…うっ、うん。もう大丈夫だよ。」

佳織と目が合う。
顔を赤くして息を切らしている佳織はなんだか色っぽくて…
心の中のモヤモヤがさらに募るのを感じた。

「おっ、おぉそうかー。…ごめんな、こんなとこに連れ出しちゃって」

「いっ、いいよっ。それで…その………」

佳織は黙り込んだまま、固まってしまった。
このままじゃ話すチャンスがなくなってしまう。

もう行くしかない…!
そう思い私はさっきまで佳織の肩に乗っていた手を降ろし、ぐっと握りこぶしに変えた。

「佳織!そっ、その…この前は勝手に電話切ってごめん!」

「えっ!?…い、いやそれは私があ、あんなことしちゃったから、私がわる
「ちがうんだ!佳織は悪くない!……あのときに言ったこと…
 そのっ、かっ、佳織とならキスしてもいいってのは本当なんだ!!」

「・・・!!!」

「本当の事だったのに、自分でも言った事が信じられなくて思わず切っちゃったけど…」

佳織の驚いた顔が見えたが、私はそのまま続けた。

「あれから一週間、ずっと佳織のことしか考えられなくなって、思うたびにドキドキして…
 ってか今だってドキドキしてるし…じゃなくって!
 ………え、えーっとつまり何が言いたいかって言うとだなー、
 また、ふたりで一緒に遊んだり、笑ったりしたいんだ!!!」

私は佳織に自分の一番の気持ちを伝えた。
嫌われるかもしれないとも思ったけど、なぜか後悔は残らなかった。
すうっと肩の力が抜けていくのを感じていると、佳織が口を開いた。

「…智美ちゃん…わ、私もあの後からずっと智美ちゃんのこと、考えてたよ。
 それでもどうしたらいいかわからなくて、悩んで…友達に相談したら
 “多分相手も同じ事を考えている”って言われて…
 それでね、今日放課後に話そうと思ってたんだよ。」
 
「そ、その内容って…?」

そう私が聞くと佳織は少しうつむきながら答えた。

「わっ、私も智美ちゃんと…一緒に遊んだり笑ったり、したいなっ」

「・・・・・」

「あ、あの…智美ちゃ…?!!!!!」
「ワハハ、すまん佳織。なんか体が勝手に動いた」

気付いたら私は佳織を抱きしめていた。

「智美ちゃん…いいよ。私もなんだか智美ちゃんに抱きしめられて嬉しいから…」

佳織はそう言って私の体をぎゅっと抱きしめ返した。

「うおっ!…佳織ー、ずっと前から気になってたけどさ、やっぱ胸でかくなったよなー」

「もう…智美ちゃんったら変な事言わないでよ…」

「ワハハ、すまんすまん」

自分でもこんなときに言うのはムードがないなーとは思ったけど、
こうでもしないと恥ずかしかった。

少し経ってお互いに腕を離し、緊張が一気にほぐれて冷静になると、
私の中にある疑問が浮かび上がってきた。

「ところでさー佳織ー。ちょっと気になったんだが、さっき言ってた友達ってのは誰なんだー?
 なんだか話を聞いてたら、私の事を知ってないと言えない感じのアドバイスだと思ったんだけど…」

「あっ、その子はね…「私です」
「へっ?」

突然扉のほうから声がしたので見ると、そこにはむっきーが立っていた。

「うわわっ、むっきー!?」
「…すみません、先輩が出て行った後気になったんで、追いかけて扉越しから盗み聞きしてました」

と、少し申し訳なさそうに、でも堂々とした口調でむっきーは話した。

「…んん?それじゃあさっき相談したときにはもう佳織と話してたのかー?」
「はい。昨日に。…今日先輩から話があるって聞いたときは驚きましたが、
 今思えば必然だったのかもしれません。佳織と先輩、相談するときの顔が全く同じでしたからね。」

そう言ってむっきーはいつも通りうむ、とうなずいた。

・・・ああ、なるほどなー。
私が相談したときむっきーが妙に驚いてたのは私と佳織が全く同じ話をしたからなのか。
むっきーってなんだかんだで頼りになるんだなぁ、と思ってると

「ふえっ!?じゃあ智美ちゃんも睦月ちゃんに相談してたの?」

佳織がワンテンポ遅れてたずねてきた。

「ワハハ、まぁそうなるなー」

まぁなんにせよまた佳織と一緒に帰ったり、家で遊んだり、麻雀教えたり出来るんだなー。
よかったよかっ…
「ふふ、“佳織とならキスしてもいい”っすか。蒲原先輩ったら大胆っすね」
「こっ、こらモモ!いつ出て来ていいって言ったんだ!・・・あっ」

「むっ?」「ふぇっ?」「うおっ!?なんでゆみちんとモモがここに?」

私たちが混乱していると二人は答えた。

「あぁー…すまない蒲原。モモが“部室で面白いものがみれるっす”って言うものだからつい…」

「実は私、偶然むっちゃん先輩と蒲原先輩が話してるの見ちゃったんすよね。
 そのあと蒲原先輩が、かおりん先輩の教室に走っていったんで追いかけて部室まで来たっす。
 それで…なんかいい雰囲気になってきたからずっとステルスして見てたっす。」

と、ニヤニヤしながらモモが言うと

「ずっとって…どの辺りからですか?」
 
佳織が少し困惑ぎみにたずねた。

「そうっすね…確か蒲原先輩が、こんな所に連れ出してごめんって謝ってる辺りっすかね?」

ってことは・・・・・

「ほとんど聞いてるんじゃないかー!
 まったくむっきーといい、どうしてみんな盗み聞きなんてするんだよー」
「ふふっ…」
「なっ、なんで笑うんだー!佳織ー!」
「あっ、ごっ、ごめんなさい智美ちゃん。久しぶりに智美ちゃんの怒った顔が見れたから…
 でも、本当はそんなに怒ってない…よね?」

佳織…やっぱお見通しかー。

「ワハハ、まぁなー」
「さすが幼なじみだけあるっすね!もう付き合っちゃえばいいっすよ!」
「うむ」
「おいおい…二人ともちょっとは反省したらどうなんだ?」
「そういうゆみちんだって見てたじゃないかよぉー!」

私がそう言うと、みんなは笑い出した。
そうして私達は昼休みが終わるまで笑いあった。

その後、私が佳織の教室へ乱入した事は、2-B乱入事件としてしばらく鶴賀の話の種になってしまった。
佳織は恥ずかしがっていたけど、私は佳織と噂になれてなんだか嬉しかった。
それに、今までの関係に元通りになったと思ってたけど、どうやらそれは違ったみたいだ。

「智美ちゃんっ!…一緒に帰ろっ!」
「おー、佳織ー。こんなとこで抱きつくなよー」
「えへへっ、誰も居ないからちょっと今だけ…ね?」
「ワハハ」

あの事件の後から少し佳織が積極的になった気がする。
まぁそれもまたいいかなーと思い、私は元凶のあの写真に少し感謝するのだった。

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最終更新:2010年02月23日 07:21