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52 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/16(木) 20:22:53 ID:4RM6JJwA
流れぶった切ってすいまそん
純と智紀の馴れ初めを妄想してSSにしてみますた
妄想なので悪しからず

53 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/16(木) 20:24:09 ID:4RM6JJwA
<純君視点>

男みたいな格好をしているのは、単に好きだから。
もし期待していたら悪いけど、本当にそれだけ。
特別な理由があるわけじゃないんだ。
王子様になりたいとか、少女革命を起こしたいとかはこれっぽっちも思ってないし、

「それでも男ですの?」

透華が俺の見てくれを指して男扱いしてくれば、その都度

「俺は女だ」

って、ちゃんと否定している。
それもこれも女としての自覚があるから。
服装や言動がちょっと変わっているだけで、あとはどこにでもいる女の子なんだ。

ま、人がどう思うかは人の勝手だから、俺が男に見えたからといって本気で目くじらを立てたりはしないよ。
龍門淵高校には俺が入学して程なく出来た「井上純ファンクラブ」なるものがあって、
女子生徒達が密かにプロマイドを集めてるらしいけど、やりたきゃ勝手にやればいいと思ってる。
そういうファンの子から差し入れがあれば、悪い気はしないしさ。

一度ファンからの差し入れだと勘違いして、清澄のチビのタコスを食っちまったのも、
来るもの拒まずの精神が身についていたからなんだ。
悪気があったわけじゃなくて、言うなれば日頃の習慣というやつ。
何を隠そう、俺は今までファンからのプレゼントを受け取らなかったことなんて一度も無いんだ。
たとえそれがいらないものであっても、突き返して相手を泣かせたりしたら後味が悪いだろ。
勿論チビのタコスを食べたのは俺だし、それについては何の言い訳もしないけれど、
そういう事情があったってことはわかって欲しい。
ファンを大事にしているがゆえってことでさ。

54 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/16(木) 20:25:31 ID:4RM6JJwA
なんだかんだ言って格好つけているけど、チヤホヤされれば素直に嬉しいんだ。
でも、違和感がないわけじゃない。
例えば

「井上さんは誰よりも格好いいです。良ければ私と付き合って下さい」

なんて女の子から告白されれば、

(もし俺がこんな格好をしてなかったら、この子は告白してくれたかな?)

心の隅で否定的にとらえてしまうこともある。
男の子を見る目で俺のことを見ているんじゃないかってさ。

誰かの代わりにされるのは、正直なところ良い気はしない。
男みたいな格好をしているからといって、男になりたいわけじゃないんだ。
ワイシャツの襟ぐりを大胆に開けて、その上にネクタイを引っ掛けるのも、
スカートの下に黒のレギンスを履いてパンツファッションにするのも、単に好きだから。
自分のこれだと思うスタイルが相手の琴線に触れたのなら勿論嬉しいけれど、
でも、好みが変わることだって勿論ある。
半年後、俺が女の子らしい服の趣味に目覚めることだって有り得ない話じゃない。

そうなった時、「井上純ファンクラブ」の子達はどうするだろう。
こっそりプロマイドを集めるなんてこともなくなるんじゃないかな。とはいっても

「私、井上先輩が好きです」
「君は俺のどこが好きなの?」
「格好いいところ、王子様みたいで頼りになるところ」
「じゃあ、もし俺が普通の女の子になったら、君は俺のことが嫌いになる?」

実際にそんな風に聞いてみたりは勿論しないよ。

「俺のどこが好き?」

なんて、いかにも面倒くさい奴が言いそうな台詞だから。

55 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/16(木) 20:27:30 ID:4RM6JJwA
あれは、龍門淵に入って暫く経った夏の初め頃だったと思う。
すでに発足していたファンクラブの女の子に告白されたんだ。
その気がないから断ったんだけれど、それから一週間ほど経った頃、
その女の子が彼氏らしい男の子と連れ立って歩いているのを見かけた。
彼女の顔に浮かんだ楽しそうな表情を見てたら、ふいに虚しくなった。
俺のことを好きになるのも、他の奴を好きになるのもその子自由だけど、
もうちょっと節操を持ってもいいんじゃないかって、心がささくれ立ったったみたい。

(好きって、そういうことだったん…)

新緑の眩しい風薫る季節におよそ似つかわしく気分のまま、龍門淵邸に帰ったよ。
その足で真っ直ぐ麻雀部屋に向ったのは、苛立ち紛れに対局に没頭したかったから。
けれど俺の思いに反して、人がいなかった。
誰もいなかったわけじゃなく、対局に必要な頭数が足りなかった。
そこにいたのは智紀だけだった。

どうして智紀に相談する気になったのか、自分でもよくわからない。
あいつと会ったのは透華のスカウトで龍門淵に入学した後で、会ってからまだそんなに日が経っていなかったし、
正直に言うと地味でパッとしない奴、くらいにしか思っていなかった。
揃った前髪にどこにでもありそうな眼鏡をかけた、無口なパソコン女。
もし龍門淵高校麻雀部という特殊な籠の中におさまっていなかったら、言葉を交わすこともなかったタイプ。
でも、よりによってただのクラスメイトだったら友達にもならなかったであろう智紀に、
俺は心にわだかまった想いを吐き出した。

「ファンクラブの女の子に告白されたんだけど、その子が彼氏と歩いているのを見かけてさ」
「あの子達はみんな、俺を王子様か何かだと思ってるんじゃないかな」
「ただ好きでやってるだけなのに、勝手に好きになって、勝手に離れて」
「もし俺がこういう格好をしなくなったら、どうするんだろう」
「あっさり手の平を返すのかな」

今思い返しても火が出るくらい恥ずかしい。
まったく、面倒くさい奴もいたもんだ。
智紀はというと、そうやって俺が感傷に溺れながら一心不乱に喋り捲った後で、言ったんだ。

「今日の純、面倒くさい」

無愛想に

「でも、純が女の子らしい格好してるところは見てみたい」

って。

56 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/16(木) 20:31:10 ID:4RM6JJwA

「へ?」

そんな風に言われると思ってなくて驚いていた。
言葉が続かなかった。
ぼーっと、智紀が微笑むのを見ていた。

「純は純だから」
「それ、どういうことだ?」
「女の子の格好をしていても、純は純だってこと」

普段無口な分、智紀がいざ口を開くと一言一言がとてつもなく重いと知ったのは、その時が初めてだった。
微笑が消えてもとの無愛想な顔に戻るまで、俺は何も言えずにあいつを見ていた。
智紀はそれ以上言葉を費やさなかったけれど、いつまでも余韻が尾を引いた。

「純は純だから」

あいつの笑顔がなんだか無性に嬉しくて、気付いたら胸の鼓動が早まっていた。

(久々にキレちまったよ……)

智紀を意識するようになったのは、その時からだ。


続く

60 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 00:54:03 ID:f2smLBmJ
<智紀視点>

純と初めて会ったのは、透華のスカウトで龍門淵高校に入学した時。
一見して、私とは違い外向的な人だと思った。
白いYシャツに男物のネクタイなんかしている時点で奇抜だし、
しかもその格好で気後れせずに話しかけてくるから、少し気後れした覚えがある。

「俺は井上純。よろしくな」

一人称は俺……。
開けっ広げな笑いとその男言葉に圧倒されて、純が挨拶がてら差し伸べてきた手を掴み返し損ねてしまった。

この人、苦手。

はっきり言って、純に対する最初の印象は決していいものだった。
麻雀を打ってみて、その苦手意識はもっと確かなものになった。

麻雀を打つ時も純は独特で、まず椅子座る姿から人と違う。
どっかり胡坐をかいて、膝の上に肘を乗せて頬杖なんかついている。
その格好で試すようにこっちを見てくるから、ペースが崩される。

私は牌効率や期待値を考えて打っていく堅い打ち方。
純はというと、対照的に手なりで手牌を作っていく打ち方で、穿った見方をすれば場を荒らすタイプで、
一言で表すならば水と油。
こっちの様子を逐一窺いながら、チーやポンでかき回してくるから、私としてはとてもやりにくい。

やっぱりこの人、苦手。

一緒に全国を目指す仲間には違いないけれど、友達にはなれないタイプだと改めて思った。

61 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 00:55:09 ID:f2smLBmJ
それなのに純が好きになってしまったんだから、つくづく不思議。
あんなに苦手だったのに。
きっかけは、一年生の時のインターハイ予選。
準決勝で次鋒として対局に臨んだ私が、散々に放銃してしまったこと。

終了のブザーが鳴った時点で龍門淵のマイナスは3万点で最下位。
全ての元凶である私の目に、控え室に戻るまでの廊下が酷く長く映った。
みんなを窮地に追い込んでしまった責任で足が前に進まず、会場のざわめきも遠くに聞こえる。
帰って早々に透華に怒られ、これで負けたら自分のせいだと後悔で一杯になった。

あの時あの牌を切っていなければ…
リーチにいかずにダマで通していたら…

一つ一つの局面を思い返すごとに鼻の奥がツンとする。
どうしよう…
どうしよう…
涙で視界がぼやけ始めたその時、思いもしないことに純が声を掛けて来た。

「気にすんなよ、智紀」
「お前が対戦相手のデータを集めて万全の準備で試合に臨んでることはみんな知ってるよ」
「それで結果が出なくても責めたりはしないって」
「結果が出ない時のために俺たちがいるんだから、頼ったっていいんだぜ?」
「なんでも背負い込むのはお前の悪い癖だよ」

いつもの饒舌さであれこれ慰めの言葉を言って、純が開けっ広げに笑って見せる。
不安に竦んでいた心がほぐれ、不安が嘘みたいに晴れていく。

「ってことで、あとは俺に任せとけ」

その頃は今と違って一が先鋒で、純が中堅。
立ち上がって、対局室に向うその背中が頼もしかった。
やがてモニターに現れた純がいつものように胡坐をかいて自信満々に笑ったのだけれど、
その姿が初めて格好良く見えた。

63 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 00:57:42 ID:f2smLBmJ

「な? 言った通りだろ?」

言葉通り、私が作ったマイナスを帳消しにして戻ってきた純が、こっちを見て笑う。
優しい表情に溶かされて、それまで純に対して抱いた苦手意識が氷解していく。

どうしてそれまで気付かなかったんだろう?
純がこんなにも優しい顔で笑うことに。

白いYシャツに男物のネクタイなんかしている奇抜な格好や、物怖じしない性格、
あるいはその打ち方ばかり苦手に感じて、ずっと純という人から目を背けていたことに、その時初めて気付いた。
単純かも知れないけれど、もっと純のことが知りたいと思った。


以来、龍門淵邸で、学校で、あるいは麻雀部の部室で、純と話す時間が増えていった。
マイペースでともすれば自分の世界にこもりがちな私と違って純は自然体で、
一緒にいるとそれだけで世界が広がるみたいに感じた。
間もなくずぼらな純に私が勉強を教え、代わりに出不精の私を純が外に連れ出すようになり、
そんな風に二人でいる時間はいつもドキドキした。
ドキドキするわけは自分でもなんとなくわかっていた。
知れば知る程、純が好きになる。
友達としてではなく、それ以上に大切な人として。

だから純がファンクラブの子とのことでちょっと感傷的になっていた時は少しでも励ましてあげたくて

「純は純だから」

と言ったのだけれど、そこに込められた私の好意には気付いてないみたい。
純はそういうことには結構鈍感だ。

64 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 00:59:03 ID:f2smLBmJ
次の純君視点で終わりにする予定です

67 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/20(月) 04:07:29 ID:Us+8LnM+
<純君視点>

智紀の素顔を初めて見たのは、龍門淵に入って少し経ってから。
昔も今も眼鏡を外したあいつが飛び切り綺麗なことに変わりはないけど、その時はさして気にも留めなかった。
口数の少ないパソコン少女としか思ってなかったから、別段感動したりもしなかったんだ。

それなのに、今では随分様子が変わってしまった。
ともすれば周囲に埋没しがちな目立たない智紀を、しっかりと見つけることが出来る。
教室中に散らばった制服の群れ中にあっても、校庭で固まったジャージの群れ中にあっても、
あいつは俺にとって特別で、一目でそうとわかるんだ。
理由は簡単。
いつも想っているから。

特別だなんて……
口数の少ないパソコン少女と思っていた頃と比べると、我ながら極端な変わりようだとは思う。
でも、心の真ん中にあいつがいるんだからしょうがない。
いつの間にか智紀が好きになってしまったんだ。


「純は純だから」

あの一言を境に、智紀は気になる存在になった。

(もっとよく知りたい)

そう思って、好きでもない勉強を教えて貰ったリ、出不精を口実に外に連れ出したり、
自分でもちょっと強引だと感じながら距離を縮めた。

68 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/20(月) 04:10:37 ID:Us+8LnM+
智紀は口数が少ない代わりに言葉に嘘がないから

「私もテスト勉強で忙しい」

グサッとくることもあったけれど、

「でも、純が留年したら大変だから付き合ってあげる」

言葉に嘘がないからこそ、本当の優しさを感じることが出来た。

龍門淵邸内に宛がわれている智紀の部屋に行って二人で勉強したり、
帰り途中に買って来たお菓子を一緒に食べたり、
一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、愛しさは増していった。

智紀はいつも黙って俺を部屋に上げ、柔らかい視線を投げてコーヒーを淹れてくれた。
そこは飾り気が無く実用的に整頓され、自分のものとは違う匂いが微かに漂っていた。
間もなく殆ど毎日智紀の部屋を訪れるようになり、雨の日は窓叩く雨粒を数え、夜になれば星を見上げた。
無口な奴だから時折深い沈黙が訪れることもあったけれど、あいつの部屋では気にならなかった。

夜の帳が下りるのにあわせて別れの挨拶をし、部屋を後にする。
一歩外に出ればそこは龍門淵家の豪奢な邸宅内で、絨毯が敷かれた長い廊下にランプの光が揺れている。
なんだか、不思議な感じがした。
自分の部屋へと戻る途中で龍門淵邸の廊下を歩きながら、
俺はいつも、終わらない遠足に来ているような高揚感に包まれていた。

69 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/20(月) 04:11:21 ID:Us+8LnM+
体のあちこちに智紀と過ごした時間の余熱がくすぶっている。
眼鏡の奥の息を飲むほど美しい瞳を思い出す。
目が合うとそれだけで胸が苦しくなるあの感じ。
誰かの隣にいることを芯から心地良いと感じるなんて初めてのことだったし、
芯から切ないと感じることも初めてだった。

智紀に会って本当の恋を知ったような気がする。
一緒にいる喜び、言葉が途切れた瞬間にふと過ぎる寂しさ、別れた後の虚脱感と充足感。
全部智紀が教えてくれたものだ。

幾日も智紀の部屋で過ごすうち、俺はあいつが好きになっていた。
そのことを自覚すればする程、ふとした瞬間に過ぎる寂しさは大きくなった。
目が合う度に、微笑みかけられる度に、同じ想いで俺を見つめてくれたらいいのにと、
そんな風に思えて仕方なかったから。

70 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/20(月) 04:11:56 ID:Us+8LnM+
きっかけはささいなこと。
それでも切なさに押しつぶされるには十分だった。
いつものように部屋を訪れた俺に、コーヒーを渡しながら智紀が言った。

「9月14日は純の誕生日だけど、何か欲しいものはある?」

そんなの、一つに決まってる。
欲しいのは智紀の心。
俺と同じ想いで見つめて欲しい。
その綺麗な瞳に俺を映して、いつものように嘘のない言葉で好きだと言って欲しい。

簡単なことなのに、切なくてたまらなかった。
智紀が俺を好きだなんて思えなかったから。
高望みしてる。
笑おうとしたけれど、上手く笑えなかった。

「どうしたの?」

少ない中にありったけの心配が込められた智紀の声が聞こえた。
綺麗な瞳に映った俺の顔はみっともなく泣き出しそうだ。

「どうもしてない」

ただ好きなだけだよ。
それだけのことがこんなに切ないなんて思わなかったんだ。

「本当にどうしたの?」

ごめん、智紀。

「好きなんだ」

71 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2010/09/20(月) 04:20:26 ID:Us+8LnM+
「智紀が欲しい。好きなんだ」

自分の声じゃないみたいに遠くに聞こえた。
こっちを見つめる智紀の顔に驚きの表情が広がった。
言葉が途切れて沈黙が訪れる。
いつもは気にならないのに、押し潰されそうになる。
その永遠にも思える空白の後で智紀が優しく笑うのが見えた。

「私も純が好き」

いつもと同じ、余計なことなんてない真っ直ぐな言葉。
智紀が近づいて来て、額と額をコツンと触れ合わせてからもう一度同じことを言った。

「私も純が好き」

見つめられ、視線を通して気持ちが届く。
恋が報われた嬉しさを俺はその時初めて知った。

(さ…さすがの俺も今のは死ぬかと思った…このフリーザ様が死にかけたんだぞ…!)

あとはもう黙って智紀を抱きしめることしか出来なかった。



終わり

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最終更新:2010年10月06日 00:09