457 :名無しさん@秘密の花園:2010/06/22(火) 16:19:26 ID:meEE/k42
サンドイッチと公園
「サンドイッチ美味しいわね」
上埜さんが微笑む。
それだけで幸せで胸が一杯になる。
「はい…いいお天気ですしね」
長野と違い周りを囲むのは山ではなく、高層ビル。
どんなに静かな公園とはいえ、走行音や信号の音、踏切、喧騒その他もろもろから開放されることはない。
だけど、その適度な雑音が私たち二人を周囲から隔絶させ、都会の無関心が私たちを特別な世界へといざなう。
だから上埜さんが地面についた私の左手の甲に手のひらを重ねてきても、誰も気にすることはない。
無論、私だけは特別だ。
特別に上埜さんの赤い髪と少しクセのある髪の毛と、私の両目を見つめる瞳を独占出来る。
「なんでこんな綺麗な瞳、思い出せないでいたのかしら」
多分私の顔は真っ赤になっているのだろう。
胸が心拍数を上げ、血流が高まったことにより、鼓動が全身に響きわたる。
ふれあった手のひらから上埜さんの体温が伝わってきて、熱い。
私の両目を見つめる上埜さんの瞳から、なんらかの力が伝わってくるかのように目が燃えるように熱い。
いつもの癖で涙が浮かんではいないだろうか。
そんなことを考えていると、上埜さんは余った自分の左手でそっと私の右の頬を撫でた。
「なんで泣いてるのかしら?」
あぁやっぱり泣いてしまっていたんだ。
心配をかけてしまったなぁなどと、頭の中ではのんきに考えてはいるものの。
胸の中になにか固くて重いものが詰まってしまったかのように、言葉に出すことが出来ない。
「…だって…竹井さんが…嬉しいから…」
ようやっとひねり出せたのは、そんなどう仕様も無い一言。
取り止めもない、意味の通じない一言。
こんな事言って、上埜さんは呆れて私を見捨てたりしないだろうか。
悔恨の念で、自信の無いテストの答案用紙を先生から受け取るように、上埜さんを見上げる。
「私も、嬉しいわ」
そんな嬉しい言葉をかけて、上埜さんは微笑む。
私みたいな右目なんてなくても、全部お見通しなんだろう。
好きな人が自分の考えていることを全部知ってくれるだなんて、なんて幸せなことなんだろうか。
なら、私が次にしたいことも、上埜さんはお見通しなんだろう。
あさましい願いもお見通しなんだろう。
私はぎゅっと目をつぶった。
(了)
最終更新:2011年11月28日 17:56