963 :夏の午後:2010/09/01(水) 03:04:55 ID:giDeZ/gJ
合同合宿以降、久や福路と逢う機会が増えた。
モモには受験対策だ、と言っているが実際のところは心身ともにリフレッシュするための、いわば逢瀬だ。
とはいえ、北部と南部。お互い行きかうのも限界がある。
都合のつかない時もある。
今日がまさにそんな日。
駅を降りて改札口をくぐると出迎えたのは福路一人だった。
常ならば久と歓談しながら喫茶店へ向かうのだが、福路と二人っきりだと話が続かない。
楽しいはずの逢瀬が、久が居ないとここまで間が持たないものなのか。
照りつける太陽に、頭をやられていたのかもしれない。
わたしは久との逢瀬を語っていた。
最初は軽い下ネタのようなもの。
だが福路はかなりの勢いで食いついてきた。
売り言葉に買い言葉、と言うのだろうか。
わたしの話はどんどん過激な内容へとエスカレートしていった。
福路もまた、それに釣られるように久との逢瀬を語る。
わたしとの時と違い、福路に対する久は常にリードしているようだ。
それが新鮮で、わたしも必死になって食い下がった。
思い返せば、喫茶店で歓談するような内容ではない。
今でも思い出すだに紅潮する。
だがそれは、その後の出来事に比べれば、どうということはない。
「そういえばホテルを予約していたんだったな」
連休ゆえに一泊してから帰郷すれば?と言って久が用意してくれたホテルに足を向けた。
肝心の久は急に学生議会の仕事が立て込んだという事で、不参加となっているわけだが。
まぁ泊まるような時間になったらいくらなんでも用事から解放されるだろう。
まだ日は高く、入る必要はなかったのだが、下見も兼ねて、と言う事でホテルを探しに市内に出た。
唖然とした。
まだ昼間だからさほど目立ちはしないが、夜ともなればこうこうと光るであろうピンクのネオンサイン。
時々どう考えても年齢のつりあわないカップルを吐きだす、そのホテルは。
どうみても、いやまごうことなく、ラブホテルだった。
「久はなにを考えているんだ?!」
そう怒鳴らずにはいられなかった。
こんなラブホテルに予約もくそもないと思ったが、そうでもないようで。
呼び出しボタンを押して確認を取ると、実際竹井久で予約が取られていた。
今からでもお泊りになれますよ?と言い出す、如何にも夜の住人といった風情の支配人。
世間知らずの女子高生である私たち二人は、抗う事も出来ずに一室に案内された。
部屋に入ると、わたしの偏狭な偏見とは違って、実に清潔感あふれる空間だった。
福路は恐る恐るベッドに腰掛けると、所在なさげにきょろきょろと辺りを見渡す。
危なっかしさを形にしたら福路のようになるのだろうな、と私との逢瀬の間も福路の事を気にしていた久を思い出してクスリとした。
下級生の間では聖母のごとく扱われている福路も、いや、だからこそか、庇護欲を掻き立てられること、しきりだった。
私は横に座ると、福路の閉ざされた右目を見つめる。
瞼の下の青い眼は、とても綺麗だという。
私は、その瞳を、見たい、と思ってしまった。
右の瞼を開かせようと、福路の心を一枚ずつ剥いだ。それとともに衣も一枚一枚と剥いだ。
涙を流していたな。
必死に抵抗していたと思うよ、福路は。
無理矢理だよ。そうだ、無理矢理だ。福路の名誉のためにも言う。
これは福路の望んだ結果じゃない。
だから、許さないでいい。私を軽蔑してくれ。
そして、福路を許してくれ、久。
彼女はやはりお前が一番なんだ。 (了)
最終更新:2011年11月28日 19:36