アットウィキロゴ
393 :名無しさん@秘密の花園:2013/02/22(金) 19:35:05.74 ID:gm+8Fn/B
一週間以上遅れたけど
バレンタインおめでとー新道寺 哩×姫子SS
3レス
オリ設定あるんで注意。 本番はない。 哩弁難しいです

394 :【哩×姫】リザベレンタインデー (1/3):2013/02/22(金) 19:35:52.24 ID:gm+8Fn/B
バレンタイン。
女子生徒たちが色めき立つ一日だ。
世の女性は好きな異性にありったけの勇気を振り絞って告白するチャンス。
まぁ新道寺は女子校なので渡す対象は当然同性なのだが…。

そんなわけで私は今年も大量のチョコを受け取った。
小学生の頃はこんなことはなかったのだが、中学一年からこれで5年間。
一年チョコを買わずに済むほど貰えるようになったのはなぜなのだろうか。
まぁ小学校は共学で中学からは女子校だったので、そういう人間が多く集まっているのだろうと一応の納得はできるのだが。
本当はたったひとつのチョコが欲しいだけなのだが…。

そんなことを思いながら部室に向かう最中。
噂をすればなんとやらだ。

 「あ、センパイ! はい、チョコ。 あ、ホワイトデーのお返しは別に入りませんよ?」
 「…姫子。 なんというかやっつけすぎんか?」

中学最初のバレンタインは割りとロマンチックに演出してくれた姫子も、さすがに5年も経つとこうなってしまうのか。
しかし、しかしである。
同じ学校でチョコを受け取るなんて久々で、朝から姫子のチョコに結構期待していた私は、それでもやはり文句を言わずに居られなかった。

 「ばってんそげんこと言われても…そいぎどうすればよかとですか」

姫子はそう言うと不服そうに頬をふくらませる。
可愛い。
…いや、そうではなく。

 「もう少しあるだろう。 ほら、なんというかシチュエーションというか」
 「も~…わかりました! そいぎ屋上ば来てください!」

手を引っ張られて無理やり屋上へ。
四方を青空で囲まれた空間はなんともなしに不安になる。
周辺でここより高い建物など無いから覗き見られることなど無いはずなのだが…。
ずかずかと、屋上についてなおも姫子は私の手を引っ張る。
ちょうど屋上のど真ん中に来たところであろうか。
姫子はくるりと振り返ると大きく息を吸って。
吐いた。

 「センパイ、ここでよかとですか?!」

睨みつける、というのはこういうことなんだな。
険しい顔で私の顔を覗き込む。

 「お、おう」

気圧されてやや後退りしながら答える。 やや小声で。
これほど気合の入ってる姫子を見るのは試合中でも見たことがない。

 「いいですか!? はじめますよ!?」
 「あ、あぁ」

しまった、やぶ蛇だったのかもしれない、となんとなくよそ見をしそうになったが、なんとか姫子の目を直視する。
再び姫子は深呼吸を始める。
一体何が起こると言うんだ。

 「センパイ!」

目をつむりありったけの気合と力を込めて姫子は叫ぶ。
そのまま前傾になり続ける。

 「…ずっと、ずっと好きでした。 今も好きです。 大好きです。
 センパイは私のこと、好きじゃないかもしれません。 目も合わせたくないかもしれません。
 でも、でも私はセンパイのことが大好きです。 愛してます。
 だから、だから…私の精一杯の心をこめたこのチョコレート…、受け取ってください!」

ようやく身を起こして姫子はチョコを差し出す。
真っ赤な顔で。
真剣な表情で。
それでも微笑みながら、涙を大きな目いっぱいに溜めながら。

あぁ、とそこでようやく気がついた。
最初にそっけなく渡そうとした理由を。
そして姫子が私のことを本当に愛してくれてるのだということを。
倦怠期など杞憂に過ぎなかった。 むしろ姫子を少しでも疑った自分を恥じた。
こちらもなにか返答すべきとは思ったが、姫子の思いが私の身体の中で溢れかえりすぎて、なにか言葉にするとこぼれ落ちてしまいそうだ。
だから私は無言でチョコを受け取るべく一歩踏み込んだ。その時、

 「…っていう感じでよかとですか、センパイ」

張り詰めていた空気が一気に霧散する。
…リハーサルだったのか。演技だったのか。
いやはや演技だとしたらアカデミー賞ものの熱演だ。きっと姫子は雀士としてだけでなく女優としても世界にはばたける。
なんとはなしにバカバカしくなって肩の力も抜ける。
どうやら相当緊張していたようで身体中が痛い。 本当に馬鹿馬鹿しい。

 「こんだけのことをさせたんですから、ホワイトデーのお返しば期待しても良かとですか?」
 「あぁ、任せときんしゃい」

半ば呆れながらため息をつく。

 「それから…早くチョコ受け取ってください…ね? こんなでも気持ちを込めて作ったんですから」

そう言って恥ずかしそうに目線を外して姫子はチョコを差し出した。
それでわかった。 こんどこそ間違いなく。
私達の付き合いはもう五年目だ。 互いに気持ちを伝えるのも恥ずかしくなってきている。
かく言う私もそうだ。
姫子への気持ちなど伝えるまでもないと思ってるからこそ、バレンタインになにもアクションを起こすこともしない。
…姫子に催促はするくせに。
自分がそうであるにもかかわらず、姫子もそうだということに気が付かなかった。
そんな私なのに、姫子は演技という殻を被りはしているものの自分の気持ちを私にぶつけてくれた。
なら、私も。

私はすっと近づき、やおら姫子の余った袖をたくしあげた。

 「ふえっ?!」

戸惑う姫子を尻目にさっとチョコを受け取り、フリーになったむき出しの手を握る。
普段わたしの体に直接触れることを姫子が禁忌としていることも何故そうしているのかも知っている。
これはまぁ、先程の仕返しだ。

 「ふあぁぁぁぁぁああああ~~…」

姫子がへなへなと膝から落ちる。
姫子と私は感覚をある程度共有している。
故にリザベーションなどという連動能力を使うことが出来るわけだ(なぜ点数まで連動するのかは知らないが)。
姫子へのフィードバックは私のそれと違い大幅に増幅されるもののようで、このように直接触れ合うことによって最終的には絶頂してしまう。
私が被る快感もあるにはあるが、姫子のそれとは比べ物にならないほどにごくわずかだ。
…私が不感症とかそういうことではないと思う。

 「姫子」

私はそっと姫子の手を包み込んだ。
姫子はそれでまたビクン!と身体を大きく反らしたが構わず続ける。

 「私も、最初に出会った時と変わらず。 いや、今ではそれ以上にお前のことが好きだ」
 「せんぱぃ…」

潤んだ瞳で私をぼうっと見つめる。 こんな時キスの一つでもしてあげるべきなのだろうが、そんな恋人ならありふれた行為すら私達の間ではままならない。
だが言葉を、思いを積み重ねていくことはできる。
それはどんなに身体を重ねることより大事なことだと、今ではそう思う。

 「一緒にいよう。 春も夏も、そして次の次の春も一緒に」
 「はい…」

年に一度、思いを確かめ合える。
こういうイベントも悪くないと、心からそう思った。

了

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年03月11日 06:04