バタンと部屋のベッドに横たわる。
…あぁ…いるぞ。
その言葉だけが頭の中で響いている。
失恋した。
好きな人はいますか?なんて聞かなければ良かった。
どうして聞いたのだろう…
あんな笑顔を見たの初めてだ…
見惚れてしまったのが悔しい。
「もぅ…嫌だ…」
好きで好きで堪らなく好きでどうしようもないほど…
きっとそこら辺の部長のファンより熱心だと思う。
けど告白しないんじゃ結局ファンと同じ。
でもしなくて良かった。
だって、男の俺が男の部長に告白して、
気味悪がられて、
話できなくなるよりマシ…
「好き…好きだよ、部長…」
でもサヨウナラ。この気持ちは封印しておく。
絶対知られちゃいけない。
明日は土曜日…休んでしまおうか…
何より心の整理をしたい。
そう計画して今日は寝た。
目が覚めたら13時だった。
家族は出かけたらしく家には居ない。カルピンと俺だけ。
「静か…」
ソファに横になりながら呟いた。
いつもなら部活に出ているから解らなかった。
カルピンは日向で寝ている。
それを見ていると眠たくなってくる…
また、うとうととし始めたときチャイムが鳴った。
「…誰ですか?…」
そう言いながら戸を開ける。
「テニス部部長の……越前か?」
部長が俺の目の前に居る。
「な…んで?」
なんでここに居るの?そう言いたいのに言葉が出てこない…
「越前…なぜ部活を無断で休んだりなんかしたんだ?」
あぁ…なんだそんな事聞きにきたのか。
そりゃそうだよね。部長だもん…
「越前?…具合でも悪いのか?」
「そんなことないっス…すみませんでした」
どうか…お願いだから気づかないで。
泣いているなんて気づかないで…
「越前?やっぱりどこか具合が悪いのじゃないか?」
そんなことないって!と意味を込めてブンブンと頭を横に振る。
「……では、何故泣いているんだ?」
「っ!」
なんで?なんで気づいたの?
「何があったんだ?」
そっと肩を持たれて抱き寄せられた。
「な、に…してんすか…」
優しくしないでよ。勘違いするまえに離してよ。
「お前が泣いているから」
「こう、いうのは好きな人に…するもんだよ」
好きでもないやつに簡単にしちゃいけない。
「好きだ。越前。」
え?
いま何て言ったの?
「え?…どぅいう、こと?」
「聞こえなかったか?…越前。好きだ。」
思考が追いつかない…
部長は、俺が好きなの?
「返事を、聞かせてくれないか?」
俺は…
「俺も…部長が…好き。好きで好きで堪らない…」
抱き締めてくれている部長を精一杯の力で抱き返す。
「そうか…有り難う」
そう言って部長は微笑んだ。
また見惚れてしまった。
【小さな夢。大きな幸せ。】
(好き。どんなになっても離れない。)
手塚→←越前な話。
2009.12.07.志花久遠.
最終更新:2010年02月03日 16:36