俺がそう言ったのは、決してチアキちゃんをモノにしようとするためではないんだ。
チアキちゃんが先の条件を提示してきたのは、俺と関係をもちたいからなのだろう。
しかしだ。俺は南と性的な関係になるつもりは今の所は毛頭ない。つまり、チアキちゃんともそういう関係にはならない。
チアキちゃんの思いを無碍にすることなく、二人ともと健全な関係を保てる。
「どう?」
そしてチアキちゃんの答えは、聞かずとも分かる。
「いいんだな?カナと私、両方を平等に愛せるんだな?」
チアキちゃんはとても真剣みたいだ。
「勿論だよ。」
「そ、か」
俺には分かる。表には出さないがチアキちゃんはかなり喜んでる。
少し追撃してみようか。
「嬉しく、ないの?」
俺は敢えて聞く。
「え!?」
チアキちゃんは驚いてこちらを見上げた。
「だってチアキちゃん、あまり喜んでなさそうだからさ…」
嘘です。今チアキちゃんがハイテンションだということは手に取るように分かります。
気の迷いかな。チアキちゃんが慌てて縋る姿を見たくなったんだ。
「そ、そんなことない!そんなことないぞっ!」
「本当に?」
俺はチアキちゃんを煽り続ける。チアキちゃんは思うように反応してくれる。それが可愛くて仕方がない。
「本当だ!…むしろ藤岡は条件を飲んではくれないと思ってたからさ…」
「バカだなあ。」
「な!?バカとはなんだ!私は真剣に」
チアキちゃんの握力が強まる。
「俺も真剣だ。」
「…!」
「俺は、チアキちゃんの想いにできる限り答えたい。そう思ってる。」
「…」
「チアキちゃんの想いを無碍にはしないよ。必ずや平等に、ね。」
「本当に、いいんだな?」
「男に二言はないよ。」
俺は言い切った。それでもまだチアキちゃんは不安そうだ。
「それでも、藤岡の中での一番は…」
そっか。チアキちゃんは俺の中での一番でありたいのか。じゃあ…
「好きだ。」
「え!?」
「俺はチアキちゃんが好きだ。一番にね。」
流石に言い過ぎただろうか。でもまあチアキちゃんが可愛いのは事実だしなあ。
というか正しくは、チアキちゃん『も』一番なんだ。俺のなかではいつの間にか二人は同等な存在になっていたんだ。
だから条件も躊躇うことなく飲めたのだろうか?
けど、悪くない気分だ。二人の美少女をモノにできるんだから当然か…。
「そうか。私が、一番…」
チアキちゃんにしては珍しく、考えていることが顔に出ている。
「私も同じだよ、藤岡。」
「え?」
「私も、藤岡が一番だ!そして、世界で一番藤岡を想っている!だから…!」
興奮して饒舌になるが落ち着く。
「同じだな♪」
ご満悦です。
俺はとりあえず微笑んでおく。
「遅いわねぇ、チアキ。」
ハルカが呟く。時計は九時四五分を示していた。
「いくらなんでも遅すぎる。心配だわ…」
「まっさか~!あいつに限って心配するようなことは起こらないよ。」
「そうかしら。」
「そうだよ。」
断言しておく。
「でも、やっぱり心配…。誘拐されたりなんかしたら…」
「はぁ。」
「私、ちょっと外見てくるわ。」
「…いや。」
私はハルカより早く炬燵から抜け出した。
「私が行くよ。」
「そう?じゃあお願いね?」
私は肯いて玄関へ向かう。
確かに帰ってくるのが遅い。コンビニは近くはないけど、それにしたってもう十時になるんだ。おかしいよな。
嫌な予感がする。気のせいだろうか。
私は玄関のドアを開けた。
あっという間に南ん家。本日二回目だ。
「それじゃあ、俺帰るね。」
「あ、あぁ。」
チアキちゃんは不満がる。可愛いなあ。
「明日も、来るからさ。必ず。」
「けど…」
うーむ。このままだと暫く帰して貰えなさそうだ。
「キスだ。」
「へ?」
「バイバイのキス、してほしい。」
きっと恥ずかしいのを我慢して強請ってきたのだろう。瞳を潤せ、懇願する。
「わかったよ。本日最後の、キスだよ。」
「うん!」
チアキちゃんは高らかに返事をした。なんか振り回されてるなあ、俺。
「それじゃあ、するよ?」
「あ、ああ。」
チアキちゃんが目を閉じた。俺はそっと唇を重ねた。
やっぱり。南とはまた違った、幼い、柔らかい、ましまろな感触。そそるものがある。
けれど南は南で、同年代ということもありサイズが合う、という表現はおかしいかも知れないが、相性が合う。
たとえるなら、チアキちゃんは強姦で、南が和姦かな?
…って俺はなにを考えてるんだ!
チアキちゃんはこんなにも俺を受け入れてくれてるじゃないか!強姦なわけがない!…ってそうでもなくて!
お、落ち着けよ俺。今日の俺はおかしい。おかしい。
おかしい俺はチアキちゃんを抱きしめた。チアキちゃんはそれに応えるように俺の背中に腕を回した。こんな所、南に見られたら…
ガチャ
最終更新:2008年02月24日 22:34