玄関から出た私はただただ困惑した。理解不能未知領域な『それ』を目の当たりにした私はそうするしかなかったのだ。
私に気づいた二人は『それ』を中断する。いや、正しくは藤岡が一方的に中断したんだな。
それ故に、チアキは邪魔者を鋭く睨みつける。
「…」
「こ、こんばんは。」
「おぉ、藤岡。」
私は至って平静だ。何故ならチアキの想いに気づき始めていたからだ。大方、チアキが強要したんだろ。
それにしたって、藤岡の慌てっぷりったらないな。まるで浮気がバレた男みたいじゃないか。
「あ、あのっ!これは…」
「ありがとな、藤岡。」
「えっ!?」
「この愚かなお姫様を態態送ってくれたんだろー?」
「なっ!?」
チアキは怒りを露わにする。
「う、ううん。その…」
私は敢えて無視した。
「ほらチアキ、さっさと家に入れ。ハルカも心配してるぞ。」
「むぅ…」
「そ、そうだね。」
うーむ。このままじゃ藤岡がかわいそうかな?
私はそう考えて、チアキに見せつけるように、藤岡にキスをした。
愕然とした。
この愚かな姉は、私の眼前で躊躇うことなく藤岡とキスをしたのだ。
クチュ
「な、あ…ああぁ!」
それだけでなく、舌を入れている。ひどい!こんなのレイプに他ならない!藤岡だって嫌がってるじゃないか。
お前を押し返しているのがわからないのか!?
何のつもりなんだカナ!
ふと、カナと目があった。
…笑っている。いや、挑発してるんだ。乗せられてたまるか!!
私は怒りを押さえ込んだ。
ふむ。挑発に乗ってくると思ったんだが案外しぶといな…
私は『名残惜しそうに』ゆっくりと唇を離した。
「み、南…?」
藤岡は呆然としている。いきなりのキスにかなり戸惑っているようだ。
「恋人同士なら当然だろ?」
チラッとチアキをみると、これ以上ないくらいの膨れっ面を作っていた。
「じゃあな、藤岡。また明日。」
「あ、あぁ。」
私は颯爽と室内へ入った。
「ふっ…」
遂に、笑いが漏れた。カナの愚かっぷりは、怒り超越させて笑いを生んだ。
「ど、どうしたの?」
「いやな、知らないって怖いなあってさ。」
「え…」
私は満面の笑みで言ってやった。
「お前にとっての一番は、私なんだろ?」
今更になって、自分がとんでもないことをしたのではないかと思う。
チアキちゃんの笑顔は俺に罪悪感を孕ませた。
帰り道、俺はその笑顔を忘れられなかった。俺の目にしっかり焼き付いている。
いや、それだけじゃない。
南の感触、南の表情、チアキちゃんの感触、チアキちゃんの表情、全てが忘れることのできない甘美な情報だ。
二人の少女に好かれ、俺は幸せ者なのだろうか。初め、俺の心には南しかいなかったのに、今はチアキちゃんとの二人かいる。
俺がずっと想ってきた人、俺を想っている人、どちらかを選ぶべきなのだろうか…
考えるだけ無駄だな。正直、二人の想いは重い。でも、それに応えてあげたい。
俺は床につき、二人を想い、果てた。
ところで、大したことではないのだが気になったことがある。
帰り際に南にキスをされた時、南はその指をおれの指に絡めてきた。
その指は、何故か知らないが濡れていた。感触からして水ではなさそうだけれど、一体…
あの場から去った後、俺はそれを嗅いでみたがよく分からなかった。
そして俺は何を思ったか、舐めた。やっぱり分からない。まさか毒なんてことはないだろうけど…
数時間前…
私は自室で、所謂オナニーってのをしていた。藤岡を想い、私は賢明にアソコを弄った。
今までオナニーなんてほっとんどしたことがなかったのだが、今日は何故かせずにはいられなかった。
私の性欲はなかなか治まらなかった。藤岡が頭に思い浮かぶだけで感じてしまう。
藤岡のをここに入れたら……ああぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
考えただけでもうイってしまう。本当、どうしちゃったんだ私は。病気だな。
漸く落ち着いてきて、私はびしょびしょの指先を見つめた。
「こんなの見たら、藤岡どうなるかなあ」
私は身なりを整え自室を出た。洗面所には向かわずに、居間へ。炬燵に入る。
私は、炬燵の中でアソコに触れてみた。未だにびしょびしょ、というよりぐしょぐしょだ。
ハルカに気づかれないように俯き、声を抑える。
藤岡がこの中に居て、弄ってきたらどうしよう?などとくだらないことを思う。重症だな。
最終更新:2008年02月27日 22:26