ここは南家。時間は夕刻。
 そしてここには二人の人影。
「おいチアキ。お前がそこで勉強してると私がまるで怠けているように
 見えるだろ」
 次女のカナが床にゴロゴロと寝転がりながら文句を言った。
 今日も我を通す姿勢は変わらない。
「見えるんじゃない。怠けてるんだバカ」
 言い捨てると再びノートに目を落とす。
 というかもとからそんなに動かしていなかった。
 どうでもいい、ということなのだろう。
「あっ、今お前私のことバカって言ったな」
 さすがに起き上がって反応を見せる。
「言ったさ。それがどうしたバカ」
 黙々と宿題を解きながら言う。
 カナがついには立ち上がって、拳をチアキに突きつけた。
「バカと言った方がバカなんだぞ!」
 さすがにうるさいと思ったのか、
 チアキは年甲斐も無く疲れたため息を吐き、
「分かった。分かったから黙ってくれアホ」
「なぁっ……」
 言い換えられて上手く返せないカナは、仁王立ちのまま震えている。
 そして震えたままチアキの目の前に座った。
「くそぅ……。そんなに勉強が楽しいのか」
「楽しいからするんじゃない。それも分からないのかアホ」
「なぁっ! またアホって言ったな!」
 今度はペンを置いて盛大なため息を吐く。
 つくづく外見に似合わない行動をする少女だった。
「バカと言うな。アホと言うな。じゃあマヌケとでも言ってほしいのかマヌケ」



「お、おお、お前ぇ……」
 指差して、驚愕の表情をみせる。
「私より頭が良いと証明できたら撤回してやる」
「て、てっかい……?」
 分かっちゃいないようすのカナ。
「もう二度と言わないでやろうと言ったんだマヌケ」
「お前はアレか、私を蔑んで楽しんでるのか!」
「楽しんでるわけじゃない。事実を言ったまでだ」
 ふっと蔑むような目をするチアキ。
 あぁ、その歳でそんな目をするなんて……。
「お前は『おかしな事』について何にもしらんだろぅ!」
 その事実を突きつけると、少なからずチアキは動揺を見せた。
「そ、それはハルカ姉さまがまだ知らなくていいというからでな……」
「ふん、そのハルカが知っていることを私も知っているんだぞ?
 どうだ、羨ましかろう?」
「ぐぬぅ……」
 長女、ハルカの名前を出されて本当に悔しそうな表情を見せるチアキ。
 カナは誇らしげに腕を組んだ。
「私のことをカナ姉さまと呼んだら教えてやらないこともないぞ?」
 何て奴だカナっ! 小学生に駆け引きをするなんて!
「……………ほ、本当だな?」
 ハルカに少しでも近づきたいと心から願っているチアキにとって、
 その申し出はかなり魅力的なもので、小学生の心は簡単に屈してしまう。
「ああ。本当だとも。さあ、さあ!」
 大人気ないカナ。
「カっ、カナっ……!」
「どうした? お前のハルカに対する想いはその程度なのか?」
 とても悪役っぷりがお似合いのカナ。



 普段と立場が逆転しているだけに、とても優越感に浸っているのだろう。
「くぅ……カナ、姉さま……」
 ついに言ってしまったその言葉。
 噛み締めるようにカナは感動していた。
 思い起こせばいつから姉として見られていなかったことか。
「よしよし可愛いぞ妹よ。さあ目を閉じるのだ」
 チアキは教えてもらえると思い、多少不安げに目を閉じた。
 そして唇に柔らかなものが当たる感触でカッと目を見開いた。
 以前感じたあの感触と同じそれに。
 そしてチアキの目に映ったのは目を閉じた姉の姿。
「なあっ!」
 顔を引き離そうとした瞬間、ガッとカナの手が伸びて、千秋の頭を
 固定した。
「んっ!」
 再び感じる柔らかさ。
 しかも今度は違っていた。
「んー! んんーっ!」
 力ずくで閉ざしていた唇を割って、湿った軟体物が侵入してきたのだ。
「んっ、ん、ふぅ、んんっ、ちゅっ、あぅ、んふぅ~」
 割って入ったカナの舌にどう対処したらいいのか分からないチアキは、
 やられたい放題に口の中を蹂躙される。
 舌を舐められ、唾液を送り込まれ、歯茎や口内を丹念に舐められた。
 カナがどうしてそんなことが出来るのかはさておいて、
 ようやく離れることが出来た顔からは糸が引いていた。
「ぷはぁ~。どうだ、これが『おかしな事』の一歩だぞ。
 しかもまだまだあるんだからな。
 どうした? 怖気づいたか? この程度ではハルカには追いつけないぞ」
 またもハルカの名前を出して挑発するカナ。



 それを挑発だと分かっていても、コケにされたように思ってしまい、
 どうしても抵抗してしまう。
「ふ、ふんっ。なんだこのぐらい。まだ先があるんだろう?
 さあ教えろ」
 唇を袖でゴシゴシと擦る。
「カナ姉さまは?」
「……カナ姉さま」
「はっはっは、愛い奴愛い奴」
 カナはチアキの頭をぐりぐりと撫でると、もう一度キスをした。
「んぅっ……」
 抵抗=屈服という式が頭の中で成り立っているチアキは甘んじて
 それを受け入れる。
 それに乗じてカナの手はチアキのズボンの方へと伸びていく。
「んふぅ!」
 明らかにカナが触れた場所とはチアキの秘所、その場所だった。
 ズボンの上から何度も何度も刺激するように、押しながら上下になぞる。
「はぁ、んっ、んふぅ、ふあぁ、あっ、んあっ!」
 チアキの声が次第に艶を増し、それに合わせて逆にカナは手を止める。

最終更新:2008年02月15日 21:47