「む、むむぅ……」
南家の次女、カナは一枚のプリント見ずに唸っていた。
今日は以前におこなったテストが返ってくる日で、何気にこれがヤバイことに
なると、デンジャーなことになる。
ゆっくりと目を開けるカナ。
そこには他のテストではあり得ない数字が書かれていた。
「おおぅ! 92点」
ちなみに何のテストかというと『保健体育』だったりする。
とはいえテストで良い成績を取れた喜びを、友人のケイコに無理矢理教えに
行った。
近寄ってきた藤岡は蹴り飛ばしておいた。
「おいケイコ。私は92点だったが、そっちはどうだ?」
「…………」
なぜかケイコの表情が暗い。心なしか眼鏡にも陰が見える。
ケイコはテスト用紙を見つめたまま固まっていた。
「?」
不思議に思ったカナがこっそりと覗き込む。
とそこにはこれまたあり得ない数字が書かれていた。
「……30点。赤点ギリギリじゃないか」
そう。100点量産マシーンと呼ばれてもおかしくないあのケイコが、
どうしてか30点という低い数字を取っていたのだ。
「あ……、カナ」
ショックが隠せないのだろう。
暗い雰囲気を背負ったまま、消え入りそうな声でケイコが言った。
「どうしよぉ~」
「む。どうするもこうするも、どうしてそんな低い点数を取ったんだ?」
さすがのカナも心配になったのだろう。隣の席に問答無用で座る。
「今回のテスト範囲が……、そのぉ~」
ケイコが顔を赤くして、言いにくそうに言った。
「? テスト範囲?」
首を傾げるカナは今回の保健体育のテスト範囲を思い出す。
「確か二次成長期の辺りだったな」
そう。子供から大人に移り変わる時期。体の変化や、体の中がどうなているのか
知るのだ。
なぜかそんな内容だと覚えていた上に、点数も良かったカナ。
「はうぅ~……」
『二次成長期』という単語にますます顔を赤くするケイコ。耳まで真っ赤だ。
「どうしたんだいったい?」
カナにはケイコの純情さがまったく理解できないようだ。
ボソボソとケイコが呟き始める。
「あのね、勉強はしようと思ったんだけど、教科書とか参考書は恥ずかしくて
見れなかったの……。ノートも単語とかちょっと恥ずかしくて……」
とても恥ずかしそうにして両手で顔を隠すケイコ。
そんな姿を見てカナは何かを考えている表情。
あごに手をあて、もう片方の手をひじの内側にのせている。
「じゃあ、勉強するか?」
「え?」
あまりにも突然の言葉に理解できなかったケイコはカナの方を向いた。
驚きの表情を見せるが、カナはいたって真面目そうな表情だった。
「じゃあ今日私ん家に集まろう。今日はハルカもチアキも遅いからな」
「え、集まるのとか勉強するのとかはいいんだけど、遅いのは関係あるの?」
唯我独尊なカナはその質問を完璧に無視した。
それが一層ケイコの不安を掻き立てたのは言うまでもない。
「お邪魔しまーす」
「おう、勝手に入れ入れ」
ケイコを促しつつ、カナも一緒に入っていく。
今にある机に向かい合って座ると、カナがおもむろに口を開いた。
「では勉強を始めます」
今から手術でも始めようかという口ぶりだ。
「何からやるの?」
当然の質問。話の流れからすれば保健体育だろうが。
「うむ。思うにケイコは恥ずかしいが故、まともに勉強できなかったのだろう?」
なぜか偉そうな口調のカナ。
「う、うん」
「というわけで私が恥ずかしくならないようにしてやろう!」
言うと立ち上がり、机を寄せた。
「? ?? ???」
明らかに行動の意図が読めない。
ケイコは不思議そうに首を傾げるばかりだ。
「この辺でいいか。さ、もうちょっと前に出て。後ろ危ないから」
「え、いいけど。後ろ? 危ない?」
とりあえず言われた通り少し前に出た。
後ろと言われて振り返ってみたが、あるのは壁だけだったし、到底理解できない。
「では」
その言葉がケイコの耳に入る頃には世界は一転していた。
「えっ、えっ、えっ?」
気付いたら天井を見上げていて、目の前にはカナの顔。
両手は頭の上の方で押さえられていて、身動きが取れなくなっている。
「まあ初めてだろうから順序良くやっていこうと思う」
「んっ!」
カナは突然ケイコの口を自分の口で塞ぐと、舌を侵入させた。
二、三順序を外しているような気がする上に、人として色々間違っている。
「んん~! ん~、んんっ、んく、んくぅ、っく」
暴れように暴れられず、拒否しようにも拒否出来ず。
「ぷはぁ……」
ようやく口を離したカナ。
ケイコが目に涙を浮かべていた。
「はぁ、はぁ、カ、カナ、どうしてぇ?」
「もっと恥ずかしいことをすれば、薄まると思って。なに、優しくするから安心しろ」
そういう問題ではないのだが、カナもう一度ケイコにキスをする。
今度は吸い付くようにキスし、徐々に顔をずらして、耳の周辺、首筋、鎖骨と
徐々に体の下へ向かっていた。
「あっ、ダメ、そんなトコ、あうんっ!」
最終更新:2008年02月15日 21:48