認めたくないけど、これはある感覚なんじゃないかって思うようになってきてしまった。
「うう、う、うう……あ、あぁ……あんっ! あ、あんっ!」
「はあ、はあ」
マコトもだいぶ疲れてるみたいだ。
「ち、チアキ……」
いつの間にか呼び捨てだったが、疲れてるみたいだから、止めないでおいた。
「な、なんだ……?」
「ええと、次にいくよ」
「次……?」
マコトは「次」と言うと、私の下半身に手を下ろし……。
するっ
「!!」
短パンに手をかけると、それを下ろそうとした。
「なっ! ダメだっ! 何するんだっ!」
「だ、だって、こっちが本番なんだって!」
「本も番もなにもあるかっ! バカ、やめろっ!」
しばらく抑えたり引っ張ったりの格闘になったが、いかんせん、私はもう疲れていた。
「くっ」
脱がさせまいとうつぶせになったところに、
ずるっ
「なっ!」
マコトにお尻を突き出す形で、下着ごと下ろされてしまった。
自然、犬みたいな格好になった。
「あ……」
「うわっ」
「見るな、バカ野郎!」
「そこ」は自分でもよく見たことのないところだった。
だけど、その言葉が届くか届かないかの前に、マコトの指が私の体に触れた。
くにっ
「いっ……!」
「おおっ!?」
「な、なにしてるんだっ?」
「チアキ、なんかチアキから出てる」
「え……?」
マコトに手を取られて、私は「そこ」を触ってみた。
ぬる……
「!!」
な、なんだこれ……?
汗……じゃないよな?
おしっこ……でもないよな?



「チアキっ、これは濡れてるんだよ!」
「ぬ、濡れてる……?」
なんだそれ。なんで私がそんなことにならないといけないんだよ。
「わかったから、もうカンベンしてくれ……」
とにかく、この恥ずかしい格好をなんとかしたかった。
ホントに、なんで昨日から、こんなにツイてないんだよ……。
「ここからだよチアキ!」
「なに……?」
ぬちゅるっ
「ふああああっっ!?」
マコトの顔が、私の「そこ」についた。
「あ、あ……あぁ……」
今までに感じたことのない感覚。
くすぐったいとも、こそばゆいとも違う感覚だ。
ちゅぱっ、ぬちゅ、ぐちゅっ、ちゅう、ちゅう……
「ああっ! あぁっ! もう、ダメだ……ああああっ! やだ、ぁ……」
相変わらず、マコトの舌はすごい勢いで動く。
「あああぁぁっ、ひあっ! あっ! ふぁあ……うぁっ、あっ、はぁっ」
舌が動くたびに電気が走り、私はもうその感覚を認めてしまっていた。
「ああ……う、ああぁ……マコト……気持ちいいよぉ……」
その言葉を出してしまってから、あとの私はもう、素直だった。
「ああっ! あんっ! ぅあんっ! あっ! ああっ! あんっ! あああぁ……」
ハルカ姉さまも、カナも、これをしていたんだ。
二人はもう、大人だから知っていたんだ。
「あっ! うぁっ、はっ、はぁっ、はっ、はぁ、やっ、ああっ、はぁ、はぁっ……!」
なんで私に教えてくれなかったのか、やっとわかった。
これは、知っちゃいけないことなんだ。私はまだ、知らないほうが良かったんだって思った。
「あああぁっ! もうっ、もうやめ……うううぅぅぅ……ああっ! うっ、あっ、あんっ!」
自分が変になりそうで怖かった。だから、もうしないから許してくださいって思った。
「ああっ! あ! あ、あああああああぁぁぁぁ……あああーーーーーっっっ!!!!」
ぷしゅっ
「え?」
ぷしゃああああああああっ
「ち、チアキ、おしっこ……」
「ああっ、ぐすっ、あっ、あっ、ごめん、ごめんなさい……」
最後の一滴を出し終わるま止まらなくて、マットをびしょびしょにして、ようやくおしっこは止まった。
「ううっ、うっ、えぐっ、あ、うああああん……」
だけど、目から出る液体は止まらなくて、私が泣き止むまで、マコトは呆然としていた。



「チアキちゃんごめんね。もっと早く気がついてればよかった」
「あーん、チアキちゃんゴメンねー!」
それからほどなくして、体育倉庫には先生が迎えに来てくれた。
「チアキちゃーん!」
「ごめんねチアキちゃん!」
「い、いや、ホントに大丈夫」
さっきから首が重い。
さすがに、人間二人を首にぶら下げるのは、大変だと思った。
「チアキったら、遅いから心配したんだよ」
「まったく、体育倉庫で男と二人とは、何やってたんだか」
ハルカ姉さまとカナも迎えに来ていた。
帰りが遅いのを心配したハルカ姉さまが学校に連絡してくれたみたいだ。
「…………」
さっきから、マコトがずっとこっちを見ているのは気がついてた。
だけど、なんて言ったらいいものか、私にもわからないんだよ。
こういうときは、男のほうから声をかけるべきじゃないのか?
「…………」
「おい、マコト」
「はいっ」
マコトの母親も迎えに来ていた。
ちょいちょいと手招きして、マコトだけ呼び寄せる。
「な、なんだっ!? その、ごめんなっ」
「いや、頼むから謝らないでほしいんだよ。気づかれると困るんだ」
「はいっ」
あー、もう、どうしたものか……。
「おい」
「はいっ」
「今日のことは絶対誰にも言うなよ」
「はいっ」
「それで、お前はどうしたいんだ」
「えっ?」
マコトは怒られると思っていたのか、きょとんとした顔をした。
「まさか、あれだけして何も考えてないとは思ってないだろうな?」
「お、思ってないよっ!」
「じゃあ、どうするんだ」
「わかりません!」
やっぱりバカ野郎だ。



「お前は、ハルカ姉さまが好きなんだろう?」
「いや! そんなハルカさんが好きとかそんな大それた!」
「声が大きいよ。それで、私はどうするんだ」
「へ? チアキ?」
「私のことはどうでもいいのか」
「い、いや! そんなことないよ!」
「うん」
ハルカ姉さまとカナがこっちを不審そうに見ている。
早く話を切り上げよう。
「マコトが私のことを一番にするなら、今日のことは許してやろう」
「す、するよっ! チアキのこと大事にするよっ!」
「ただし!」
私はマコトを睨みつけた。
「私はバカ野郎は嫌いなんだよ。だから、私より頭のいい男になるのが条件だ」
「な、なるよっ! 俺、がんばるよ!」
「それまで、私以外とこういうことをするのは禁止だからな」
「うん! もうしないよ!」
「それと、誰かにしゃべったら、今の約束もなしだ」
「はいっ」
「よし」
別にマコトのことは好きでもなんでもないけど、これでクラスにバカ野郎がいなくなるだろう。
「じゃあ、帰るか」
「うん」
私はハルカ姉さまの元に戻った。
「おやおや、チアキもお年頃になったもんだ」
「チアキ、何を話してきたの?」
「ええと……」
さて、なんて言おう。
カナがにやにやしながらこっちを見ていた。
「謝るくらいなら、最初からするなと言う話を」
「!!!」
「謝るくらいなら? なにそれ?」
「ち、チアキさん? ちょっとこっちで話でもしようじゃないか」
「確かめるくらいなら、最初から言うなってことを」
「???」
「チアキ様っ! 本日はいかなるおやつをご所望でございましょうかっ!?」
「疲れたから、甘いものが食べたいよ」
「ハルカ、私は一足先に帰って、疲れた妹のために一個300円くらいするプリンでも買っておいてあげることにするよ」



「そう? カナは優しいね」
「ははははは。まあ、かわいい妹のためだからねっ!」
「おい、ハルカ姉さまの分も忘れるなよ」
「承知しました!」
「???」
そのまま、私はハルカ姉さまと帰宅した。
途中、ふと空を見上げると、雨はすっかり上がって雲の間から星が見えていた。
私が、少し大人になったと知ったら、お父さんとお母さんはどんな顔をするんだろう。
そんなことを考えながら、ハルカ姉さまの手をしっかりと握った。
ツイてないと思っていたけど、今見た星空は……。
なんだか、久しぶりの人に会えたみたいで、すごく心地よかった。
「チアキ様、パステルのプリンでございます」
「明日も」
「そっ、そんなバカな! チアキさま、どうか、お慈悲をっ! お慈悲をっ……!」
「藤岡にでも頼め」
「! そうか! よく考えたら、私だけのせいじゃないじゃないかっ! 連帯責任だっ!」
「藤岡君がどうかしたの?」
「い、いや! なんでもない! なんでもないぞ!」
「そう。ところでカナ。晩の牛乳2リットル。はい」
「ぷおおっ!」
「ざまあみろ」
そして、今日も我が家の夜はいつも通りだった。
「藤岡っ! ふ、藤岡も半分の1リットルは手伝えよーう! えっ、えっ」
そんなみなみけ。
最終更新:2008年02月16日 21:10