さっきから、私たちはほとんど無言だ。
そもそも、マコトと二人きりなんて、私にとってどんな罰を受けるより残酷だと思う。
だから私は、ずっと自分の家のことを考えていた。
「な、なあ、南……」
「…………」
今日も、カナは藤岡と二人なんだろうか。
「その……俺のせいでごめんな」
「…………」
ハルカ姉さまは、今日の夜も昨日みたいなことをするんだろうか。
「…………」
「…………」
私にはわからないけれど、いつか私もあんなことをするんだろうか。
そう思うと、なんだか怖くなって、泣きそうになった。
「…………」
「…………」
私にはわからない大人の行為。
疲れきって、寒くなって、そんなことを考えて、私はどんどん心細くなってしまった。
「…………」
「……なあ」
「えっ!? なっ、なんだ!?」
私から出た声に、マコトはまるで助かったかのように飛びついてきた。
「おかしなことって……なんだ?」
「おかしなこと?」
マコトは、私が急に出した話題に、頭がついてきていないようだ。
「前に知ってるようなことを言ってたじゃないか。おかしなことってなんだ?」
「そっ、それは!」
マコトは顔を真っ赤にして飛びのいた。
もしかして、私の考えてる「おかしなこと」と同じなのかもしれない。
「なあ、おかしなことを知ってるのか?」
「知ってるといえば知ってるけど」
「じゃあ教えてくれよ」
「俺もねえちゃんから聞いただけだもん」
「それでいい。教えて欲しいんだよ」
マコトはちょっと悩んでるみたいだった。
聞いただけなら、そのまま説明すればいいだけでしょう。
「じゃ、じゃあいくぞっ!」
「よし、こい」
がばっ
「何、するん、だっ!」
右ストレートが炸裂した。
「だ、だって、おかしなことを教えてくれって……」
「私の体に触れるな」
「だって、触らないと教えられないよ……」
「触る? 口で説明してほしいんだよ」
「わかった、口でするよ」
がばっ
「何、するん、だっ!」
黄金の右が炸裂した。
「~~っっ……~~……っ!!! ……っ!!!」
「私の体に触れるな」
「だ、だって、触らないとできないよ……」
「だから、言葉で説明しろって言ってるんだよ」
「体に触ったり、体を舐めたり……」
「そうか。それは私にはムリだよ」
「だろ? だから俺もしたことないよ……」
なんだ、そういうことか。
なんでそんなことをするのかはわからないけど、何をしてたのかはなんとなくわかった。
だけど、なんでそれが怖いのかはもっとわからなくなった。
「…………」
「痛い~……」
怖いのはもしかして、私がそれをするのがイヤだからじゃないか。
それをすることによって、私は怖くなくなるんだろうか。
ふと、そんなことを思った。
「…………」
「南?」
「してみたいのか?」
「えっ?」
言ってから、急に汗が噴き出した。
急に体が熱くなってきたよ。これは、なんなんだろう。
「してみたいのか?」
「い、いや、俺は別に……」
「して……みたいのか?」
「はいっ」
前提として、私はしてみたくない。
そうじゃないと、なんだか自分がすごくおかしな生き物になる気がした。
「で、どうするんだ?」
「ええと……」
マコトが困ったように私の体を上から下まで見た。
「変な目で私を見るなよ」
「ご、ごめん」
マコトは困ったように手を伸ばすと、私の体育着の裾に手を入れた。
「なっ!」
ごそごそ
「何をするんだっ! やめろっ!」
「だ、だって、しようって言ったじゃんかっ!」
マコトに触れられるのは覚悟してたハズなのに、なんだか、急に怖くなった。
怖くなったというよりも、この感覚は。
恥ずかしくなった。
「うわっ!」
体育着をまくられて、私はすごく大事なことを思い出した。
「あれ。南ってブラジャーつけてるんだ」
「み、見るなーっ!」
そう。しまった。よりにもよって。
ちょうど昨日まで、私はキャミソールかタンクトップを着ていたんだ。
だけど、最近になって、私の周りの友人が一人、ブラジャーを着けてきたんだよ。
それ以来、ブラジャーをつける人口は多くなり、とうとうクラスでつけていないのは私だけになってしまったんだ。
これを第一次ブラジャーの政変と私は呼ぶ。
普段はみんなキャミソールのくせに、体育があるときは、みんなブラジャーを一斉に着けてきた。
だから私も、それとなくハルカ姉さまにお願いして、私用のものを、とうとう一枚買ってもらった。
そのデビュー戦が今日だったんだよ。
それがよりにもよって。
「うわっ、すげぇ!」
マコトに見られた。
はっきり言って、ブラジャーの本来の役割は果たせていないから、用は短いタンクトップと言っても過言じゃない。
もっとはっきり言ってしまえば、見栄だ。ああ、見栄だよ。
っていうか、バカみたいだ。
それを、クラスで一番のバカ野郎に見られてしまった。
「あっ、あっ……」
「ん?」
「もう、殺してくれ……」
全ての気力が一気になくなった。
もうダメだ。
「ど、どうした南! 俺、クラスの子がブラジャーしてるの初めて見たよ!」
「その話題をするな!」
ホントにバカ野郎だ。
何も考えてない大バカ野郎だよ。
少しは気を使えと思った。
「そっかー、南もハルカさんみたいになるんだなー」
ああ、私はハルカ姉さまにはなれないよ。ハルカ姉さま……。
ハルカ姉さま?
「あ! いや! 俺はハルカさんの胸を見たとかそんな!」
「ハルカ姉さまみたいに……?」
そうだ、これからハルカ姉さまみたいになるんだ。
「そうだ、南! 胸は触ったほうが大きくなるらしいよ!」
マコトがなにか必死に騒いだ。
「…………」
「み、南……?」
「マコト……ゴーだ」
「はいっ」
どうせ、ここまで来たんだ。もう、なんでも我慢しよう。
そう思って、ゴーサインを出した。
もう、なんでもやってくれ。
「じゃ、じゃあ、いくよっ!」
ぐいっ
ブラジャーをあげると、私の小さな胸がマコトの目の前に晒しだされた。
さすがに、恥ずかしいんだよ……。
な、なんだか、緊張してきたぞ。
くりっ
マコトの手が、私の胸の突起に当たった。
「あんっ!」
びくんっ
思わず私の体が跳ねた。
な、なんだこれ!? なんなんだこれはっ!?
「み、南?」
「く、くずぐったい……くすぐったいだけだよ」
「そ、そうか! じゃあ、いくよっ!」
くりん
「あぁんっ!」
なんだか、緊張して、想像以上にくすぐったい。
これは、我慢できるもんじゃないと思った。
「ま、マコト、もっと優しくしてくれ……」
「はいっ」
さわさわさわ
「う、うう……」
体がくすぐったくて、恥ずかしくて、頭がとけそうだった。
この感じがなにかに似てる……これは……。
くりんっ
「うあぁんっ!」
お、おしっこするとき……だ……。
くりっ、くりん、くりっ、くりん
「あっ、あぁっ! ひゃんっ! ダメッ、ダメだっ!」
初めての感覚に、体のどこかがおかしくなりそうだった。
「み、南……大丈夫か?」
こくん
かろうじてうなずくのがやっとだった。
というよりも、ホントに私は大丈夫なのか……?
ぱくん
そこで、信じられないものを見た。
マコトが、私のそれに口をつけた。
「なっ……」
ちゅう……
「あぁうっ!」
また、こそばゆい感覚が私の中をまっすぐに通った。
さ、さっきとは違う感触が、また……!
ぺろっ、ぺろぺろぺろ、ぺろっ
「あんっ! あっ、あんっ! ぁはっ、ふぁぁ……」
マコトは、アイスでも舐めるかのように、私のそれを舐めまわした。
だけど、指でされるよりも、それは私の芯によく通る感触だった。
「あぁっ、はっ、ふぁっ、はあぁ……ああぅんっ! あぁんっ! あっ! あ……っ!」
「はあ、はあ……あ、熱いよ、南……」
マコトはこの気温の中、体育着の上を脱いだ。
だけど、不思議には思わなかった。
「南も、汗かいてるけど、熱いのかっ?」
え……。
ぽたっ
私も知らず知らずのうち、汗をかくほど熱くなっていた。
「熱い……」
マコトはマットの上に私を押し倒すと、私の体育着の上着を脱がせた。
「あ……」
ぺろぺろぺろぺろ
「ううっ! あっ、やっ……! ああ、はぁっ、うっ、あうっ……」
マコトの舌は、悔しいけどすごく、くすぐったかった。
そして、
ちゅうっ
「っっっ!」
ときどきこんな風に吸われると、その感覚はさらに大きくなった。
「うう……す、吸うのが、いい……吸うの……」
「はいっ」
ちゅうちゅうちゅうっ
「あんっ! ば……バカ野郎っ! あ、あ、そんなに強く吸ったら……痛いっ!」
「ごめん!」
かぷっ
「はううっ!」
最終更新:2008年02月16日 21:06