うん、とても人間らしい点数じゃないか。あたしはよくやったよ。
正直言って目の前に置かれている理科の答案の右上に書かれた62という数字には多少納得いかないが、こう思えばどうということはないさ。
「カナー、何点だったー?」
ケイコがあたしの点数をきいてくる。
むぅ、この子ってば頭もいいのになんであたしの親友やってんのかねぇ。
「62点だよ、実にいい数字じゃないか。」
そう、人間らしくていい数字なのだ。きっとそうだ。
「ケイコは何点なのさ?」
「百点」
ぱーどぅん?
彼女は笑顔でそう言った。
「百点?それって百点中の百t(ry」
ここからはお決まりのやりとりが続く、これも楽しい日常かな。
「そんなに頭がいいなら白衣を着ればいいよ」
とりあえず一言言い放っておこう。



「おーい南」
そんな日常風景にもう一人のレギュラーが入ってくる。
「南は何点だった?」
「バカだねぇ、人にものを尋ねる時はまず自分から言うもんだろう」
あれ、あたしってちょっとオバサンっぽい?
「そうだね、俺は65点だったよ」
負けた、なんだかんだでこの番長にはテストで勝ったことがない気がする。
「む、62点だよ。今は笑うがいいさ」
「だがしかし、これであたしの負けではないぞ」
「次に返ってくる国語のテストが真の勝負だ!」
正直勝ってる見込みもないけどこうでも言わなきゃダメなんだろう、ノリ的に。
「ちょっとカナ、またそんなこと言って」
「南、勝負って?」
言った手前止められてもひくわけにはいくまい。
「そうだな、じゃあ前回と同じく負け犬には犬のマネをしてもらおうか」
この言葉に責任は持てないけど多分大丈夫でしょう。
何が大丈夫なのかはあたしにもわからないけど。
「そういうことじゃなくってさ」
「~~」
藤岡が困った顔をしている。
見てておもしろいな。



ここで授業開始の鐘が鳴る。
「よし、じゃあそういうことで決定な」
「もう、カナったら」
関係無いはずのケイコは怒っている、藤岡も困惑しながら席へ帰っていった。
ふむぅ、どうなることやら………
なんて他人事のように思いながら、とりあえずはきちんと授業は受けることにする。
まぁ半分くらいは寝る予定ですけど。



結論から言うとコレはまずい。
先ほど藤岡は62点だったので、国語も60点以上はあると見ているが、当のあたしは55点だ。
ちなみにケイコはまたも百点だったので
「広辞苑になればいいよ」
とだけ言っておいた。
ところで今はあたしの点数の話。
そうだ、前みたいに改竄すればいいじゃん。
5の下半分を円にして歪な66点をつくろう。
うん、流石にこれなら勝ってるでしょう。
「南ー」
ふっ、いいところに来おったわ。



「残念だが藤岡、あたしは66点だ」
勝ったな、これは。
「そう、俺は67点だったよ」
え、あれ、負けた?
あれ、あたしの負け?
よくわからないので、とりあえずケイコに倒れ掛かろう。



「キャッ!」
「カナー、急に倒れてこないでよー」
親友が叫ぶ、まぁケイコの言うとおりなんだけど。
「なんで、なんで勝てないの」
改竄までしたから本当は圧倒的敗北なんだけど。
「えーっと、俺の勝ちでいいのかな?」
悔しいがそのとおりだよ、勝者。
「そうだな、今回はちゃんと負け犬に甘んじるが次はないぞ」
「今日は丁度ハルカもチアキもいない、帰りにうちへよっていけ」
別に家まで来る必要はないんだけど、学校でやるよりはいいからな。
「そうだね、じゃあお言葉に甘えて」
ちなみにケイコはこの時「広辞苑になって白衣を着ればいいのかなぁ」と呟いてた。

最終更新:2008年02月16日 22:20