「おじゃまするよ!」
元気よくドアを開いた冬馬は両手を振り上げたポーズのまま固まってしまった。
冬馬の目に映っているのは、半裸の千秋を押し倒す、夏奈の姿だった。
「よう、トウマ」
夏奈が振り返って挨拶をする。夏奈の両手はしっかりと千秋の両手を押さえ込んだままだ。
「なんだ、けんかばかりしてるから仲が悪いのかと思っていたが、実は仲がよかったのか。 けんかするほど仲がいいというしな」
と考えて冬馬は首を横に振った。
いやいや、重要なのはそこじゃない。
百合姉妹だ。
どうすればいい。オレはどうすれば……
「おじゃましたよ!」
冬馬は逃げることを決断した。
「待て! 行くな!」
千秋が呼び止める。
冬馬はドアを半分ほど閉じたままで返事をする。
「いや、オレそっちの趣味はないし」
「趣味ってなんだ。トウマおまえなにか誤解してないか」
千秋が必死に叫んだ。
誤解? そうだよな。オレってばなにを考えてるんだよ。常識的に考えてありえないよな。
Tシャツをメクリあげられて小さなおっぱいを丸出しの千秋の上に、夏奈が馬乗りになっているからといって、そんなことあるわけないよな。
これにはきっと事情が……
冬馬が、思い返して部屋に入ろうとしたときだった。
「いいだろ。千秋。今更照れなくてもさ」
夏奈が無理矢理千秋の唇を奪った。
「やっぱり。百合姉妹!?」
冬馬の目がまんまるに見開かれる。
「さあ、トウマも一緒に楽しもう」
夏奈が怪しくほほえんだ。
冬馬は小さく悲鳴を上げて、一歩退いた。
普段の元気の良さはまったく陰を潜め、おびえる小動物のような状態だ。
「いい加減に、しろ!」
千秋の会心の頭突きが夏奈の顔面に炸裂した。
「ぐおう」
夏奈は鼻を押さえて転げ回った。
解放された千秋は素早く起き上がると、これまた素早く乱れた着衣を直した。
千秋の姿は何とはなしに艶っぽく見えた。
上気した頬。荒い息づかい。ぴっちりとしたホットパンツから伸びるすらりとした脚。
「いかん。オレはなにを考えてるんだ」
千秋の未成熟なくせにどこか大人びた容姿が、魅力的に見える、ような気がする。
ってそうじゃなくて。
冬馬は頭をふって邪念を追い払おうとした。
「こら、ふじおかで血を!」
鼻血にぬいぐるみを押しつけていた夏奈を千秋は蹴り飛ばした。
ぬいぐるみを奪い返した千秋は警戒して夏奈から距離をとった。
「トウマ、改めてオッス」
ティッシュを鼻に押し込みながら夏奈が言う。
警戒しながら冬馬も「おっす」
「ははは、そんな堅くなるなよ。いやがる妹の胸囲を無理矢理測ろうとしてただけだから」
言われてみると床にメイジャーが落ちている。
なーんだ。そんなことか。
「いやがってるんなら、やるなよ」
冬馬はやっと安心して、部屋に入った。
千秋が冬馬に駆け寄る。
「信じてくれ。私は変態じゃないんだ」
千秋のいつにない勢いに冬馬は反射的にうなずいた。
「そんな、実の姉とおかしなことをするような」
なぜか照れている千秋。
なんとなく冬馬も照れる。
「ほんとうに、これがハルカ姉様だったら、とか考えてないからな。誤解するんじゃないぞ」
両手を組み合わせてもじもじ。
なんかすごくおかしなことになっている千秋。
夏奈が冬馬にボディランゲージで合図していることに気づかない千秋。
冬馬は怪しい動きをする夏奈から目をそらした。
あれは、千秋を捕まえろって言ってるんだよな。
なになに、言うことを聞かないと藤岡にばらすだって!
くう、卑怯な。
「すまん! チアキ」
冬馬は千秋を押し倒した。
「きゃあ」
突然、冬馬に押し倒されて、悲鳴を上げる千秋。
「いきなり、何をするんだ!」
「すまない。詳しくは言えないが、オレはこうするしかないんだ」
冬馬は千秋の視線から目をそらしながら、必死に千秋の体を捕まえる。
千秋は千秋で逃れようと必死だ。
小学生二人の体が、組んずほぐれつする。
結局、二人は床に座り込んで、冬馬は千秋を、背中から両手ごと抱きかかえる形になった。
千秋は頭を振り回し、自由になる両足をばたつかせた。
千秋の髪の毛が冬馬の顔に当たる。束縛から抜け出そうと、千秋がもがく。冬馬はまるで暴れ馬を押さえ込もうとしているような気分になった。
「なんで胸囲を測るくらいのことがそんなに嫌なんだよ」
冬馬はいささか当惑気味に言う。
「うるさい。裏切り者め」
千秋は完全にブチギレ状態だ。
「おまえには、わからないんだよ!」
「そりゃ、カナに味方するのは悪いとは思うけど」
冬馬はちょっぴり後ろめたい。
夏奈のクスクス笑いが聞こえてきた。
「まあ、チアキよりも女なトウマにはわからないだろう」
「うるさいよ! うるさいよ!」
ああ、そういうことかと納得する。
しかし、最近の千秋はめっきりとおっぱいが大きくなってきているのだが。本人はまだまだ不満があるのだろう。
千秋がばたばた暴れる。
いい加減、押さえているのも限界だ。
男子にも負けない冬馬と非力な千秋といえどもしょせんは同い年同士、そんなに力が違うというわけでもない。
「ちょっと、待ってなさいよ」
夏奈は言い置いて部屋を出たかと思うと、すぐに帰ってきた。手の中には、ロープがある。
「それはやり過ぎだろう」
冬馬はさすがに呆れていった。
「いやいや、大丈夫だ。チアキは縛られて吊されるのにはなれているからね」
「縛って、吊されるって……」
やっぱり百合姉妹かよ!
冬馬はまたしてもドン引き状態に陥った。
「違う違う。チアキはてるてる坊主なんだよ」
「はあ?」
冬馬はますますわけがわからなくなった。
そんな冬馬の疑問は置いておいて事態は進んでいく。
冬馬と夏奈の二人は苦労して、千秋をロープで縛りあげた。
服は捲りあげて、乳房はむき出しの状態だ。
まだ、脚は自由だが、ここまできて千秋も覚悟したようだ。すっかり大人しくなっている。
「もういいよ。わかったよ。好きにすればいいよ」
千秋は投げやりに言った。
そんな千秋の様子を見て、冬馬は胸が高鳴るのを自覚した。
なんだろう、この感じは。
恥ずかしい格好で縛られている千秋を見ているとドキドキが止まらない……
「それじゃあいよいよ測るよ」
夏奈はメジャー拾い上げた。
「ああ、これじゃあ測れないじゃないか」
千秋は芋虫様にぐるぐる巻きに縛られていたのだ。ロープを解いて両手を解放しないことには、胸囲を測るなんて無理だ。そうかといって、ロープを解くことも危険きわまりない。
怒れる野獣・チアキを野に放てば再び捕獲することは不可能。というか、こちらの身が普通に危ない。
うーん、どうしたもんだろ。
「まったく、トウマは後先ってことを考えないんだから」
「カナにだけは言われたくないぜ」
二人が醜く言い争っていると、千秋がニヒルに笑った。
「おい、バカ野郎ども。もういいでしょ。解きなさいよ。今すぐ解いたら全部忘れてあげるから」
全部忘れてあげるから?
絶対嘘だろ、それ! と冬馬は直感した。
今更に、冬馬は千秋を怒らせてしまったことを後悔した。
とそれまで座りこんでいた夏奈が立ち上がった。
「カナ?」
どうしたんだ、と冬馬は夏奈を見上げる。
「ここまできたら毒を食らわば皿までよ」
夏奈はつぶやく。
「ハルカが隠し持っているアレを使うしかないでしょ」
そして、夏奈が隣の部屋から持ってきたものは、おちんちんの形をしていた。冬馬が普段見慣れている兄貴たちのふにゃふにゃの状態のおちんちんではない形だ。
「ロープを解いても、動けなくなるくらい、ふらふらにしてあげるから!」
「ちょっと待て。なんだそれは」
おびえる千秋の声。
ズキン、と胸に刺さる感触。
何だろう、これは、と冬馬は自問する。
「トウマ、脚を押さえて」
いつになくきつい夏奈の命令口調。
命じられるままに冬馬の体は動いた。
暴れる千秋の脚を押さえることは容易ではなかった。
冬馬は左脚を夏奈は右脚を押さえにかかった。
プリっとした肉の感触を意識すると冬馬は頭の芯が熱くなるのを感じた。千秋とはとっくみあいのけんかをすることもある。だけど、こんな風にその体の柔らかさや香り、体温の心地よさを意識したことはなかった。
千秋の顔が見たこともないおびえに強ばっている。
冬馬は夏奈と協力して、千秋のホットパンツを脱がしにかかる。
ずいぶんと苦労してそれを引き下げると、パンツの白い生地が濡れていた。
千秋も感じてるんだ。
冬馬のあそこもさっきから滑っている。
「おや、おしっこ漏らしちゃったかな」
夏奈が意地悪げに言う。
「違う!」
千秋が即座に否定する。
「じゃあ、この濡れてるのは何かしらね」
夏奈の手にした振動するものが、千秋の大事な部分に押しつけられる。
と、陸揚げされた魚みたいに、千秋の体がはねた。
「どう、気持ちいいでしょ。ハルカは毎晩これで逝っちゃってるんだから」
千秋が動物のようにうめいた。
「ほら、どうよハルカの愛液にまみれたバイブの味は。」
夏奈はいつもの夏奈ではなかった。
まるで女王のようだ。
そして、千秋もいつもの千秋ではない。
何かが、狂ってしまっている。冬馬はこの場から逃げ出したいと感じた。だが、冬馬の中に潜む何かが、それを許さない。
とても居心地がよかったもう一つの南家。
春香は優しいお姉さんで、夏奈はおもしろいお姉さんで、千秋は生意気な同級生で、内田とマコトはバカ野郎で、ここに来れば、誰かがいて、とても楽しくて、帰るのが遅くなって、また遊びに来て。
今、この場所はそんな南家とは違う。
「ほら、トウマはおっぱいをかわいがってあげなさいよ」
夏奈が言うのに、トウマは黙ってうなずくと、千秋のツンと尖った乳首に指を伸ばした。
最終更新:2008年02月21日 14:20