「はぁ」
南にアタックし始めてから早三年。一向に南は振り向いてくれない。
普段のやりとりから周りは「夫婦」とからかってくるけど、俺には分かる。南は俺を何とも思っちゃいない。
俺は再び溜め息をつく。南にばれぬように。
今日も南に連れられて南の家にやって来た。本来なら喜ぶべきだが、ほぼ毎週訪れる場所に最早時めきはしない。
遠慮なく上がり込み、いつもの場所に座る。そして。
「…」
チアキちゃんが無言で「いつも通りに」座る。南は寝ると言って部屋に閉じこもっていった
「あれ」
俺はふと気づく。
「なんだ」
「いやさ、今更なんだけど。大きくなったなあって。」
チアキちゃんが振り返る。
「…セクハラか?」
「ち、違うよ!そうじゃなくて…」
俺は無意識にチアキちゃんの頭を撫でる。
「初めてこうやって座った時はさ、チアキちゃんの髪の天辺が俺の目のあたりだったけど、今じゃ顔の位置が同じだろ?」
「…ああ」
何か言ってくるかと思ったけどチアキちゃんは黙ったままだ。
「…三年か。もう三年も…」
「…どうしたんだ?」
チアキちゃんが心配そうに見つめる。
「…俺じゃ、やっぱりダメなのかな…」
どうしても口から言葉が出てしまう。チアキちゃんに言っても仕方がないのにな…
「私が…、私から言ってみるよ。」
「え…」
「おまえが、カナを好いているのは知っている。」
え…知って?
「知らないとでも思っていたのかバカやろう。おまえのにやけ顔をみてれば誰でも分かる」
俺は唖然とした。隠してたつもりじゃないけどさ…
「兎に角だ。」
チアキちゃんが立ち上がる。
「私がカナを説得してみるよ。」
「いいのか?」
「か、勘違いするなよ!別におまえのため」
「うん、ありがとう!」
「え、あ、ああ。」
なんか光が見えてきたぞ!今までの俺はまるで、なにこれぇ、馬鹿げてるZE☆
「本当にありがとう!」
思わずチアキちゃんに抱きつく。心から感謝。
と、冷静に考えるとセクハラだし、チアキちゃんも突き返してくるかとおもったんだけど、あれ?
「…別に、構わないさ」
だ、抱き返し!チアキちゃんは腕を背中に回して抱き返してきた。
「…別に」
「え…」
どん
チアキちゃんに突き返された。俺はなにがなんだか分からない。
「ちゃんと話しておく。だから今日は帰れ。」
チアキちゃんの口調がいきなり冷たくなる。
「帰れって、いきなりいわ」
「帰れ」
「…はい」
従順な俺は足早に南家を去る。別れ際、チアキちゃんが悲しい顔をしていたのが気がかりだなあ…
でもチアキちゃんのことだ。南にちゃんと伝えてくれる筈だ!
俺はスキップをしながら家へと向かう。
次の日。
俺は誰よりも早く教室へ来、南を待つ。
時が経つにつれ、クラスメートがどんどん入室していく。
みんな、俺が既に教室にいたことに驚く。でもそんなの関係ない。今の俺は南以外アウトおぶ眼中だぜ!
ガラガラ
振り返る。朝のHRの始まりを告げるチャイムが鳴るか鳴らないかくらいの時間に、南はやってきた。
そして、目が合う。南がこちらに向かってくる。そして、俺の目の前に。
「お、おはよう南」
俺は照れながら挨拶をする。一方南は…
「オハヨウ」
不機嫌だ!そして、みなみ は そっぽ を むいた!
゚д゚
「あ、あの…南?」
俺は恐る恐る話しかけた。
「ナンダ」
「なんか、怒ってないか」
「ベツニ」
「な、なら良いんだけど。」
気のせいかな。きっと寝不足なんだろう。チアキちゃんが、俺の気持ちを伝えてくれたから。
「南、あとで大事な話がある」
「…アア」
そう返事をすると、そそくさと席に着いた。
それから南から殺気が漂い始めた。
「はぁ…」
理解できない。なんでこうなったんだ。
俺は放課後に南を呼び止めたんだ。「大切な話」をするために。
「南!」
南が振り返った。
「ナンダ」
相変わらず殺気を漂わせている。
「あ、あの、ここじゃなんだから…」
俺は南の手を引く。
「あ、ちょっと待ってよぉ」
「案ずるなケイコ、私は必ず生きて帰ってくる」
へ?
「さあ、番長。さっさと連れていくがいい!お前と私のコロッセウムに!」
何かがぶれ始めてる気がする。
そして、屋上へ。南と向き合って頭を下げる。
「好きです。つきあってください。」
今までとは違い、決して「誤解」が生まれぬようはっきりと、敬語で告げた。
上目遣いで南の様子を窺う。南はきょとんとしている、ように見えるが明らかに赤面している。手応えありだ!
「な、なんだ?新たなスタンド攻撃か?」
俺は頭を上げる。きょ、今日のお、俺は一味ちががうんだ!
俺はじっと南の目を見つめた。
「な…」
「好きです。」
「うぅ…」
南は狼狽えている。なんて可愛いんだ!抱きしめてやりたいくらいだよ!
ってあれ?
俺、今南に抱きついてないか?
胸のビートが激しく高鳴る。このままじゃマズい!けど、ここで引き下がったら…
「ふふ…なるほどな」
「え?」
ゴスッ
なっ、腹に強い衝撃が…!?俺はいきなりの事に尻餅をつく。
「み、みなみ?」
「流石は番長だな。やられる前に動きを封じようという作戦だったのか」
「え…え?」
「だが甘いな。甘すぎる。そうだな、ハルカの作るアップルパイよりも甘いな!」
そう言うと、南は俺の両足首を両手で掴む。
「お前には罰が必要だ。」
南は右足を俺の股間に…まさかこれは!?
「いくぞ?」
南はとても楽しそうだ。
「電気あんまーっ!」
アッー!
南は満足げに去っていった。俺は、悲しいかな、軽く感じてしまった。
最終更新:2008年02月21日 20:35