そうして今、帰路についてるわけだ。南とのラブラブ家路にはならなかった。
「チアキちゃん、説得してくれなかったのかなぁ」
と言った矢先、チアキちゃんから電話が着た。
「もしもし」
「…うまくいったか?」
「撃沈だった。」
「え…」
反応から察するに、チアキちゃんは「説得」まではいかなくとも、話はしてくれたみたいだ。
なんとなく気まずい沈黙。それを打ち破ったのはチアキちゃんだった。
「今から家に来い。」
「え?」
「来い。」
ぶつっ


従順な俺の足は南の家へ…



で、いつも通りに俺たちは座る。南の家に初めて訪れた時からずっとだ。

それにしても、チアキちゃん大きくなったなあ。なんというか体が女性らしくなってきてる気がする。
女性らしい体がどんなのかは知らないけど。

「それで、話してくれたんだよね?」
俺は優しく尋ねる。
「ああ、伝えたよ。」

チアキちゃんは昨日の会話を詳しく語りだした。



「藤岡のことなんだが」
晩御飯を食べ終えてハルカ姉様が洗い物をしている間にカナに話しかけた。
「んぉ?」
カナは耳をほじくりながら雑誌をみている。
「お前と最終決着をつけたいらしい。」
耳をほじくる指を止める。
「決着…?」
「ああ、決着だ。」
「断る。」
即答か。
「忘れたのか?私はあいつと仲良くなりたいんだ。」
「そうか。でもな…」
私はわざと口ごもる。
「な、なんだよぉ」
「私の口から言っていいのか分からないんだがな…」
「もったいぶるなよ~」
「…耳の穴かっぽじって聞けよ」
「耳ならもう掃除ずみです!」
「…そうだったな。」

果たして、私が今から言おうとしていることは正しいと言えるのか。いや言えない。
でも、私は、藤岡を…


「藤岡はお前とは仲良くしたくないってさ。」



カナの表情が凍る。
「今日、藤岡から電話が来たんだ。カナに伝えてほしいと。」
「な、なにをだ!?」
「と、その前に聞いておきたいことがある。」
ここで少しからかってみるか。
「何故そこまで藤岡と仲良くなることに拘る。」
「え…それは、」
「好きなのか?実は」
にやつきながら攻めてみる。ここで照れるなり誤魔化すなりしてくれれば落としがいがある。
「はぁ…?」
え…?「はぁ?」ってなんだよ。しかも、キョトンとしてやがる。
「なんでそうなる。私は単に仲良くなりたいだけだ。」
…つまんね
「兎に角、どうにかその危機を乗り越えられないものか…」
カナの女らしさを見いだせなかったのは些か残念だが、まあいい。
「あんずるな。藤岡はお前にラストチャンスを与えると言っていた。」
「な…」
「教えてほしいか。」
カナは犬のように請う。
「教えてやるよ。」
「ありがとう!チアキ様!」
なんだか気分がいいな。
「いいかよく聞け。明日の放課後、藤岡を倒せ。」
もう後には引き返せない。引き返すつもりもなかった。



私は、昨日チアキに言われたことを思い出す。
『藤岡を倒せ。藤岡はお前と決着をつけたいんだ。お前が勝てば仲良しになり、藤岡が勝てば絶交、二度と関わらない。』
番長め、意外とメンタルアタッカーだな…。だが私には通用しない!
私は朝から殺気と闘志をチャージする。朝から放課後までの記憶がない。

「らんらんるぅ…らんらんるぅ…」
私は呪文を口ずさみながら藤岡に連れられた。



私の勝ちだった。一時は動きを封じられたが、力加減を間違えたのか私はあっさり解縛し、反撃「牙連絶蹴撃」をかます。
藤岡の野望は砕け散ったのだ。私は満足して家路についた。

家についた私は速攻で寝た。その間になにがあったかなんて知る由もない。


最終更新:2008年02月21日 20:39