シナリオ名:その星の理由
◆プロローグ
ぷっぷくぷっぷく、ぷっぷくぷー。
ハリネズミ族のステラは、今日も元気に遺跡探検。
今日は中原のまよい森、その北東の遺跡群に来ています。
こわいお化けの話や、悪しきものの話は聞いていたけれど、それでも好奇心を抑えられないのがハリネズミ族のさがというものでした。
遺跡の中はきれいな光であふれていて、とても楽しくて、手に持っていたラッパを吹きながら、ステラは奥へと進んでいきます。
そうして、一つの輝くものを見つけて、ステラはそれを借りていくことにしました。
意気揚々と帰っていくステラ。
輝くもののあった場所からは、より輝く光がふきだしています。
その光が行く先を、大きな影が眺めていました。
座り込んだまま、ステラなど来なかったかのように。
ただ、光を見つめていました。
◆オープニングクエスト1
ここは心地よい歌と風が流れる、想いがかたちをなす大地。季節は秋。まんまるい月を眺めながら、言葉ある種族たちみんなでその年の実りを交換して、お祭りを楽しんだり、そのあとに来る冬のためにせっせと準備をしたりする時期。忙しくも心ある時期です。
今日、あなた達はリス族の住むまよい森の国王である、ホーラスのもとへ龍樹から荷物を届けたところでした。あなた達のウタカゼの師であるフィノ師からは、何か困ったことがないかも尋ねてきて、と言われています。
今、荷物の目録を受け取ったホーラスは、まさに困った、という顔をしています。
ですが、それはまだ急いでのことではないようです。 それに、何か言いにくいことがあるようです。
ホーラスにそのことを尋ねるのであれば、
【愛情】+<説得>で質問してみるといいでしょう。
尋ねない場合や失敗した場合は、この下の行から、
『そんな時、~』まで読み飛ばしてください。
成功した場合は、ホーラスはちょっとばつの悪そうな顔をしてこう言います。
「う、む。いや、宵闇の君(R&Rvol.144掲載のシナリオフックに登場した、フクロウの女王です)とな、次の満月の夜、またクッキーを食べようではないかと、相談したのだが……」
「ここしばらく月が全く見えないどころか、星が動かないのだ。美しい、非の打ち所がない星空が、ずっと続いている」
「おかしいとは思わないかな、ウタカゼ殿」
そんな時、一話の大きなフクロウに乗って、まよい森の王女クラリッサが飛び込んできました。
クラリッサは焦った様子でこう言います。
「国王様、大変ですわ。このまよい森の北東の遺跡群にある遺跡の一つから、とてもきれいで、少し悲しい光が空に向かってふきだしているそうですの」
「その光を見たものは、過去のことを思い出して、めそめそとした気持ちになってしまうらしいですわ」
「すでに野伏(レンジャー)の何名かも、その症状を訴えています。ウタカゼ様に連絡を……あら?」
「ウタカゼ様! 北東の遺跡群の調査をお願いします!」
クラリッサはちょっとおっちょこちょいでした。
今回の使命は、【北東の遺跡群の調査をする】です。
北東の遺跡に向かうのであれば、リス族と仲良しの乗りフクロウが案内してくれます。
あなた達は全員、騎乗動物シートの乗りフクロウの部分に記入して、騎乗することができます。
出発するのであればストーリー1へ進んでください。
◆ストーリー1
クエスト1
クエスト2
クエスト3
クエスト4
クエスト5
クエスト6
◆ターニングクエスト
あなた達が遺跡へ到着すると、たしかにその遺跡から、たくさんの光が空へと昇っていました。それを見て、何かを思い出せそうですが……。
判定:【知恵】+<学問>
難易度:2
判定者:1人
成功した場合は、その光がどことなくティアストーン炉が放つ色合いに似ていると気づきます。
失敗した場合も、ウタカゼには害がないことがわかります。ウタカゼにとっては安全な光です。
そして、光が昇っていく先をよく見ると、なんということでしょう。それらは、夜空に星の光として煌いていたのです。
光のふきだす場所をよく見てみれば、遺跡の入口がわかります。中へ入っていくのであれば、◆ストーリー2へ進んでください。
◆ストーリー2
クエスト7
クエスト8
クエスト9
クエスト10
クエスト11
クエスト12
◆エンディングクエスト
遺跡の奥に、光を放ちながらくるくると回るいにしえのアーティファクトがありました。またその近くに、悲しみに揺らめく大きな影が、座り込んでいます。
それは悪意の精霊でした。
悪意の精霊はぶつぶつと、悲しげに、あなた達にはわからない言葉をつぶやき続けます。
その間も、光を放つアーティファクトはくるくると回っています。
●悪意の精霊「スターゲイザー」との対戦
悪意:PC人数×6
凶暴2 DP:2
狡猾10 DP:10
憎悪2 DP:2
攻撃パターン:攻撃しない
呪いの力:星を見る者
判定:なし
使用条件:ダメージを受けたラウンド
使用制限:なし
効果:ダメージを受けて減少した分の悪意をすべて回復する。
攻撃を受けた場合、スターゲイザーはあなた達に気づきます。ですが話しかけてくる以外は何もしてきません。
まるで何もいない場所に向けて、ひとりごとを言うように。
GMは適宜、下記の文章を読み上げて、会話が成り立っているようで現時点ではまだそれが成り立たない悪意の精霊を演出してください。
「戦いに、意味なんかないわ」
「悪意も、希望も、どっちも。いつか誰もが滅んでしまって、星になるだけ」
「私は、もう、星を見上げるだけでいいの」
悪意の精霊ときちんと会話がしたいとあなた達が望むのであれば、まず目線の高さを合わせる必要があります。
光を放つアーティファクトが載っている、いにしえの大きな台の上に乗ってみましょう。
以下の判定は、すべて自分たちの陣営の手番を使って行うものとします。
判定:【勇気】+<冒険> 難易度:2
一人成功:台の上に乗ることができた。
全員失敗:転がり落ちてしまった。全員の希望に2点のダメージ。
目線の高さが合った場合、スターゲイザーにはあなた達の声がよく聞こえるでしょう。
「小さなおともだち。でも、あなた達もそうでしょう? 楽しかった過去を見ていた方が、つらくなるに決まっている未来を見るより、楽しいじゃない」
スターゲイザーにあなた達の言葉を届かせるには、まず、彼女の気持ちを理解し、適切な言葉を届かせる必要があります。
机の上に載っているいにしえの本(辞書)を使って、まず、「こんにちわ、いい天気ですね」と言ってみましょう。
判定:【知恵】+<学問> 難易度:2
一人成功:言葉を伝えることができた。
全員失敗:いにしえの言葉は難しい。頭から火が噴きそうだ。全員の希望に2点ダメージ。
言葉が通じた場合、スターゲイザーは驚いた顔をして、あなた達に向き直ります。
「ディア・フレンド。言葉が話せるのね。でも、今日はいい天気じゃないわ。曇りだもの。このプラネタリウムは、そんな日でも星空を映し出してくれる。もう、現在も、未来もなく。ただ過去にあった美しい空を見ていればいいんじゃなくって?」
彼女の心は開きかけているものの、まだ通じていないようです。彼女に、あなた達の真心を伝えれば、きっと彼女の悪意は消えさるでしょう。
判定:【愛情】+<説得> 難易度:2
一人成功:心を伝えることができた。
全員失敗:うまく伝わらなくて、どちらかが泣き出してしまう。全員に2点のダメージ。
彼女の悪意が消え去った場合、スターゲイザーは星を見上げることをやめます。
そしてあなた達を柔らかく抱きしめてからそっと元の場所に下ろし、ほほ笑みます。
「ありがとう、小さなお星さま」
「地上の輝きを、思い出させてくれて」
「私に話しかけてくる人なんて、あの人以外、いなかったから」
「大きな星の導きが、あなた達にもありますように」
「過去は、明日のためにあるのね」
そう言って、彼女は黒い霧となって、そして機械の放つ煌く光に吸い込まれるように、消えていきました。
悪意の精霊は、もういません。
◆エピローグ
雲の長ダヤンがよく調べたところ、アーティファクトはティアストーン炉の一種で、悲しみの想いを注ぎ込むことで、星空を映しだす映写機のようなものだったようです。
彼女の悲しみがあまりにも大きかったものですから、夜空を星空にしてしまうほどの光になっていたのでしょう。そして、過去を強く想起させてしまったのです。
映写機は少しの悲しみ、あるいはティアストーンならば、小さな星空を映しだす、無害な道具だとわかりました。
そうして星のない夜、時折、昔を懐かしみたくなった者のために、映写機は癒しの光を放ち、悲しみを癒すティアストーン炉として、ささやかな上映会をするのでした。
ダヤンは、あなた達をねぎらい、彼女を救った場合はそのことも高く評価してくれます。
さて、あなた達はこれからどうするでしょうか。
星たちが、見守っていますよ。
(おしまい)
◆おまけ
ホーラス国王は、元通りになった星空と、まんまるい月を見上げながら、宵闇の君とクッキーを食べたそうです。
再び会った時、恥ずかしそうに、照れながら、そう言っていました。
それと、今回の事件が発覚する発端になったステラが持ち帰ったものはなんだったのでしょうか?
それは、映写機のレンズのふただったのです。
ダヤンにたっぷりとお灸をすえられたそうですよ。
(今度こそおしまい)
最終更新:2016年09月16日 15:21