ウタカゼシナリオ:『さざめく虫に迷わぬように

シナリオ名:『さざめく虫に迷わぬように』
「ここに好きなイラストを貼り付けよう!」
シナリオ執筆:kakurezatoP
シナリオレベル:6
使用ルールブック、サプリメント:RB、LU
シナリオ推奨人数:3~4人
◆プロローグ
ここは想いがかたちなす大地。歌と風の流れぬ場所。
そのどこかにある祠。
深く掘られた穴の中には、二人の少女。
「お姉ちゃん、わたい、おなかすいたよ」
「……そうだね」
「お姉ちゃん、わたい、帰りたいよ」
「……そうだね」
「お姉ちゃん、わたい、もっとみんなと遊びたかった。木登りして、手毬して、お歌をうたって、もっと……」
「……ごめんね」
狐面を強くつかみ、小さく区切られた空を仰ぎ見る。
落ちてきた蝗を握りつぶし、足元に目を伏せる。
「この思いを誰にも味わわせない」
「この思いをみんなに味わわせる」
ここは地の底。ここは絶望の果て。
「ああ、おなかがすいた」
涙が、土に染み込んで、消えた。
◆オープニングクエスト
ここは想いがかたちなす大地。歌と風の流れる場所。
あなた達は今、コビット族の村の豊かな麦の実りを襲った悪意の精霊と向かい合っています。
「はは。はは。はは……」
不気味な笑い声をあげながら、アバドンは小さな虫の弾丸を無数に吐き出して、あなた達に襲い掛かってきました!
●悪意の精霊「アバドン」との戦闘
●戦闘の結果
  • 敗北した場合
アバドンはあなた達をあざ笑います。
「はは。お前達など、その程度だ。何も知らず、何も救えず、そのまま、朽ち果てていくんだな」
「はは。はは。はは……」
しかし諦めるわけにはいきません。
あなた達は龍樹に一度戻り、何度でも立ち向かえます。
  • 勝利した場合
黒い霧になりながら、アバドンは笑います。
「ああ、そうだ。おれが消えても、悪意は消えない」
「飢えという苦しみは、消え去らないのだ!」
「はは。はは。はは……」
不気味な声を残し、黒い霧は風に流れていきました。

しかし、その言葉はあなた達の、そして村人達の胸に残り、
しめつけてきます。
あなた達はこの事件がこれで終わりではないような気がします。村人達もまた、不安からかあなた達にアバドンの言葉の真相と、脅威は去ったことを確かめてほしいと願います。
それを受けるのであれば、【使命:アバドンの言葉の真相を確かめる】を受け取って、今回の調査に乗り出してください。
調査を開始して、村人に話を聞く場合は、大人と子供で反応が異なります。
  • 村の大人に質問した場合
「実り守りの祠が心配です。いにしえの悲しいできごとを忘れないようにと作られた祠で、小さなお狐様が祀られているのです。それと、何か大変なものが封じられているとも」
  • 村の子供に質問した場合
「あの子が心配だな。あの子は、虫がとても苦手だから」
「あの子は実り守りの祠でよく遊んでくれるんだ」
「ウタカゼさま、様子を見てきてよ」

  • 実り守りの祠について質問した場合
→情報:いにしえに、虫による食害で食糧がなくなり、みんなが餓えた事件があった。その際、当時の村長の家の姉妹が、特別な歌と祈りの儀式をもって、虫の悪意を鎮め、豊穣を取り戻したという伝説がある祠。

実り守りの祠を調査するといいという指針が得られます。

三つほど情報を集めたところで、子供達が集まってきます。
そして、あなた達の周囲ではしゃいでいるうちに、一人の女の子が転んでしまい、泣き出してしまいます。
あなた達はどうするでしょうか? 愛情+歌or説得などで泣き止ませることができます。
愛情をもって女の子を泣き止ませると、周囲の男の子たちが驚いたように言います。

「すごいやウタカゼ様、鎮めの草餅なしで、泣いてる女の子を笑わせた!」

  • 鎮めの草餅の話について質問した場合
→情報:ある時期から村に伝わる風習で、女の子が泣いている時、男の子は草餅をあげて、とある歌をうたってあげて、泣き止むまであやしてあげるという習わしがあるそうです。
「めんどくさいけど、村のオキテだから」
「女の子が泣いてると、おれ達もなんとなく悲しいし」
「だから、悪いオキテじゃないと思うよ」
そう言って、その男の子も草餅(保存が利くように、竹皮で包んでいるようです)を見せてくれます。

  • 実り守りの祠へ向かうのであれば、村の子供達が案内してくれます。大人達は、なぜか怖がって案内してくれません。

子供達に案内されるならばストーリー1へ進んでください。
◆ストーリー1
クエスト1:「冒険:囚われたホタル」
描写:RB119P
判定者:1人
判定方法:【勇気】+<戦い>
or【勇気】+<冒険>
難易度:3(二回連続で成功すること)
成功:ホタルを助けられた。2へ。
失敗:助けられなかった。4へ。
クエスト2:「調査交渉:雲と風を読む」
描写:RB118P
判定者:1人
判定方法:【知恵】+<学問>
難易度:3
成功:雨が降ることがわかった。安全な地下道を通ろう。3へ。
失敗:天候の予測がつかない。ともあれ進もう。5へ。
クエスト3:「戦闘:忍び襲うは悪しきクモ」
描写:薄暗い林の中を通っていると、ふいに背中がぞくっとした。なんだろう。
判定者:全員
判定方法:【知恵】+<感覚>
難易度:3(ホタルがいれば難易度2)
成功:クモの不意打ちに気づくことができた。
失敗:クモの不意打ちの糸を受けてしまう。このラウンドは行動禁止。
対戦する敵の情報
敵名:悪しき《クモ》(→P133)敵数:1
攻撃方法:【狡猾】+<狩り>
攻撃パターン:ランダム敵の場所:地上
勝利:悪しきクモの悪意を払えた。(仲間可)
撤退:全員の希望に1d6-2のダメージ。
クエスト4:「冒険:切り裂く葉」
描写:RB119P
判定者:全員
判定方法:【勇気】+<戦い>
or【勇気】+<冒険>
難易度:3(二回連続で成功すること)
成功:無事に通り抜けられた。2へ。
失敗:葉に切り裂かれ、大けがをしてしまう。希望にー[1d6-2]のダメージ。5へ。
クエスト5:「冒険:降り出せば土砂降り」
描写:RB123P
判定者:全員
判定方法:【勇気】+<冒険>
or【知恵】+<感覚>
難易度:2
成功:雨を避けて進めた。もうすぐ子供達の遊び場だ。
6へ。
失敗:激しい雨が体を叩き、体力を奪っていく。
希望に[1d6-2]のダメージ。
クエスト6:「回復:小人と柿の木」
描写:RB110P
判定者:1人
判定方法:【知恵】+<狩り>
難易度:3
成功:全員で、落ちてきた甘い柿を堪能できた。
全員の希望を1d6+3点回復する。ターニングクエスト1へ。
失敗:柿の木は揺れただけで、実は落ちてこない。ターニングクエスト1へ。
◆ターニングクエスト1
あなた達が実り守りの祠に到着し、調査を開始しようとすると、狐面に、コビット族にしては珍しい、古い意匠の前合わせの着物を着た少女が現れました。
案内してくれた子供達は、その少女に対して警戒せずに、その周囲ではしゃぎ始めます。子供達は知っている子のようですね。

「何か探してるみたい。ひょっとして、迷子になっちゃった?」
何か答えると、狐面の少女はコロコロと笑い、あなた達の手を引いて、遊びに誘います。
「わたいと、遊んでちょうだいな」
「せっかくだから、ね。シズメの歌も教えてあげる」
「みんな、待っているんよ」
どう答えても、少女は遊びに誘う気でいっぱいのようです。
背を向けて駆けていく少女の、そのお面を結んでいる紐の根付を見て、あなた達はどう思うでしょうか。
その根付は、ティアストーンでできていたのです。
「さあ、遊ぼう。わたい達と!」
◆ストーリー2
クエスト1:激しく遊べ、木登りロープ!
描写:
判定者:全員
判定方法:【勇気】+<冒険>
難易度:3
一人成功:すごいや、「勇気の勲章」を入手!
全員失敗:子供達の勢いに疲れてしまった。全員の希望に2点のダメージ。
クエスト2:狙い定めて、手毬でポン!
描写:
判定者:全員
判定方法:【知恵】+<狩り>
難易度:3
一人成功:さすがだね、「知恵の勲章」を入手!
全員失敗:遊びにかけてはウタカゼさまより上手かもね、なんて子供達が得意げに笑っている。
クエスト3:笑顔で歌おう、古代の癒し歌。
描写:
判定者:全員
判定方法:【愛情】+<歌>
難易度:3
一人成功:穏やかな気持ちになる。少しだけお父さんとお母さんのことを思い出すかもしれないね。初心を思い出して、全員の希望が3点回復。また、「愛情の勲章」を入手。
全員失敗:懐かしい気持ちが行き過ぎて、家族のことを想って少し悲しくなってしまった。この歌のせいだ。全員の希望に2点ダメ―ジ。
クエスト4:遊び疲れて、おやつをどうぞ。
描写:
判定者:全員
判定方法:【希望】(協力判定)
難易度:3
成功:おいしいおやつ、草餅を食べた。お供えも用意して、みんな笑顔だ。全員の希望が3点回復。「お供えの草餅」を一つ入手。
失敗:おいしいおやつ、草餅を食べた。お供えも用意して、みんな元気だ。全員の希望が1点回復。「お供えの草餅」を一つ入手。
◆エンディングクエスト
みんなで遊び疲れて、祠のそばに座っていると。
ふと、子供達の肩に止まっていた小さな黒い羽虫が、祠の中に入り込んでいきます。
そして、祠の中にいた「何か」に……。
「あかん!」
狐面の少女が叫んでも、もう遅かったのです。
「はは。はは。はは……」
「ようやく見つけた、涙の石の想いの湧く、絶望の井戸」
「おまえに名を与えてやろう。おまえはおれだ。おれは、おまえだ」
「おまえの名は、悪意の精霊。お前の名は、《アカトンボ》だ!」
アバドンの残滓が、周囲にうっすらと残っていた悪意達を吸い上げ、「何か」に送り込みます。
「ああ、わたいは、そうだ、わたいは……」
「アカトンボ、絶望の運び手。希望を縫い付けてしまおう」
「そうだ、わたいは、おまえ達にわたいと同じ思いを永遠に味わわせてやる!」
金切声をあげて、アカトンボは襲い掛かってきます!
今や残滓どころか二体に増えた、アバドンと共に!
●悪意の精霊「アバドン」×2と「アカトンボ」と対戦。
(なおアバドンの悪意は5とする)
●アカトンボのデータ
アカトンボ(ドラゴンフライ)
悪意:20種別:悪意の精霊

大きさ:13(通常時)~33(翼を広げた時)cm
【凶暴】:4<戦い>:2DP6
【狡猾】:4<狩り>:6DP10
【憎悪】:8<歌>:4DP12
備考:勲章を持っている場合、アカトンボの対応したきもち(勇気ならば凶暴、知恵ならば狡猾、愛情ならば憎悪)を解き放ち、能力値を2下げることができる。
また、呪いの力を使わない時は「お供えの草餅」を持っているPCを必ず攻撃し、奪い取る。そして右も左もなくかじりついてしまう。こうなった場合、以後アカトンボの防御判定の達成値が半分になる。
●攻撃方法:
<戦い>:平手打ち
<狩り>:空中からの強襲
<歌>:金切声
●呪いの力:「衝動励起:飢餓」
タイミング:自分の手番で行動を消費する。
使用頻度:奇数ラウンド
使用制限:特になし
●判定
判定者:悪意の精霊
判定方法:【憎悪】+<歌>
VS
判定者:全員
判定方法:【愛情】+<歌>
成功:哀しい声だけど、ウタカゼは揺らがない!
失敗:彼女の味わった悲哀に飲み込まれる。【希望】に悪意の精霊の成功レベル分のダメージ。さらにどうしてもおなかがすいて、次の手番にリュックサックの中の食べられるアイテムを使用してしまう。
◆エピローグ1
戦いが終わると、祠はいつの間にか消えており、あたりは一面の麦畑になっていました。
「帰ろう、わたし達も」
「でも、わたい……」
「ねえ、小さな勇者様。この子に、何か言ってあげて」
あなた達の言葉を受けて、アカトンボだった少女は泣き出します。
「かえりたいよ、わたいも、わたいだって」
「う、うえぇ……。おっとう、おっがあ……」

そんな女の子を見て、一番最初にここまで案内してくれた男の子が、あなた達に何か言いたげに、ですが何か怯えがあるようで、まごまごしています。

彼を勇気づけてあげるならば、勇気で判定してください。
彼に上手な言葉を教えるならば、知恵で判定してください。
彼の愛情を引き出してあげるならば、愛情で判定してください。

失敗した場合は、竹皮で包まれた「お供えの草餅」を渡して、逃げ去ってしまいます。

成功した場合は、あなた達に「お供えの草餅」を渡して、こう言います。

「女の子が、泣いてたら、男の子はな」
「おいしいおやつを分けてあげなさいって」
「村のオキテなんだ」
「だから、あの子に」

直接アカトンボだった少女にそれを渡すのであれば、素直に女の子はかじりつきます。
男の子に一度返して、直接渡すように言えば、男の子はそのようにします。

エピローグ2へ進んでください。

◆エピローグ2
一口、かじって。
大粒の涙をこぼしながら、またかじって。
「あり、がとう……」
やわらかな風に、麦の穂が揺れる。実りの秋だ。
ゆうやけこやけで日が暮れて。
「もう、途中でおなかすかないね?」
「うん、むねいっぱい、食べたから」
『ようやく、帰れます。ありがとう、みんな』
黒い霧ではなく。彼女達は今、光の粒になって狐面の少女とアカトンボだった少女は消えていきます。
その表情は、狐面と小さな手がそれぞれ隠してしまっていますが、きっと……。
まだ登り切っていない月が、うっすらとほほ笑んでいるように見えます。
誰かが言いました。ぐぅ、とおなかの音と一緒に。
「お家へ帰ろう。晩ごはんを食べに」
(おしまい)
まい)

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最終更新:2016年09月16日 22:15