次元界を縦横に一掃せんとするサヴェッジ・タイドは、下方次元界を流れ、記憶を吸い尽くす恐るべきスデュクス河へと流れ込む。この魔の水域を旅する手助けをするこの連載記事では、プレイヤーである君たちに生き残るのに必要な秘訣、要領、そして小道具を提供する。『Dungeon』誌ではDMに対して『サヴェッジ・タイド・キャンペーン』を運用していくのに必要なあらゆる卑劣なプロットやずる賢いモンスターを提供していく一方、この『Dragon』誌では、その致命的な引き波にもっとうまく抵抗できるような細かな情報や選択肢を提供する。今月の記事では、ステュクス河ツアーと、来たるべきプリンス・オヴ・デーモンズその人との決戦のための支援をかき集めるために旅するべき場所に関する提言を紹介する。
ステュクス河
パンデモニウムの絶叫する泉から、アケロンの奥深くでの凍てつくような死まで、ステュクス河はこの多元宇宙におけるもっとも堕落し、恐ろしい世界を通り抜ける死のハイウェイを形作っている。しかし、秘密と不浄なる事柄に知悉した人々は、彼ら全員が恐れることとして、この致命的な川が記憶を盗み取る水であり、敢然とそれらに挑む旅人には大いに記憶を奪われる可能性があることを知っている。
下記で示すのは、ステュクス河に隣接するいくつかの世界を紹介するものである。すべてを包括するものではないが(特に無限の層なすアビスのことを考慮すれば)、これらはステュクス河を航行する者が遭遇する最も有名な場所や危険の要点を説明するものである。これらの一般的説明と考察とは別に、有益な技能に習熟したり、背景特徴を有する者はそれぞれの場所に関する不明瞭な事実を知っていたり、デモゴルゴンとの戦いにおける潜在的な助をなる事柄を明らかにできるかもしれない(適切な技能と難易度については、それぞれの場所の説明の最後に記載された技能判定の項目を参照)。
パンデモニウム
風吹きすさぶ魔窟パンデモニウムの第1階層パンデスモスから、ステュクス河の源流が流れ出ている。どのような特有の要素がこの次元界から溢れ出る河を発生させているかの確実なことを知る者はいないが、この謎を解明しようという無数の理論が考えられてきた。ある伝説では、ステュクス河の穢れは“冬のホール”と呼ばれる凍てついた次元界から滲み出ているのだと言われている。その地から、無限の融雪、神性の毒素、そして果てしなく拷問を受けているある神格の血液が混じり合い、絶え間ない邪悪が流れ込むパンデモニウムの絶叫に洗われる大地に溢れ出しているというのだ。
難易度18の【知力】〈宗教〉判定あるいは【知力】〈魔法学〉判定:パンデモニウムにおいて味方を探し求める者は、退位させられたノール種族の本来の神、ゴレルリクを見出すかもしれない。ほんの僅かで稀なノールの共同体だけが今なお彼に敬意を払っているが、ゴレルリクは民がデーモン・ロードのイーノグフ崇拝へ転じたことによって半神へと弱体化してしまった。絶望し、権威を奪われたこの神は、しばしばステュクス河を訪れてはその水を飲んで自らの過去を忘れているが、彼に残されているパワーは、そのような忘却を長く続かせることがないようにしている。ずる賢い舌先三寸を駆使する者であれば、デモゴルゴンを打ち倒し、プリンス・オヴ・デーモンズの玉座を手に入れることによって、彼はイーノグフを凌ぐことができ、彼の民を取り戻す可能性があると、哀れなゴレルリクをたぶらかすことができるかもしれない。
アビス
ステュクス河はわずかな滴りとして無限の層なすアビスへと入り込むが、爆発的に広がって荒れ狂う潮流と化す。これらの層の多くに、ステュクス河の流れは法模写と犠牲者を送り込み、彼らの旅路を生き延びた者の物語は、これらの世界をアビス全土で最も良く知られ、最もコスモポリタンなものへと変えている。
パズニア
アビスの第1階層、数え尽きせぬ転移門の平原は、間違いなく非フィーンドにとっては最も歓迎されている(とは言え、ここでいう「歓迎」とは単に「本質的に殺人が少なめ」というだけのことに過ぎない)。このうだるような暑さの次元界をステュクス河が蛇行して流れていき、数多くの民がもっと下層の――そして大抵は――言語に絶する危険を伴う階層へ導かれていく。最も良く知られている支流はヴァネロンの鉄の要塞に近い、シェンディラヴリへ続くものである。
難易度15の【知力】〈魔法学〉判定:この川の曲がりくねった箇所の近く、煩わしいクアジットの群れが巣食う辺りに、積み上げた骨を集め、“運命なき避難港”と呼ばれるグロテスクな停泊所が形成されている。“甲板長”と呼ばれる3人の日和見なメレノロスたちによって運営されているこの避難港は、ステュクス河において要塞町ブロークン・リーチに最も近い“安全な”停泊場所である、“甲板長”たちは1日あたり1,000gpの支払いであらゆる船がこの停泊所に停留することを許し、その船を全力で守ることを彼らの責務としている――十分な賄賂で買収されない限り。この港湾からは日に焼かれた赤い平原を一日以上かけて旅をすることになるが、ブロークン・リーチにはアウトランズの門の町プラーグ・モートへ続く転移門がある。アビスの外の同盟者が魔法的にこの次元界へ旅することができない場合、彼らが入ってくる可能性が最も高い場所はこの要塞の転移門からであろう。
PCたちが再度サキュブスのレッド・シュラウドの助けを求める場合、彼女はブロークン・リーチにはいない。彼女がどこへ行ったのかは誰も知らないし、それがどれくらいの期間になるのかも誰も知らないが、彼女の失踪は間違いなくシャミ・アモーラエの解放と何らかの関わりがある。
鮮血の浅瀬
血と腐敗した植物による悪臭を漂わす毒に侵されたぬかるみと化したステュクス河は、アビスの第81階層“鮮血の浅瀬”を穢すその毒素の正にひとつである。けだるげなステュクスの流れは病に侵された鮮血の沼地に這い入り、この階層の水浸しになった土地のあちこちに流れている――その土地それぞれが切望され、絶望的な将軍と請願者の部隊によって無益な戦いが行なわれている。この浅瀬では、船舶は容易に血に濡れた湿地のぬかるみにはまってしまい、すぐに自暴自棄になったデーモンたちが集まってきて、ありとあらゆるもの――木材として船そのものを、食料として乗組員を――を奪い去って行けるくらいに船速を遅くしてしまう。
難易度18の【知力】〈魔法学〉判定:“鮮血の浅瀬”には価値あるものは何もなく、最も勇敢な旅人ですらすぐに船旅をやめてしまう。“水漏れ”バスジルウィムという名の貪欲なナルフェシュネーの将軍が、ステュクス河の航路沿いに腐敗した木造要塞を築いてラターキンの小軍勢を指揮している。彼の部下たちはこの川を通行するあらゆるものを攻撃し、彼らの“ぬかるみの王”を喜ばせることに熱心である。
タナトス
アビスの第113階層タナトスにあるステュクス河の凍てつく水域を航行する者は、“アンデッドのプリンス”オルクスの支配する凍てつき、死が支配する世界の中に永遠に囚われてしまう危険を冒すことになる。ステュクス河は、この凍てつく世界の奥深くへ旅をするにしたがってその危険性が増して行くことは間違いようがない。氷と凍りついた死体でできた氷山のため、ステュクス河の航行は速度が遅く危険なものとなり、水膨れしたゾンビやその他のアンデッドによる侵入も同様に危険をもたらす。
難易度15の【知力】〈魔法学〉判定:タナトスへの旅人が、この階層の首都、間欠泉で熱せられた“涙の大釜”ラクリモウザで休息を取ることなどまずないだろう。オルクスの召使と破滅的な請願者たちが居住しているものの、目立たないようにしているよそ者は頻繁な攻撃に直面するということはあまりない。凍てついた港湾から直接受ける危険は別にして、この都市に到着した旅人が最初に出くわす可能性のある危険は、ラクリモウザの港湾長センシナーであろう。彼は肥満体のゾヴト・デーモン(第3版用サプリメント『Monster Manual II』参照)であり、額の中央には辺りを睥睨する大きすぎる山羊の眼を持っている。賄賂を払うことができない者や、この筋肉質のフィーンドにこの都市における彼らのビジネスが彼に何がしかの利益をもたらすだろうと確信させることができない者は、自分たちの船が航行不能になり、無力にステュクス河を漂流することになるのを目にするだろう。この都市の危険の度合いに関わりなく、ラクリモウザはオルクスの玉座エヴァーロストに最も近い港である。
タナトスの危険性にも関わらず、利益はそれらを遥かに上回る可能性がある。それがもたらす利益はその危険に十分釣り合うものとなるだろう。すべてのアビスにいるデーモンでオルクスよりもデモゴルゴンを軽侮している者はすくなく、アンデッドのプリンスは彼の憎きライバルとの戦争を遂行するのに説得はほとんど必要としないだろう。
シェダクラー
ステュクス河に沿ってアビスの第222階層――デーモン・ロードのジュイブレクスとザグトモイが争い合い、爛れさせている世界――へと乗り込んだ者は、この健忘症を引き起こす河が2つの支流に分かれる際に、危険な選択肢を提示されることになる。ひとつの方向では、暗黒の水は“菌類の女王”の領域である野蛮で腐敗した沼地を通っている。もう一方では、ステュクス河はこの次元界の2つの戦争中の領域の間の境界線を形成している。
ザグトモイの領域を通り抜ける旅をする者は、川に浮遊する黴と瓦礫の密度が高くなっていき、みるみる内に菌類の浅瀬の中で船足が遅くなり、巨大な倒壊したキノコによって航行はいらいらが募り危険なほどに致命的なものとなっていくことに気づく。発育阻害され、寄生虫に食われた人食いの部族と、精神を持たない沼地の恐怖が、沼地の水が持つ忘却の呪いを共有する記憶を奪う菌類のそばに何かないかと飢えて周辺のぬかるみをさらっている。
ザグトモイの領域とジュイブレクスの粘体の魔窟の間の水路に挑む旅人は、このおぞましい両方の土地の守護者の注意をひく危険を冒すことになる。片方の岸辺には、致命的な菌類、巨大なサイコミド、そしてさまよえるラカラズィルが生きた塁壁を形成して、その向こうに広がる黴の生えた荒野を防衛している。反対の岸に船を向ければ、川は酸性で捕食性のスライムによってゼリー状になっていく。
難易度15の【知力】〈魔法学〉判定:ザグトモイは彼女自身コスモポリタンな女王を気取っており、部分的に沈んだ石の桟橋がこの階層全土に伸びる境界線の川の中間点を示している。ここには、ムガリスという名の強力なヴァサグ・デーモン(『Dragon #337』参照)が、ザグトモイの宮殿へ通じる一方通行の小さな転移門を守護している。このデーモンを打ち倒すか、彼に彼らの価値を認めさせた者は、ザグトモイその人と交渉することができるかもしれない。彼女は自分自身をプリンス・オヴ・デーモンズの長年の盟友だと見なしてきており、彼との戦争は望んでいないが、賄賂によって来たる戦争において彼女からの不干渉の確約を得ることができるかもしれない。
(シェダクラーとその出自不明のクリーチャーたちに関するより詳細な情報については、『Dragon #337』の「Demonomicon of Iggwilv: Zuggtmoy」の記事参照)。
シェンディラヴリ
サキュバスの女王マルカンテトが支配する欺瞞に満ちたアビスの楽園シェンディラヴリの花の咲く平原と大理石のモニュメントは、その膨大な欺瞞と裏切りの深さを隠蔽している。ステュクス河は一見するとエリュシオンのように見える風景の中を短時間だけ通過し、退廃的な都市ミオマンタを流れ過ぎていく。この退廃と品性下劣な芸術家たちの都市の内部では、マルカンテトが最もお気に入りの部下たちである“輝ける修道女”たちが生活し、またサキュバスの女王の夏宮がある。
難易度15の【知力】〈魔法学〉判定:シェンディラヴリを旅する者は容易にステュクス河の流れを外れることができ、自由に緋海への航海に乗り出すことができる。そこから旅人はサキュバスの女王が宮廷を構えている退廃した大理石都市リヴァンハートへの航路を取ることができる。彼女はときにプリンス・オヴ・デーモンズに対抗する計画を練っているとも言われているが、マルカンテトはひとつの計画に惜しげもなく身を委ねるような人物ではない――たとえその計画が、彼女自身が糸を引いているものであってもだ。慎重で密かな彼女の援助は、おそらくは道具と秘密という形を取るであろうが、その代償は間違いなく肉をもって支払わねばならない。(シェンディラヴリに関するより詳細な情報については『Dragaon #353』の「Demonomicon of Iggwilv: Malcanthet」の記事参照)。
ゴランティス
ステュクス河はアビスの第597階層、“真の楽園”ゴランティス――デーモン・プリンスのソコスベノスの無限快楽の宮殿――へ、性的な描写を施して彫刻がされた滝を通って溢れ出している。この滝を通過する者はサターナリアの大理石の岸辺を通り過ぎながら漂流していることに気づくことになる。サターナリアは、その内部であらゆる種類の奢侈と酒食への耽溺が行なわれている、淫らな思いを誘う彫刻が並ぶ広大な庭園であり、“説得者”の“震え肉の宮殿”の全貌を収めている。ステュクス河を航海する者たちは美しい堕落者たちの姿には誘惑されるだろが、雨漏りのする真鍮のミナレットの隙間の高みから見える、肉に縛られた奴隷たちや果てしなく変わり続けるソコスベノスの倒錯した宮廷の様子には眉をしかめるだろう。花を咲かせた快楽のスキフ船に乗った光球売春婦たちから漂う香水の香りと蜂蜜のような甘え声はゴランティスが本当は偽善的に浄化された天国であることを示唆しているのかもしれないが、“真の楽園”の恐怖は火や獰猛な姿の中には見出されず、魅惑的なまなざし、偽りの美しさ、そして飽くことなき逸脱への肉欲の喜びといったものの中で見出される。
難易度15の【知力】〈魔法学〉判定:革に覆われしソコスベノスのパワーの広がりを知る者は少ないが、フラズアーブルが一時的に放棄した世界に対する彼の最近の侵攻は、彼の快楽奴隷たちの軍団が容易に征服軍へと変わりうることを示している。“説得者”が援助を与えてくれる可能性はあるものの、デモゴルゴンの悪名高い獣性と活力はソコスベノスの狂った欲情に火をつける。“浸透のデーモン・プリンス”に彼の持つ最悪の堕落した空想を放棄させるには、素晴らしい恩恵を提供する必要があるだろう。
カルケリ
ステュクス河は牢獄の次元界カルケリにおける救いを意味している。数多くの転移門がこの次元界へと通じているが、この次元界を去るものはほとんどないため、絶え間ないステュクスの流れは逃げようという勇気のある者にぞっとする希望を与えている。たとえその逃亡がアビスかハデスのどちらかに逃げることを意味しているにしても。この川の流れはカルケリの第1階層オルトリュスに注いでいる。そこは蚊と嘘つきの請願者たち――彼らのほとんどは逃げるためであればどんな事でも言うであろう――がはびこる湿地世界である。
難易度20の【知力】〈魔法学〉判定:ステュクス河がカルケリの第1階層を通過する際には、ティタンのクロノスの監獄であるオルトリュス山の近くを流れている。近くの川の中心には、ティタンのコイオスの不毛の監獄島が浮かんでいる。コイオスは死んだ策略の女神の愛息であり、神々に対するティタン族の氾濫の背後で戦略を練っていた人物であったと言われている。コイオスは何千年もの間この島に魔法的に束縛されており、広大無辺な記憶を失うことなくこの監獄から脱することは決してないという事を受け入れた。このティタンに永遠の時間から解放してくれそうな何かをもたらす事ができる者、あるいは単に彼の退屈を一時的に紛らせてくれるだけの者であっても、この多元宇宙がまだ若かった時代に彼が覚えていた何がしかの秘密を引き出すことができるかもしれない。
ハデス
灰色の荒野ハデスでは、ステュクス河はオイノスとして知られる人跡未踏の暗がりを横切っている。終わりなき“流血戦争”の戦場であり、フィーンドたちはもともと荒れ果てていた土地をさらに荒廃させ、荒れ果てた地を戦争の阿鼻叫喚で満たしている。この階層を流れるステュクス河に沿っていくと、高さ20マイルもの“キンオインの荒れ果てし塔”が姿を見せる。オイノロスと呼ばれる強大なウルトロロス大公による堕落した支配を受けているユーゴロスの要塞である。
難易度15の【知力】〈魔法学〉判定:オイノロスと彼の傭兵軍団はデモゴルゴンとの戦いにおいて魅力的な味方になりそうに見えるかもしれないが、“荒れ果てし塔”の主に招請を乞う者は愚者だけである。定命の者ではいかなる者であっても、デモゴルゴンが彼の敵を売り飛ばすために支払うだろう何がしかのほんの僅かにでも匹敵するものをこのウルトロロス大公に提供することはできない――事実、オイノロスはすぐに欲しいままに行動をし始めることだろう。代わりに、旅人たちは魔女イグウィルヴに助けを求めるかもしれない。彼女はステュクス河沿いに建つ大邸宅に住んでおり、デーモン、彼らの行動、そして彼らの弱点に関する知識では他の追随を許さない。
ゲヘナ
ステュクス河の最も危険な滝には、ゲヘナの第1階層である火山の階層カラースへ砕け落ちているものがある。果てしなく続く滝、二つに引き裂かれた岩、そして火山性の流れは熟練の船乗りの技量と、少なからぬ魔法の助けの両方が必要とされることを意味している。これらの汚染された急流を超えた先にあるゲヘナは、ユーゴロスの君主たちの本拠地であり、ステュクス河はリッチ王メリフの領域の真ん中を流れていく。これらの悪漢たちは誰一人として見知らぬ者を歓迎することはない。
難易度18の【知力】〈魔法学〉判定:魔法の助けなしでは、ゲヘナに入った途端、おそらく船舶は木っ端微塵に砕け散るか、着火して燃え尽きてしまうだろう。無限の虚空の急落する滝を安全に航行するためには魔法によるか、あるいは超常的なまでの船乗りの技量を必要とする。一部のユーゴロスは彼らの故郷の次元界の荒波に挑む船を魔法的に守護するお守りや呪文を提供しているが、これらの魔法はしばしばうまく働かないことがあるし、船舶をフィーンドの罠へと誘い込むことがある。
バートル
九層地獄の第1階層アヴェルヌスでは、ステュクス河はこの次元界そのものから滲み出している血液で増水する。ここでは、武器と鎧で武装したデヴィルたちによる無限の軍団が火を噴く平原に招集され、“流血戦争”の一部としてか、あるいは不運な物質界に対する悪魔の侵攻作戦の一部として侵略の準備を整えている。大部分の下級のデヴィルたちはこの川を旅する者を無視するが、オシュルスたちはこの次元界を行くデヴィル以外の者すべてをスパイと見なし、捕虜として第1階層の君主ベルの要塞である青銅城へ連行する。
難易度13の【知力】〈魔法学〉判定:デヴィルたちはアビスのデーモン・ロードたちの内戦をいつでも彼らの有利に使おうと――果てしなき“流血戦争”において優位な立場を得るための機会を得ようと――熱心だが、彼らの助けを求める者は、デモゴルゴンに対する現在の不和と計画が、この次元界固有のいつもの混沌よりもずっと大きなものであることを証明しなければならない。しかし、たとえそうした証明が為されたとしても、その情報がベルの下へ届く可能性は低く、彼が確実かつ非常に貴重な利益なしに定命の者の言葉に基づいて行動する可能性はもっと低い。
アケロン
ゲヘナで危険な転流を果たすなら、ステュクス河はアケロンでは殺人的な転流を起こす。そこは金属が打ち合わされる果てしなき戦争の次元界である。ステュクス河には定められた川筋などほとんどなく、ただ開けた空間を何マイルにも渡って滝のように流れ落ち、それから屋根を流れ落ちる雨のように開けた金属の平野の斜面を滑り落ち、再び滝のように急落するだけである。ステュクス河はアケロンで終わりを迎え、金属の層を横切って押し寄せ、オケアヌスの無限の黒い氷の中で凍りつく。
難易度20の【知力】〈魔法学〉判定:飛行できない船舶はアケロンでは長い間生き延びることはできない。レイズミスと呼ばれる1つの立方体には何世紀もの間この次元界に流れ込んでいるステュクス河の最初の落水によって生み出された巨大な滝が捕らわれており、黒水の中に無限の渦を巻いている。この水によって重度の錆びついた鉄には、ステュクス河の記憶を盗み取る特性が吹き込まれている。“死の運命の守護者”と呼ばれる次元間党派のメンバーが、砕ける水から遮蔽されているこの立方体の下層側を採掘している。空飛ぶ黒いガレオン船において、“死の運命の守護者”はこの金属から消耗の力を持つ武器を作り出し、それを次元界のあちこちにある党派の要塞へと運搬しているが、同時にこれらの武器を彼らの下まで到達するほどの粘り強さを持つ訪問者に対しては、大幅な割引価格で販売する。
君は何を知っているか:ステュクス河
伝説的で永遠なるステュクス河は、それが穢す世界が存在する限り下方次元界をめぐって流れ続けている。次元界についての知識を持つか、死後の物語について知るキャラクターは、この喪失の河に関する詳細な事柄を知っているかもしれない。
【知力】〈魔法学〉判定 |
難易度 |
結果 |
10 |
死んだ者すべてがステュクス河を渡って死後の世界へ旅立つ。 |
13 |
ステュクス河は下方次元界の流れている。この川の水に触れたり、飲んだりしたあらゆる者は知っていた事の全てを忘れる。 |
15 |
ステュクス河の暗黒の水の下には、下方次元界で最強の住民ですら恐れるような危険なクリーチャーと共に、数多くの水棲デヴィルやデーモンが潜んでいる。 |
18 |
ステュクス河の主はカロンである。この川がどこへ流れるかを決定し、誰がこの川を旅していくことができるかを決定する船頭だ。 |
20 |
ステュクス河はパンデモニウムで始まり、アケロンで終わる。その水域沿いには数多くの強力なクリーチャーや隠遁した伝説的存在がその住処を築いている。 |
ステュクス河の水
ステュクス河は忘却の川である。この川のひどい水を飲んだか、ただ触れただけの者ですら、フィーンドではないクリーチャーであるならフィーブルマインド呪文と似た効果を受ける。この効果に抵抗するためのセーヴ難易度15である。対象となった者は4d6[精神]ダメージを受け、【知力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、このセーヴに失敗すると知っている事のすべてを忘れ去り、【知力】と【魅力】の値は1になる。そのクリーチャーは呪文を発動すること、魔法のアイテムの起動、言語の理解、そしてあらゆる種類の明瞭な意思疎通ができなくなる。ただし、そのクリーチャーはその友を識別したり、その後について行ったり、彼らを守ったりすることであればできる。セーヴに成功したとしても、直近8時間分の記憶が失われる。どちらの場合も、この忘却の効果は永続であり、グレーター・レストレーション、ヒール、ウィッシュ呪文によってのみ回復することができる。
(注:Savage Tideキャンペーンでは『Dungeon Master’s Guide』の第2章に記載されている「ステュクス河」の効果を上記の効果と置き換える。)
最終更新:2020年07月21日 09:29