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概要

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はじめに


あの日、何が起こったのか。
それは未だ分からないが、いつかそれを解明してくれる者が現れることを祈り、ここに私は筆を執る。
願わくばどうかこれが未来の礎にならんことを願っている。

――██ ██



事の始まりは20██年██月██日、22:04頃に世界各地で同時に流星群が観測されたことだった。

当時、私をはじめ、世界中の科学者にとって、それは寝耳に水の出来事だった。
なぜならその流星群は昨晩まで、いや。ほんの1時間前まで地上のあらゆる科学機器で観測されていなかったはずのものだった。
世界が夕日とは違う朱色に染まり、地上へと無数の隕石が降り注いだ。
あの光景は、悪夢のようだが恐ろしく幻想的でもあった。
私はあの光景を一生、忘れないだろう。忘れることなど、できるものか。

一晩にして何万人も死んだ。正確な死傷者は██年経った今でも分かっていない。
隕石に巻き込まれ、人工衛星の多くは破壊され、インターネットをはじめとした衛生技術の多くが失われてしまったからだ。
またそれに伴い、各国との国交のほとんどが断絶されている。
陸続きの国ならいくらかやり取りはあるだろうが、島国であるこの日本では外国の事情など把握できない。

日本国内だけでも死傷者の数は把握しきれていない。
地形が変わるほどの天変地異だったのだ。
発電施設や水道施設などライフラインに甚大な被害を受け、交通網は破壊された。
物流は止まり、医療機関や警察機関だって満足に機能していたとは言い難い。

混乱に拍車をかけたのは、あのバケモノたちだ。
学者の端くれとしてはこのような物言いは恥ずべきことだと、理解しているがアレをほかにどう表現していいのか……とにかくバケモノが生まれ、人々に牙を剝いたのだ。

今ではあのバケモノたちを私たちは悪性腫瘍を意味する[Malignant]――『マリグナント』と呼んでいる。
詳細は後述のレポートに記載するとして、概要を述べるならそれは人間の『成れの果て』だ。

奴等は人を喰い、自らの根城……『巣』とでも呼称すべき建造物を作成する。
あの忌まわしき『狩り』を行った成果はそこへ持ち帰られる。

不幸中の幸いとでもいうべきか……人間にはマリグナントに対する『抵抗』できる存在がいた。
それがある病に侵された者たち。
喪失者、あるいは[Scarred]――スカードと呼ばれる者たちだ。

友人や恋人、あるいは身体の一部や信じていた信念など『何か大切なものを喪った者』がこの病に罹る。
そして彼らは様々な異能を発揮し、マリグナントたちを刈り取った。

そして彼らがマリグナントの巣から持ち帰る結晶体――魔晶と呼ばれるそれらは適度な衝撃を与える熱や電力、水を生み出し、崩壊した世界の中で人々の大きな支えとなった。
これらが無ければ私たちは今頃もっと悲惨な生活を余儀なくされていただろう。

あの日以来、本当に様々なものが変わり果ててしまった。
限られた資源を奪い合い日々の中で人々の心から「安心」という概念は喪われた。
人喰いのバケモノが跋扈し、それを殺し、その死骸から日々の糧を得る。

狂っている。
世界も、私も。

あの日を境に道理の歯車というものが決定的に欠けてしまったのだ。

世界に滅びが降り注いだあの日をいつしか人々はこう、呼んでいる。

――『堕天日』と。



レポートはここで途絶えている……

最終更新:2016年11月28日 00:56