潜在意識性癌について
潜在意識性癌研究レポート
墜天日以降、『潜在意識性癌[Subconscious Cancer]』と呼称される奇病の発症が確認されている。
一般的に認知される「癌[Cancer]」は肉体に発生する悪性腫瘍、およびそれによって引き起こされる一連の症状を指し示すことが多い。
(「がん」の定義としてはやや語弊があるが、本項に関しては関係が薄いので割愛する)
あの超常現象とも言える墜天日の流星群、あの日をきっかけに多くの人間が精神を病んだ。
それ自体は無理もないことだろう。
未曽有の大惨事を前にし、この崩壊した世界は精神を破壊するには十分過ぎる。
しかし、この奇病はいわば「精神に巣食う悪性腫瘍」のような性質を持つ。
発症する原因はいくつか推測されるが、共通するのは『何か大切なモノを喪った経験』を持つことである。
それは即物的なものに限らない。
例えば――『足』
崩れた建物に巻き込まれ、片足を喪った者。
例えば――『願望』
プロ野球選手を目指していた青年は夢を叶える舞台そのものを喪った。
例えば――『自己』
自分が何者なのか、どんなものを大切にしていたか分からなくなってしまった者もいる。
そして、私のように娘を喪った者も。
とにかくそういった何かを喪った者たちがこの病に罹る。
そして、異能を顕現させる。
ここで言う異能は超心理学的な力を指す。
個人差はあれど、潜在意識性癌に侵された者は、物理法則に従わない超常現象を自分の意思で操ることができるようになることが確認されている。
欠けたものを塞ぐようにして、まるで何かに憑かれたかのように異能を扱う者たち。
いつの間にか彼らは人々から喪失者、もしくは『傷を負った者』というニュアンスで
スカード[Scarred]と呼ばれるようになった。
最終更新:2016年11月30日 01:09