僕と君がであったのは偶然というか運命だったと思うんだ。

目の見えない僕は音楽が好きで、
耳の聞こえない君も音楽が好きだった。
そんな共通点が僕と君を引き合わせてくれたんだ。僕はそう思う。

僕らが共に音楽を表現するステージにたまたま参加をしていた。そこで、普段は分かれて練習をする僕らが合同練習でペアを組んで共に練習をした。その時のペアとして出会ったのが君だったんだ。

いつから君に惹かれていたのか、僕には分からない。

でも、僕は今まで目が見えないことを恨んだことはなかったし、毎日家族や友達のおかげで楽しく暮らしている。けどね、1回だけ悔しいと思ったことがあったんだ。それはね…通訳の人が言っていた、君はすごく幸せそうに笑うってことを聞いたとき。まるで、ひまわりが夏の眩しい日差しの下で咲き誇っているように、笑うんだってね。効果音を付けるならぱぁって言う音がつくように笑うんだよって、通訳の人が笑いながら言ってたとき。そのときね、「あぁ僕もみたいな」って思ったよ。あと、君はすごく喜怒哀楽が激しいんだってね。それも見てみたかったなぁ。

僕は君の花が咲いたような笑顔やころころ変わる表情を見ることは出来ないし、君は僕が今日どんなことがあったか話している楽しそうな声や君のどんな所が好きかと照れくさそうに話す僕の声を聞くことは出来ない。

ぼくらは、意思疎通で大変なことがあるのに、僕は優しい君のことが好きになってしまったんだ。
君に惹かれてしまったんだ。

僕に一生懸命手話を教えようと、僕の手を持って動かしてくれる君。話すことがあまり得意じゃないのかな?たどたどしく話しながら説明をする君。
でもさ、僕が雲を手話で表現できた時、ものすごく嬉しそうにしていたね。凄い勢いで握手するしから腕がとれちゃうかと思ったし、ハイタッチの勢いが強くてよろけちゃったよ。

君が僕に手話を教えてくれたのって、僕が君の友達と仲良くなれるように、ぼくらが共に手をとりあえるように…そんなことを思っていたのかな?
それとも、実はそんなこと考えてもいなくて、自分の会話の仕方をペアの僕に、教えてくれていただけだったのかな?
それとも、さ、僕と仲良くなりたかったのかな?

僕にはわからないや。でも、仲良くなりたいって思ってくれていたら、嬉しいと思うよ、僕は。

発表会当日、大きなホールでたくさんの人がいる前でぼくらは音楽を披露した。とっても大きいステージだった。

ぼくらが表現した音楽はたくさんの人に届いたみたい。
僕は目が見えないから分からなかったけど、スタンディングオーべーションでたくさん泣いてる人がいたって、君が一生懸命、教えてくれたね。僕もね、たくさんの歓声と拍手は聴こえていたよ。

たった数回の練習で偶然ペアになって、僕は初めて恋をしたよ。
恋を知ったんだ。
君に出会えてよかった。

もう会えないって分かってる。
君の顔も声も分からないからね。
でもね、名前だけはしってるよ。
だから、その名前は僕だけの秘密。
ありがとう、恋を教えてくれただいすきな君。

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最終更新:2021年09月08日 20:20