雪野14「さて、と」
白石13「あのー……」
雪野15「ここは声劇部の部室だよ」
白石14「いやっ、そんな別に
RPGで最初に訪れた町の町人Aみたいな説明されても」
雪野16「私は主役以外やんないわよ!馬鹿!!」
白石15「のあああああっっ!?」
雪野17「へぇ……手加減したとはいえ、私の攻撃をよけるとは……期待できるわね」
白石16「あの、ですから!話がさっきから全然見えてこないんですが!」
雪野18「キミには、声劇部の──いいえ、この世界のピンチを救ってもらうわ!」
白石17「……あ、あのー……」
雪野19「なによ?」
白石18「そのポーズはいったい……」
雪野20「ヒーーーーローーーーに決めポーズはつきものでしょう?!まったく、そんなこともわからないのっ?!」
白石19「声劇と
ヒーローにいったいどんな関係があるってんですかっ!」
雪野21「ありあり大あり!女王アリ兵隊アリシロアリ!!」
白石20「うわああああああもう俺ほんと逃げたい!」
雪野22「逃げてもいいわよ、全力で追うけど」
白石21「それ絶対逃げられないフラグですよね」
雪野23「絶対逃げられないフラグですよ」
白石22「っていうかいい加減ほんとに説明してもらえませんでしょうかねぇ?!」
雪野24「実は私たちの所属する声劇部ってのは世を忍ぶ仮の姿で、本当は正義のヒーロー・声劇戦隊ホゾレンジャーなのよ」
白石23「は……?」
雪野25「昨日の爆発騒ぎは知ってるわよね」
白石24「はぁ……まぁ、寝てましたけど」
雪野26「寝てた!!すばらしいわ!!!その神経の図太さ、鈍感さ、火事で逃げ遅れる率100%さ!」
白石25「ほっといてくださいよ!!!」
雪野27「いーえ!ほっとけないわ!……で、実は昨日爆発に巻き込まれたのはうちの部長、レッドなの」
白石26「れ、レッドですか……」
雪野28「あ、ちなみに私はピーチね♪」
白石27「ピンクじゃないの?!」
雪野29「なんか、ピンクっていうと『脳内おピンク♪』みたいでやじゃない?うら若き乙女が名乗るにはちょっと躊躇するっていうか」
白石28「や、まず正義のヒーローなんてものをやることに躊躇しましょうよ」
雪野30「私が躊躇したそのほんの一瞬の隙をついて、やつらが攻撃を仕掛けてきたらどうするつもり?!」
白石29「っていうか説明!」
雪野31「あ、そうだったそうだった。えへっ、ピーチったらドジっ娘なんだから♪」
白石30「ドジですむ話じゃないような……ぁあああいいえ、はい、続けてください」
雪野32「レッドは、台本にやられたのよ」
白石31「だ、台本……?!」
雪野33「そう、台本。声劇のね。昨日、レッド宛てに台本が届いたのよ」
白石32「もしかして……」
雪野34「台本のタイトルは『ドッキドキ☆ハレンチフレンチ~放課後のヒミツ~』────」
白石33「あっからさまに怪しさ大爆発じゃないですか!!」
雪野35「そうなのよ!まさか本気で爆発するなんて思わなかったわ!!」
白石34「ネタにマジレスかよ!!」
雪野36「きっと、私たちの活動を知った『奴ら』が先手を打って攻撃してきたに違いないのよ!」
白石35「そ、その『奴ら』ってのは……」
雪野37「知らない」
白石36「はぁああああああ?!」
雪野38「だーかーらー、知らないっていってんの」
白石37「え、えーともしかしてそのー、声劇部の皆様はつまり、いもしない仮想敵をあたかも存在しているかのように扱って、
しかもそいつらが攻撃をしかけてくると仮定して、そんでもって正義のヒーローとか言っちゃってるわけですか……?」
雪野39「そうよ?悪い?」
白石38「悪いっていうか正直痛い!!!」
雪野40「ほんとに痛い目にあわすぞこのクソガキが!!」
白石39「どっせええええええええい!」
雪野41「……やっぱり、キミは私の攻撃をかわせる!!」
白石40「だからなんなんですか!!」
雪野42「キミをホゾレンジャーブラックに任命しよう!」
白石41「なぜにブラック?!」
雪野43「なんか根暗そうだから」
白石42「さり気にひでぇ!!」
雪野44「とにかく!地球がピンチなのよ!いいから君の声を聞かせなさい!」
白石43「さっきからしゃべってますよね!?俺、むっちゃくちゃしゃべってますよね!?」
雪野45「普通の声じゃだめなの!もっとこう、魂を揺さぶるような、腹の底から出した声じゃなきゃ!!」
白石44「っていうかあくまでも仮想敵ですよね?!つかなんで俺なんですか!!」
雪野46「キミ、おととい日直だったでしょう」
白石45「あ、はい……よくご存知で」
雪野47「私も、そうなの……」
白石46「なんでいちいちそう芝居がかってるんですか!!」
雪野48「私が職員室に日誌を持っていったとき、キミも持ってきたでしょう?」
白石47「覚えてないですよそんなの!!」
雪野49「あたい、聞いちゃったんだよね……あんたの声、をさ」
白石48「だからなんでそういちいち芝居がかるかなぁ!?」
雪野50「声劇部だからよ!」
白石49「いっそ変態部とかに名前かえてくださいよ!」
雪野51「さり気にひでぇ!」
白石50「パクった!?」
雪野52「で、とにかくキミの声が最高によかったので、声劇部に勧誘しようと思って」
白石51「普通に勧誘できんのですかあなたって人は!!!」
雪野53「普通のなにが楽しいのよ!!」
白石52「普通が一番いいですよ平和で!!」
雪野54「そんな偽りの平和なんかうんざりよ!なんのためにわざわざ台本爆発させたと思ってるのよ!」
白石53「え……?」
雪野55「しまっ……!!」
安藤02「ほー、そういうことか雪野」
雪野56「ぶっ、部長っ……?!なぜここに!!!」
安藤03「あからさまにあやしい台本、あのネーミングセンス……おまえを疑わなくて他に誰を疑うっていうんだ?」
白石54「っていうか爆発したのによく生きてますよね!!」
雪野57「そりゃそうよ、ホントに死んじゃったら私、人殺しじゃん」
安藤04「雪野のやることなんざだいたいお見通しだ」
白石55「見通せるなら止めましょうよ!ねぇ!!」
安藤05「止められたら苦労はしないよ……」
白石56「あ、血の涙……」
雪野58「だ、だって普通に『好みの声の子がいたから勧誘しました』っていったら怒るじゃん……」
安藤06「俺だって男だ、自分の彼女が他の男を誘惑していたら嫉妬くらいする」
白石57「え?!か、彼女ぉ?!」
安藤07「そうだ、愛しのマイスイートだ。だから手を出すなよ?」
白石58「ぜってーださねぇ、だしたくねぇ!」
安藤08「そ、それはそれでちょっとムカつくな……」
白石59「っていうかよくこんな破天荒な人彼女にできますよね……」
雪野59「私の手刀がかわせることが第一条件よ」
安藤09「もしくは喰らってもダウンしないことだな」
白石60「ち、ちなみに安藤先輩は……」
雪野60「安藤はダウンしないほうよ」
白石61「うわぁ~……っていうか彼氏を苗字で呼ぶんだ……」
安藤10「はっはっは、雪野は照れ屋さんだからな」
雪野61「うるさい」
(殴打)
安藤11「っぐあ!!……っというわけでまぁ、なんだ、ほら。白石君も声劇部に入らないか?」
白石62「あ、ほんとにダウンしない……」
雪野62「部員が足りなくて大型企画ができないのよ!ね!私を助けると思ってお願い!!」
安藤12「雪野、『お願い』ってのは拳をかまえていうセリフじゃないと思うぞ」
白石63「か、考えときます……」
安藤13「いい返事を期待してるよ」
雪野63「そういうセリフは相手を壁際に追いつめて上からプレッシャーをあたえながらいうセリフじゃないと思うわ」
白石64「ひぃぃぃぃ……!!」
安藤14「興味があったらいくつかの完成作品を聞いてみてくれ、ほら、これに入ってるから」
雪野64「3日たったら返事聞きに行くからね~」
白石65「あ、あはは……はぁ。じゃ、じゃあ俺はこれで」
安藤15「ああ、待ってくれ」
白石66「ま、まだ何か?!」
安藤16「俺の部屋爆発しちゃってるからさ、しばらく白石君の部屋に住まわせてm──」
白石67「勘弁してくださあああああああああああああああああい!!!」