(SE:パラリラッパラ~☆)
王子01「呼ばれて飛びでてジャンバラヤ! おじゃまします、娘さん! 美味しいですよねジャンバラヤ!」
妹15「……なに、この子?」
王子02「お呼びの通り、王子の従者です! 本当は王子なんですけど、世を忍ぶ仮の姿だと思って頂いてかまいません!」
妹16「なら、自分でバラすなよ! というか王子様ちっさ! 私よりちっさ!」
母15「こら、チャコ、小さな子をいじめないの!
まあまあ王子様、お初にお目にかかります。こちらでお菓子でもいかがですか?」
王子03「うむ、くるしゅうないぞ」
妹17「母さんこそ失礼だよ!? 下町の子供扱いすんなよ!
……ゴホン。王子様にしては、ずいぶん幼いようだけど……普通は美青年じゃないの?」
王子04「なにを言っておられますか娘さん!
普通、王族貴族華族は十を過ぎれば許婚が決定し、婚姻を結ぶことすらざらなのですよ!
かの、北条時宗・政子ご夫妻も齢8でゴールインしたというではありませんか!
ぼくがこの年齢だと、ちょうど結婚相手をなかなか承諾しない息子像が完成するんです。
これ以上 年かさでは、逆に売れ残りで眼の色変えて相手を探しているような設定になってしまいます!」
母16「あらあら。最近の子はませているのですねえ……八歳でもう……」
妹17「よその子供の前でセクハラ発言しないで、シャレにならないから。
というか、ここイタリアなのにさっきから話題がワールドワイドすぎる気が……」
母17「チャコ、なんですか! 王子様の面前で、鬼畜英兵の言葉を使うなんて……恥を知りなさい!」
妹18「だからなんでピンポイントで嫌ってるのよ!?
母さんだって、さっきZIPとかLZHとか使ってるじゃないの! 王子様だって……」
王子05「いやはや、ご母堂さすがです。古代ローマの戦を乗り越えた方は、愛国心の器が違いますな!
ぼくも見習いたいところです」
母18「まあ、若いのにお上手でいらっしゃること。ホホ……」
妹19「古代ローマって さかのぼりすぎだから。紀元前に母さん生きてないからね? どれだけ年増?
遠まわしに失礼だな、この王子!」
母19「ささ、紅茶も飲まれます 王子様? 病気予防に効くジンジャーティですのよ」
妹20「……ジンジャーティ? それって、たしか発祥は……
な!? それに そのお茶請け マフィンにドーナッツじゃない!?
なによ、その英国庭園で頂くような アフタヌーン・ティーセットは!」
母20「なにをいっているの、チャコ。食べものに国境はないのよ。
士郎さんだって雄山先生だってそうおっしゃっているわ、連載当初からね」
妹21「誰よ ユウザン先生って!? 連載ってなによ?」
王子06「その通りですね、ご母堂! 男は胃袋からということわざがあります
かの国は我らが胃袋から侵略してやるべきでしょう!」
母21「まあ、王子様ったら。まさに究極と至高の戦略ですこと。オホホホホ……」
妹22「母さん、王子様は絶対わかってないからね? 私共々、十代はわかるはずのないネタだからね?
ハァ……で、魔法使いのおばあさんを呼んだら どうして王子様がでてくるのかしら?」
王子07「いえいえ、娘さん。
イタリアっ娘版シンデレラ、ロッシーニ作曲オペラ「チェネレントーラ」には、魔法使いは出てこないのですよ。
代わりに、ぼくが従者に化けて、各家を招待状を持ち、訪問してまわる。
そこで、親切なチェネレントーラを見かねてドレスをそっと貸してやる、という設定なのです」
母22「あらあら。まるで韓国ドラマのようなベタっぷりですわねえ。母さん、そういう展開大好きです」
王子08「オペラは基本的に大人のものですからね。
グリム童話版は年端のいかぬ少女を。歌曲版は大人の女性を得心させるようにと出来ておるのです。
まさに顧客思考ですな!」
妹23「そ、そうなのかな……あれ?
それじゃ、かぼちゃの馬車もねずみの御者もないのに チェネレントーラはどうやって城まで行くのかしら?」
王子09「そりゃあ、タクシーに乗って。娘さんがヒッチハイクは危ないですからね、むろんタクシーですよ!」
妹24「なによタクシーって!? 辻馬車って言いなさいよ! たしかに原理は同じだけど情緒が違うじゃないの!」
王子10「ひっ! う……うわあああああん!! お父様にも怒られたことないのにぃぃぃぃっ!! わあああああんっ!!」
妹25「ちょ、ええ!? な、泣かないでよ! な、なに? 私なんか悪いことした?」
母23「あらあら、だめよ、チャコ。王侯貴族はね、親御さんに育てられてないのよ。
だから、お父様に怒られれる機会なんてなくて……成人まで会えない場合も多いんだから」
妹26「いや乳母とか教育係とかそういうのいるよね!? どんだけ打たれ弱いのよ?」
母24「安定した裕福な家庭ではね、メンタル的に弱いゆとりが多く生まれるのよ、強く言っちゃいけません。
ほーら王子様、よしよしよーし」
王子11「うぇぇ……ご母堂ぉ……」
母25「よーしよし、泣き止むまでこうしててあげますからね。
お泣きなさい、夫二人をなくした未亡人の熟れた豊満な胸の中で」
妹27「だから無理やりセクハラにしようとするのやめてくれない!? 王子様未成年だからね? シャレにならないから!」
王子13「ご母堂……我が国には、きっとご母堂のような強く太ましい精神をお持ちの方が必要なのです」
母26「王子様……」
妹28「太ましいって、本当に失礼だよ、この王子……」
王子14「ぼくと共に来てください!
あなたはこんな狭苦しいブタ小屋で暮らして
いい人じゃない……ぼくと一緒に、城で暮らしましょう!」
妹29「失礼すぎるんだけどね!? って……え、ええっ!? ま、まさかそれって」
王子15「我が城で……ぼくのそばにいていただけないでしょうか?」
妹30「やっぱりプロポーズだ!? ちょ、ちょっと母さん、どうしよう」
母27「よろこんで!」
妹31「居酒屋の店員並に即答しないでよ! ちょっとは逡巡しようよ!
ていうか母さん、父さんの喪もまだ済んでないからね!? ムリだよ、法的に!
そりゃ、未成年ともそもそもムリだけどね!? 道徳的に!」
母28「それで、わたくしはお城でなにをしたらいいんですの?」
王子16「炊事、洗濯、掃除……あとはぼくと遊んでいただければ」
母29「よろこんで!」
妹32「いやああああっ! 母さんがおかしな道に……って、炊事? お妃さまってそんなことしていいんだっけ……?」
王子17「今からのご年齢で再就職は大変かと思いますが……
ご母堂なら、きっとナンバーワンへのし上がれると信じております」
母30「ええ、ええ……がんばって、家政婦は見た並のスクープを掴んでみせますわ。ご期待なさっていてくださいね」
妹33「メイドの勧誘かよ! 冒頭のアレってそれの振りだったの!? 気が長いよ!」
母31「なにをうるさくしてるの、チャコ。あ、そうそう、王子様。うちの娘も王宮につれていってもいいのですよね?」
王子18「あ……!
すみません。妙齢の女性ですと、メイドにお雇いできる保障があまり……王宮に若い娘さんを住まわせるのも……」
母32「あら……」
王子19「そうですよね……すみません、興奮して失念していました。やはり母子は共に暮らす、それがいいはずです。
娘さんが、さびしい思いをして、ぼくのような泣きべそに育ってしまっては大変ですもの」
母33「王子様……」
妹34「……いいわよ、母さんが新しい生きがいを見つけられるなら。
うるさい母さんだけど、王子様がそれで寂しくなくなるなら、私も嬉しい。
私はチェネレントーラと一緒にこの家を守ってる
あんなのでも、一応お姉ちゃんだしね。うまくやれるわ、きっと」
母34「まあ、チャコったら……ここに来て、妹萌えさせる魂胆なのね? もうっ、いやらしい子っ☆」
妹35「うまくまとめようとしてるのにブチ壊しにかからないでくれる!?
あとその年でぶりっこされても全然似合わないからね!?」
王子20「……さあ、ご母堂」
母35「ええ……チャコ、いってくるわね」
妹36「母さん……いってらっしゃい」
母36「わたしが馬車で去った頃、あなたは『かあさーん!』と叫びながら追ってくるのね……
手紙を、手紙を送るからね、チャコ……」
妹37「どんなマルコ!? やらねえよ!
だいたい王宮って目の鼻の先だし! 30分で往復できるよね? 手紙より早く着くよね!?」
母37「では……行きましょう、王子様」
王子21「ええ、行きましょう……ぼくらの愛の巣へ。
大丈夫、メイドへのお手つきはカウントされないという古今東西の不文律があります」
母37「まあまあ……これはいい韓流ドラマですこと……ホホホ」
妹38「かっ、かあさーーーーん!! 待って、やっぱり行っちゃだめーーーーっ!! かあさーーーーん!!」