好奇心
作者:wikiの人◆SlKc0xXkyI
【好奇心】※男性を推奨
BGM:ジャズなどの、落ち着いていてもノリのいい曲。
買出しを頼まれ、薬局に出かけたのは昨日のことだっただろうか。
目的のティッシュと
絆創膏、ついでに包帯とガーゼを買おうとする。
しかしレジへ行く前に、私はある商品へ目をやった。
それはいわゆる、鼻の毛穴の汚れ――脂を落とす物だった。
普段ならば見向きもしないが、パッケージに書かれている文字が気になったのだ。
「発熱効果で小鼻クレンジング」と。そう、書いてある。
ああ、発熱効果――つまり毛穴を広げると。
お手入れなんて、脂取り紙くらいしか知らなかったが、そんな物があるだなんて――――。
否。知ろうとしなかっただけで、こうした商品は多く世にあるのだ。
断じて発熱効果が特別というわけではない。
そも、これらの商品に特別なぞ在り得ない。
だが気になったというのも事実。
これを機に、試してみるのも悪くはないだろう。
そう考えて、私はこの商品を購入する運びとなったのである。
帰宅し、実際に試してみる。
洗浄ジェルと発熱ジェルの二種があり、それらを使ってクレンジングするようだ。
使用方法に記載されているよう、まず洗浄ジェルを鼻に塗った。
続いて発熱ジェルを塗ってみるが、なるほど――確かに発熱しているではないか。
充分にマッサージをし、ジェルを洗い流す。
そして鼻に触れてみれば、脂と呼べるものはもう、ない。
見事である。
知ろうともしなかった間に、ここまでの物が完成していたのか。
満足した私は、そうして洗面所を後にしたのである。
――では、ここからが本題だ。
このジェルは、かなりぬるぬるとしている。
そして発熱ジェルを重ね塗ることで、発熱効果を発揮する。
これは――――
股間のリチャードに塗るのも、ありではなかろうか?
分かっている。
愚かな行為だと、存分に理解している。
分かっている。
諸君が引いていると、痛いほど理解している。
だが、そうと分かっていようとも、男にはやらねばならぬ時がある。
その時が今、というだけだ。
考えてもみるがいい。
人類史上、先駆者とは常に奇異の目で見られるもの。
しかし、私は違うのだ。
未知を既知に変え、新たな何かを模索しようとする精神を持つのだ。
ローションを初めて股間のリチャードに塗った者など、その勇気には尊敬さえ覚える。
故に私とて、完全なる先駆者というわけではない。
股間のリチャードに異物を塗る――その行為だけで言えば、幾人もの先駆者がいるのだ。
私はその亜流として、発熱効果を持つジェルを試そうというだけ。
これのどこに、恐れて身を引く必要があると言うのだ。
恐怖なぞ――どこにも、ない。
皆無で、絶無だ。
元より私は、己が好奇心に逆らえぬ、宿業を背負う者――!
「ヨーシ、ソレジャア塗ッテミヨー」
――かくて、私は自らの好奇心に挑む。
未だ知らぬ世界を既知とすべく、未知の海原へと船を漕ぐ。
嗚呼、男とはいつの世も馬鹿な生き物である。
虚しい快楽を高めるべく、こんなにも熱くなれるのだから――――!!
……そして、人は時に後悔する生き物だと、最後に言い残しておく。
ああ、よもや病院のお世話になるとは、思ってもみなかった――――。
【あとがき】
じ、実話なんかじゃないんだからねっ!
最終更新:2010年10月17日 13:07