一か月前 「さぁ…始めようか」 ニードレス
「『不要者』狩りを」
現在 「ここが学園都市、か…」この見るからに神父のような恰好をした大男、アダム・ブレイドは立ちそびえるビルを見て呟いた。彼がここ学園都市に来た理由はまたの機会にとして、彼はある問題を抱えていた。 「まさかこんなちこでスリにあうとはな…案外しょぼいな、学園都市も」学園都市に悪態をついたところで事態は解決せず、依然問題は残ったままである。 「しっかしどうすっかな…と、ん?ほほぉ」ブレイドがニヤつきながら見つけたそれはいかにもお人よしそうな少年だった。 「あいつに世話になるかな」何かを思いついたようなブレイドの顔にはさらにニヤつきを増していた。 「ふんふんふ~ん♪」いつになく上機嫌なこのつんつん頭の少年、上条当麻は両手に卵を抱え帰宅していた。 「今日はついてるなぁ。まだ御坂にも会ってないし、タイムセールにも間に合ったし、不幸なこともまだ5つしか起きてないしなってあれは!」何かをみつけ走り出した上条当麻。彼は困っている人を見ると助けずにはいられない性質であった。ましてや路上で倒れている人を見つけた日には手を差し伸べられずにはいられなかった。 「大丈夫ですか!?神父?さん」上条当麻は倒れているおそらく神父であろう大男に声をかける。 「うぅ…なに大したことはありませんよ…ただここ数週間何も食べていなくて…」 「なら俺のうちに来てください。大したものはありませんが飯ぐらいなら出しますよ」上条当麻は卵の入った袋に目をやりながら言った。しかしこれが今日最大の、いやこれから起こる数週間分の不幸だったのかもしれない
「その言葉を待っていた!」 「え?」突然の口調の変化に戸惑っている上条に男は続けた。 「俺の名前はアダム・ブレイド。ちょうど宿と飯を探していたところだった、礼を言うぜ」疑問符が頭の中を埋め尽くしたまま上条はたずねた。 「ど、どういうことでしょうか…」 「あぁ?メンドクせぇなぁ。つまり金がないからお前んち泊めろってことだ」 「な、なにー!?」上条は焦った。いや、普通なら誰しもがこうなるであろう。なぜなら初めて会った男がいきなり家に泊めろというのだから。
「そ、それは無理ですよ!だってすでに上条さんちには居候が一人と一匹おりましてですね…」 「あぁ、それなら大丈夫。俺野郎のベットで寝る気なんてねぇよ」 「問題はそんなとこじゃねぇ!」ブレイドのペースにのって熱くなっているのに気付いた上条は少し落ち着き続けた。 「それにアンタ、案外元気そうだし、あんまり心配なさそうだし別をあたってくれよ」 「さっきと言ってることがちげぇじゃねぇか」 「それはアンタが倒れてたからつい…」 「ほぉ、つまり貴様は俺に嘘をつくわけだな?」そういうとブレイドは聖書を取出し中盤あたりを開き続けた。 「聖書にこうあります。神に仕える神父に嘘をついたらジャーマンスープレックス、と」 「ないないないない!絶対ない!」 「うるせぇ!」 ゴフッ!!!ブレイドの意味不明な発言に熱くなってしまった上条の頭はブレイドのアッパーで一気に覚めていった。 「結局アッパーなのかよ…」力なく突っ込みを入れる上条を見下ろしブレイドは言う。 「で、泊めるのか?泊めないのか?」 「わかりましたよ、泊めればいいんでしょう泊めれば」 「はぁ…不幸だ」こうして上条お決まりの文句とともに上条はブレイドとともに帰宅するのであった。
「つきましたよ、神父さん」 「誰が神父だコラ」 (お前だよ)ツッコミを脳内だけにとどめ、上条はブレイドを中へと招く。 「インデックスー、帰ったぞ」 「むぅ、遅いんだよ当麻!おなかペコペコで死にそうなんだよ!」 「ニャー」このインデックスと呼ばれた青髪のシスターとその子の抱える猫が上条の言っていた一人と一匹の居候である。
「む、当麻。その人はどなたなんだよ?」 「あぁ、この人は…って、うおぉ!」 ドゥルルルルルルルルルルルルル ガシャッ!! ガシャッ!! チーン!! ダラララララララララララ上条は声を出して驚いてしまった。しかしそれも無理はない。なぜならブレイドの目の色、いや、目の形がハートに変わり口からコインを放出しているのだから。 「ロ リ シ ス タ ー降臨!!!!!」ブレイドは一瞬のうちにインデックスとの距離を詰め、迫った。 「ひっ!」インデックスは迫る大男に恐怖を抱き小さな悲鳴をもらす。しかし次のブレイドの発言によりその恐怖は消えてしまった。 「僕と結婚してください!!!」 「え?」 「え?」
その場の空気が一気に静まり返った。 「む、無理なんだよ」静寂を破り、インデックスはその提案を却下した。 「ぐはっ!!」
「そんなことより神父さん。アンタいったいどうしてこの町へ来たんだ?」 「そうだなぁ、ただ宿、ただ飯の変わりに教えてやろう。俺がここへ来た理由を」そういうとブレイドは少し真面目な顔をして話し出した。 「そうあれは今からひと月ほど前だ…」回想一か月前、ブレイドたちはシメオンビルの最上階にいた。 「さぁ、覚悟しやがれ!アークライト!」 「ふ、貴様が神である私にかなうとでも?」ブレイドにアークライトと呼ばれた男こそシメオン総帥であり、ここブラックスポットを支配しようとする男である。 「食らえ!リトルボーイ!」 「ふん」 「な、なに!?」ブレイドの炎をまとった拳はアークライトによって軽々と止められた。 「覚えた。リトルボーイ」アークライトは右手に先ほどのブレイドのリトルボーイをはるかに上回る炎をまとい、放った。 「がはぁっ!!!」 「これが神の力だ」 「き、貴様の能力はいったい…」 「いいだろう。体をもらうお礼に教えてやろう。私の能力は『ポジティブフィードバック・ゼロ』だ」 「ポ、ポジティブフィードバック?」 「そうだ。つまりこれは相手の能力を覚え、それを増幅させ使うことができるのだ」 「な、そんなことが…」 「さぁ、体をもらうぞ、ブレイド」血を吐きながら倒れたブレイドにかまわず上条は質問を投げかけた。 「ところで神父さん」 「誰が神父だコラ」 「あなたのことだと思うんだよ」 「だよね~インデックスたん。どっからどう見ても僕神父だよね~」 「き、気持ち悪いんだよ…」 (だ、だめだこいつ…)
アークライトがブレイドに手を伸ばした瞬間、爆音と青白い閃光がビルを包んだ。 「我々学園都市は只今よりここ、ブラックスポットに攻撃を仕掛ける」爆音と閃光にいまだ戸惑っているブレイド達に何者かが話しかけた。 「私は学園都市統括理事長アレイスターの使いだ」 「学園都市だぁ?あの技術が10年は進んでるっつうあの学園都市か」 「よく御存じで」 「で、その学園都市の理事長様が何でまたブラックスポットを攻撃しだしたんだ?」 ニードレス 「それはあなたたち、『不要者』を駆除するためですよ」
「なに?」 「とにかく邪魔なんですよあなた達は。それでは幸運を」 「な、待ちやがれ!」ブレイドが男を追おうとするが男は一瞬のうちに消えてしまった。 「な、瞬間移動?」男が消えたと同時に先ほどの爆撃が再開された。 「く、ここはいったん引くぞ!」 「アークライト様ここは危険です!」 「ぬぅ、一旦待避するぞ」 回想終わり 「とまぁんなことがあってよ」 「アレイスターがブラックスポットを…」 「んで、アークライトのほうもそうとうお怒りでなぁ。俺らそっちのけでアレイスターを探している。」 「だから俺もこうしてわざわざ学園都市に乗り込んできたってわけよ」 「なるほど…」 「まぁそういうわけだからしばらく世話になるぜ」
つづく
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