──さっきまで一緒に居た、ケーキを食べていた、【友達】だと自分は思っていた。
なのにどうして、その友達がうつ伏せに横たわって、周囲の地面には血に濡れていて──
──血の海の中の友達の顔は分からない、直視できない。
目を逸らす、逸らした先に指が数本転がっていた──
──指だけじゃなかった、人間を形成する、普通は見る機会なんて一生無い淡いピンク色の──
佐天「ひっ……ぐっ……う……げほっ……うぇぇぇっ」ビチャビチャッ
──血溜まりに自分の吐瀉物混ざる、もっと気持ち悪くなった、もっと吐いた
──路地裏に広がる世界は、佐天涙子が知っている世界ではなかった。
──気付いたら萎えていた足が路地裏から遠ざかる──。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔よりも酷かった『心』が少し平静を取り戻す
佐天「通報しなきゃ……白井さんに──いや警備員だよね……」
???「あの……」
ミサカ?「少々話があるのですが、とミサカは何やら凄い顔になっている彼女に話しかけます」
──平静を取り戻した頭がオーバーヒートして脳が4つに割れたかと思った。
佐天「──────」
ミサカ?「おや、気絶してますね、都合が良いのでこのまま路地裏に連れて行きましょう」
ケーキ、ありがとうございました。
とても美味しかったですよブラザーとミサカは少々【友達】に砕けた口調で──
佐天「──!?今のは……夢……?妹さんも殺されてないし──」
ミサカ「いえ、ミサカはきちんと死亡しましたよ、正確にはミサカ一〇〇二八号ですが、とミサカは報告します」
佐天「へぇっ?ちょっとまって、意味が──」
ミサカ「それは実際に見ていただいたほうが分かりやすいと思い集合をかけました」
佐天「集合?それにここってさっき妹さんが──」
ミサカ?「一〇〇二八号が死亡した場所ですよ、とミサカ一万八百五号は貴女の背後から囁きかけます」
ミサカ?「それに一〇〇二八号の処理と掃除をしたのは私ですよ、とミサカ一万三千三十八号は貴女の視界に現れます」
ミサカ?「ついでに言うと貴女の吐瀉物を掃除したのは私でした、とミサカ一万四千九十九号は同じく貴女の視界に現れます」
サカ?「ここに貴女を呼んだのは【絶対能力進化】の実験関係者かと思ってのことでした」
ミサカ?「符丁の確認をします──ZXC741ASD852QWE963」
佐天「えっえっ?ミサカさんが4人も?四人姉妹?えっ?れべる6しふと?パス?一体──」
ミサカ「──、まぁ分かってはいましたが関係者な訳がないですよね、とミサカは徒労に終わった事を嘆きます」
ミサカ「施設に戻りましょう、一万八百五号、一万三千三十八号、一万四千九十九号、とミサカは呼びかけます」
佐天「待って!!あ、貴女達は……」
ミサカ「クローンですよ、聞いたこと位あるでしょう、とミサカはやれやれと後ろを振り返らず言います」
佐天「────────」ダッ!!
──良く分からない、良く分からない、よくわからない、よくわからない、よくわからない
──よくわからないけど、よくわからないけど、逃げなきゃ、と思った。
──とある中学校の学生寮
コンコン
初春「佐天さん起きてますー?ケーキ受け取りに来たんですけど──って部屋暗っ!?寝てるんですか?」
佐天「…………」
初春「!?……吃驚するじゃないですか、起きてるなら返事くらい……ていうか明かりくらい──」
佐天「ういはる……」
初春「何です?佐天さんケーキ買い忘れたとは言わせませんよ!」
佐天「ZXC741ASD852QWE963って何?クローンって何?絶対能力進化って何?」
初春「は?何言ってるんですか?寝ぼけてるんですか?」
初春「電気つけますよ」パチッ
初春「ひっ、佐天さん!!どうしたんですか!?髪もボサボサだし、目も真っ赤じゃ──」
佐天「初春、あたしね分からないの今日遭った事が初春が風紀委員で抜けて当麻さんと御坂さんと合って
ジュースが一杯出てきて御坂さんの妹が出てきて御坂さんが妹さんと帰ってケーキ屋でケーキ買って
さっき御坂さんと帰ったはずの妹さんがいてケーキ食べよって友達になってジュース買って帰ってきたら妹さん居なくて
色々探して路地裏を探したらさっきまでケーキ食べてた妹さんが殺されてて逃げて逃げて逃げたら殺されたはずの妹さんが
話しかけてきて色々意味がわかんなくって気絶して起きたら妹さんが殺されてた路地裏に居て
あぁさっきまでのは夢だったんだなって思ったら妹さんがいっぱいでてきて
パスの確認とかってZXC741ASD852QWE963とか言うし絶対能力進化とか言って最後には私達はクローンですとか言って──」
初春「佐天さん?何ぶつぶつ言ってるんですか!?しっかりしてください!!」
佐天「ZXC741ASD852QWE963絶対能力進化クローンZXC741ASD852QWE963絶対能力進化クローン
ZXC741ASD852QWE963絶対能力進化クローンZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963
絶対能力進化クローンZXC741ASD852QWE963絶対能力進化クローンZXC741ASD852QWE963
ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963」ブツブツ
佐天「ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963
ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963
ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963
ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963」ブツブツ
佐天「わかんない、わかんないの、あたし、わかんないわかんないわかんない──……」バタッ
初春「──佐天さん!!」
────病院────
先生「うーんどうやらPTSDのようだね」
先生「かなり強い精神ショックがあったようだから、精神系能力者からの干渉と思ったけど、どうやら違うみたいだね」
先生「彼女に何かあったか解るかい?今は薬で眠っているのでね」
初春「ヒッグ……分かりません、今日私が風紀委員から佐天さんの寮の部屋に行ったら真っ暗な部屋でブツブツ言ってて……ヒッグ」
先生「そうか……」
初春「佐天さん大丈夫ですよね?ヒッグ……絶対元の佐天さんに戻りますよね!?」
先生「それについては安心してくれ、僕は患者を絶対に見捨てないし絶対治すのが心情でね」
先生「さぁ、心配なのは分かるが完全下校時刻は過ぎている、帰りなさい」
先生「──絶対に治すさ、僕はその為に生きているんだからね」
──しいて言うなら準備と言ったところでしょうか
──おや、貴女の手に持っている袋は
──ケーキ、そうですね【時間】までは少々ありますし
──……食べて、良いんですか?
──【友達】……?で、ではっ【友達】のミサカの為に3つ
──ありがとうございました。ミサカの、いえミサカ一〇〇二八号の【友達】
佐天「っ!!………」
佐天「……………?」キョロキョロ
先生「どうやら目覚めたようだね?ここは病院だよ
申し訳ないんだけれども一応自殺防止の為に手足を拘束させてもらっているよ」
佐天「……………」
佐天「……………」
先生「……なるほど、やっぱり……無理に喋らなくていい──今はゆっくり休息する事が大事だからね」
──八月二十一日──
初春「はいっ佐天さん!!ご飯ですっあーんっ!」
佐天「……………」モグモグ
初春「美味しいですかー?美味しいはずですよー何たって常盤台中学校で使用しているお米で作ったお粥ですからね!」
佐天「……………」モグモグ
初春「……ッ!!このっ…お粥のお米は白井さんに……特別に分けて貰ったんでっ……、今しか食べる機会ありませんよ……」グスッ ポロポロ
佐天「……………?」
初春「す、すいません佐天さん、何で泣いているんでしょうね……ヒッグ……」
初春「あ、そうだ佐天さん!学び舎の園の『ケーキ』屋さんの『ケーキ』あるんで食べましょう!」ゴソゴソ
──ケーキ、そうですね【時間】までは少々ありますし
佐天「~~~~~~~~~!!」ガタッガタッ!!
──で、ではっ【友達】のミサカの為に3つ
佐天「いや、いやぁぁぁぁぁあ゙ぁあ゙あ゙あ!!」ガタン!!ガタン!!
初春「佐天さん!?どうしたんですか!?先生!!!先生ーー」
──────
先生「落ち着いた、みたいだね?」
佐天「………………」
先生「……、すぐに良くなるさ」
佐天「………………」キョロキョロ
先生「ん?どうしたかね?
……、あぁ初春さんは廊下に居るだけだから直ぐに戻ってくるさ」
佐天「………………」
先生「うん、それじゃあ私は一旦他の患者さんのところに行くね?初春さんを呼んでおくから少しだけ待っていてくれ」
先生「こんなところに居たのかい?探したよ初春さん」
先生「初春さん、佐天さんが呼んでいるよ?行ってあげるといい」
初春「!!私が会いに行って……また──さっきみたいな事に……」
先生「う~ん、しかし佐天さんは君を探していたみたいだったね?」
初春「大丈夫、でしょうか?」
先生「彼女に何があったのかは分かりようが無い、しかしトラウマというのはちょっとした刺激で這い上がってくるものなんだ」
先生「例としては暴漢に襲われた女性がその後男性恐怖症になって、男性の傍に居ると落ち着かない、といった風にね」
先生「だから佐天さんと合うときはなるべく刺激の少ないようにしてあげるといい」
先生「PTSDの患者さんは親しい友人等が傍に居るのも立派な治療だよ?これは僕達医者には出来ない仕事だからね」
初春「……はい……わかりました……」
──病室──
初春「さ、佐天さん失礼します」
初春「さっきはすいませんでした」
佐天「………………」フルフル
初春「ありがとうございます佐天さん」
初春「…………」
佐天「………………」スッ
初春「テレビ……ですか?」
佐天「………………」コクリ
初春「じゃ、つけますね」
初春「ふふふ、変な番組ですねーあははー!ねっ?佐天さん」
佐天「………………」ニコ
初春「!!……佐天さん……」ポロッ
佐天「………………?」
初春「だ、大丈夫です……、このバラエティー番組が面白くてちょっと涙が出てきただけです」
佐天「………………」ニコ
先生「そろそろ完全下校時刻が近いから初春さんは帰る準備をした方がいいね」
初春「あっ、はい!分かりました、また明日もきますね佐天さん」
初春「テレビ消しておきますね」スッ
佐天「────いい」
初春「えっ?佐天さん?言葉が」
佐天「────テレビ、つけておいて」
初春「は、はいっ!分かりましたっ!」
先生「(少し、回復したようだが……テレビはちょっと危険かもしれないね)」
先生「さっ、初春さん帰りなさい(キーワードに触れる可能性が──しかし……)」
初春「はいっ!先生! では佐天さんまた明日!」
先生「大丈夫そうだから手足の拘束は解いておくね?」
佐天「………………」
──とある病室の夜
佐天「………………」
佐天「………………!」
TV <さぁーはじまりましたー夏休みを満喫している学生諸君!!宿題は終わったのかね!!今日はそんな学生の為に──
佐天「………………」
TV <そう、ヘンペルのカラスというものに今日は着眼しましょう!ヘンペルのカラスとは──
佐天「………………」
TV<ここまで説明しましたが、東南アジアには白いカラスってのは実在するんで──
佐天「………………」
TV <ちなみに若干似てはいる、悪魔の証明についてですが──
佐天「………………」
TV <この証明は屁理屈のように聞こえますが、考えているとまた違った世界が見えてくるんじゃないんですかね!
TV <この学園都市では悪魔の証明の塊と──
佐天「………………」
TV <では最後に一言 【この学園都市にレベル6は居る。何故ならレベル6が居ないという証拠が無いからだ】
もしかしたらレベル6の【実験】とか行われているかもしれませんね!
っと!お相手はxxxxでしたーまた来週ー。
佐天「!!!!!!!!」
──レベル6、実験、レベル6
──御坂妹、クローン、『御坂美琴』のクローン!!!
佐天「────」
佐天「……、あたしは何してんだろ」
佐天「ホント、馬鹿……行かなきゃ、御坂さんに会わなきゃ……」
佐天「普通に考えて当事者のはずじゃない、ZXC741ASD852QWE963だって絶対能力進だってクローンだって何でも答えてもらうわ」
佐天「病院で悲劇のヒロインだなんて、もうあたしには似合わないのよ──!!」
佐天「初春、ごめんね……明日は会えないかもしれない」
──闇夜の海の上、黒焦げになった鉄橋の上に『超電磁砲』、御坂美琴はいた。
佐天「こんばんは、御坂さん」
御坂「……!?佐天さん?何で……こんな所に」グスッ
佐天「何泣いているんですか?御坂さん」
御坂「あ──、これはえっと──」
佐天「ZXC741ASD852QWE963」
御坂「えっ?……佐天さん……?一体どうして……」
佐天「【絶対能力進化】も【実験】も目的も教えてください、でないと」
ド────z____ン!!
スタスタ
佐天「…………」
佐天「3秒いけますか、なんだかんだで進化してますね、私も」
御坂「!!!いつの間に目の前に!!佐天さん一体……」
佐天「御坂さんのクローンの一〇〇二八号なんですが、私の友達だったんですよ」
御坂「──!!佐天さん──あなた……」
御坂「あの馬鹿にも言ったけどね……」
佐天「一方通行?『向き』を操作……」
御坂「それをアイツは……」
佐天「一方通行ですか、その人はどこに居るんですか?」
御坂「なっ、何を──!!どんな能力なのかは知らないけど一方通行にはどんな能力だって適わないのよ!!」
御坂「それにアイツの作戦は『無能力者』が『一方通行』を倒すことなんだから──」
佐天「それなら、問題ないです──、あたしまだ『書庫』では無能力者のままですから」
佐天「それに、今から全力で時間遅延を使って走れば当麻さんに追いつけますね」
御坂「──!!待って!!佐天さん!!!」
御坂「────!!居ない……」
御坂「どいつもこいつも!!勝つだとか……、そんなこと出来るとでも思ってるの?アンタ達はッ!!」ダッ
佐天「(時間遅延のほうは20秒程度は持続しますね)」
佐天「(一方通行『さん』絶対に、あたしの友達を殺したことを後悔させてあげます)」
佐天「(学園都市での命令だから風紀委員や警備員には裁けないでしょうし)」
佐天「──裁いてあげますよ、私の【無能力】で」