梅雨が明けた。
その後に訪れるのはじりじりとむわむわのオンパレード。
もうすぐセミが鳴く頃だ。
夏の始まり。
「うわーまぶしーってばよ!」
夕方になってもまだ顔を覗かせている太陽の光をナルトは手で遮った。
行き交う人で賑わう駅前の広場。そこで4人の少年が一塊になってしゃべっていた。
「もう夏だねー。暑いのキライなんだよなぁ」
「確かに、昼寝が気持ち悪くなる時間だよな。起きると汗かいてるし」
「えー!夏って楽しくなんねぇ!?なんかよくわかんねぇけどわくわくするってかさ!」
口々に話し出すのはチョウジ・シカマル・キバの3人。
ナルトを含めこの4人は同じ高校に通っていて、中学からよくつるんでいる仲間だった。
「そ・れ・にっ!夏と言えば『出会い』の季節だろっ!!今日だって隣の女子高の子たちと合コンだしさ♪」
そう言うとキバはにししっと笑った。
「合コンねぇ・・・めんどくせぇ」
「何だよシカマル!お前も彼女できたらそのめんどくさがりが治るかもしれねーぞっ!!絶対彼女いたほうが楽しいって!ナルトだってそう思うだろ!!」
「えっオレ?・・・うーん、まぁ、居たほうが楽しいの・・・かも、なぁ」
いきなり話を振られ、ナルトは困ったように天を仰いだ。
曖昧なナルトの態度にキバはなんだよー!お前まで!と文句を言う。
今まで男ばっかりとつるんで遊んできたナルト。それでも充分楽しかった。
キバに合コンに誘われたときも、半分義理で承諾したが(多分他のメンバーもそうだろうが)、それでも何も期待してないわけではなかった。
『新しい出会い』というヤツに。
「そういえば、今日は5人必要って言ってなかったっけ?あと一人は誰なの?シノは留学中でいないし」
チョウジが口を挟んできた。
シノとは中学からの仲間の一人。同じ高校だが、今は短期留学をしている。
「ふっふーん。もうすぐ来ると思うけど、お前ら、絶対度肝抜かされるぜ?」
急に得意げな顔で話すキバに他3人は顔を見合わせた。
「・・・悪いな、遅れた」
ふと背後から聞こえた低い声にシカマル・チョウジ・ナルトの3人は後ろを振り向いた。
そして3人はキバの言うとおり度肝を抜かれてしまった。
「うっうっうちはサスケェぇぇ!!??」
ナルトは声の主を指差し大声を上げた。
目の前に立つ少年は成績優秀・眉目秀麗・容姿端麗な同じ高校の同級生うちはサスケだったのだ。
「うるせぇよ、それに人指差してんじゃねぇ、ウスラトンカチ」
馬鹿にしたようなサスケの態度にムッとしたナルトだったが、一人よぅ!と挨拶しているキバを引張り耳打ちした。
「何でもう一人がうちはサスケなんだよ!一体どんなつながりがあんだよキバ!!てかなんでコイツ!!」
ナルト率いるグループは問題児グループに振り分けられているため(主にナルトのせい)、こんな絵に描いたような優等生うちはサスケとなんて全く接点がないはずだった。
「んー、まぁ実はオレとサスケくんはちょーっとした関わりがありましてなぁ・・・」
じっと疑惑の目を向けるナルトにまさか幼稚園が一緒だっただけなんてことは言えず、キバは視線を泳がせていた。
「まぁまぁいいじゃん!これもいいきっかけだろ!もしかしたら友達になれるかも知れねぇしさ!!」
はははっと笑ってキバはナルトの背中をバンバンと叩いた。
いってぇと背中をさすっていると不意にサスケと目が合う。
「オレの名前は知ってたみたいだな、うずまきナルト」
「まぁお前学校じゃ有名人だし。何でオレの名前知ってんだよ」
「お前だって有名人だろ。ドベで問題児。」
フン、と嘲笑するサスケにナルトは一気に頭に血が上った。
「なんだこコラ・・・」
「あっ!キバくーん!!ごめんねぇまたせちゃってぇ!!」
サスケに殴りかかろうとした瞬間相手の女の子達が来たのでナルトはギリギリで拳を止めた。
「キャー!!本物のサスケくん!!??やだー!本当に来てくれるなんて信じらんないっ!!」
押し飛ばされ、一気に女の子全員がサスケを取り囲んで騒いでいる様子を見て、ナルト以下3人はキバに目線を送る。
(コイツ・・・相手の女の子にサスケ連れて来いって頼まれたんだな・・・)
あさっての方を向いているキバを見つめながら、内心ため息をついた3人だった。
「ナルトくんはぁ~、どんなアーティストとか聴くのぉ?」
「えー、オレッてばあんま歌とか聴かねぇんだよなぁ・・・テレビで流れるやつとかしか・・・」
ふうん、と言いながら女の子はじりじりと距離を縮めてくる。ナルトもじりじり身体を逃げるようにずらしていった。
合コン会場のカラオケ店に入って1時間。
男女が交互に座って歌ったり、自分の番でないときは隣の子としゃべったり。
ナルトはバリバリ『攻撃態勢』に入っている女の子達に圧倒されていた。
SOS目線を送ろうとしても、キバは気持ち良さそうに熱唱してるし、シカマルは女の子の話しにはいはいと相槌打ちながら思考は別次元に飛んでいるようだし、チョウジは女の子よりテーブルに並んでいる食べ物に夢中だし、サスケは思いっきり不機嫌オーラ出しまくっているしで、全然頼りにならない。
そんななかでも女の子の『攻撃』は続き、ナルトはとうとう我慢ができなくなった。
「ごめん!!オレ、トイレ行ってくるってばよ」
立ち上がって女の子に不自然な笑顔を向けるとナルトは逃げるようにトイレに向かった。
「はぁぁ~・・・」
トイレに来たナルトは瞬間大きなため息をついた。
「女の子ってこえぇ~・・・」
げっそりとした顔で手洗い場に手をついて鏡に映った自分を見る。
するとトイレに人が入ってきた。
(うちはサスケ!!)
入ってきた黒髪の少年を鏡越しに見て、ナルトは少し身体をこわばらせた。
「・・・逃げてきたんだろ、ウスラトンカチ」
相変わらず上から目線で話すサスケに答える代わりにじっとりとした目線を鏡越しに送る。
「フケねぇか?」
「えっ!?」
意外な言葉に振り返ってサスケを見る。サスケは意地悪いように笑った。
その顔を見た瞬間、ナルトのイタズラ精神に火がついた。
そしてにやりと同じような笑みを浮かべた。
結託したナルトとサスケはこっそりトイレから出て行き、受付で先にお金を払うとカラオケ屋を飛び出した。
二人で走りながら自然と笑っていた。
その後、ゲームセンターで遊んだり、バッティングセンターで打ちまくったりと二人で思いっきり楽しんだ。
学校では話したことなんてなかったのに、ナルトはサスケとまるで昔からの親友みたいな気分がしていた。
びっくりするくらいうまがあって、楽しくて。
頭がいいというだけで敬遠していれど、自分と同じように普通に笑ってる。自分も笑ってる。それがなんだかよくわからないけど、嬉しかった。
こんなことならもっと早くから仲良くなれてればよかったとさえ思った。
「っはー!!疲れたってばよー!!」
「お前、はしゃぎすぎ」
ぐっと背筋を伸ばしながら空を見ると、気がつくともう空には星が瞬いていた。
「んだよー!お前だって結構楽しんでたくせに!!でもお前リズム感ねぇよな!!」
「うっせぇよ!格ゲー連打技しかできねぇくせに、ウスラドベ」
お互い悪態つきながらも顔は笑っていた。
「オレさ、お前といるのすっげぇ楽しかった!!また遊ぼうな!!サスケ!!」
「気が向いたらな」
そう言いながら口角を上げるサスケを見てナルトはニシシッと笑った。
想像してたのとは違っていたけど、嬉しい『新しい出会い』を見つけたナルトだった。
最終更新:2008年12月13日 00:16