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修行の帰り、イタチは夕暮れを一人歩いていた。

自宅へ帰る道、特に何も考えずにいつものように角を曲がったら、何かがぶつかってきた。
「?」
下腹部に特に打撃を受けた。そこをさすりながら下を見ると金髪の少年が転がっていた。
「いってぇ~・・・」
そちらは頭をさすりながら自分を見た。目には涙を浮かべている。
ただ見つめていたイタチを少年はきっと睨みつける。
「なんだってばよ!!見んじゃねぇ!!人を見下すんじゃねぇ!!」
位置関係的にイタチが少年を見下ろしている形になっているだけで、イタチは少年を見下しているわけではなかった。
しかし少年はすくりと立ち上がって「何だよ!文句あるなら言えってば!!」とまだイタチを睨んでいる。
金色の髪、蒼い瞳、両頬にある3本の傷のようなもの。
そしてイタチは思い出した。この少年を。

―――『うずまきナルト』だったな。

体内に"化け物"を宿した少年。
彼が里の人間にどのように扱われているかは他人に興味を持たないイタチも知っていた。
見ると体中に生傷がある。九尾を宿した身体は傷の治りが早いと聞いているので、きっとこの傷は皆、今日つけられたのだろう。

「なんだよ・・・なんだよ・・・なんだってばよてめぇ!!!言いたいことがあるなら言いやがれ!!」

なおもナルトはイタチに噛み付く。
イタチの瞳は漆黒のような瞳。その瞳に見下ろされて、ナルトは馬鹿にされているような気分になり、さらに苛立ちを覚えた。ぐっと握った拳はふるふると震えている。

「んだってばよ!!くそ!!みんなオレをバカにしやがって!!みんなみんな、大ッ嫌いだってばよ!!!!!!!」

その目つきは、めいっぱいの憎しみを含んでいた。
しかし、その瞳には、多くの『哀しみ』や『寂しさ』を宿していることにイタチは気づいた。

(この子は泣いているのか・・・)

イタチは思った。
そのとき、ふと家でのとある光景を思い出した。
きっと年頃はナルトと変わらないであろう弟。
弟がイタチが修行に付き合ってくれないと父親にぐずっていたとき。
そのとき父親は・・・・


気がつくとイタチはナルトの頭に手を乗せてなでていた。
それまで睨んでいたナルトは呆然と目を丸くし、イタチのされるがままになっている。
その蒼い瞳には自分が映っている。

(こうすれば、笑うと思っていたのだがな・・・)

父親が弟の頭をなでると、嬉しそうに笑っていた弟のことを思い出して、同じことをイタチはナルトに行なっていた。
そしてそのとき初めて、自分はナルトに『笑って』ほしいと思っていることに気づいた。
他人になんて興味はないと思っていたのに。

その瞬間、ナルトの丸くなっていた目からポロポロと大粒の涙が零れだした。
ただただ、イタチを見つめながらナルトは涙を流した。声もなく。
イタチの目はわずかに見開かれた。

―――泣かせたいわけではなかったのに・・・

複雑な気持ちでイタチはナルトの頭に置いていた手を離した。
するとすばやくナルトがその手を握り締めた。

「兄ちゃん・・・あのさ、オレってば、こんな風に頭なでられたの初めて!!」

涙を流しながら、ナルトは話す。

「なんでこんなこと兄ちゃんがしてくれたのかわかんねぇけど・・・オレ、すっげぇ嬉しいってば!!ありがとう兄ちゃん!!」

そういって涙でぐしゃぐしゃの顔をぎゅっとして微笑んだ。


その笑顔にイタチの何かがぐっと捕らえられた。
夕暮れの日差しがさしているせいか、イタチにはナルトがとても眩しかった。
眩しすぎて、直視できないくらいに。
でも、目が離せない。

ナルトは握っていたイタチの手をさらに力を込めて握った。
そして自分の頬に寄せた。

「・・・兄ちゃんの手、あったかいってば。」

そういってナルトは自分の頬をすり寄せた。


―――あぁ、この子はなんて『綺麗』なのだろうか・・・


イタチは初めて他人を『綺麗』だと思った。
あまりに純粋で汚れのない少年。

自分とは正反対の少年。

あぁ、だから惹かれるのだろうか。この子に。
自分にはないものを、とうに失ってしまったものを、この少年は持っているから。

ずっと握っていたイタチの手を離し、ナルトはヘヘヘッと照れたように笑った。
「オレってばもう家に帰らなきゃ。またね兄ちゃん!!」
ナルトはイタチの横をすり抜け、夕日のほうへ走り出した。
またねー!!こちらに笑顔で手を振り、少年は帰っていった。


イタチはさっきまで握られていた手を見つめていた。
その手には、少年のぬくもりが残っていた。
最終更新:2009年01月09日 05:57