著:2スレ目372殿(=4スレ目>>311殿=5スレ目>>34殿)
秋山完結編 その3の続き



天正三年、長篠の戦。
武田は大敗し、数多の重臣を喪う。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「内藤修理、馬場美濃守……」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「土屋右衛門、原隼人、三枝勘解由、真田兄弟……」

高坂昌信からの書状には討ち死にした者の名が書き連ねてあった。

  ハ_ハ
(;∀; )「山県三郎兵衛……」

これで岩村城での酒宴は永遠に叶わなくなってしまった。
しかし、悲しんでいる暇は無い。孤立する岩村城を織田が攻めるのは目に見えているからだ。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「城の守りを固めよ! 織田が攻めてくるぞ!」

六月、織田軍三万は岩村城を包囲する。
城攻めの総大将は、信友が婚礼の使節を務めた織田信忠だった。



(’ー’#)「何とぞ、岩村城への救援を勝頼様にお願い申し上げる!」

<丶´`A´`>釣閑斎「高坂弾正、お主の気持ちは分かる……」

<丶´`A´`>「しかし、長篠でのあの大敗じゃ。 今の武田にそんな余力は無い」

(’ー’#)「では、伯耆殿を捨て殺しになさるおつもりか!」

<丶´`A´`>「その秋山伯耆から勝頼様に届いた書状にはな……」

<丶´`A´`>「“救援は御無用。 是非も無き事ゆえ、城を枕に討ち死にいたすのみ”と」

<丶´`A´`>「天晴な男よな……」

信友本人が覚悟しているのなら、もうどうしようも無かった。
常に冷静な昌信が怒り、また声を上げて泣くのを釣閑斎は初めて見た。



籠城戦は五ヵ月に渡った。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「和議……?」

州* ‘ ω‘リ「城兵の命を助け、あなた様を織田の将に取り立てると言っているようですね」

信友には明らかな罠だと分かったが、せめておつやと城兵の命は助けたかった。
信長も自分の一族ならば無下にはしないだろう。自分が斬られればすむ。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「……応じよう」

州* ‘ ω‘リ「あなた様……」


兵糧の尽きかけていた城内に、織田方によって米や味噌、酒までが運び込まれた。
信忠は答礼として信長の元へ赴くよう、信友に促す。
城を出る直前、信友はあの二人の足軽を呼び出した。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「お主らにも世話になったな」

武田足軽「大将さん……」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「もし……の話だが」

元・織田足軽「はい」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「城が再び攻められたら、あの抜け穴を通って落ちよ。 あそこは封じられておらん」

籠城戦の五ヵ月間で、織田方によっていくつかの抜け穴は封じられた。
しかし、あの小川に至る抜け穴がまだ発見されていない事を信友は確認している。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「さらばだ! 達者で暮らせよ!」

妙なあいさつをするもんだ、と二人の足軽は訝った。これから死にに行くわけでもあるまいに……。



信友とおつやは揃って信長の前に通された。

(*‘ω‘ *)「久しいな、秋山伯耆」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「はっ」

(*‘ω‘ *)「あの岐阜城の会見から七年ぽっぽ……」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「はい」

(*‘ω‘ *)「これよりは、この信長の為に忠節を尽くすとよい」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「……」

意外にも、信長は本気で信友を配下にするつもりらしい。信友は困惑を隠せなかった。

(#‘ω‘ *)「それから叔母御、いや……そこな女」

怒気を露わにして、信長が続ける。

(#‘ω‘ *)「うぬは極刑に処す。 引っ立てよ」

州* ‘ ω‘リ「神妙にお受け致します……」

信長は降る者には寛容だが、裏切り者には容赦が無い。
おつやは岩村城を開き、敵の妻になった上、御坊丸を質に取らせた。
今のおつやは信長にとって、許す事の出来ぬ裏切り者であった。



  ハ_ハ
(゚∀゚#)「ちょっと待て!」

州* ‘ ω‘リ「あなた様! 私が死ねば収まる事です!」

  ハ_ハ
(゚∀゚#)「ふざけるな! 友も死に、惚れた女までいなくなるのではこの世にいる意味が無し!」

  ハ_ハ
(゚∀゚#)「信長! お前にはそんな事も分からんのか!」

(#‘ω‘ *)「そこまでにしておけば、今の戯れ言は聞き流してやるぽっぽ……」

  ハ_ハ
(゚∀゚#)「いーや、限界だッ! 喋るねッ!」

(#‘ω‘ *)「……改めて命を下す。 “秋山夫婦”を極刑に処せ」

州* ‘ ω‘リ「あなた様……」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「これで……良かったのだ……」

二人は岐阜に送られ、長良川原で極刑に処された。磔刑とも逆さ斬りとも伝えられる。
秋山信友、行年四十九――――――。


岩村城も『残党ことごとく焼き殺しなされ候』(信長公記)と、織田方によって皆殺しにあう。
信長にとって、新城主・信友を受け入れた者たちもおつやと同罪だった。

しかし、例の抜け穴から出る二つの影に織田方は気付かなかった。


えぴろーぐ

何年もの月日が流れた。
岩村城近くの小川のほとりに、一人の老人が座っていた。辺りには眩しい程、沢山の蛍が舞っている。
その男の元へ、旅僧が近づいて隣に腰を下ろした。

僧「随分、早くからいたようだな」

猟師「まぁな。 では始めるか」

あれから二人は足軽ながら武士としての生き方に嫌気が差し、別の生き方を探した。
武田足軽は猟師に、織田足軽は諸国をさすらう菰僧となった。
それぞれ足軽をやめてからも、あの日の宴を思い出し、蛍の時期になればここへ来るのだ。
もう何十回目になるだろう。来年は無理だろうという歳になっても、毎年ここで待ち合わせた。
武田は滅び織田の世も去り、今は徳川による泰平がもたらされている。
去年は大坂の豊臣氏が滅びたと聞く。が、この二人の世捨て人には関わりの無い事だった。


猟師が四人分の盃に酒を満たす。その内二つを地に置いた。

猟師「さ、大将さん。 奥方様も飲まれませ」

ひとつを自分が持ち、残ったひとつを僧に渡す。
それから二人は一刻の間、黙ったまま盃を口に運んだ。

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                                         おわり

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最終更新:2009年12月15日 23:27