著:2スレ目372殿(=4スレ目>>311殿)
秋山完結編 その2の続き



確かに、信友の申し出は理に適ったものだった。
包囲網を敷かれている今、信長が岩村城へ後詰を出すのは考えにくい。
おつやが信友の妻になる事で城兵は助かる。無血開城が成るのだ。


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  ハ_ハ
(゚∀゚;)「五年前、岐阜であなたを一目見た時から……」

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州* ‘ ω‘リ「……ふふっ」

昼の会見を思い出し、おつやは笑みを浮かべる。
あの武田の猛牛と呼ばれた秋山伯耆が、しどろもどろになりながら想いを伝えていた。

州* ‘ ω‘リ「可愛らしいお方……」





武田足軽「だからね、大将さん。 女口説くにゃ雰囲気ってもんが大事なの、分かる?」

  ハ_ハ
(゚∀゚;)「そうなのか……」

武田足軽「あんなとこで、嫁になってくれとか正気の沙汰じゃないね」


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    U( (U_つ::::.. .. .


武田足軽「……」

武田足軽「いや、でもまぁ男気を見せるってのはいい事だと思うがね」

  ハ_ハ
(゚∀゚;)「……とりあえず、明日にまた和議を開こう。 お主にもまた供をしてもらうからな!」



岩村城は開城される事に決まり、後は条件の交渉となった。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「御坊丸殿は決して粗略に扱いませぬ。 甲斐府中へ御移り頂く事になりますが」

州* ‘ ω‘リ「あい分かりました、御坊丸殿の事お頼み申し上げます」

最後に、と前置いておつやが口を開く。

州* ‘ ω‘リ「伯耆殿は御存知と思いますが……」

州* ‘ ω‘リ「私は織田の一族で、しかも未亡人なのですよ。 それでもよいのですか?」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「あなたでなくては嫌なのです!」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「これから我ら武田は、上洛の為多くの敵と戦わねばなりませぬ」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「必然、これからのそれがしも忙しく駆け回る事になりましょう」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「あなたには、そんな秋山伯耆を支えて欲しいのです……」

州* ‘ ω‘リ「……」

  ハ_ハ
(゚∀゚;)「……」

この場にいた三人が黙っておつやの返答を待った。
特に、信友には無限の時間に感じられた。

州* ‘ ω‘リ「ふつつか者ですが、よろしくお願い申し上げます……」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「おお! それでは!」

こくり、とおつやが頷く。

武田足軽「やったな、大将さん! こいつぁめでてぇ!」

織田足軽「恐れながら、オラたちが立会人を務めさせてもらいまさぁ!」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「和睦は成ったぞ! お主らも大儀であった!」



遠州を行軍中の信玄は岩村城開城の知らせを聞くと、高らかに笑った。

ミ(´∀` (彡「ははは、伯耆め! やりおるわ!」

( ^ω^)「しかし猛牛の伯耆らしくも無いやり方ですお?」

ミ(´∀` (彡「いや、此度はこれが最善の手だ」

(’ー’*)「のちに、織田の数多くの諸城を落とす際に役立つというわけですな」

ミ(´∀` (彡「それよ」

信長の一族であるおつやが寝返ったとなれば、織田全軍への動揺は計り知れない。
さらに岩村城は、美濃に置かれた武田の橋頭堡となった。今後、岐阜城の信長は枕を高くして眠れまい。

ミ(´∀` (彡「さらに……じゃ。」

彡`Д´ミ「今後、織田との交渉があれば秋山夫婦に立ってもらえる……わけじゃ」

ミ(´∀` (彡「その通り。 さて、まずは二俣城を落とすぞ」

( ^ω^)「伯耆に負けてられんお!」

信長の顔が見ものだな、と思い信玄はにやにや笑った。



(*‘ω‘ *) 信長「なん……だと?」

( <●><●>)佐久間信盛「岩村城は開かれ、おつやの方様は秋山伯耆の妻に」

( <●><●>)「さらに御坊丸様は質となり、甲斐府中へ送られた事がわかってます」

    ∧ ∧
   ( *‘ω‘)   ・・・・・・
  c(,_U_U ガク

この美濃に武田の城が出来てしまった。そう思うと信長は肌に粟立つのを感じた。

( <●><●>)「悪い事は重なるもんで、家康殿から救援要請が来てるのもわかってます」

(#‘ω‘ *)「おのれ武田め! 信玄坊主、許さんぽっぽ!」

( <●><●>)「武田との戦ならば、智勇に溢れ経験も豊富な者を送らなければいけませんねぇ……」

( <●><●>)「そう言えば我が織田には“退き佐久間”と呼ばれる名将がいるとかいないとか……」

( <●><●>)「その者ならば、武田の兵相手でもちぎっては投げ、ちぎっては投げ……」

( <●><●>)「武田を倒した勢いで、奥州まで攻めのぼったりして……」

(#‘ω‘ *) (何でよりによって手空きがこいつだけなんだぽっぽ……)

(#‘ω‘ *)「佐久間! 兵三千を率い、浜松へ向かえ!」

(///<●><●>)「承知でござる!」



翌十二月の三方ヶ原の報は岩村城にももたらされた。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「”織田の援将、佐久間は戦わずして逃げ……”」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「”数多の敵を討ち取り、赤備えも大いに戦果を挙げ候”……か」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「三郎兵衛め、やるなぁ!」

州* ‘ ω‘リ「三郎兵衛様とはどのようなお方で……」

昌景からの書状を読んでいた信友に、横にいたおつやが声をかける。
信友は昌景をはじめ、武田家重臣たちの事を話す。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「それで、修理が軍議で言ったんだよ。 “荷駄隊ばっかやってらんねーお!”って」

州* ‘ ω‘リ「くすくす……」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「そん時はお館も参っちゃってねぇ」

州* ‘ ω‘リ「みな、楽しきお方なのですね」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「そうだね、来年には皆をこの城に招いて酒宴を開ければいいなぁ」



翌年四月、信玄が西上の途上で病死する。
信友の落胆は深かった。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「……」

州* ‘ ω‘リ「……」

幾月経っても落ち込んだままだ。見かねたおつやは一計を案じた。

州* ‘ ω‘リ「あなた様、岩村城には抜け穴があるのですが、御存知でしたか?」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「いや、しらなんだ」

州* ‘ ω‘リ「城主が城の事で知らない事があるとはいけませぬ。 今より下見に参りましょう」

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「今からってもう夜だよ? 明日じゃ駄目かな」

州* ‘ ω‘リ「いいえ、善は急げと申します!」

いつになく強い態度のおつやに折れ、信友は腰を上げた。



去年の和議の場にいた足軽も供をし、抜け穴を進む。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「お主らは何を持っているのだ?」

武田足軽「へへ、”いいもん”だよ、大将さん」

やがて、四人は古びた扉に行き当たった。向こうから川のせせらぎが聞こえる。

元・織田足軽「奥方様、ここですかね?」

州* ‘ ω‘リ「ええ、そこの扉を開きなさい」



錆ついた扉を開けると、そこには一面火の粉が舞っていた。
夜だというのに、暗い抜け穴を通ってきた目には眩し過ぎる。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「……おお!」

それは、山火事と見間違う程の大量の蛍であった。
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武田足軽「これはまるで……」

元・織田足軽「夢のような……」

州* ‘ ω‘リ「さぁ、手燭を消しなさい。 殿に御酒を」

二人の足軽は担いできた荷を開き、宴の準備を始める。
手燭を消すと更に、蛍の美しい光が際立つ。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )州* ‘ ω‘リ「……」

両足軽「……」

宴の間、誰も口を開かなかった。蛍の光を愛で、黙々と杯を口に運ぶ。
この夢のような時が永遠に続けばいい、四人は共通して思った。

  ハ_ハ
(゚∀゚ )「この宴のこと、生涯忘れないだろうなぁ」

宴の終り際、信友がぽつりと呟いた。
二人の足軽も黙って頷く。二人ともこの宴に出る事が出来たのを無上の幸福と思った。
いくら夜でも、城は長く空けられない。宴は一刻程でお開きとなり、四人は再び抜け穴を通って城へ戻った。


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最終更新:2009年12月15日 23:23