1
確かに、信友の申し出は理に適ったものだった。
包囲網を敷かれている今、信長が岩村城へ後詰を出すのは考えにくい。
おつやが信友の妻になる事で城兵は助かる。無血開城が成るのだ。
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ハ_ハ
(゚∀゚;)「五年前、岐阜であなたを一目見た時から……」
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州* ‘ ω‘リ「……ふふっ」
昼の会見を思い出し、おつやは笑みを浮かべる。
あの武田の猛牛と呼ばれた秋山伯耆が、しどろもどろになりながら想いを伝えていた。
州* ‘ ω‘リ「可愛らしいお方……」
武田足軽「だからね、大将さん。 女口説くにゃ雰囲気ってもんが大事なの、分かる?」
ハ_ハ
(゚∀゚;)「そうなのか……」
武田足軽「あんなとこで、嫁になってくれとか正気の沙汰じゃないね」
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武田足軽「……」
武田足軽「いや、でもまぁ男気を見せるってのはいい事だと思うがね」
ハ_ハ
(゚∀゚;)「……とりあえず、明日にまた和議を開こう。 お主にもまた供をしてもらうからな!」
2
岩村城は開城される事に決まり、後は条件の交渉となった。
ハ_ハ
(゚∀゚ )「御坊丸殿は決して粗略に扱いませぬ。 甲斐府中へ御移り頂く事になりますが」
州* ‘ ω‘リ「あい分かりました、御坊丸殿の事お頼み申し上げます」
最後に、と前置いておつやが口を開く。
州* ‘ ω‘リ「伯耆殿は御存知と思いますが……」
州* ‘ ω‘リ「私は織田の一族で、しかも未亡人なのですよ。 それでもよいのですか?」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「あなたでなくては嫌なのです!」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「これから我ら武田は、上洛の為多くの敵と戦わねばなりませぬ」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「必然、これからのそれがしも忙しく駆け回る事になりましょう」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「あなたには、そんな秋山伯耆を支えて欲しいのです……」
州* ‘ ω‘リ「……」
ハ_ハ
(゚∀゚;)「……」
この場にいた三人が黙っておつやの返答を待った。
特に、信友には無限の時間に感じられた。
州* ‘ ω‘リ「ふつつか者ですが、よろしくお願い申し上げます……」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「おお! それでは!」
こくり、とおつやが頷く。
武田足軽「やったな、大将さん! こいつぁめでてぇ!」
織田足軽「恐れながら、オラたちが立会人を務めさせてもらいまさぁ!」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「和睦は成ったぞ! お主らも大儀であった!」
3
遠州を行軍中の信玄は岩村城開城の知らせを聞くと、高らかに笑った。
ミ(´∀` (彡「ははは、伯耆め! やりおるわ!」
( ^ω^)「しかし猛牛の伯耆らしくも無いやり方ですお?」
ミ(´∀` (彡「いや、此度はこれが最善の手だ」
(’ー’*)「のちに、織田の数多くの諸城を落とす際に役立つというわけですな」
ミ(´∀` (彡「それよ」
信長の一族であるおつやが寝返ったとなれば、織田全軍への動揺は計り知れない。
さらに岩村城は、美濃に置かれた武田の橋頭堡となった。今後、岐阜城の信長は枕を高くして眠れまい。
ミ(´∀` (彡「さらに……じゃ。」
彡`Д´ミ「今後、織田との交渉があれば秋山夫婦に立ってもらえる……わけじゃ」
ミ(´∀` (彡「その通り。 さて、まずは二俣城を落とすぞ」
( ^ω^)「伯耆に負けてられんお!」
信長の顔が見ものだな、と思い信玄はにやにや笑った。
4
(*‘ω‘ *) 信長「なん……だと?」
( <●><●>)佐久間信盛「岩村城は開かれ、おつやの方様は秋山伯耆の妻に」
( <●><●>)「さらに御坊丸様は質となり、甲斐府中へ送られた事がわかってます」
∧ ∧
( *‘ω‘) ・・・・・・
c(,_U_U ガク
この美濃に武田の城が出来てしまった。そう思うと信長は肌に粟立つのを感じた。
( <●><●>)「悪い事は重なるもんで、家康殿から救援要請が来てるのもわかってます」
(#‘ω‘ *)「おのれ武田め! 信玄坊主、許さんぽっぽ!」
( <●><●>)「武田との戦ならば、智勇に溢れ経験も豊富な者を送らなければいけませんねぇ……」
( <●><●>)「そう言えば我が織田には“退き佐久間”と呼ばれる名将がいるとかいないとか……」
( <●><●>)「その者ならば、武田の兵相手でもちぎっては投げ、ちぎっては投げ……」
( <●><●>)「武田を倒した勢いで、奥州まで攻めのぼったりして……」
(#‘ω‘ *) (何でよりによって手空きがこいつだけなんだぽっぽ……)
(#‘ω‘ *)「佐久間! 兵三千を率い、浜松へ向かえ!」
(///<●><●>)「承知でござる!」
5
翌十二月の三方ヶ原の報は岩村城にももたらされた。
ハ_ハ
(゚∀゚ )「”織田の援将、佐久間は戦わずして逃げ……”」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「”数多の敵を討ち取り、赤備えも大いに戦果を挙げ候”……か」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「三郎兵衛め、やるなぁ!」
州* ‘ ω‘リ「三郎兵衛様とはどのようなお方で……」
昌景からの書状を読んでいた信友に、横にいたおつやが声をかける。
信友は昌景をはじめ、武田家重臣たちの事を話す。
ハ_ハ
(゚∀゚ )「それで、修理が軍議で言ったんだよ。 “荷駄隊ばっかやってらんねーお!”って」
州* ‘ ω‘リ「くすくす……」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「そん時はお館も参っちゃってねぇ」
州* ‘ ω‘リ「みな、楽しきお方なのですね」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「そうだね、来年には皆をこの城に招いて酒宴を開ければいいなぁ」
6
翌年四月、信玄が西上の途上で病死する。
信友の落胆は深かった。
ハ_ハ
(゚∀゚ )「……」
州* ‘ ω‘リ「……」
幾月経っても落ち込んだままだ。見かねたおつやは一計を案じた。
州* ‘ ω‘リ「あなた様、岩村城には抜け穴があるのですが、御存知でしたか?」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「いや、しらなんだ」
州* ‘ ω‘リ「城主が城の事で知らない事があるとはいけませぬ。 今より下見に参りましょう」
ハ_ハ
(゚∀゚ )「今からってもう夜だよ? 明日じゃ駄目かな」
州* ‘ ω‘リ「いいえ、善は急げと申します!」
いつになく強い態度のおつやに折れ、信友は腰を上げた。
去年の和議の場にいた足軽も供をし、抜け穴を進む。
ハ_ハ
(゚∀゚ )「お主らは何を持っているのだ?」
武田足軽「へへ、”いいもん”だよ、大将さん」
やがて、四人は古びた扉に行き当たった。向こうから川のせせらぎが聞こえる。
元・織田足軽「奥方様、ここですかね?」
州* ‘ ω‘リ「ええ、そこの扉を開きなさい」
7
錆ついた扉を開けると、そこには一面火の粉が舞っていた。
夜だというのに、暗い抜け穴を通ってきた目には眩し過ぎる。
ハ_ハ
(゚∀゚ )「……おお!」
それは、山火事と見間違う程の大量の蛍であった。
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武田足軽「これはまるで……」
元・織田足軽「夢のような……」
州* ‘ ω‘リ「さぁ、手燭を消しなさい。 殿に御酒を」
二人の足軽は担いできた荷を開き、宴の準備を始める。
手燭を消すと更に、蛍の美しい光が際立つ。
ハ_ハ
(゚∀゚ )州* ‘ ω‘リ「……」
両足軽「……」
宴の間、誰も口を開かなかった。蛍の光を愛で、黙々と杯を口に運ぶ。
この夢のような時が永遠に続けばいい、四人は共通して思った。
ハ_ハ
(゚∀゚ )「この宴のこと、生涯忘れないだろうなぁ」
宴の終り際、信友がぽつりと呟いた。
二人の足軽も黙って頷く。二人ともこの宴に出る事が出来たのを無上の幸福と思った。
いくら夜でも、城は長く空けられない。宴は一刻程でお開きとなり、四人は再び抜け穴を通って城へ戻った。
最終更新:2009年12月15日 23:23